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イイね!
2014年07月02日

エンジンオイルの専門的な話のまとめ - 技術者のジレンマ -

今回のエンジンオイルに関する一連のブログは、
1.「 エンジンオイルの寿命とは? - 専門的なオイルの話! - 」
オイル寿命の長さ、劣化の過程を書きました。想像より、オイル寿命は長い。

2.「 エンジンオイルのシビアコンディションとは? - Cruiser & Cab - 」
オイル劣化の原因を具体的に書きました。
一般車だとハードではないのが分かったと思います。またその逆も。

3.「 サイレントチェーン摩耗伸び対策 Part1 - 特性・構造とオイル! - 」
4.「 サイレントチェーン摩耗伸び対策 Part2 - 煤、Carbon!! - 」
5.「 サイレントチェーン摩耗伸び対策 Part3 - 粘度と油圧!! - 」
実際に潤滑されている機械側を知る必要が。
K12では摩耗伸び問題があるので、タイミングチェーンを採り上げました。

6.「 エンジンオイルの専門的な潤滑の話!! - Newtonのリンゴの木 - 」
潤滑とは、どうなっているのか?
オイル劣化以前に0.01秒、今その瞬間、機械を護るために起きている現象。

全部を通し1つの話として書いているので、初めから読むとよく分かると思います。


多くの人が、漠然とオイル交換に「 5,000km/半年 」とあるのではないでしょうか?
車に詳しい、詳しくないとかいう以前に、市場に存在する目安のため、
特に疑問を抱くこともなく、そんなものかとよく考えてこなかったと思います。
そして、これを超えると長いような気がしませんか?



専門的に見るにあたり、現代から1850年ぐらいの160年程を振り返り、
自動車の技術そのもの、流体力学やレオロジーなどの学術的なこと、
石油精製プロセスなど、その他多くのことを見直しました。

ガソリンエンジンの自動車が誕生して120年、石油精製の潤滑油は150年ほどです。
年月で見ると歴史は長く、技術的にかなり高度な物が作れることに気付くのですが、
家電と違い形で変化が分からない、使用されている状態が見れないため、
性能の向上が中々分かりづらいですよね。




◆20年前のメーカー交換時期は?

1991年の自動車メーカーの交換時期一覧表です。
この時期どのくらいか、ほとんどの人が知らないのではないかな。

メーカー交換時期[km/月]API規格
トヨタNA15,000/12SE以上
TC5,000/6SE以上
日産NA15,000/6SE以上
10,000/6SD
TC10,000SG
5,000SD~SF
ホンダNA10,000/6SG(NSX)、SF以上
(3ナンバー車)SE以上
TC5,000/6SE以上
スズキNA5,000/6(軽)SD以上
15,000/6(小)SD以上
TC5,000/6SF以上
ダイハツNA10,000SE以上
TC5,000SE以上
マツダNA10,000SE以上
TC5,000/6SD以上
富士重工NA10,000/6SE以上
TC5,000/6SF以上
三菱NA10,000/6SD以上
TC5,000/6SD以上
いすゞNA10,000SF以上
TC5,000SG
※NA:ノンターボ車、TC:ターボ車

この時から、メーカー交換距離は10,000~15,000kmです!
23年という長い年月、オイル交換に対する認識は変わってないです。

日産を見てもらうと分かるのだけど、
SD級では10,000km、SE級以上では15,000km毎の交換が推奨されている。
また日産といすゞのターボ、ホンダのNSXはSG級です。
トヨタが今と同じ、15,000km/1年なのにも注目してほしい。
今のAPI規格SNは、ここから5~7個上のグレードなので格段に進化している。


1970年代のオイルショックを境に、交換距離は約2倍以上に長寿命化しています。
今だと過去の出来事といった感じでしょうが、石油価格は10倍も跳ね上がり、
工業国日本にとってかなりの経済危機でした。
この危機を切り抜けるため、メーカーは省エネ・省力に全力を注ぎ、
アメリカをはじめ世界市場を制覇しました。
'80年代の性能向上が市場に伝わってないため、意識が変わらず今に至るのです。
近年の技術向上という以前に、すでに思う以上に交換時期は長かったのでした。

