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フィー.のブログ一覧

2017年08月03日 イイね!

後席でシートベルトをしてもらう意味、殺されないために

後席でシートベルトをしてもらう意味、殺されないために前々からTwitterとかでね、コトあるたびに

「シートベルトは自分が死なないため、だけじゃなく
 自分が殺されないために、してもらうものなんだよ」

って書いてたんだケド、やっとそれを綺麗に説明できる動画が見つかった。
やっぱりこういう、ちょっと変わってるケド大事なコトって、IIHSからの発信が多いよね。

Unbelted rear-seat passenger test


―――

背景話はこっち
Adults admit they often skip belts in rear seat - IIHS News


―――

あ、今回はあくまでも 「後席シートベルトする意味」 という話なので
メーカーごとの安全装備の有無だとか、仕向けでどうこうだとか、そういう話はなしで。

そういうのはこっち。
IIHS助手席スモールオーバーラップ試験について考えた
タタ・ナノの衝突性能を莫迦にできない他社メーカー
Posted at 2017/08/03 22:30:33 | コメント(6) | トラックバック(0) | 雑記:環境/燃費 | 日記
2017年06月17日 イイね!

DCTのクラッチと、進化の系統樹

DCTのクラッチと、進化の系統樹ちょっと前に飛び込んできた話で、こんなのがあった。
アメリカでフォードのDCTに乗ってる人が、フォードに対して集団訴訟を立ち上げたって話。

Focus, Fiesta owners sue Ford over faulty Powershift transmissions

アメリカでもフィエスタは売ってるんだケド、"Fox" ことエコブースト 1.0LはMTのみの設定だから、今回対象になってるのは1.6L NAのシグマ系のお話。


でね、こと北米に関しては、このPowershift 6速DCTはいわくつきのトランスミッションだったりする。

ことフィエスタに関しては2011年モデルで初お目見えした直後から、発進時のガクツキ、変速不良、再加速できないなどクレームが殺到、2011年のコンシュマーレポートの信頼度調査において、フォードの順位を10位から20位に叩き落す原因の一つになったり

Ford falls, Chrysler jumps in Consumer Reports reliability survey

フォード側に数回のサービスキャンペーンのみならず、パワートレイン保証期間を従来の5年/6万マイルから
7年/10万マイルまで延長するという対応を強いる流れになってたりするのね。

Ford rushes to fix gearbox problems, but not quickly enough for Consumer Reports

一応このトラブルは、オイル混入やアース不良みたいな初期の製造不良が原因なトコロもあったみたいで
それが落ち着く2012年あたりから、それほど表面化しなくなってきたんだケド、訴状によると現時点でも
サービスへのBulletin発行は20回を超え、それでも安定した対策は見つけられない状況、となってたりする。

訴状の内容は、その特性上相当オーバーに書かれてる可能性は無きにしもあらずだケド
少なくても、あまりよろしくない扱いになってるのは事実っぽいのだ。

―――

でもね、このニュース自体は自分的にはそれほど重要ではないの。
今回これを見て思い出したのが、自分の頭の中でずーっと引っ掛かってた、フィエスタのDCTのこと。
自分が乗った瞬間虜になったフィエスタの中で、唯一引っ掛かったのがDCTの仕立て。

しかも世の中を見渡してみれば、DCTから多段プラネタリーATに回帰だ、なんて話があったと思えば
VWはいまだにDCTを使ってるし、ゲトラグは新しいDCTを発表してる。

何で?って。DCTの何がダメで、何が問題なのか。
あえて新しいDCTが起こすのは、何に向けた提案なのか。

今回のニュースをきっかけにそれを自分なりに整理しようとしてたら、けっこうな長文になっちゃって、ね。
近年稀に見るまとまりの悪さだから、それは覚悟して読んでもらえると…

―――

で、DCTって?って話になるんだけど…

DCTって、初めて量産車に載って世の中に出たとき、どうもスポーツ系として扱われてた節がある。
初めて乗っかったクルマがゴルフのR32だったり、アウディTTだったりって。
そりゃそうだよね、だってご先祖様がポルシェのレース用ミッションだったんだから。

だから一番大事だったのは、レースで重要な変速時のトルク抜けをどうやって回避するか?
トルク抜けは変速中に発生するんだから、変速済みのギアを準備しておいてそれに持ち変えればいい。
その考えは、とってもシンプルな機械だと思うの。


そう考えると大事になるのは変速というか、持ち替えてる時間の短さ。
トルク抜けが発生しないとはいえ、クラッチを架け替えてる間は全開の加速モーションに入れないから
持ち替え自体が遅いと、何をやってるか解らなくなっちゃう。
そのためにはパッと繋いでも大丈夫なクラッチじゃなきゃダメで、そうなるとクラッチの冷却が大事になる。

だから初めて世の中に出たDSGは、クラッチを滑らせながら繋いでも、ちょっとは余裕がある湿式クラッチ。
つまりトランスミッションオイルで冷却される構造になってた。
これが変速時間の短さに繋がって、スポーツ走行用のトランミッションとして一気に広まる一因になる。


でね、いざこのDCTが物になると、ほかのコトだって考える人が出てくるのね。

良く言われるようにDCTはMT×2だから、MTが作れる環境があれば、自分達で作れるっていうのがメリット。
VWみたいに、わざわざ東洋のメーカーに頭下げて横置きプラネタリーATを買ったきたり
BMWみたいに、普段から見下してるメリケンから縦置きプラネタリーATを買わなくても良くなる。

もっと言えばね、トルコンやプラネタリーギアセット、それらの制御回路までMTとは完全に別物で
ワンパッケージで買ってこないと意味がないプラネタリーATに対し、DCTで独自なのはクラッチパックとシフトの制御回路だけ。それらだけをサプライヤーから調達できれば、製造自体は内製でもできる。

つまり、自分達が既に構築したサプライヤーチェーンをもっともっと有効活用できる。


だからもともと製造規模が大きく、中国や北米と言った出先でも、既にサプライヤーチェーンが構築されてる
VWやゲトラグ・フォードが考えたのが、このミッションを一般車にも転用すること。

元々は変速の早さが売りだったDCTを、メーカー都合だけで、実用車という全く違う世界へ持ち込む。

これが結果としてスポーツ走行用のDCTとは違う、もう一つの進化の樹を作ることになる。

―――

で、いざDCTを実用車に転用するって決めると、色々と調子が悪い話だって出てくる。
そりゃそうだよね? 変速が早いだけじゃなくて、安く軽く、何より燃費がよくないと困るんだから。


んで前に書いたケド、ミッションの燃費に対する寄与って、伝達効率とギアレシオ選択の自由度で概ね決まる。

CVTは、変速中にバリエーターを押さえつけながら回さないとダメ。だから伝達効率が悪いケド、
エンジンを燃費の目玉に抑えつけて回せる自由度があるから、そこで取り返せる分がある。
それに対してDCTは伝達効率がMT×2で良い代わりに、加速時のレシオ自由度がどうしても段数勝負になる。
…っていうのは大昔に書いたざっくりとした内容。

