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2011年01月04日
BMWエンブレムの由来 -よくある間違った認識-
BMWエンブレムの由来 -よくある間違った認識- 自分は普段年末年始にのんびり読むため、いろいろなネタを1年集めてるのだけれど、去年の年末にその中からこれがでてきたので書いてみる。 もうなんだかんだいって1年近く前の話だけど。

今回のお話はBMWのエンブレム。
その由来は実は一般によく言われるところとは違ってて、それを自分たち一般の人だけじゃなく、BMWのスポークスマンでさえ、エンブレムの正式な由来をちゃんと認識してなかったよってところ。

―――

もともとの話は1年近く前のNew York Timesの記事までさかのぼる。

BMW Roundel: Not Born From Planes

BMWの歴史を語るときにかならーず出てくるのが、BMWのエンブレムは飛行機のプロペラ由来だって話。
あの中央に4方向に塗り分けられた白と青の模様は、空に浮かぶプロペラを表しているのだ!って。
これが一般的に認識されてる話ね。

ところがNew York Timesの記者であるStephen Williams氏が、ある日ドイツ本国のBMW Museum Munichを訪れたときに、現地のガイドであるAnne Schmidt-Possiwal氏に、このエンブレムは飛行機とは由来がまったく関係ないんです、と説明されたのだ。
そこで事実が気になったWilliams氏は、実の由来はなんなんだろう、とBMW USAに確認を依頼した。
とーぜんBMW USAの回答も最初は「飛行機由来です」だったのだけれど、BMW USAもこの話が気になったのか、そのあとちゃんと調べたら、実は違ってたのが解った、と。

BMWのエンブレムが商標登録されたのは1917年のことなのだけれど、BMWの広報資料に飛行機のプロペラを模した表現が初めて出るには、1929年まで待たなきゃいけない。つまり、この飛行機のプロペラの表現っていうのは、完全な後付けの話だったのだ。

ちなみにこの話、実はBMWの歴史家の中ではだいぶ前から認識されてた話みたい。

Report: As it turns out, BMW's Roundel logo isn't born from jets... er, planes

Autoblogの記事にはこの問題に関して調査した歴史家、Dr.Florian Triebel氏のレポート(Mobile Tradition live : 現在はリンク切れ)が張られているけれど、そのタイムスタンプはIssue 01.2005。つまりいまから5年以上前の話ということになる。
実はこのレポートが、まさにこの問題の正体を的確に一刀両断してくれているのだ。

―――

このプロペラbragを象徴的に再現しており、おそらく現在までつづく誤解の元を作ったと思われるのが
Triebel博士のレポートにも出てくる1942年のBMWのCompany Journal。
これは当時のBMWの広報主管のWilhelm Farrenkopf氏によって書かれたもの。

(前略:要約)
320馬力を発生するBMWエンジン、BMWの手による初の航空機用エンジン、がその全開の瞬間を待っている。
そのとき、プロペラの銀盤とエンジンが描く陰影がエンジニアの目を惹いた。
2本の銀色の4半円が光輪のごとく反射する光。4半円の背景に輝く青く抜けた空との組み合わせが
エンジニアにはプロペラを4分割しているように見えた。銀色と青色に。

彼はこのイメージにエンジンの将来の成功を見た。さらに彼の目にはプロペラに3文字、B M Wが重なっていた。
このイメージは彼の想像力をかきたて、あるスケッチを描きたてることになる。
 ― カンパニーロゴが生まれた瞬間だった




そのあまりに詩的な表現は、その書かれた年度や広報誌ということから仕方がないものだとしても
これがいままで一般的に語られてきたBMWのエンブレムの由来ということになってたのは間違いない。
でも、この記事には数点の重大な間違いが潜んでいたのだ。

まず初めに、BMWの航空機用エンジンがベンチテストを始めたのは1918年3月のこと。 これはBMWのロゴが商標登録された夕に6ヶ月はあとの話。更にこのエンジン、BMW IIIaの発生出力は185馬力。 320馬力を発生するBMW Vaの製造が始まったのは1927年のことなのだ。
つまり、単純に時系列からこの「プロペラからエンブレムが生まれた」話はまったく筋が通らなくなってしまう。

そして歴史家によると、プロペラとエンブレムを重ねた表現が初めて紙媒体に載ったのは、1929年の話。



ただし、この"BMW Flugmotoren-Nachrichten"はあくまでもCompany Journal、中身はあくまでもBMWのエンジンラインナップに関する情報に終始していて、広報資料といった体ではなかった。
そして皮肉なことに、その中には確かにBMWの新型水冷エンジンに関する情報は載っていたものの、それより大きく取り上げられていたのはホーネットやワスプ、つまり当時BMWがアメリカのプラット&ホイットニーからライセンスを受けて生産していた空冷星型エンジンに関する情報だったのだ。