①のブログのオイル寿命データも10年以上前の資料です。
このままでは2020年も、30年以上古い認識で交換することになってしまいます。


それとシビアコンディションは、気付けば耳にしていませんでしたか?
これは平成7年に点検整備制度が見直された時に、自家用乗用車などで、
走行距離が短い車については、定期点検整備項目の一部が省略できるようになったのですが、
砂利道など未舗装の道路の使用が多い、走行距離が多いなど特殊な使用の場合は、
所要の点検及び整備を適時適切に実施する必要性があるので、
シビアコンディションが用いられるようになったのです。

例えば、年間5,000kmしか走らなくても、
特殊な使用だと適切な点検・整備する必要があるということで、
初めから劣化ありきの考えだと、劣化しているので5,000kmの交換と考えてしまう。




◆体感する劣化は?

走行距離と動粘度の関係を表した図。

動粘度は3,000kmぐらいまで急激に低下し、それからまた徐々に上昇します。
体感的に劣化と感じてしまうのは、この赤丸の部分かと。
オイルその物はあまり劣化していないです。

1回目のブログのオイル寿命のグラフを見ても分かるように、
メーカーの見ている距離は長く、数千kmという尺度ではないです。
長いスパンでオイルの性状・機能は考えられ作られているので、
本来のオイル性能は距離を走らないと分からないです。

特に交換し、エンジンノイズの低減や最初のアクセルに違いを感じるのは、
もちろん、新油で流動性が上がっていることもありますが、
エンジンが温まっていて、部品クリアランスが狭い(正規)状態で、
店頭の冷えた粘度が高いオイルが入るのも関係していると思います。
すぐに慣れ、2,000kmと3,000kmなどの差は分からなくないですか?


「 安いオイルでマメに交換した方が良い 」ということをよく聞きますが、
今の日本の交換常識だと、性能差が出る距離まで使用してないので比較する以前の問題です。
ベースオイルなどの誤解もよく見かけます。70年以上前の古い話を今のことだと思っていたり、
製造技術として確立し30年は経つ製法に対し不安を抱いてたり。
本来のオイル性能より、カタログスペックばかり気にしてしまっているように思えます。
そして、主役のマシン側ではなく、オイル主観に捉えがちです。



化学合成油のロングドレイン性能。
1975年にアメリカで、研究・技術者向けに発表された化学合成油の公式資料に、
ガソリン車のフィールド試験で、80,000km無交換でも優れた性能を示した報告があるくらいです。
API規格試験であるASTM(米国材料試験協会)の試験評価もあり、
Seq ⅢC(高速試験)、Seq VC(低温スラッジ試験)などです。
ちなみにテストで使用したオイルは「 Mobil1 」でした。



使用温度が200℃以上、高い部位は450℃にもなる過酷な状況で、
膨大なコストが掛かる定期オーバーホールまで、
オイルが起因するトラブルを出せない航空機のジェットエンジンから、
化学合成油が発展してきたことを考えると納得しやすいかと。

化学合成油の高性能を発揮することなく、早くオイル交換している現状があります。
ある意味、鉱物油にも言えるのかも。
自動車の全体数が増え、環境に配慮し技術的制約が厳しい現在で、
システム的な改良がなければ、80,000kmは難しいと思いますが、
シビアコンディションのブログの動画のMobil1の距離、24,000kmは使えるでしょうね。
鉱物系のグループⅢ基油でもポリαオレフィン(PAO)に近い性能を持つので、
酸化寿命は23,000kmまで持つと言われています。
今はPAO以上の特性を持った次の段階に進んでいます。


日本の自動車メーカーが、海外(日本の次にオイル交換を頻繁にする国)で、
オイル交換の廃油を回収し、オイルの劣化具合を調べたところ、
本来使用できる距離の半分で換えていたという調査結果もあります。




◆技術とは?