で、その時に、その伝達効率(っていうかトルクのロス)において、DCTは絶対にMTに敵わないとも書いた。

だってMTは変速が必要な時に、運ちゃんが自分のカロリーでクラッチを動かすのに対し
DCTが変速するためには、何かがクラッチを動かさなきゃダメで、その動力を作ってるのは誰だっけ?って。


クラッチなんて大物を動かすんだから、まず最初に考えるのはMTを同じ油圧を使うコト。
だからVWのDCTは、その仕事をミッション軸直動の油圧ポンプでやってたのね。
ポンプで油圧を作っておいて、MTの左足が作る油圧を同じように使うことで、クラッチを契合・開放する。

でも当然ながら、これって燃費にはつらい話。
だってDCTは変速だけじゃなくて、そのたびに熱を帯びるクラッチも冷やさないといけない。
だからオイルの流れを勝手に止まるワケにいかず、オイルポンプは常に回してないといけないし
冷却するためにオイルを回してる以上、そのオイルだってクーラーで冷却してあげないと意味がない。
しかもそのオイルにゴミが混じると変速機構や油圧回路がやられるから、フィルターだって必要。

その上でMTを2セット抱えて、燃費のためにギア比を高くしたいから段数も増やして…
なんてやっていくと、重量が雪だるま式に増えていく。これだって燃費にはてきめんに効いちゃう。


だからどうやって燃費を良くしていくか、っていう話になった時、真っ先にやり玉に上がったのがクラッチ。

上に書いた問題は、クラッチの冷却をオイルに頼ってることが遠因。

だから乾式クラッチにして冷却油量が無くなれば、必要なタイミングだけ油圧を準備すれば良くなる。
そうなるとオイルポンプを常に回す必要がなくなるし、オイルはギアの潤滑だけで済むから実質的にMTと一緒。
クーラーもフィルターもいらなくなるし、油量も減るから重量だって軽くなる。

しかもオイルポンプを常時駆動しなくていいなら、電動で動かすことだって視野に入る。
直動だと駆動損失になっちゃって損失を「減らす」しか手がないケド、電気代は手弁当だったとしても
減速時オルタ回生などを使ったエネルギーマネージメントを行えば、元手を減らさず取り返せる。

だから実用車向けのDCTでは、この乾式クラッチが一つのキーポイントになるのだ。

―――

だから、そんな燃費に振ったDCTを最初に具体化したVWのDQ200は、当然ながら乾式クラッチになった。

クラッチを乾式にして付帯装備を外したから、当然ながら重量はどかっと落ちた。
湿式クラッチのDQ250から変速段を1段増やしつつ、重量を90kgちょいから70kgへと減らしてきたのだ。

冷却が必要だったクラッチを乾式にするわけだから、当然ながら吸収トルクが落ちちゃうんだケド
それでも250Nmを確保。同じく270Nm対応のマツダ・スカイアクティブ 6速ATが90kgであることを考えると
ここまでくればレシオカバレッジの広さとあわせて、十分戦えるレベル。


で、乾式クラッチで冷却の呪縛から解放したのは良いとして
残るDCTのアクチュエーターは奇数段・偶数段のクラッチと、同じく二つの変速機構。

どうやってこの4つの要素を動かしてあげるかって話になるんだけど…
ここでVWは比較的慎重なアプローチをとってきた。
というのも繊細な制御が要求されるクラッチを、MTや湿式DCTで実績がある油圧駆動にとどめたのだ。

MTと同じく油圧をスレーブシリンダーに与え、シリンダーがリリースフォークを押すことでクラッチが契合・開放する構造。

クラッチで油圧を使うなら、他のモノを油圧で動かしたってそんな変わらない。だから変速機構も油圧駆動。
そのうえで、その油圧を電動モーターで作ることで、必要に応じて動かせるようにする。

つまり駆動エネルギーのお財布を、電気っていう共通の口座に揃えるだけの設計に留めたのだ。
逆に言えば「電気エネルギーを、ポンプで油圧に変換する」という損失まで取り切る構造にはなってないのね。

それでも常時駆動のオイルポンプが無い、この点ではオイルポンプが外せないプラネタリーATに対して優勢。
その上で既に量産してる湿式と機構を揃えるっていうのは、開発の上でも生産の上でも、MTを引きずるDCTにとっては変な話ではないのかもしれないけどね。

―――

だからこそ、そこを更に攻める人も出てきた。それがライバルのゲトラグが仕立ててきた6DCT250。
彼らは、クラッチもシフトフォークも、全部を電動駆動にしてきたのだ。


その構造は、下記のページが良くまとまってるんで引用させてもらうんだケド
Ford PowerShift Dual-Clutch Transmission (DCT) - A Technical Overview

全部をエレキ仕掛けにする上で、一番大きな変化点になるのがクラッチの駆動方法。
ゲトラグは、リリースフォークの支点をウォームギアを介した機構でズラすことで、クラッチが契合・開放される仕掛けを仕立ててきた。これならモーターでクラッチを直動できるから、その点での損失はゼロにできる。

とはいえ、エレキ仕掛けにすることでの難しさだって当然あるのね。それがフェールセーフの考え方。

MTの場合、何かが壊れてクラッチが繋がりっぱなしになっちゃっても、一発アウトってことはまずない。
普通の駆動状態に戻るだけだから、そこからトルクを抜いてギアを抜くなり、エンストさせるなりすればいい。

でもDCTの場合、反対側のギアセットが駆動してる時に、もう片方のクラッチが繋がっちゃったら
ギアがインターロックしてミッションが粉々になっちゃう。
だからDCTはベースのMTと違って、何かあったら必ずクラッチ開放にならなきゃいけないのだ。

油圧駆動ならソレノイドバルブ開放で済む話を、この大きなエレキ・アクチュエーターでやらないといけない。
だから6DCT250も未通電時はクラッチ開放状態で、通電してリターンスプリングを潰して契合する構造。
クラッチ契合時は常時通電されてる状態になるんだけど、その時の駆動電流が大きいと燃費メリットが目減っちゃうから、フォークにはダイアフラムスプリングと逆向きにテンションを加えるスプリングを付けてカバーする。

電動かつ消費電流を抑えたうえでどうやって実現するか。そんな悩みが伝わってくる構造になってるのね。


でもその結果として、6DCT250は燃費にとっても変速自由度にとっても理想ともいえるパッケージにできた。

車体から与えられる電力だけを元手に、必要最小限のタイミングで、必要なアクチュエーターだけを動かす。
しかも完全電気駆動だから、停止中や走行中のアイドルストップとも親和性も高い。

その上で、車体側とは特別な接続は一切なく、ハーネスを繋ぎかえるだけでMTの代わりに搭載できて
余計な水回路も油回路もなし。ギアオイル以外の専用オイルメンテナンスも不要。

ある意味、商品としてのDCTの理想を突き詰めた形だよね。
ゲトラグっていう、ミッション専業メーカーの意地とプライドみたいなDCT。

―――

こうして生まれた、燃費のための乾式クラッチDCT。

自分には、同じDCTなのに、トランスミッションの進化の流れにおいて
変速速度を追い求めた湿式クラッチDCTとは違う、まったく新しい系統樹に分岐しつつあるように見える。