これは当時のBMWの困窮ぶりにも関連してる。
というのも当時BMWは世界恐慌の煽りをうけた深刻な販売不調の真っ最中。
航空機用エンジン含めた工場の稼働率は低迷中で、そんな中で軽量・シンプルかつ高出力という
当時の最新技術だった空冷星型のP&Wエンジンはまさに頼みの綱だったのだ。 
この冊子の表紙に描かれていたプロペラとエンブレムを重ねた表現は
このP&Wの空冷星型というフォーマットを表現していくためにも、まさにうってつけだったのだね。

そしてこの1929年以前には、プロペラとエンブレムを重ねた表現はおろか、プロペラ由来の話すら歴史家は見つけられない。 つまり、近年語りつがられてきたプロペラ由来の話は、この当時の広報戦略から生まれたと考えるのが妥当になる。

―――

そして、話はこのエンブレムが商標登録された1917年に。

もともとBayerische Motoren Werke GmbHは1917年7月21日に
Rapp Motorenwerke GmbHの後をつぐ形で生まれてる。
ただし、このときにはエンブレムやロゴは登録されてなく、それが行われたのは12月10日のこと。
そしてこの時に重要となるのが二つのキーファクターになる。

一つ目の重要なキーは、この時BMW側から示された企業方針と、それを受けた特許庁の分類。
というのも起業当時の広告で、BMWは企業の方針を次のように示してる。

この会社の目的は様々なエンジン、特に航空機・自動車用内燃機関、の製造販売である。
また関連分野および類似分野への製造販売、および同業種企業への参加である。


また、これを受けた特許庁での分類も

業種:エンジン製造業
製品:農耕車、航空機、船舶、自動車、2輪車、自動車および2輪車用製品、自動車製品、定地用エンジンとその関連部品


となってる。
つまりこの当時のBMWはエンジンに関連する製品を製造販売する企業というお題目を掲げていて、業種を航空機エンジンに絞るという明確な方針は見られていない。 つまりこれと同時に登録されたエンブレムも、飛行機のみに特化されていないという方針で作られたと見るのが自然なのだね。

そして二つめの重要なキーが当時の特許庁の出願条件。

当時も今もそうなのだけれど、特許庁はロゴやエンブレムの出願時には
「ロゴが会社や製品に関する明確な関連性を持つことが望ましい」
としているのね。
つまりBMWの場合には、Bayerische Motoren Werkeという名前と関連性を持たせる必要があることになる。

実際BMWの前身企業であるRapp Motorenwerkeのエンブレムは
BMWと同じ円形の枠の中に黒い馬(Rappe=Black horse)を収めたもの。
当然、その後を(業種も工場も設備も資産も人員も)引き継いだBayerische Motoren Werkeとしては、
Rappとの関連性を持たせつつ、Bayerische、つまりバイエルンに関連するものとするのが自然だし
あるべき姿ということになる。

そうなると、あるべき姿とエンブレムがマッチするのね。



・Rapp Motorと同様の円形エンブレム、同様に外周にカンパニーネームであるBMWを配置
・内部には、バーバリア州の州旗である白と水色のチェッカーを配置

まさにRappからの歴史と特許庁のあるべき姿が綺麗に重なるのだ。

ただし一つだけ異なるのが、バーバリアの州旗とBMWのチェッカーは色が逆転していること。
これは当時のトレードマークでは、州旗を強く想起させるデザインが禁止されていたため。
つまり色を逆転させることで、イメージを損なわず法律にひっかからないようにしたのだね。

―――

つまり、まとめると
・BMWロゴはRapp Motorenのロゴのデザイン要素を引き継ぎつつ、社名のバーバリアを反映したもの
・その過程では、航空機およびそのプロペラに関連する要素は鑑みられていない
・飛行機とプロペラにまつわる話は、後日の広報戦略として生まれた話
ということになる。
んー、やっぱり広報の戦略でこうやって歴史や事実が捻じ曲がっていくのね…

この話を書くときに調べたら、ネット上でもこの件について知ってるひとって多いみたい。
それに去年のNYTの記事がきっかけでこの認識は一気に広まってるみたいで、今ではWikipediaもちゃんとこの件に関しては修正が入ってる。英語版だけで認識が薄いのか興味がないのか、日本語版はいまだに対応されてないけど。

それにしても、ちゃんとBMW Museumでは正しい歴史を教えている人がいるっていうのは感動したかな。
歴史ある会社の正しい歴史をちゃんと調べてる人がいるってこともそうだし、それをファンがしてるっていうのも。
ファンに支えられてる企業ってこういうことなんだろうね。

まぁ、あと、いかに営業由来の適当な話をしたり顔で雑誌に書くひょーろんか先生が多いかっていうのと…
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Posted at 2011/01/04 15:03:02