低粘度化や環境配慮により、オイルに求める性能が厳しくなり、
エンジンの技術情報があり、長いスパンで車両テストしないと、
本来の標準交換距離をクリアしたオイルは作れないです。
トヨタ・アクアで、さらに低粘度の「 0W-16 」が使われ始めているように、
車両側の情報がないと難しいです。

そのため純正オイルか、自動車メーカーとノウハウを共有し、
純正オイル製造元である石油元売り・精製大手メーカーのオイルが安心です。
(Mobil、Shell、BPカストロール、JX日鉱日石エネルギー、出光など)
潤滑油だけでなく、ガソリンから航空機燃料、化学製品などを作る大手メーカーは、
資本、技術力からしても最先端を行っています。

缶の色やデザインから、オイルの性能をイメージしますが、
純正オイルは標準交換時期までの耐久性・清浄性能や、
シール適合性など品質・性能が確保されており、コストパフォーマンスが高い。
また、ピストンのコーティング被膜との親和性なども考えられています。
新車に充填され、圧倒的に販売量が多い純正オイルは、
多くの開発費を掛けるので上質な物が作れます。

広く知られているブランド(製品)というのは、そのメーカーの信頼の積み重ねです。
カストロールは欧州ホンダに純正オイルを提供していますね。



SAE粘度は「 10W-30 → 5W-30 → 5W-20 → 0W-20 → 0W-16 」と、
この30年程で変化しているのを見れば、
メーカーの技術トレンドは動粘度が低くなっているのが分かります。
水っぽい、シャバシャバしていると聞くため、低粘度オイルを誤解しがちだが、
高温側の動粘度は十分な数値で、実際にエンジンテストされています。
粘度指数が大きく、温度による粘度変化が小さいです。
不安のイメージから高い粘度を選択し、メーカーが努力し開発した省燃費性能や、
スポーツ性能を車が発揮しないのは勿体ないです。


日本は高温多湿で厳しいと思ってしまいますが、
熱帯や砂漠、極寒の地域に比べると気候環境はソフト。
スポットで狭い範囲で見ると、厳しさが強調されやすいです。
メーカーは許容範囲の端々を考え開発しています。
Shell helixの動画。こういった環境だと本当に粘度選択が重要となってきます。


また、オイルフィルターで不純物が濾過されていることに視点が向けば、
オイル交換時期も冷静に見れます。この役目を結構見逃しがちです。
ディーゼルエンジンはエンジン、潤滑油の性能向上の効果もあるのですが、
フィルターの性能向上が大きく、交換時期が伸びました。
トラックのメーカー指定の交換距離は25,000~45,000kmなどです。
海外の最新のメルセデスの大型トラック(Mercedes Benz Actros)で、
最大150,000kmまで交換時期を延ばせるものもあります。
乗用車の15,000kmを少しは安心できるのではないかな。

濾過という大切な役目のため純正か、同等クラスの物が安心です。
フィルターの濾過性能を十分使い切らずに換えていることも多いです。
特にデンソーのフィルターは複雑な折り方(クリスタル型)で濾過面積が広いです。
トヨタ純正はもちろん、ダイハツとスズキの一部で使用。

メーカーはシビアコンディション(5,000~7,500km)で、
オイルフィルターも交換指示していますが、フィルターはまだ使えると思い換えないですよね。
(オイル交換2回に1回論が強いかな)
このことから本当にシビアな環境が何か分かるのでは?



欧州車のロングドレインはエンジン設計コンセプト、オイル性能などで耐久性を上げており、
日本車の15,000kmの交換が短いという訳ではなく、日本車とは別の話。
心理的に早く交換したくなるのでエンジン回転数、温度、時間などから計算して、
交換時期をモニターに表示するのも、ロングドレインの一役を担っています。

オイル劣化を直接検知する試みとして、オイルの汚染度からの劣化判定に光透過型センサー、
オイルの誘電率の変化で測定する静電容量型センサーがありますが、
どちらも劣化との相関性が認められてません。
(設備ならある程度の精度かもしれないが、自動車のエンジンだと劣化要因が多い)
オイル寿命のブログで書いた「 硝酸エステル濃度 」を測定するのが一番なのだが、
車両搭載できるような装置として実用化に至ってないです。
そのため、市販で売られている簡易測定器は性能が今一つかもしれません。
(それ以前に、メーカーが交換時期を指定していますが)