でもその一方で、DCTが元来内包する欠点、それを補える物体になっていないのも事実。

湿式時代からDCTが苦手としていた発進時のコントロールは、乾式クラッチで当然ながら厳しくなった。

それに本来の利点だった変速速度にしても、冷却が厳しい乾式クラッチを使う以上
あまり派手な回転合わせをやると熱で厳しくなるから、どうしても妥協は生まれてくる。

6DCT250を使うフィエスタに乗っても、変速の早さにおいて明確なメリットがあるとは言いづらい。
マツダを引き合いに出すまでもなく、最近のプラネタリーATには敵わない、あくまでも普通なレベル。
エンジンが3気筒で回転変動を抑える大き目なフライホイールが付いてるのは事実だけど
その観点で言えばもっと厳しいハズの308と比較したって、やはり変速速度が早いとは思えない。


でもそれは、もともとの目的が違うからなのだよね。

そもそもプラネタリーATがトルコンを使い続けてるのは、それが発進時に一番向いたデバイスだからで
それを別の手法で補う以上、そこにデメリットが生じるのは仕方がない話。
変速速度にしても、そこをある程度で抑えたからこそ、MTに匹敵する伝達効率を達成できた。


だから本来は0km/hからの発進が少なく、強めの加減速と一定巡行がメインの欧州市場において
過給ダウンサイズエンジンと組み合わせることでこそ生きるミッション。それが乾式クラッチDCT。

ダウンサイズターボの利得である一定巡行時の高燃費を阻害しない、非常に高い伝達効率。
ダウンサイズターボの欠点であるターボラグを補うための、ある程度の変速速度。

DCTが素性として持つ利点を犠牲にせず、低コスト・軽量って更なるメリットを積み重ねたミッション。

それは

「MTという現有資産を活かしながらプラネタリーATと戦う」

という紛うことなきメーカー都合の物体ではあったケド、それと同時にDCTの利点を殺さず
求められた1点において着実に進化した、理に適ったトランスミッションでもあると思うのだ。

―――


・・
・・・

…だからこそ、そこを取り違えたからこそ、冒頭のような組み合わせの不幸もおきる。

0km/hからの発進加速が重視される北米市場で、それを一番苦手とする乾式クラッチDCTを使ってしまう。
物として一番苦手な環境に置かれるわけで、その受容性において苦戦するのはある意味当然の話。

それはこれは別にフォードに限った話ではなくて
VWは同じく発進加速が要求される中国にDQ200を投入、大量の市場問題を抱えてる状態だったりする。

フィエスタと同じ6DCT250を、クリオRSというスポーツモデルに投入してしまったルノーは
販売当初から、欧州各所で変速速度に対して突っ込まれては
 「マイチェンで対応した」「全然足りない」
なんてやってたりする。


…だからこそ、同じようにゲトラグの新型DCTの話だって出てくる。

2015年にゲトラグが発表した6DCT200は、表向きは6DCT250の後継な位置づけになってはいたけれど
その中身は湿式クラッチを用いた全く別物のトランスミッション。
中国・アメリカ市場に向けた発進性能を確保しつつ、プラネタリーATでは敵わない軽量・コンパクトなATを作る。

そのためには、6DCT250で作りあげた理想のフォーマットを投げ捨て、湿式クラッチに油圧回路を使う。
増える損失には目をつぶり、増える重量は吸収トルクを下げることで相殺する。


でもそれって、自分には理想からの後退に見える。自分にはね。
一度は完成したものに対し、メーカー都合をより深く刻み込んだ、中途半端なミッション。

―――

だからね、自分は今回、フィエスタの6DCT250を改めて見直したのだ。

湿式クラッチDCTの、スポーツ走行における良さ・楽しさっていうのは、自分もR35 GT-RとかM3 DCTとかで
何度も感じたコトがあるから、ちょっとは知ってるつもり。

でもフィエスタの乾式DCTはそれとは違う、存在する意味が違う。
別の世界で理想を究極なまでに求めたミッションだった、それが解ったから。

変速にキレがない理由も、今ならちょっとは愛しく思える、かな。
Posted at 2017/06/17 23:43:04 | コメント(7) | トラックバック(0) | 雑記:ミッション | 日記
2017年04月02日 イイね!

NSXのV10について紐解いてみる

NSXのV10について紐解いてみる最近は積み本の片づけを進めてるんだケド、その中にあったMTZの新型NSX 技術紹介を読んでたら、巻末にふと気になる参考文献があった。

"Development of V10 500-HP Engine Technologies for High-performance and Low-emission Clean Powertrain."

んー?って思って出典元と見たら

"In : Honda Technical Review, Vol.22(2010),No.2"

えっ、これってあの中止になったNSX後継車のV10だよね?って。そんな情報が公開されてたのん?って
Honda Technical Reviewのサイトに行ったら、本当に載ってる…

Technical Review e-Book ホーム
https://www.hondarandd.jp/?lang=jp
Vol.22(2010) No.2内ね。添付画像もこれを参照させてもらってる。


見つけたのが深夜だったせいで寝れなくなっちゃったんだケド、勢いでこのエンジンを紐解いてたから
世の中に出なかったこのV10の、自分的にとっても興味深い立ち位置に気が付いたのね。

もともとこのエンジンは、2009年あたりに世に出る予定だったみたいだから、ライバルはM6やガヤルド、LFA。
その手合いが積む大排気量マルチシリンダーは、よく「一品仕立て」「F1テクノロジー!」的単語で語られるのに対し、ホンダエンジンはそれまで、あくまでその対極に近い「最強の量産エンジン」であり続けてきた。

だからそんな二つの世界が合わさった時、それはどんなエンジンになるのか。
そんな個人的な疑問に対して、このエンジンは期待を裏切らない、興味深いエンジンになってたのだ。

―――

まずは皆が知ってるV10ってエンジン形式以外の、基本的な諸元はこちら。

V10のバンク角は90°。これは普通のクランクで作ると点火が不等間隔になっちゃうケド
1次振動がキャンセルされるしクランク剛性が確保できるから、高回転側で利得が出ると言われてる構成。
先行するM5や中期以降のガヤルドのV10、もっと言えばV10時代のF1と同じ構成だね。

その腰下につながるクランクシャフトは、ホンダエンジンである以上はデフォルトの鍛造。
隣り合うコンロッドピンが同じジャーナルを使うオフセットレス、つまりM5と一緒の構成だね。
そこに繋がるコンロッドも初代NSXが先鞭をつけたチタンに、鍛造ピストンの構成。

ヘッド側の基本構成は特に記載がないけど、バルブシートは通常の別体品圧入ではなく
当時のF1で使われてたレーザークラッド式を使うコトで、シート径の拡大とポート形状の自由度を上げる。
 #これは10年後の今、トヨタがやっと他メーカーに先駆け大量生産技術をモノにした技術。