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BMWエンブレムの由来」 From [ sian:not quite disco ] 2013/09/01 22:30
こんな後姿の1シリーズを見て これはわざとランプの配列を  エンブレムに見立てているのだろうか? と 疑問を持ちました エンブレムもピンク色に変更されていましたし。。。 <img s ...
BMWエンブレムの由来」 From [ sian:not quite disco ] 2013/09/01 22:32
こんな後姿の1シリーズを見て これはわざとランプの点灯配列を  エンブレムに見立てているのだろうか? と 疑問を持ちました エンブレムもピンク色に変更されていましたし。。 ...
この記事へのコメント
2011/02/22 14:44:14
大変勉強になりました!
ずっと間違った認識でひとにもそう伝えてきていました。
なんかスッキリしました。
いずれ私もほかの友達に教えてあげたいと思いますので
この文面を一部コピーさせてください。
コメントへの返答
2011/02/23 20:16:34
私がしたのはTriebel博士のレポートを翻訳/紹介しただけですので、褒めていただくと背中のあたりがむずかゆくなっちゃいます。はい。

こんな駄文で良かったら、コピーなりなんなりどうぞしちゃってください。
2012/07/03 09:04:23
大変興味深いブログでした。
多数の人が誤認識してると思います。
自分のブログでも紹介させて頂きました。
コメントへの返答
2012/07/03 22:56:54
私も始めて知ったときは驚きました。 昔からプロペラの話は聞いていましたし、アメリカでも聞くほどユニバーサルな話でしたし。

なので、ドイツ本国のBMWミュージアムではちゃんと本当のことを教えているっていうところに更に感動しました。
普通なら広報戦略に使いそうなものなので…
2012/07/03 17:18:18
いやいやそういう話だったのですね〜
新たな真実を知るとすっきりします。
ありがとうございました。
コメントへの返答
2012/07/03 22:59:38
いえいえ。私も調べていて知った側ですので…
今、時間が空いたときに原文も探していますので、見つけたら載せますね。
2012/08/28 22:08:42
素晴らしい、そうだったんですね
よく調べましたね、感心しました
飛行機屋の私もずっとプロペラモチーフだと思ってました!
州旗と知って、そっちの方が素敵だなと改めて思った次第です。
コメントへの返答
2012/08/29 02:10:37
欧州メーカーの面白いというか、凄い所って、こういう事を調べてる研究家の人達がいるところだと思うんです。
今回のように、変に気どるところも卑屈なところもなく、歴史と事実に向かい合っている時は、その姿勢に感動して広めたくなってしまいます。
2012/12/11 16:25:59
初めまして、大変勉強になりました。
BMW屋のくせして私も訳知り顔でプロペラ話していました。

このブログを読んで恥をかかずに済みます
ありがとうございます。

まだまだ勉強不足です、もっと精進します。
コメントへの返答
2012/12/12 22:08:02
はじめまして。
プロペラ起源の話にしたって、エンブレム一つにそれだけ歴史があるメーカーでもあるってことだと思います。
日本だと最近までエンブレムがまったく違う形だったメーカーも多いぐらいですし…
2012/12/12 10:27:06
コレは勉強になりました。
とても有り難い情報です。

(●´∀`●)/
コメントへの返答
2012/12/12 22:14:35
お褒めいただき、ありがとうございます。
2012/12/13 19:40:11
こんにちは

今まで間違った知識をひけらかしてました。
新しい知識は、次の忘年会で披露させていただきます。(笑)
コメントへの返答
2012/12/15 14:28:28
はじめまして。

ぜひ、本国にこんなに真面目にメーカーの歴史を調べている人達がいることを色々な人に伝えていただければ。
2013/09/01 22:26:29
コメント失礼致します。

丁度 エンブレムの由来に興味を
持った矢先に
こちらに辿り着きました。


お勉強になりました(^^)
トラックバックさせていただきます。

コメントへの返答
2013/09/04 00:08:14
こんばんは。コメントありがとうございます。

最近では日本語Wikipediaにも修正が入っており、だんだんこの話も広まってきているようです。
自分自身も知って驚き、他の人に広めたいと思った側ですので、より色々な方に広めて頂ければ、と思います。
2014/01/05 15:14:35
うちの家族が昔からBMWのマークは放射能マークと関連があるようなことをよく言いますが、根拠があるんでしょうかね。。ちなみに家族はマセラティーに乗っていて、私がBMWに乗っています。

なにか知っていることがあったらおしえてください。
コメントへの返答
2014/01/07 00:51:06
自分も少し気になって由来を調べてみたのですが、放射能マークは、3本の帯がそれぞれ、α・β・γ線を表しているのですね。そういう意味では、どちらかというと州旗に則るBMWより、メルセデスのシンボルに似ている気もしました。
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