エンジン回転数、温度などの入力データから計算システムを作り、
オイル銘柄(MB229.5、BMW Longlife04など)を指定している欧州メーカーの方が、
センサーによる成分分析だけの手法と比べたら、劣化予測精度の高い検知システムです。



技術者には、基油(ベースオイル)自体の酸化(炭化水素の酸化)は、
潤滑油を長寿命化する(使用油の交換時期を延ばす)上で、重要な課題です。
最初のAPI規格のSAは無添加でした。
オイルを精製するほど酸化防止能力が下がることが分かり、
そこで調べると、自然物が持つ本来の酸化防止機能「 天然酸化防止剤 」の存在に気付きます。
野菜や果物など多くの自然物にありますよね。
これが1930年代から使われる硫黄系酸化防止剤・ZDTPなどです。
酸化防止剤は、潤滑剤の寿命を数倍から10倍以上にも延長します。

また、清浄剤も1930年代、高出力エンジンでリングの膠着を引き起こし、
無添加の限界が露呈し、ある整備工が石鹸を混合した潤滑油で、
エンジン部品の浄化に有効であることを見出し、この潤滑油を使用したところ、
リング膠着を起こさず、エンジンの潤滑を行うことが出来ました。
これは堆積物となりうる物を油中に溶解、分散した結果です。
エンジンオイルの添加剤に清浄分散剤がありますが、これは清浄剤と分散剤の2つを合わせた物です。
清浄剤は、リングなどピストン回りの汚れを分散する金属系清浄剤と言われる物で、
構造はアルカリ石鹸に近いです。
低温スラッジを抑止するのが無灰系分散剤。


他にも、カナダや北米で起きた低温流動性不良による摩耗問題、
'80年代にドイツで問題になったブラックスラッジの堆積など、
こういった問題にアプローチし解決してきて、オイル技術は発展してきたのです。


エンジンオイルのAPI規格には、動弁系の摩耗テストや、
低温スラッジの抑制など様々な試験をしています。
この規格スタートは1920年代からで、既に約100年前から業界では対策しています。
メーカーは敢えてスラッジを発生させたり、摩耗しやすい条件の試験をしています。
その他にもカー用品店などオイルを上抜きしても確実に抜けるようにする、
高温潤滑性能が低いオイルを使用しても簡単に壊れないような温度管理設計をする。
また、品質が確保された燃料が手に入りにくい海外で使用することなども。

よく分からないとマイナス面に目が行きやすく、市場の流説に惑わされやすいです。
しかし、それがどうなって起きるのか、そのためにはどうする必要があるのか、様々な実験をし、
物作りするのがプロのメーカーであり、それが脈々と培われて来た技術というものです。




◆スラッジとは何か?

「 汚れ = スラッジ 」、「 カーボンデポジット → スラッジ 」のように、
何となくスラッジとイメージする物体・状態があるのではないかな?
本来、スラッジは泥状物を指し、英語の「 Sludge 」の意味のとおりです。
低温走行が多く、長くオイルを換えてないため、内壁やオイルパンに堆積するドロドロした不溶分。

燃焼室周辺などに生成されるカーボンデポジットは、
カーボン(Carbon・炭化物(煤など))と、デポジット(Deposit・堆積物)で炭化堆積物です。

ワニスは英語で「 Varnish・バーニッシュ 」と言い、にかわ状の重縮合堆積物。
硬い堆積物はラッカー、軟らかい物はガムと言います。
不溶性化合物がピストンなどの高温部でさらに重合してワニスを、
また、炭化しカーボンデポジットを生成します。
ちなみに木材に使うニスは、「 バーニッシュ → ワニス → ニス 」から来ています。


