強い台風が目の前に迫った8月某日、仕事の3連休を利用して静岡方面へドライブに出かけました。当日の天気予報を見ると、強い勢力の台風5号がちょうど本州を通過するとのことで、出発日の夕方から翌日にかけて、静岡県は強い雨・風に警戒するように、という予報になっていました。
今回訪れようとしているのは静岡と焼津の間にある「大崩海岸」、そして大井川上流部のダムを目的地としていましたが、場所が場所だけに、一時は計画の取り止めも検討しました。しかしなかなかまとまった休みが取れず、次はいつになるか分からないということで、とりあえず天候の様子を見ながら「安全最優先、絶対に無理をしない」ということを誓い、出発することにしました。
日が昇ると同時ぐらいに到着したのが、ここ。
東名高速道路・静岡ICを下りて国道150号線を焼津方向に走り、用宗付近で県道416号線へと入ります。しばらく走ると左手に海がぱっと広がり、「わあっ」という感動もつかの間、道は一気に海の上へと飛び出していきます。そこが、写真のデリカの後ろに延びている「石部海上橋」です。
石部海上橋を走っていると、嫌でも目に付くのが、対岸の崖下に連なる怪しげな洞門です。この洞門群はかつての国道150号線(のちに現在の県道416号線に変更)で、要は石部海上橋の旧道にあたる道、ということになります。
この旧道は、1971年に発生した大規模な土砂崩れで洞門が圧壊、たまたま通行中だった車両を巻き込み、犠牲者を出す惨事となりました。その後、様々な検討がなされた結果、旧道の復旧は困難であり、また、落石被害を防ぐため崖下を避けて大きく海上を迂回する道、石部海上橋が作られることとなりました。
今では、晴れた日には富士山も望める風光明媚なビュースポットとして紹介されることも多い石部海上橋ですが、その裏にはこんな重い事実があったということを知ると、なんだか複雑な心境になります。
さて、石部海上橋わきの駐車スペースから反対側を見ると、そちらにも何やら怪しげな物体があることに気がつきます。テトラポッドで埋め尽くされた海岸線の向こうには、赤茶色の大きなモノが転がっています・・・。
カメラをズームしてみると、そこには何かが崩れ落ちたような痕跡がはっきりと見て取れます。「大崩海岸」と言えば「ああ、アレでしょ」とすぐに思い浮かんだ方は、きっと鉄道マニアさんか廃モノマニアさんなのではないでしょうか?
この物体は、東海道本線の「旧石部隧道」が崩れ落ちた残骸の一部です。
昭和23年のアイオン台風で石部隧道が崩落したのですが、現在に至ってもなお、その哀れな姿を晒したまま放置されています。反対側(坑口側)にも行く道があるのですが、この日は草薮が激しく成長しており、また小雨がパラついていたということもあって、坑口目前への進入は断念しました。
さらにズームしてみると、崩れ落ちた煉瓦作りの隧道の一部が、高い波に洗われていました。
折しも、接近する台風5号の影響で波はかなり高くなっていましたが、それでもこれだけ堅牢そうな隧道を崩壊させるほどの力があるようには、とても見えませんでした。アイオン台風というのは、一体どれほど強力な台風だったのか、想像するだけで鳥肌が立ってきます。
石部海上橋を離れ、県道416号をさらに焼津方向にクルマで移動すること約5分、続いてやってきたのがこちらです。
ただの道路のように見えますが、ここはすでに使われなくなった道、「廃道」です。大崩海岸の名前は伊達ではなく、この周辺は過去の歴史を見ても至るところが崩れまくっているという、まさに「大崩」なエリアなのです。
その中でもつい最近の「崩れ」となっているのがこの先にある崩落現場です。今度は歩いてそこを目指してみようという魂胆です。
ここがかつての県道であったことを示す証拠がこれです。
えっ、クズのお化けみたいでなんだか分からないって!?
ちょっと寄って写真を撮ってみましたが、うーん、クズに覆われてしまって、これでもなんだか分かりにくいですね。
実はこれ、県道を示す路線番号案内標識(ヘキサ)です。標識には「県道 416 静岡」と書かれています。紛れもなくここが県道416号線であったことを示しています。
「ヘキサ」からさらに先へ進むと、ヘキサを飲み込んでいたクズが、今度は路面全体を覆っているではありませんか。
その繁殖力の強さから、外国では危険な外来種とされているクズですが、ここまで繁茂している様子を見ると、それもあながち大げさではないなと感じさせます。
この「クズの海」は、深さはくるぶし程度しかありませんでしたが、この先に進むにはこの海を正面突破するしかありません。変な虫や動物(ヘビとかねずみとか)が潜んでいそうで、ここにズボズボ足(スニーカー)を突っ込んで歩いていくのはなんだか嫌だなぁ、と思いましたが、あまり下を見ないようにして一気に通り抜けました。
クズの海を突破するとほどなく現れたのがこの崩落現場です。
写真はなんだかちょっと視点が高くなったように見えますが、それもそのはず、実はここに写っている目の前の路盤は1メートルほど沈みこんでいます。
空中へ飛び出さんとするガードレール。
・・・ではなく、ガードレールを支える支柱が路盤ごと下に沈んでしまっています。
剥がれて崩れ落ちたアスファルト。
そしてたどり着いたのが、崩落の核心部分。
路盤は完全に崩れており、堅牢そうなコンクリートの擁壁にも大きな亀裂が入っています。さすがにこれ以上進むのは、どう見ても無理そうです(中にはここを自転車を抱えて越えるという人もいるようですが…)。
下を覗き込むと断崖絶壁。直下には太平洋からの荒波が押し寄せています。崩れ落ちた路盤や道路構造物は回収できるはずもなく、そのまま海中に放置です。
風もだんだん強くなってきて、これ以上ここにいるのは危険と判断し、速やかに撤収しました。
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Posted at
2017/08/11 20:40:25