そこに組まれるバルブトレインは当然ながら自家薬籠中のDOHC VTEC。
ここにホンダはフラッグシップエンジンらしく、さらに気筒休止という一手間まで仕込んできた。
片バンクを3ステージにすることで、燃費測定モード中は片バンクを停止させて2.5L L5で走り切る。
まさに今のダウンサイジングターボと同じ考え方だね。

とはいえ後だしである以上、燃費で勝ってパワーで負けるじゃ意味がないワケで。
ボアストを綺麗なショートストロークに設定し、カットオフ回転はM5やガヤルドを上回る8500rpm。
その直前、8200rpmで発生する出力は550馬力。

このエンジンが世に出るハズだったのは2009年とか2010年とかで言うと、ライバルになるハズだった
F430の490馬力、ガヤルドの520馬力、M5の507馬力をサラッと上回り、LFAの560馬力と伍する性能。

このエンジンが乗るNSXは、まさにそういう手合いを相手にするハズだった車。
後出しでV10を世に問う以上、当時、エンジン屋で名を売ってたホンダとしては絶対に負けるワケにはいかない。
エンジンの額面の時点でも、ちゃんとそういう位置づけになってる。

―――

そして、そんなホンダの意地と想いを数字以上に表しているのが、その出力特性なのだ。
それはS2000のF20Cを彷彿とさせる、とっても解りやすい突き抜けるような高回転型。

他の二台のトルクが、ピークの6000rpmを境にお辞儀し始めるのを尻目に、ハイカムに切り替われば
そこから先は一気にパワーピークの8000rpmまで回り切って、そこからレブリミットまでも馬力が殆ど垂れない。
まさに昔ながらのDOHC VTECエンジンの特性を綺麗に転写してるのだ。

でもね、これを同じく高回転型を謳うLFAのV10と比較すると、このエンジンの別の面が見えてくる。

200ccという排気量の差はあるにせよ、低回転トルクで圧倒的に上回るのはリフト可変できるVTECの面目躍如。
ちゃんと感性に訴える右肩あがりでありつつも、中間加速の領域からトルクを十全に確保してある。

逆にカットオフが1000rpmが高いLFAは、同じ回転数でトルクピークを持ちながらそこからトルクが垂れない。
NSXの馬力の伸び方もロングストロークのガヤルドを寄せ付けず、M5に対して決して負けていないのだケド
それでもLFAの伸び方には敵わない。この点、ドライサンプでポンピングロスが有利な点が効いてるように見える。

で、そうなのだ。 このV10はウェットサンプ。
端的な出力特性だけでなく、その1点がこのV10の「ホンダエンジンらしさ」に繋がっていくと自分は思うのね。

―――

ウェットサンプである理由は、たぶんだけど単純なパッケージ上の話。

ライバルの1台であるガヤルドがドライサンプなのは、エンジンがミッドシップ搭載だから。
ミッドシップはエンジンの直下に何も物がないから、下げようと思えばクランクセンターを下げるのは容易いし
だからこそ、高回転出力以外にもドライサンプにするメリットがある。
 # だからこそ旧RS4のV8はウェットサンプで、同じエンジンがR8だとドライサンプになる。
 # 細かいところは、昔書いたここら辺
 # 918スパイダーのパッケージと、プラグインハイブリッドである意味

でも当時発表されてた情報や、目撃されてた試作車を踏まえると、当時のNSXはフロントエンジンの4WD。
つまりエンジンの下にはフロントデフが居座る可能性が高い。それは技術紹介の画像でも伺えて

1列、2列目の下の空間がフロントデフで、5列目の下がステアリングラックのように見える。

これは同じフロントエンジンのM5でも一緒の話。
M5はFRだけれど、やはり実用車の車台を使う関係上、エンジン+ミッションの搭載位置を後方に引けない。
結果として前引きステアリングラックが回避できないから、クランクセンターが下がらずウェットサンプなのだ。
# オイル回収用の追加ポンプを追加はしてるケド、クランクケースは正圧のままだから実質ウェットサンプ。


でもね、同じフロントエンジンのLFAはちゃんとドライサンプにしてる。
それができた理由はLFAがミッションをトランスアクスル化して、エンジン搭載位置を後ろに下げてたから。
しかもステアリングラックの次に壁になるクラッチ径に対しても、エンジン出力軸を一次減速で持ち上げるっていう鮮やかなソリューションで逃げることで、ちゃんとエンジン高を下げられるパッケージを構築してる。

NSXは資料の画像を見る限り普通のミッション位置だから、M5と同じジレンマから逃げられなかったんだろうね。
トランスアクスルにしちゃうとGT-Rのようなパッケージが必要になるし、そもそもフロントデフがある以上
結局はクランクセンターが下げられないから利得がないワケで。

逆にウェットサンプだからこそ、エンジン側は死ぬほど頑張ってるとも言えるのだ。
だってNSXのV10は、それでも高回転の出力特性の垂れ方がガヤルドに負けてない。ショートストロークとはいえ。

そういう前提条件の不利をかこちつつも、ちゃんと磨き上げた要素技術でそれを跳ね返す。
そういう点は、ある意味ほかのホンダエンジンとも一緒に見える。

―――

そういう点は他にも見える。例えば最初にも上げたバンク角。

確かに90°というバンク角は、高回転側での振動に優位性があるケド、反面エンジン全幅が増えるネガがある。
しかもミッドシップのガヤルドと違って、当時のNSXはフロントエンジン。
エンジンを左右のストラットタワーの間に収める以上、全幅が際限なく増えるのは非常に困る。
だからこそ同じフロントエンジンのLFAは、排気系のレイアウトをおもんばかってバンク角を72°に狭めたんだし
E60 M5はフロントサスがそもそもストラット、かつバルブ駆動を直打にしてヘッド廻りをコンパクトにしてきた。

それに対して、当時のホンダはダブルウィッシュボーンのフロントサスがアイデンティティ。
当然ながらストラットタワーは肥大化するし、エンジンにしてもVTECを使うホンダは、バルブ駆動にスイングアームが必要な以上、ヘッドだって肥大化する一方のハズ。

でもそれに対しホンダは90°でなきゃいけなかった理由を残してる。それがV8との生産設備の共用化。
バンク角に自由度があるV10に対し、V8はクロスプレーンクランクを使う以上90°のバンク角がマスト。
そのV8と生産設備を共用化する以上、バンク角は90°じゃないとダメだったんだと思うのだ。

LFAと違い、NSXのためとはいえ、完全新規でゼロからのエンジンを起こせない事情。
ゼロから理想のエンジンを作るのではなく、量産ライン・量産エンジンとしての成立性を踏まえた設計。

S2000のF20CがK20Aと同じボアピッチを持つように。
CTRのB16Bが、ブロックそのものの基本設計はゲタ車のシビックに足がかりを持つように。
量産設計を足がかりに、勝手にやれることを入れ込んで魔改造していく。そんなホンダらしさが抜けない。