一番初めのブログのグラフを見てもらうと分かるのですが、
スラッジは、いきなり発生するわけではなく、
その前にスラッジ(不溶分)前駆体が、まず生成され発生するので、
「 数千km使用のオイルでスラッジが 」と見かけますが、それ以前にスラッジは発生していないです。
その距離で発生していたら、もっとオイルが原因の不具合が市場で起きているでしょう。

清浄と聞くと、汚れたエンジン部品を綺麗にするイメージがありますが、
実際は燃焼副成物や酸化劣化物を油中に分散・可溶化することで、
エンジン部品が汚れ、エンジン性能の低下が生じることを防止している。
添加剤が減少していき、オイル中への分散性が低下しスラッジが生成されていきます。


◎スラッジ生成に関係する項目
①エンジン型式
 エンジン設計(ブローバイガスの換気率、エンジン部位温度、オイル流路・量など)で、
 スラッジが発生しやすいエンジンもある。
②運転パターン
 発進、停止の繰り返し → 低温時の方がよりスラッジが生成される。
③ガソリン品質
 スラッジはガソリンの熱分解物から生成されるので、
 オイルに生のガソリンが混ざっても発生しない。
 ガソリンを構成する炭化水素の分子構造に関係する。
④エンジンオイル品質

外的要因をいかに防ぐかが大事であり、オイルだけ見ててはダメです。
現行車はこの辺も十分考慮して開発されているはず。

確かにピカピカのエンジンの方が気分は良いが、多少の汚れは、
エンジン性能に影響しません。冷静にエンジンの構造を見ていけば分かるはずです。
2000年以降のエンジンオイル組成は、低温スラッジ抑制に力点が置かれていて、
汚れていると思って見ると、意外とエンジンが綺麗なことが多いかもしれません。
添加剤の7割が清浄分散剤で、通常使用であれば標準交換時期まで持つ量を添加しています。



純正オイル(API・ILSAC規格オイル)を使用し、整備されたエンジンでは起きない距離で、
大量のスラッジの画像を載せ、不安を煽っている所もあります。
また、10,000km交換しないでいいと謳っている物がありますが、
今の純正オイル、大手メーカーの性能なら、クリアしている物が多いです。
近年の低粘度オイルは、粘度指数の確保からグループⅢの基油を使っている物が多く、
酸化安定性に優れています。また、'90年代中頃から、
ILSAC規格・GF-3(API規格SL)に対応するため、高性能基油を使用しています。


オイル劣化原因に水分の混入による化学反応があるのですが、
メーカー市場調査だと混入する水分量は、オイル劣化に及ぼす影響が殆んどないという報告も。
(マヨネーズスラッジが付くような過度な低温短距離使用は除く)
以前はMg系清浄剤が水分混入により、析出する問題があり、
添加剤技術の向上で解決されています。
また、NOxと水の反応で硝酸が作られ、オイル劣化が進むのだが、
水分存在時はNOxが律速となるので反応が緩やかとなります。
安易に「 水が混ざる 」というのも短絡的かもしれないです。
寒い地域で過度なチョイ乗りでなければ、それほど気にする必要がないと言えるかな。
燃焼温度が低い時に多く混入する燃焼生成物の方を気にした方が良いと思います。
(スパークプラグなどメンテで改善方向に持っていける部分がある)



◆油膜切れ

オイル管理が良くないため、スラッジが流路に詰まる供給不良か、
サーキット走行で高温になり、オイルの粘性限界を超える極端な使用でない限り、
油膜切れは起きにくいです。一般車だと油温は80~90℃ぐらいで、
油膜切れを起こすような連続して130℃以上になることがまずないです。(実際の形成限界は160℃以上)
そこまで上がるのなら、先にオーバーヒートが起きます。
また、あるブランドのオイルで焼付いたといった場合(競技走行)も、
メカ的に冷却性能向上のチューニングをしてないなら、
他のオイルでも起きる可能性は高いので、一概にオイルが原因とは言えない。

街乗りでは油膜切れが起きるほどハードではないです。
それ以前に潤滑現象として「 境界潤滑 」が起きているので、
「 エンジンオイルの専門的な潤滑の話!! 」で説明したのですね。基本中の基本!




◆ドライスタート? → コールドスタート!!

