新型911(991.2)の『カレラ カブリオレ(ノーマルマフラー)』と『カレラS(スポーツエグゾースト付き)』 に試乗してきました。
以下に、試乗した感想を私の主観のみで記しますが、あくまで『独善的』に記しますので、お読みにならっれて疑義を感じられた場合は御寛恕されてください。
先ず、『カレラS(スポーツエグゾーストス付き) 』に試乗…
エンジンスタート。水温油温OK!。アイドリングは650回転。ドライブモードはノーマル、サスもノーマルでPCをスタート、走行開始.・・・。
エンジンが粗い! 回転の粒が粗くて荒い!
全く『調和』なんて事を気にしていない粗削りなエンジンだ!
エンジンフィールが前期991.1のカレラSに極めて似ている。
モデルがどう変わろうが、やはり『S』には『S』独特のエンジンフィールを敢えて存在させている。
サスがびっくりするほど柔らかい。スポーツカーのサスではない、これはGTカーのサスだ。
サスが余りに柔らかいのでサスをスポーツに変更…
サスが突如締まる!これは紛れもないスポーツカーのサスだ!
路面の状況はステアリングを通じ、絶え間なく極めて正確に伝わり、ボディを道路に押し付ける。
ドライブモードもスポーツに変更、自動的にオプションのスポエグはON状態になる…
アイドリングが突如650回転から170回転も跳ね上がり820回転まで上がる。
エンジンがターボラグを更に消し去る為の前段階準備を始める。
走り出すと、エンジンの粒は余計に粗くなり、暴力的に咆哮する!
絶対速度が50%増しになり、ポルシェ911を操縦する喜びが脳から溢れだし、911とドライバーのエモーショナルな世界に突入する・・・、 やがて… 街がニュルブルクリンクに変わった!
『カレラS』のネガはオプションの『スポエグ(スポーツエグゾースト)』の音。
海苔本来の味がせず、ただやたら甘くて醤油辛いだけの『安物の味付け海苔』のようだ。
ツインターボ化による排気音質の低音化を防ぐためとはいえ、過度な音質音量調整と漫画チックな誇張が過ぎる。
フェラーリの排気音のように、どうだと云わんばかりに排気音を誇張するのは、ポルシェという文化からすると品性に欠ける。
音は大きいが、フェラーリ、ランボルギーニ、暴走族の排気音と同じ、ただの爆音である。
次に『カレラ カブリオレ(ノーマルマフラー)』に試乗…
オールノーマルでスタート。
カブリオレの車重増加か、又は幌による重量配分か、何故かサスがバタつき、極めて不快。
サスをスポーツに変更…するが、『カレラS 』程には、サスが締まらない。
次に、ドライブモードもスポーツに変更…
しかし、アイドリングが650回転から50回転しか上がらず、700回転あたりを維持するのみ。
エンジンがターボラグを更に消し去るほどの効果は感じられず、『カレラS 』程のエモーショナルは感じない。
エンジンの粒は揃っており調和され、粗さは微塵も感じない、AUDIのエンジンに似た、良くできたGTカー用のツインターボエンジンだ。
素の『カレラ』はモードがノーマルでもスポーツでも、ハンドリング、サス、エンジンの全てで、GTカーの領域を出ない。
今回の試乗を経て、素の『カレラ』は、911の型をした『世界最高のGTカー』だと思う。
『カレラS』は、ポルシェが具現化した911の型をした『世界最高のスポーツカー』だと思った。
エンジンのモード切り替え時のアイドリング上昇の回転数値が『カレラ』50回転、『カレラS』170回転と異なるように、サスのモード切り替えも、エンジンのモード切り替えも、『カレラ』はソフトケイトに『カレラS』ではよりアグレッシブに設定され、変更される数値そのものが異なる。
ポルシェが考える基本設計レベルのベースとなる911は、常に『カレラS』なのだろう。
普通一般的には『カレラ』がベースモデル、そして『カレラS』がチューンアップバージョンと考えているが、根本的にそれが間違いだ。
ポルシェが考える基本設計レベルの911ベースモデルは、常に、常に、きっと『カレラS』なのだ。
ポルシェの考え方では『カレラS』こそが911のベースモデルであり、『カレラ』は『カレラS』にGT色を付加させたデチューンバージョンなのだろう。
『カレラ』と『カレラS』のブレーキシステムとブレーキローター径のサイズが異なるのは、
『カレラ』に比べて『カレラS』の方が性能が高いのでより強力な6ポッドの大きなブレーキとブレーキローターが要る!からでは無く、『カレラS』に比べて『カレラ』は性能を抑えてあるので、強力な6ポッドではなく4ポッドで充分であり、ブレーキローターもより小さい径のもので良い!が正しいのだ。
そう考えると、この2台の『カレラ』と『カレラS』の立ち位置が、とても良く判る。
911『カレラ』にスポーツカーを求めるのは、購入する我々が間違っている。
911『カレラ』では、サーキット走行を行うべきではない。
911にスポーツカーを求めるのであれば、ベースモデルである911『カレラS』を求めるべきである。
911『カレラS』であれば、ごく最低限のサーキット走行には耐えられる。
試乗前は『カレラ』370ps/450Nmと『カレラS』420ps/500Nmは、それぞれ50ps/50Nmの違いだけだとと思っていたが、そうではない。
『カレラ』と『カレラS』の価格差300万円は、ありとあらゆる部分でGTカー対スポーツカーとして『絶対的に異なる差』となって現れる。そう考えると価格差300万円は、決して高くはないと考える。
試乗前は、ツインターボ化されたので『カレラ』で充分だろう…と思っていたが、ツインターボ化されてもポルシェにとって『カレラ』とカレラS』の差別と区別は、私の予想以上に明確だったようです。
2台の911を交互に試乗しながら、すでに不惑と云われる年齢に達していながら、未だスポーツカーというジャンルに心を持って行かれてしまう自分に戸惑いを覚えましたが、ポルシェ911とは『眠っている子を起こす…』、そういう魔力を根底に持ったクルマなんでしょう。
PCに戻り、クルマを降りて、同乗していたセールスのI氏に思わず『カレラ カブリオレ…じゃなくて、カレラS カブリオレに注文を変更するわ…』と、力無く呟いてしまいました。笑
『カレラ カブリオレ』から、『カレラS カブリオレ』に注文を変更することにより、以前の注文は一度取り消される為、更に数か月納車が遅れるとのことです。
ポルシェを購入するにあたり大事なことは、『注文したこと自体を忘れる!』という事でしょう。笑
以上、極めて主観的な試乗記でした。