―――

でね、そんなホンダらしさが一番出てると言えるのが、10連スロットルの仕立てになるんだと思う。

このエンジンは、ホンダがとうとう重い腰を上げて投入してきた多連スロットルが付いてる。
ライバルのガヤルドが片バンク1個の2連スロットルだったから、シングルという選択肢もあったと思うんだケド
今回は先行するM5が既に10連スロットルを使ってた。それに対する意地があったんだろうね。

ちなみにトヨタが4AGですら多連化してた当時、ホンダはS2000でもシングルスロットルに拘ってたんだケド
これにしても、理由なくシングルスロットルに拘ってたワケじゃない。

スロットルは斜板で吸入空気量を絞る部品。
それを複数持つってことは、それぞれの物のバラつき次第で、各気筒の吸入空気量が変わるってコト。
各気筒の吸入空気量が変わるってことは、各気筒に同じ燃料を噴いても、気筒毎に空燃比が変わっちゃうってコト。
つまり調整を万全に行えないと、触媒が十全に機能しなくなっちゃうのだ。

触媒が十全に機能しないと、当然ながら排ガスはどんどん悪くなる。
エミッション法規がザルだった昔ならさておき、S2000はカリフォルニアでLEV認定を視野に入れてた仕様。
そんなエンジンの排ガスがフェラーリみたいなザル仕様じゃ困るっていう話で。


閑話休題。

そんな多連スロットル特有の悩みだケド、Mは部品単位で強烈に検査精度を上げて、組み付け後調整をして出荷。
LFAも同じく部品レベルで精度を上げ、それでも補えない分は微小な連通管を付けて対応してる。
ホンダだって、高級車だからって割り切れば、そういう手段だって取れたハズ。
でも彼らはそういう小手先の手段を取らなかったのだ。彼らはあくまで量産ラインで普通に作れる仕様に拘った。

彼らがとった手法はLFAの手法をもっとドラスティックに進化させたもの。
簡単に言えば、街中は2連スロットル。全開時は10連スロットルになるっていう凝った設計を取ったのだ。

全開全負荷の時は独立スロットルで吸気量制御をするんだケド、それが動くのは大開度を要求された時のみ。
アイドリングから街中走行の領域では、気筒間バラツキが出かねない独立スロットルは閉じちゃう。
当然そのままだとエンジンはエンストしちゃうから、独立スロットル下流に連通管を通じた別経路を設けて
そちらにプライマリースロットルを付けて吸気量制御を行う。

これならプライマリースロットルは2.5L 5気筒を制御するようなものだから、要求精度が普通でも対応できる。

ガヤルドのようにシングルスロットルに逃げることをせず、M5のように力技で成立させたりもしない。
ちゃんと量産できる仕様で、ちゃんと生涯にわたって性能を保証できる仕様で構築する。
こういう愚直さが、やっぱりホンダの量産エンジンみたい。

―――

だから自分はこのV10が、BMW・VW・ヤマハと同じ諸元を持ちながら、ホンダらしいエンジンだと思ったのだ。

フラッグシップとして気筒休止まで盛り込み、出力・燃費の双方において言い訳無しの性能を狙う。
そのコンセプト自体がS2000の延長線上だし、気筒休止を追加したDOHCの3ステージVTECは当時初。
そういう意味では、安全杯なVTECにならざるを得なかった初代NSXの正当な後継者。


そしてV8との設備共通化や4WDというパッケージングの制約を被りつつ、できるコトをすべて入れ込んでいく。
BMWのM5がウェットサンプだから、同じ土俵では絶対に負けない。
BMWのM5が10連スロットルだから、それに見劣りするような仕様には絶対にしない。
そのうえでちゃんと量産ラインで作れて、生涯にわたってメンテフリーで走れる仕様を崩さない。

結果としてBMWが正統派な作り、LFAがゼロからのパッケージングでコンパクトなエンジンを狙ったのに対し
ガタイが大きくて重いけど、確実に出力を出して、それをいつでも使えるエンジンになったように見える。

つまり4AGに対するB16B、2ZZに対するK20A。それをマルチシリンダーでやった。
レース屋が作った量産エンジンじゃない。量産エンジン屋が作った最強スポーツエンジン。


確かに重いしデカいし、ドライサンプ!や9000rpm越え!みたいなスペック上の魅力はないかもしれない。
確かにこれがミッドシップで、言い訳無しの最強エンジンだったら、とも思わないでもないよ?

でも、それでも!
たとえ走行距離が20万キロを超えようが、ちゃんとオイルメンテさえしておけば、ハイカムに入った瞬間から
突如変わるエンジン音とともに、一気呵成に8500rpmまで、まさに脳天まで突き抜けるように回りきるハズ。
その1点においては、間違いなくハズしてない。

マルチシリンダーや気筒休止、多連スロットルといった新要素こそ加わってるけれど、そんな根っこは一緒。
タイプRやS2000で入ったファンに対して、Nothing less, only more、同じ世界観の中で最強のものを提示する。

そういう意味では正当な「ホンダの」DOHC VTECのフラッグシップエンジンしてるし
それが当時は、ちゃんとラインナップとして下から上まで一気通貫で完成してた。

それってBMWやVW、ヤマハじゃ作れなかった、ある意味オンリーワンの世界になりえたんじゃないかな?って。
そう思うのだ。
Posted at 2017/04/02 12:36:01 | コメント(3) | トラックバック(0) | 雑記:エンジン | 日記
2017年03月19日 イイね!

VWがEA189に託した、見果てぬ夢 : その2

VWがEA189に託した、見果てぬ夢 : その2VWがEA189に託した、見果てぬ夢 : その1

そうやってベースエンジンのポテンシャルを当時最強まで持ち上げたうえで、アメリカのTier2規制に適合させる。

しかも肝心なのは、Bin5カテゴリーに対して適合させるということ。 
Tier2規制はBinというカテゴリーでエミッション法規の厳しさが変わるんだケド、その中央値がBin5。ガソリン含めたメーカー全体の販売総数平均で、このBin5に入れなきゃいけない。

だからこそ、どのカテゴリーに入るかがそのメーカーの技術力の証明だったのだ。 ガソリンと同じレベル。借金を背負わないBin5に「ディーゼルで」入れる。それをだれが一番乗りするか。


しかも自体は一刻を争う。
コンサル・サプライヤー含めた欧州連合軍による戦略ということは、必然的に他のメーカーだって呉越同舟。

既にライバルのメルセデスはNOx吸蔵触媒を備えたV6で、Tier2を見据えた仕様をアメリカに導入してた。
当時はBin8だったケド、次世代は尿素SCRでBin5適合できると公言して憚らない。

http://www.motortrend.com/cars/bmw/3-series/2009/2009-bmw-335d-verdict/
BMWも自家薬籠中の直列6気筒に尿素SCRを組み合わせてBin5適合。走りでアメリカに打って出ようとしてるとの噂。

