久しぶりに?カーオーディオの話題である。
あなたのデッキ(HU)にはタイムアライメント(TA)は付いているだろうか?実はTAというのはカロッツェリアの用語であり、アルパインはタイムコレクション(TCR)という呼称を用いているのだが、以下、本稿ではタイムアライメント(TA)と書かせていただくことにする。
カーオーディオでは、左右のスピーカーからの距離が等距離でない。よってステレオイメージが正しく再生されないから、スピーカーからの音の到達時間を揃えて、まるで左右のスピーカーからの距離が等距離になるかのように再生環境をアジャストする、これがタイムアライメント(TA)の考え方である。
しかし、問題はそう簡単ではない。仮に、左chのスピーカーが、顔の前方、正面から測って60°の位置にあり、右chのスピーカーが30°の位置にあったとしよう(ちょっと雑な絵だが、ドローソフトで描いた図を参考にして頂きたい)。よく、メーカーから示されたTAの概念図では、スピーカーの位置がまるで変化するように書かれている。しかしながら、(ここが一番たいせつなことだが)スピーカーから発せられる音にいくらタイムディレイ(時間遅れ)を与えても、スピーカーの位置そのものを動かすことはできないのである。「仮想的な位置さえも」である。
たとえば、右chのスピーカーは左chに対して相対的に近い位置にあるので、右chの音にディレイをかけて、左chのユニットの音と耳への到達時間をそろえてやれば、仮想的に右chのスピーカーユニットを遠ざけたことと同じに・・・ とは残念ながらならないのである。たとえば左chのユニットの音を切って、右チャンネルだけから音を出すことにしよう。音は右chのユニットだけから出ているが、人間の耳はその音がどこから出ているか(つまりどの程度の距離から発せられている音か)を認識できるのである。それは、人間が二つの耳を持つからである。つまり、スピーカーからの音にディレイをかけようがかけまいが、耳からスピーカーまでの距離は変えようがないのである。つまり、TAを使おうが使うまいが、右チャンネルのスピーカーユニットの音は右前方30°の位置からなり続ける。これを60°の位置に仮想的に変えるなんてことはできないのである。TAを使う上では、このことを強く認識しておく必要がある。
残念ながら、TAで作られた音は自然界の音源から発せられた音と根本的に異なっている。表現を変えると、現実にはありえない人工的な音なのである。それゆえに、TAで作られた音を経験的に知らない我々は、さまざまな異なる反応をするのである。ある人はステレオイメージがTAによって向上された(良くなった)と感じるだろうし、またある人は車内の位相がねじまがったような、不自然な音場だと感じるのだ。このあたりはその人その人によって違う。だから、自動車の中心軸からオフセットされた運転席側に座ろうが、左右のスピーカーのセッティングは完全に左右対称で、発音タイミングもそろえるべき(TAは使わない)のがいちばん良いと感じる人もいるのである。
さて、少々長くなってしまった。中級以上のカーオーディオファンにとって、TAの利用はかなり一般的になってきたと思うが、そのTAが持つ本質的な問題点について簡単に述べた。で、私はどうしているかというと、今のところは自分ひとりで乗るときはAオン、家族と乗るときはTAオフで使い分けている。次回はTAを使いこなす際のポイントについて述べさせて頂くことにする。
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Posted at
2011/12/06 00:37:52