プジョーの600シリーズと言えば、フラッグシップに与えられるネーミングでもあり、605や607といったモデルはよく知られたモデル。
ご存じの方もあるかと思いますが、600シリーズにはかつて604というモデルが存在していました。
シトロエンやルノーは旧いモデルでも結構見かけることがありますが、意外にもオールドプジョーはあまり目にする機会に恵まれません。いったいどんなクルマなのでしょう。
1975年に発売し、1985年まで生産された当時のプジョーフラッグシップモデル。私たちが抱くフランス車のイメージとは大きくかけ離れた、至って普通に感じられるフルサイズセダン。
さて、604については以前当ブログでもすでに取り上げたところです。
(参照:
西武自動車販売社の歴史をカタログから紐解いてみる・・・その4 )
プジョー604はかつて日本でも正規販売されていたクルマ。取扱っていたのはシトロエンで名を馳せた西武自動車販売社。西武自販と言えば、シトロエンやサーブのイメージが強いですが、旧くは504、604、505といったプジョーも取扱っていました。
本国生産期間は1975年から1985年までの10年間。西武自販が日本に輸入した時期についてバイブルで調べてみたら1977年に輸入を開始したということが判明しました。本国販売から割と早いタイミングで日本へ輸入されたようですね。
もう一つ手掛かりとなるのが西武自販総合カタログ。34年前の1982年版カタログを保有しているので、そこから紐解いていきましょう。
ありました! 504や505に混じって604のラインナップがたしかにありますね。
主要諸元によると・・・
■全長4,720mm×全幅1,770mm×全高1,430mm (ホイールベース2,800mm)
■エンジン:V型6気筒水冷OHC
■排気量:2663 cc
■最高出力:130HP/5,750rpm(DIN)
■最大トルク:20.3kg-m/3,500rpm(DIN)
■変速機型式:オートマティックトランスミッション(3速)
現代のクルマからすると平凡というよりもかなり物足りなさを感じてしまうスペック。3速ATというのが時代を感じさせますが、1970年代後半から1980年代前半当時としては必要にして十分なものだったのでしょうね。
参考までに604と比較として当時のライバルたちのディメンジョンを掲げておきます。
604 全長4,720mm×全幅1,770mm×全高1,430mm ホイールベース2,800mm
CX2400パラス 全長4,660mm×全幅1,750mm×全高1,360mm ホイールベース2,845mm
25 V6 全長4,670mm×全幅1,780mm×全高1,400mm ホイールベース2,720mm
全長だけを見るとCXや25をも凌ぐ立派なもの。貫録では負けていませんね。
ところで、上で紹介しているブログで当時の価格について触れていたので再掲します。
当時の価格は標準モデルで555.8万円と、本国同様かなり高いプライスがつけられていた。
当時のプジョーフラッグシップとしては高額だったようですね。このブログに対して、西武+自動車さんからのコメントが興味深いので引用します。
>ちなみに当時のCG誌によると555.8万円という価格は、メルセデス230の552万円、BMW530iAの618万円、ボルボ264GLEの587万円がライバルと書かれております。(ちなみにCX2400パラスは4MT車(!)が457万円、セミATのCマチックが477万円) (引用終了)
今から約40年も前としてはそのどれもが高額であったことが窺えます。もちろん604も。現代とは違ってガイシャはまだまだ高嶺の花の存在。CXよりさらに100万円も高額だったというのは凄いことですね。
さて、輸入車専門誌「WHIZZMAN」(今は絶版)。
1987年9月号には自動車販売会社の広告ページに604が並んでいました!
1978モデル 車検1988年5月 シャンパンゴールド AT エアコン フルオプション サンルーフ
88万円
日本導入翌年に輸入された個体でしょうか。当時としてはすでに9年落ちの中古車。発売当時は550万円もしたのにかなり値崩れが起きているようですね。
もう一台ご紹介します。
1980年モデル 車検1988年10月 イナリシルバー AT フル装備 117万円
同じモデルイヤーの5GTLよりも価格が安いっていうのはつまりリセールバリューの低さを表しているのでしょうかね。フラッグシップモデルも惨憺たるもの。
ところで、604は価格もそれなりだったので、選ばれし顧客に愛されたようです。実際、オーナーにはこんな方がいらしたようです。(西武+自動車さんのコメントより)
>西武流通グループ(後のセゾングループ)代表の堤 清二氏も乗っていたようですね! (引用終了)
西武グループ繋がりで西武自販取扱いのプジョー604を堤清二氏が愛用されていたのですね。巨大企業グループのオーナーにとって多忙を極める中で、604は移動の足としてさぞ大活躍したことでしょう。
メルセデスでもなければ、BMWでもなければ、ボルボでもない。同じ価格帯からプジョー604をあえて選択するというのはこだわりあってのことなのでしょうね。
日本での販売期間を調べてみました。1977年販売開始で、上で紹介した1982年総合カタログに載っていることからすると、少なくとも5年間は販売していたようです。
現存している個体はほとんど聞いたことがありませんが、
とあるディーラー にはきれいなコンディションを保って保管されているようですね。
今やプジョーフラッグシップの600シリーズは607を最後にフェードアウトしました。現在は508がその役目を受け持っていますが、やはり600シリーズの復活はプジョーファンにとって待ち望んでいることでしょう。
※IAA 1977(フランクフルトモーターショー)の604解説動画を見つけたのでどうぞご覧ください。