コンサルを通じて話を聞きつけたのか、ヒュンダイまでもヴェラクルーズのV6ディーゼルをUS投入するかもと発表。


しかも当時の欧州ディーゼルでイケイケ、一人気を吐いてたホンダがさらにぶっこんできた。

次世代のエンジンでは尿素SCRに頼らず、NOx吸蔵触媒でBin5適合し、売りに出すだけと各所にPRしたのだ。

尿素SCRは、燃料とは別に尿素タンクを持ち、専用のインジェクターを持つ非常にコストがかかるシステム。
それに頼らずBin5に入れるっていう事は、コストを抑えた量販車に対してもディーゼル普及が見込めるという事。
アメリカ市場が生命線の、ホンダらしい戦略。


こんな状況だからこそ、歴代Jettaにディーゼルエンジンを設定し続け
自らこそがアメリカにおけるディーゼルエンジンのSpearheadと公言して憚らないVWにとって
Bin5 量販車一番乗りはプライドに掛けても守りたい一線だったと思うのだ。

―――

そんなEA189のアメリカ仕様。注目の後処理仕様は、ホンダと同じNOx吸蔵触媒。
でもVWはそれにとどまらなかった。


NOx吸蔵触媒は凄く簡単に言えば、NOxのDPFみたいなモノ。すすの代わりにNOxを吸着してると思えばいいかな。
ただし、そのままだと溜め込んだNOxが溢れちゃうので、DPFと同じように適当なタイミングで燃料を送り込んで
ため込んだNOxを還元することで成り立ってる。
逆に言えば、この還元剤を燃料じゃなくて尿素でやってるのが尿素SCRだと思えばいい。

燃料を使うから、尿素SCRみたいな別体タンクが必要にならない代わり、その制御は複雑怪奇。
今でこそマツダのディーゼルでみんな知ってるように、後処理のためにトルクにならない燃料を噴くって事は
燃費に直接影響するし、オイルのダイリューションみたいな心配事も出る。

触媒だって温度を上げないと還元できないけど、温度が上がりすぎると劣化するし
そうじゃなくても、飛んできた燃料に含まれる硫黄で勝手に劣化しちゃうって問題もある。
これを防ぐためには、やっぱり昇温して硫黄を飛ばす、なんてメンドクサイ対応まで必要。

だからね、いくら安いとはいえ、それに頼り切るのが難しい。
だからこそ、VWはそれに頼り切らないエンジンの仕様を徹底する必要があった。

―――

だからこそVWが採用したのが、乗用車ディーゼル世界初になる低圧EGR。

後処理が生涯において信頼できない可能性がある以上、エンジン上での燃焼を徹底的に突き詰める必要がある。
ディーゼルにおいて厳しいNOxを叩くためには、燃焼温度を下げたい。そのためにはEGR量を増やさなきゃいけない。

でもコトはそんなに簡単じゃない。
だって達成したいのはEGRを増やすことじゃなくて、綺麗に「燃やす」ことだから。
綺麗に燃やすためには、綺麗に空気と混ぜる必要がある。そのためには新気の量を減らすワケにはいかない。
で、綺麗に混ぜて燃やすためには、勝手に早く着火されても困る。だから新気の温度だって上げられない。

だから単純にEGRを増やすんじゃなく、新気をそのままにEGR量だけ「上乗せして」あげるコトが必要なのだ。
しかもその時に吸気の温度が上がらないように。

とはいえ、欧州仕様のEGRはターボの前で取り出す仕様。単純にEGRを増やすってコトは、ターボに向かう排気が減っちゃうってコト。ターボが回らないと肝心の新気まで減っちゃうから、燃焼がどんどん悪くなっちゃう。


それを解決するのが低圧EGRなのだ。
だって問題はターボの上流でEGRを抜くことなんだから、単純にターボ下流でEGRを抜けばターボはちゃんと回せる。

しかもそのEGRをターボのコンプレッサー上流に合流させれば、合流したEGRは大きなインタークーラーで
冷却できるから、大仰なEGRクーラーを付けなくてもちゃんと冷やせて、吸気温度が上がらない。
しかもDPFを抜けた排気は煤が取れて綺麗な状態なんだから、クーラーの詰まりだって気にしなくていい。

誰もが思いついたその発想を、VWは世界で初めて乗用車に持ってきた。

―――

でも、当然誰もが思いつくってコトは、それを形にすることに難しさがあるってコト。
たとえコンセプトそのものは欧州コンサルが前から味見していたとしても、それを物にするのは違う話。

だからこそVWはこれを物にするために非常に苦心した様子が伺えるのだ。

そもそもEGRは燃焼後の排ガス。だからそこにはDPFを抜けた微細なゴミや、硫黄を始めとする嫌らしい成分が混じってるワケで、そんなものをコンプレッサーに回したら、当然ブレードが削れるわ腐食するわの大騒ぎになっちゃう。

なのでまずVWは、異物を排除するためにEGR取り出し口の形状をさんざパラスタして、ガスだけを綺麗に抜き取れる形状を作り、さらにゴミを分離するために独自のフィルターまで経路中に設定した。
それでも避けられない異物混入や腐食に対しては、ターボメーカーと共同で、タービンホイールやハウジングの表面処理まで新開発して対策する。

それにDPF後で抜いてターボ前に入れる低圧EGRは、EGR経路がとっても長くなってEGRのレスポンスが問題になる。だからVWは従来の高圧EGR経路も残してるんだけど、これは入れたいEGR量に対して、2種類の経路を自在に使って制御しなきゃいけないってコト。
だからVWはボッシュと組んで専用の制御プログラムを開発、モデルベース制御でコントロールできるようにする。

それに改良点はそれだけに留まらず、出力を低出力仕様のみに限定することで、インジェクターの仕様も最適化。
それを生涯にわたって保障するために、筒内圧センサーを仕込んだグロープラグをメーカーと新開発。
その値までもボッシュの制御システムに組み込むことで、燃焼制御を生涯にわたって高精度化する。

そうやって微に入り細を穿つ改善を積み重ねることで、後処理だけに依存しない燃焼制御を構築していった上で、肝心のNOx吸蔵触媒も触媒メーカーと共同で、硫黄を飛ばし易く劣化しづらい、当時最先端のものを導入。


全ての観点が単純にVWだけじゃない、コンサル・部品メーカーまでも取り込んだ欧州連合軍での開発体制。
そこまでして、VWはBin5適合のディーゼルエンジン開発に取り組んでいったのだ。

そんなVWのプライドを背負わされたEA189のアメリカ仕様は、2008年に発表される。
Bin5一番乗りこそメルセデスに奪われたものの、量販車としては初のBin5適合だったハズだった。

しかもそれは尿素SCRに頼らない、自分のケツを自分だけでまくる後処理だけでの適合。
軽油以外のものに頼らず、燃焼そのものを限界まで磨き上げるという最強の理想に対して
自動車メーカー・部品サプライヤー・コンサルの欧州連合軍で挑んだ、一つのカタチだったと思うのだ。

そしてそれが、ディフィートしないとBin5適合できない実力でしかなかった。

―――

だからこそ後から思えば、あの時代はそういう理想の終着点だったと思うの。

世界初の乗用車用コモンレールが、10年も経たずしてあれだけの進化を遂げたっていう事。
たとえ最初は欧州連合のCO2戦略だったとしても、その進化を支えた欧州の技術者には
間違いなくディーゼルに対する夢があった。