ドライスタートと聞くと、エンジンが止まっている間にオイルが落ち、
乾いた状態で金属同士が摩擦するのをイメージしませんか?
油を手で触ったら中々落ちないですよね。洗わなければベタベタしたままです。
ベタベタするというのが、指同士が触れずに潤滑しているということ。
潤滑油には吸着性があります。境界潤滑で説明した油性剤が吸着性を高めていますし、
油その物の性質です。(油類に限らず、様々な物質にある性質)
オイルが付着しやすいように金属表面を加工したり、すべり軸受けでは材料を選んでいます。

簡単に部品表面からオイルは無くならないです。
前のブログで説明をしましたが、厚い流体潤滑でさえも数μmから数十μmの世界です。


すぐにドライ状態になってたら、販売店の展示車両などは大変なことになっていますよね。
マーチも10日ぐらい止めたままが多いのですが問題も無く、ただし久々にエンジンを掛ける時は、
毎日乗っていた時より、オイルが回るまで少し時間を置いてます。
基本的な話ですが温まるまではエンジンを回すのは避けて、コールドスタートは気にするべきです。


Mercedes AMGのエンジン製造工程の動画です。



この動画から、ピストンを差し込む時の音がカポッとなるので、
実際のシリンダーとピストンの隙間の狭さ(幅)と、気密性が高いのが分かりますよね。
それと組む時に少量のオイルしか塗ってないことに注目してほしい。
まず機械的なクリアランスが、油膜厚さを決めています。

粘度(動粘度)が高いというのは、
水とハチミツで比較すると分かりやすいのだけど、垂れにくいということです。
ということから、流体潤滑では抵抗となりフリクションロスが大きくなるので、
低粘度オイルを使用すると省燃費に貢献する訳です。
それにオイルポンプを使った強制潤滑であり、
次々とオイルが供給され、油膜は形成されています。


設計で重要視されているエンジンをスタートし、如何に早くオイルを送るか!
2000ccのエンジンで循環油量が50L/分ぐらいなので、1秒間に約0.8L送られます。
オイルフィルターにはアンチドレーンバルブがあり、オイルパンにオイルが戻らない構造になっています。
(そのためフィルター交換時の方が、オイル量が0.5Lほど増える)
オイルポンプ周辺のオイルが完全に落ちると、始動時の油圧の立ち上がりが遅くなるため、
オイルポンプ周辺の油路設計、オイルフィルターの取付け角度などが重要となります。
チェックボール(ワンウェイ:戻り防止)によって、オイル落ちを防ぐ場合もあります。
フィルター交換時に作業しづらいと感じても、裏では色々と考えられているのですよね。

部品点数が少なくコスト的に有利であるクランク駆動タイプ(クランクシャフト先端に付く)は、
クランク軸の運動があるため、各部のクリアランスを大きくとる必要があり、
サクション(吸入)パイプが長くなるため、オイル落ちや吸い込み特性を考慮する必要がある。
オイルパン内に設置するチェーン駆動タイプのオイルポンプは、コスト面では不利だが、
オイル落ちや吸い込み特性での心配がなく、ポンプ搭載位置としては理想と言えます。

ルノー・Clio(Lutécia)のエンジン「 TCe 120 」の動画。チェーン駆動の可変オイルポンプ。



極低温ではオイルの粘度が高くなり流動性がよくないため、吸い込み抵抗が大きくなるとともに、
エアの巻き込みが生じやすいので、サクションパイプの通路抵抗(径、長さ)や、
吸口の位置などの設計によってこの現象を避けています。
このような様々なことを考慮し、ポンプ吐出量も設計されているので、
オイルが行き届かないというのは考えにくいというか、メーカーからしたら基本的過ぎることです。
こういったことからも適切なオイル粘度を使用する必要があります。


エンジンオイルの全体量からして、実際にオイルが潤滑部位で使用されている量は少なく、
大半はオイルパンにあることが分かると、
オイル劣化をまた違う角度で捉えることが出来るかもしれないですね。




