それは、久しぶりにかかってきた岩井(仮名)君の電話から。岩井君は私の小中高の同級生で地元で開業してヤブ医者をやってます。
「成田(これも仮名)君、ソウカエンって知っとる?」
「ソウカエン? なんか聞いたことあるな。何だったっけ?」
「総合火力演習。」
「あ、そうか。で?」
「行く気ある?」
「え、でも、あれって、当たらないと行けないんでしょ?」
「いや、今年は当たりすぎて券が余ってるんだわ。」
「行く、行く!」
その恩恵に預かって私も24日に初めて総火演に行ってまいりました。その内容をご紹介する前に、総火演の攻略法についてあれこれと思うところを述べたいと思います。と言うのも、総火演の最中は楽しめたものの、その前後は非常に苦労したからです。
【1】 まず券を当てる
今回、私はこの苦労はしていないわけですが、券を当てるのもなかなか大変なことのようです。
25年度の倍率は、
陸自のHPによりますと、平均で約20倍。申し込みはインターネットと往復はがきですが、一人1回のみ。ですから、家族や知り合いの名前を総動員して申し込んで確率を上げるしかありません。ただ、29歳以下の人と一緒に行く”青少年券”だと幾分確率が高くなるようです。
一般券、青少年券ともに駐車場付きの券もあり、それが当たれば会場近くの駐車場に駐車できるようですが、これはプラチナペーパー中のプラチナペーパー。200倍以上の確率のようですから、当てることだけを目標にするなら最初から考えない方が得策だと思われます。
また、その組織についてよく知らないのですが「防衛協力会」なるものに入会すると券がもらえたりするようです。岩井君もその会に入っていて、今年は2枚もらったそうな。
【2】どうやって会場までたどり着くか
入場券が当たったからといって、それだけで喜んではいてはいけません。よいポジションで観覧するにはより早く会場に着く必要があります。
岩井君も私も先人のブログなどを読み、下調べをして臨みました。車で御殿場まで来た人は、どこかの駐車場に車を停め、御殿場駅からシャトルバスで会場に向かうのが一般的なルート。私もそうしようと考えていました。一方、岩井君は連れと二人で前泊し、御殿場駅からタクシーで会場まで行くと決めていました。私は前泊までする気はなかったので前夜の22時頃自宅を出発。先人のブログで紹介されていた御殿場駅南の公営駐車場に着いたのは午前2時。車を停めてから仮眠するつもりでした。ところが、なんと目の前の車で満車! 午前2時ですよ!
先人のブログでは午前6時までなら何とかそこに停められると書いてあったのに・・・・。そこで他の車が出て行くのを待つこともチラッと考えましたが、午前2時に出ていく車があるとは思えません。ゲートを閉めて両腕で×の仕草をする非情な係員のオジサンに、この辺に他に駐車場はないかと尋ねると、反対側に民間の駐車場があったかなぁ?との返事。Uターンして探してみましたが、どこもかしこも満車。コンビニで飲みたくもない缶コーヒーを買って店員さんに駐車場はないかと尋ねてみても「さぁ?」と言われるばかり。このまま朝になってしまったらどうしよう? 気は焦ります。御殿場駅周辺をあきらめインターまで戻ると、かなり広いTimesが。満車じゃない! 駅まで歩いて30分はかからないようだし、この際文句は言っていられないと決断。一日一回1000円というのもありがたい。
駅からシャトルバスに乗るくらいなら、岩井君のタクシーに便乗する方が楽だと思い付き、電話して了解を得て、5時半に御殿場駅で落ち合うことにし、スマホの目覚ましを5時にセットして仮眠。
ところが目覚ましより先に岩井君からの携帯で起こされます。4時40分頃のことだったでしょうか。
「車を停めるところがない。成田君はどこに停めてるの?」
聞いてみると、岩井君も私が停められなかった駅の南の公営駐車場に停めるつもりだったらしい。その時点では私が停めた駐車場も満車。とにかく駅の周辺で落ち合うことにして、私は徒歩で駅へ。
朝5時16分の御殿場駅前。既にシャトルバスを待つ数百mの長蛇の列。
岩井君と落ち合い、改めて周辺の駐車場を探しましたが、いずれも満車。迷っていても時間が経つばかり。岩井君が意を決して「とにかくこの車で行けるところまで行ってそれから考える」ということに。
シャトルバスの後について会場まで車を走らせ、岩井君は私と連れを降ろして、どこか停めれるところを探してくると去って行きました。(この連れというのが、実は岩井君の前の奥さんとの間にできた息子、21歳。つまり青少年券の対象者。どう接していいのかちょっと戸惑いました。)
【3】どこに陣取るか
結局、6時前に会場に着きましたが、またしても長蛇の列。私の券はEブロックで、スタンドかその前に敷かれたシート。先人のブログでは、スタンドの最上段かシートの最前列が好条件の席とされていて、てっきり早い者勝ちで好きな席を選ぶのかと思っていました。ところが今年からなのかどうか分かりませんが、シートかスタンドかは選べるものの、係の隊員の指示に従って入場順に席を割り当てられます。そのため、少人数ずつの入場となり、会場についてから座るまで2時間近く並んだでしょうか。写真撮影が目的の半分以上の私としては、どうしても見通しの良いスタンド席を確保したい。立ちっぱなしも辛かったですが、ひょっとしたらスタンド席に入れない?という恐れも辛かった。そのくらい長い列だったってことです。