当時からEUの戦略にあったとはいえ、ガソリンのダウンサイズターボなんて、ある意味ディーゼルの模倣。
燃費じゃガソリンはディーゼルに絶対に勝てないという自負。それを全世界展開してやるっていうプライド。

US Tier2 Bin5。これが達成できれば、全世界で言い訳なくディーゼルが販売できる。
だからこそ、我こそが絶対に物にしてやるっていう熱気があったように思える。

それが2008年 Bin5っていう意味だった。


SCRに頼らず、自身で吸収できる上限でBin5を越える。てめぇが出したものの不始末はてめぇでやる。
ある種崇高な理想だけど、それを燃費という存在意義を捨ててまでも達成できなかった。

ホンダも早々に離脱した。
マツダも後処理無しで導入するっていう宣言から5年経ち、最終的に販売されるCX-5には尿素SCRが付いてた。

そしてこれ以降のディーゼルは、実質、EA189が作ったテンプレをなぞってるだけにすら見える。
Sky-Dというチャレンジャーは出たけど、それもBin5の壁は越えられなかった。
当座のEuro6を後処理無しで適合し、あとの将来はすべてを尿素SCRにうっちゃって、燃費に振った適合で逃げる。
負け犬の戦だよね、たぶん。 ディーゼルの存在意義として、そこまでやらないとダメって。


だからあれが、一つの理想の終着点だったのかもしれない、って。

偽装の是非だとかそういう物とは全く別に、2008年のBin5はそういう空気だったんだって。
それだけを、とっても個人的な理由だケド、どうしても残しておきたかったの。
Posted at 2017/03/19 19:51:10 | コメント(4) | トラックバック(0) | 雑記:環境/燃費 | 日記
2017年03月19日 イイね!

VWがEA189に託した、見果てぬ夢 : その1

VWがEA189に託した、見果てぬ夢 : その1ごめんね、時間がなくて久々のその1・その2構成。しかもその2はまた完全には書きあがってない。
でもその1は今残すことの方が意味があるかな、って思ったので先行でアップしてみるね。

Mar.19 19:50
意外と早くまとまった : VWがEA189に託した、見果てぬ夢 : その2

―――

今年初めの1月7日。
アメリカにおいてVWが発表したのが、4気筒ディーゼルに対する法規適合のリコール対策。Dieselgateなんて名前まで付けられ、あれだけ炎上した当初とは裏腹に、あまりにひっそりと発表されたので、自分は完全に見逃してた。


もともとこのDieselgateにおける判決で、VWが認められた選択肢は三つあるのね。

一つは、現車を所有しているユーザーが希望した場合、Buy back、つまり買い戻しを行うこと
二つは、リース中のユーザーが希望した場合、無条件でのリース契約終了を認めること。
そして最後が、継続して乗り続ける事を希望したユーザーの車両に、法規適合する改修を行うこと。

バイバックにしてもリース打ち切りにしても、VWが引き取る車両は当然ながら法規未適合なワケで。
つまりそのままじゃスクラップにしかできない。そうなるとVWの被る損失はとっても大きくなる。

だからこそ、この発表がなされた去年の10月以降、世間が注目したのがVWの法規適合改修内容だったのね。

ここで法規適合できるようになるハード・制御こそが、本来のVWディーゼルのエミッション実力なわけで
これで改修案が提示できなかったら、それはすなわち元々法規不適合な実力だったっていうコト。

今までディーゼルでアタマ張ってたVWにとって、まさに正念場と言える状況になった。

―――

当然ながらEPAはVWの損失が膨らもうが知ったコトじゃないワケで
この法規適合改修はあくまでも「やりたければ勝手にどうぞ」のスタンス。
VWから改修案をEPAに提示して「問題が無ければ」承認されるという流れになる。

しかもこの改修案が2015年のリコールみたいなインチキだったりすると、既に危ういEPAのメンツが
今度こそ完膚なきまで丸つぶれになっちゃう。しかも対象となるエンジンが3世代に跨るってこともあって
改修案の提示期限はそれぞれ世代・ハードごとに明確に決められてて、そこからEPAが十分に期間を取って、厳密に試験できるようになってる。

具体的な内容はVWの特別サイト VWCourtSettlementにまとめられてるケド、簡単に言えば
世代が一番新しく、法規適合が容易な(ハズの)現行MDBエンジンから始まり、旧世代に遡る順番だね。

Volkswagen/Audi 2.0L Diesel Emissions Settlement Program
FAQ → Emission Modification → When will the emission modification be available for my vehicle?

―――

で、そのまさにとっかかりになる、MDBエンジンの改修内容がEPAに承認されたのが1月7日。

でもね、その内容が衝撃的だった。

Gen3 Emission Modification Disclosure (PDF)
https://www.vwcourtsettlement.com/en/docs/emissions/Gen3_Emissions_Modification_Disclosure_Volkswagen.pdf


VWが提示した内容は下記 (関係する部位のみ抜粋)

・Stage1としてソフトウェアアップデートを行い、ディフィートデバイス無効化と法規適合マップへの書き換え。
 これによる燃費・信頼性・耐久性・性能・ドライバビリティ・挙動への顕著な影響は発生しない。
 ただし冷間時のエンジン音に対する微小な変化が発生する可能性はある。

 走行パターンによるがDEF(Diesel Exhaust Fluid、アメリカでのAdblue:尿素水の呼称)消費量は最大14%増加。

・2018年初頭から、Stage2としてハードウェアアップデートを行う。
 ATは40000マイル、MTは70000マイルに到達したタイミングで、DPF・酸化触媒・選択還元触媒を交換する。

 もし2019年6月30日までに上記距離に到達しない場合、このタイミングで部品交換を行うが
 この場合は保障距離である150000マイル到達前に、再度の部品交換が必要となる。


Stage2で交換するDPF・酸化触媒・選択還元触媒というのは、実質にエンジン後処理系の全部品。

簡単に言えば、現量産車は法規適合するエンジンマップで運転すると40000マイルで後処理系がダメになる。
つまりは「実力的には法規不適合車でした」と暗に認めてきたのだ。

―――

確かにね、今回の議題の観点の一つはRDEというリアルワールドでの排ガス性能。明文化された基準がない以上は
一回はコケにされたEPA/CARBが必要以上に厳しく見てる可能性だって否定できなくはないよ?

