法事で酒田に帰るついでに、山形で林道を漕いできました。
なにせこの日の山形は37度ありましたが、時間が押していることもあり、そんなことを無視して走り始めていました。
ものの30分で体が悲鳴を上げ始め、物静かな幸生という町に入ると目が回り始める始末。これは危ないですね。
山形の人間は強い。
山形は、暑さで云うと涼しいということはなく、関東よりもむしろ暑い。
山形は基本平坦、その暑さの中、結構ローディが走っている。
そして、ちょっと郊外に出ようと思うと、とたんに山になる。
練習環境としてこんなに素晴らしいところは無いのだが、この滞留するような暑さになれていない関東人たる私は、即オーバーヒートしてしまう。
これが酒田ならこんなに暑くなることは無いのだが。
写真は、これからヒルクライムをキメる、十部一峠への登り。
この国道は年間を通じて肘折温泉まで行けることはもはやなく、途中で通行止め分断となる、まるで県道か、林道のそれだ。
元々、国が作ったみちではない。
この上にある鉱山の為無理やり国に管理させた感のある道だ。
全国でも屈指のやる気のない国道と聞く。
そもそも、国道だというのに車線と言う類の物がない。
かわりにあるのは、この街道のあちこちにある古い道標だ。
既に暑さで体をやられ、これはまともに自転車なんて乗れないな。と思う中、それでも無理やり進んでいるところ、めまいか?なにか?道がグニャリと一車線になっているように見えなくもない。これは幻影か??
国道だというのに、どこにもたどり着くことのない道は、車なんて来やしない。
何故これが国道なのか?わからない。というよりも、暑さで倒れそうだ。
そのうち、めまいは気持ち悪いに変化し、十部一峠までのヒルクライムもDNFキメようか?と思っていた時だ。だんだん気温が下がってきて、集中力が出てきた。
やがて高地らしい気持ち良い道を進むと、それは出てきた。ここが十部一峠。
標高は800mを超え、この先は未舗装区間も存在する筋金入りの酷道だ。
十部一とは、鉱山の入山税、料金システム十分の一と言うシステムからきている名前で、銀山町に入るために持っている財産の十分の一を徴収されるシステムだ。
永松鉱山はここから6km下山した所にあるのだが、この名前からして、ここに役所があり徴収があったのかもしれない。
既に暑さでやられて危険な状態にあったのだが、私の目的地はここではなかった。
このまま永松林道を下り永松鉱山を目指すのだった。
10年前くらいまでは砂防ダム建設の為、ダンプカーが通っており、一般車も通れたみたいだが、ダム建設が終わり道は荒れ放題になっているそうだ。
確かに、林道入り口は柵がかけられ、行っても知らないぞ!と警告の文章が掲げられている。
永松鉱山が現役であったころ、鉱山に出入りするにはこの道でアクセスしていた。
閉山してからも砂防ダム建設の他、車で鉱山に行くことができた。
このことから、この林道はそれほど荒れていないのではないか?という憶測だった。
実際は半端なかった。。。
始めはジムニー、つまり車でも行ける道、という印象を受けるも、ジョジョに危険度合いが増してきた。
たしか舗装してあったはずだが、そんな模様は一切なく、道の真ん中を水が流れ、それが深く道を傷つけていた。
水がちょろちょろしている道なら、それはそれで全く問題はなかった。
問題は、この道の場合、深く掘られたことにより右岸、左岸と分離され、バイクを進めるにあたってどちらで渡るか?と判断しながら進むことであった。それは結構なストレスだ。
29インチでも、ハマるかトラバースしようとすると、落車する程の溝が道の真ん中を走っていた。
しばらく、3km位進んだ時だった。
左カーブの法面が崩落して、道幅が30cmくらいになっている箇所があった。
山側は土の斜面が切り立ち、上からは水が流れている。
谷川は沢まで落ち込んでいる。車が通れなくなったのはこれだろう。
それも、30cmの道は水に浸食され急に落ち込み、反対側も急な登りになっていた。要は鞍部になって、その鞍部を山側から滝のように水が流れていた。
洒落臭い、乗車で視界から消して見せる!
と飛び込んだ。
ら、鞍部は粘土質の泥でフロントがそのままドボっとはまった。
間一髪、右足をリリースする事が出来たためキックして鞍部を乗り過ごした。
そのままクリアするはずが、鞍部を乗り越えた先が泥沼で、フロントタイヤを取られ、そのまま前のめりになるようにバイクが止まってしまう。
再び右足でキックしようとしたらそこは深い泥沼だった。無常に足を潜らせるだけでバランスをとることはできなかった。
バランスを崩し、バイクは谷側に傾く。
戦艦大和には、船体の横揺れを緩和するためのスタビライザーという装備が船底に装備されている。
スタビライザーは、急激に船体を傾けようとする力を打ち消すように出来ていて、今のオイルタンカーなんかにもその技術は使われていると聞く。
ようはおさえる機構がないと、際限なく傾いてしまう。ということだ。
今の私はそのスタビライザーを失い、際限なく倒れる状態。
左半身は崖でおまけに左足はクリートにはまっていた。
ハマった右足は何も機能させることはできず、沢側に傾き始める。
この間何もできなかった。
そっちには傾いてはいけない。
その方向にまさに傾き始め、仕舞いには頭から沢に落ちていくのに、無言の悲鳴を上げるほかなかった。
ここまで来た感じ、古いオフロードバイクのタイヤ痕があった。
しかし、車も通らない、さらにどこかの街に抜ける道ではない、ただ鉱山の跡地に下るだけの廃林道は、通る人なんて年間を通じてもそんなにいないだろう。
筑波の最狂険道をクリアした私は、林道ならどんなところにも行けるという過信があった。
水、泥、溝に対するスキルはなかった。
沢にバイクごと滑落し始めるわたし。
こんなところでこけて、滑落するなんて、予想もしていなかった。
でも今は止まらない、バイクと一緒に沢へ滑落していく、一人だし、無茶してしまった。しくった。。。
ああ、止まらない、沢にズリズリと落ちる間、誰も来ない場所で一人滑落していく悔しさと後悔をかみしめていた、
覚悟を決めてしばらくしたら、止まった。。。
ハンドルが明後日な方向を向いたバイクに掴まった私は、斜面の途中でアクロバティックな体制のままやってしまった感をかみしめていた。
何とか体制を起こすと、体に異常が無いことが分かった。
ただ、結構落ちたので、どうやってこの斜面を道まで登るか?そもそも、体は本当に問題ないのか?もわからなかった。
結局バイクをピッケル代わりにして、斜面にバイクを突き立ててはヤジ登る。泣きそうになりながら、滑りながら、なんとか道まで上り詰めた。
生きてる。
そう実感した私は、引き返して安全なところに向かうのではなく。
鉱山方面にさらに下り始めた。
完全に間違っていると思う。そのうち、道を滝が舐めている箇所があり、
先ほどの二の轍は踏まないと降車して挑もうと思ったときであった。
脚をかけた石は、つるっと滑った。これは蛇紋岩!と思うも時すでに遅し、轟沈!
これで完全に私のメンタルは骨折してしまった。
このまま鉱山を目指して進むことはできる。
しかし、そうしたら登り返しは厳しいことになる。
それを成し得たとしても、時間制約でアウトだ。
泣く泣く、敗退を決めることに。
リスクが大きすぎる、桁が違う怖い廃林道でした。
バイクは無理です。ルートファインディングができて熊に遭遇しても対処できる上級の山ヤでしたら。
とても辛口のライドでした。また山形の林道は攻めに来たいです。
ただし、今度は安全が確保された道が良いです。