総火演の開始時刻は10時からですが、既にこの列に並んでる最中に、戦車の試射が始まります。スタンド裏で最初の1発を聞いた時、というか感じた時、その迫力に体がビクッと引きつるように震えました。これは録画などで見ても伝わりません。肌で感じる空気の振動です。何発も聞いていればそのうちに慣れるかと思っていましたが、結局、総火演が終わるまでそれは同じでした。
どうにか、最上段ではないものの、中段よりは上にスタンド席を確保し、落ち着いてから撮った富士山。左下がシート席です。タイムスタンプを見ると7時58分。スタンド席は埋まりつつありますが、シート席はこれからという状態。この後、富士山も雲に隠れます。
スタンド席を確保し、開演まで時間があるというのに、試射は終わってました。試射も見たかった。次に来る機会があるとすれば、試射前にスタンドに入ることを目標とすべきでしょうか。
岩井君はDシートに座って観覧したようですが、総火演の会場の携帯の環境もいいとは言えません。元々田舎であるところに6千人が集中して携帯を使う訳ですから無理もないことかも知れませんが、岩井君と連絡しようとしても、通話が一方通行だったりメールも届かなかったりで、会場内ではぐれると簡単に再会できない可能性があります。Wi-Fiや臨時局を設けるなど工夫をしてほしいところです。
【4】いかにして帰るか
総火演の内容はすっ飛ばして、帰り方の考察。
12時に総火演は終わります。総火演に登場した車両やヘリコプターを間近で見られる装備品の展示が午後1時頃からあって、一応、帰りの客を分散させる工夫はあります。ところが、帰りのシャトルバスやタクシーに乗るには、会場と道路を隔てた区画に行くしかなく、しかも会場とそこを繋ぐのは一本の仮設の歩道橋のみ。開場前以上に集中した客がその歩道橋を渡ろうとするわけです。歩道橋を渡るまでに数十分かかり、渡ってもシャトルバスに乗るのに長い列ができていて、2時間以上の待ちだとアナウンスが・・・。
岩井君は車を途中の商店に頼み込んで停めてきたとのことで、そこまで3人で歩きました。30分くらいだったかなぁ? 暑いのとカメラ2台が入った重いバッグを背負っていたため辛かった。
やっと車に乗り込んで暑さからは解放されたものの、今度は渋滞。やっと私が停めた駐車場に着いたのは午後4時台だったでしょうか。もちろん昼食は食べていません。
【5】いかにして総火演をスマートに攻略するか
次回があるとすれば、今回の教訓を踏まえ、どうしたらスマートに総火演を攻略できるか考えてみました。
①駐車場探しで懲りたので電車で行く
日曜の朝5時までに御殿場に着けるように岐阜から出発しようとすると、土曜の晩8時6分発の電車に乗るのが一番安くて片道7,560円。乗換2回。到着は午後11時45分。
ビールを飲みながら寝てる間に・・・なんて具合には行かないようですね。しかも駅に着いてから落ち着ける場所があるかどうかも問題。
②それでも車で行く
車だと岐阜から高速料金が片道4,400円(ETC休日割引)。距離は約280㎞。駐車料金が2,000円。今回の私のように一人だけだと車の方が割高ですが、二人なら確実に車の方が割安ですね。駐車さえできれば仮眠もできますし。とにかく早めに着いて駐車場確保が前提。
③前泊する
お金がかかってもいい人は選択肢として考えていいでしょうね。注意すべきは、御殿場駅の近くにあって、総火演が終わって帰るまで車を停めておける宿泊施設を選ぶことでしょうか。その条件が満たされるなら、早起きしてシャトルバスに並ぶことだけに集中できます。
もう一つの選択は、総火演の会場に歩いて行ける範囲の宿泊施設に泊まること。知る限りでは会員制のホテルが一軒あります。ここに泊まればシャトルバスの長い列を横目に帰りも楽。もう一泊すれば、渋滞も関係ありません。お金のことを別にすればこれが一番スマートかな。
④早めに切り上げて帰る
帰りにだけ適用できる方法ですが、混雑が始まる前に帰るというのも一つのスマートな方法かも。プロ野球の試合でもクライマックスで盛り上がってるのに帰る人がいますよね。
でも総火演の締めは、オールスター総出演の宝塚歌劇もかくやと思うようなフィナーレ。男の子なら帰れません!
こんなのを見ずに帰れる人だけが選択できる方法です。3年連続くらい総火演を観てて飽きちゃった人は既にそうしてるかも。
⑤陸自関係者になる
これが一番スマート? いっそ演ずる側に回れば給料をもらいながら総火演を見られます。長蛇の列に並ぶことを思えば、上官のどなり声もなんのその。防衛大臣になれば、観客が見守る中、クラウンで会場入りし、SP付きで特等席で観られます。
他にアドバイスとしては、先人のブログにもありましたが、スタンドにしろシートにしろ、尻の下に敷くものは用意した方がいい。あとは晴れても降っても帽子と雨カッパ。三脚は意外にも禁止はされていませんでした。しかし、混み合った会場では事実上その使用は困難ですので、せいぜい一脚でしょうか。私は手持ちで撮りました。
今後に総火演に行かれる方の参考に・・・・なるかな?