でもそれに対して、VWをこのレベルで手打ちにしたという事実は揺るがない。
しかもこれはエンジン性能的には一番有利なハズのMDB、つまりはVWの最新世代エンジンでの結果。
という事は、今年1月末にEPAに改修案を提出しているハズの旧世代型、EA189はさらに厳しい立場になるハズ。

そんな改修案と、EPAの判断はおそらく今月~来月あたりに下されると思う。


でね、そんな今だからこそ、自分はこのEA189と、この子が生まれた時代の空気を残しておきたいって思ったの。
改修案の承認が出るまで、あと1か月かそこらもない。そもそも改修案の承認が下りるかも怪しいかもしれない。
でも、だからこそ今。

確かにディフィートプログラムの存在は否定できない悪手だし、エミッション実力はBin5非適合の可能性が高い。

でも自分は、このエンジンが巷で言われてるような「引退直前の」エンジンを、アメリカ人に押し付けるために魔改造した物だとは思えない。 それどころかこのエンジンは当時のVW、ひいては欧州連合軍のOEM・サプライヤーのディーゼルに対する期待と夢を背負った、それぐらいのエンジンだったと自分は思うのだ。

―――

そんなEA189が生まれるちょっと前の2005年ごろ。VWはちょっとした問題の中にいた。


日本でディーゼル礼賛が始まり、日産エクストレイルで幻想が崩される前のこの時期。
欧州のボリュームゾーンでディーゼルを牽引していたのが、過去に触れたPSA・フォード連合とFiat・GM連合。

Fiatは1.3Lのマルチジェットでコモンレールを乗用車に導入した後、GM(いすゞ)と組み1.7L/1.9Lをラインナップ。
PSAもデビューの1.4Lを1.6Lまで拡大すると同時に2.0L版を開発、実用車のコモンレール化を早々に完了。
それに対して欧州王者のVWは、実は当時手持ちのコモンレールディーゼルはアウディ用のV6のみ。

肝心の量販車の主力ユニットはPumpe Dose、いわゆるユニットインジェクターを使ったEA188が担ってたのだ。

当時の排ガス規制はEuro3がEuro4になる時期。要求される最低の噴射パターンは2段噴射ぐらい。
それぐらいならユニットインジェクターでも噴けるし、燃料の噴射圧力はコモンレールより上げやすいという
メリットもあった。その点を重視しての採用だったんだろうね。
そもそもの時点で、ダウンサイズ思想が生まれる前のガソリンに対する燃費メリットは圧倒的なワケだし。


とはいえコモンレール系の進化は早く、早々に4回・5回噴射を可能とした南欧勢は一気に洗練性を上げてくる。
ましてやトヨタ・ホンダといった極東からの乱入組までが、ゼロからコモンレールを前提とした新規エンジンを導入してきた。これらが圧倒的な洗練性と燃費性能を叩き出したものだから、時は一刻を争うようになってきた。

―――

さらに問題を過給するのがアメリカ市場の攻略という命題。

当時のVWにとってアメリカ市場での拡販というのは、販売台数世界一に向けて避けて通れない課題。

とはいえ時代はモジュラー化の概念が生まれる前。
欧州市場がメインのVWの場合、アメリカ市場に特化したサイズのクルマ作りをするワケにもいかないし
かといって2000年代初頭のVWにはアメリカの現地工場がなく、主はメキシコ工場からの輸入に頼ってる状況。
メキシコの細々とした工場専用に、日本メーカーのようなアメリカ専用プラットフォームを起こすのも難しい。

結果として、VWは相対的に小さいサイズと車両価格の高さから、高い品質・性能で、それを正当化するスタンスで勝負をするしかなかった。
それ自体は当時のComsumer Report等で高い評価を得ていたけれど、台数を得るには厳しい戦略だったことも確か。
あくまでも「知ってる人が選ぶ」ブランド以上のイメージは得られていなかった。

そんな中で、その状況を打破するにはどうすればいいか? アドバルーンがいる。
それは当時の欧州連合の技術じゃ量販できず、元が取れないハイブリッドじゃない、違う何か。
それがどうしても必要だったように見える。そこにディーゼルが綺麗にハマる余地があった。


しかもアメリカの道路環境は、どちらかいえば欧州に近い。
確かにプリウスが圧倒的な人気を誇ったように、ロスみたいな大都市圏であれば朝夕に渋滞が頻発するケド
そこから一歩離れた大多数のアメリカは、長距離移動が日常なエリア。
そういう環境であれば、巡行燃費に優れるディーゼルはハイブリッドを圧倒できるチャンスがある。

しかもアメリカのフリーウェイは、地形を避けず直線で道路を引く。だから実は細かいアップダウンが多い。
そういう環境では、巡行時のトルクリザーブっていうのは強力な商品力になる。
だからこそアメリカ人は大排気量を好むんだし、その点でもディーゼルは最高に相性がいい。


さらに幸いなことに、この時期になるとEuro5~Euro6までの排ガス規制のロードマップが見えてきた。

日本のポスト新長期、アメリカのEPA Tier2 Bin5で、モードこそ異れど、NOx排出量の基準値が同一に揃ったことで
コモンレールの高圧燃料系+排ガス後処理にDPF+対NOxデバイス、というエンジンの基本形状が固まったのだ。


つまり当時VWが直面していた二つの問題こそが、新フロンティアを切り開く道に見えてきた。

欧州で後れを取ったコモンレール化によるエンジン進化。アメリカにおけるディーゼル投入による拡販。
これを踏まえ2市場を包含できる新世代エンジンを仕立てれば、欧州とアメリカを同時攻略できる可能性が生まれる。

そしてこれこそがEA189が課せられた存在意義だった。そんな風に自分には見えるのだ。

―――

だからこそVWが2007年に発表したEA189は、その期待を裏切らない出来になった。

欧州とアメリカの同時攻略に当たっては、エンジンのベースポテンシャルを限界まで引き上げる必要がある。
新世代コモンレールの適用を前提とし、ベースエンジンでEuro5に入らないとアメリカの法規適合は見えない。
だから基本骨格こそ旧来のEA188を引き継いだとはいえ、VWはその中身を完全にリニューアルしてきたのだ。

まずはヘッド廻りをコモンレール化に合わせ完全に別物へ。
垂直に立ったDOHC4弁の中央に多噴孔のインジェクターを刺す、デファクトスタンダートな構成になった。

使われる高圧燃料系にしても、Bosch製の新世代品を一気に投入。
新世代のピエゾインジェクターに、軽量・低フリクションの高圧燃料ポンプを組み合わせ
180MPaの燃料噴射圧を使い切る。そこに過給を行うターボにしても、当時最新の新世代品。
後だしだからこそ、仕様の時点で先行する南欧勢に圧倒的な差を持たせるという点を徹底する。

その上で圧縮比を世間標準の16.5まで一気に下げ、十全に容量を確保したEGRクーラーを組み合わせることで
エミッションのベースポテンシャルを大幅に改善。目論見通り、酸化触媒とDPFのみでEuro5に適合。
これをEuro5が施行される頭から達成していた、数少ないメーカーの1社になった。


それでいて、さらにブロックにしても、もともとは音振で有利な鋳鉄。
それをキープしつつ各所に発泡吸音材を適用することで、Pumpe Duzeが圧倒的に劣っていた音振を
一気に当時最先端だったBMW・ホンダを飛び越えるレベルまで仕上げる。
燃費にしても、初採用するティグアンはクラストップの燃費を確実に仕留める。

EA189は2007年の時点で、間違いなく量販ディーゼルのトップに君臨する、そんなエンジンに仕上がったのだ。

―――

(つづく)
Posted at 2017/03/19 18:18:23 | コメント(1) | トラックバック(0) | 雑記:環境/燃費 | 日記

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