◆その他補足

①量が少な過ぎると潤滑不良となるため、オイル量は定期的に確認する。
 また、エンジン内部、オイルレベルゲージにスラッジ付着がないかなども見ておく。
 今の時代そう壊れることはないと思うが実際に実機を見ることは大事です。

②大都市で毎日、慢性的な渋滞ばかりの場合は、走行距離は伸びないが、
 アイドリングでエンジン始動時間は増加していることを考慮する。
 これに高負荷走行が加われば、パトカーに近い走り方で標準交換時期より早めの交換が良い。

③エアエレメントを社外のスポーツ系に換えている場合、
 集塵性能が分からないので、粉塵を多く吸っていないか確認する。
 また、スパークプラグの番手を意味なく上げていると、燃焼状態がベストでなく、
 未燃焼燃料や燃焼生成物がオイルに多く混入している可能性がある。
 オイル粘度、プラグの番手はイメージのせいか上げやすい。

④市販の添加剤を使う時は注意が必要。
 「 エンジンオイルの専門的な潤滑の話 」のブログでも説明したように、
 エンジンオイルは様々な化学反応作用で機能しており、
 ベースオイルが80~90%、10種類以上の添加剤が10~20%でバランス良く配合されています。
 市場調査で市販のオイル添加剤で効果があるのは、10%にも満たないというデータもあります。
 基本的に市販の添加剤の作用の多くはすでにオイルにあります。

 また、海外ブランドやNASAの技術と謳っている物は、
 その国で販売があるのかなど調べてみれば本当のことが分かるかもしれない…

⑤偏って見てしまっていること。
・鉱物油が劣っている風潮があるために、初めから良くない印象を過度に受けている。
 市場の多くは鉱物油であり、メーカーが15,000km使用可能と言ってる純正油も鉱物油である。
 エンジンオイルは、潤滑油の中でも高級油という分類です。

・ポリマーに対するマイナスイメージ。劣化による粘度低下とスラッジ原因。
 低温から高温時までカバーするマルチグレード油を作る上で、
 必要となる粘度指数向上剤(VII・Vicosity Index Improver)。
 甘いお菓子を作るのに砂糖を入れるのは欠かせないのと同じこと。
 季節によって気温差が大きい地域では、粘度指数を高くすることにより、
 四季を通して、同一の粘度のオイルが使え、メンテナンスを軽減できる利点がある。

 粘度低下に対しては、せん断安定性を考えて最適化しており、
 先の動粘度のグラフを見れば分かるが、粘度維持を考えて交換時期を決めている訳ですね。

 VIIは、ガソリンエンジンにターボチャージャーが搭載された時に、
 高温になるタービン側壁面で炭化し油路閉塞する問題が生じました。
 また、吸気弁にデポジットとして堆積することがあります。
 ポリマーがスラッジの原因だというのは、オイル全体量に対するポリマーの割合や、
 一番の原因はガソリンの熱分解物であることと、
 スラッジ生成の複雑な過程を考えると短絡的だと言える。

 エンジンオイルに使用される代表的なVIIに、
 ポリメタクリレート(PMA)とオレフィンコポリマー(OCP)の2つがあります。
 増粘効果が大きい、デポジットになりにくい、廉価であることからOCPが主流でしたが、
 最近の0W-20の低粘度オイルでは、ベースオイルが高粘度指数基油なので、
 VIIの添加量が少なくて済むことや、PMAの方がOCPに比べ、低温粘度特性、
 粘度指数向上に優れていることから選ばれる傾向にあります。
 今ではPMAでもコーキング(炭化)しにくい構造の物が開発されている。

・標準交換距離は、保証期間や10万kmまで壊れずに動けばよいレベルのようなことを見かけるが、
 乗用車のエンジンの設計寿命は、20万kmです。トラックやバスなど商業車はもっと長い。
 壊れないために、寧ろここまでには換えた方が良いということで交換時期を決めている。
 保証期間を過ぎて簡単に壊れるようなら、厳しい海外で日本車は戦えてこれてないですね。



 
◆The other side of the future

以上のように専門的、技術的なことから見ても分かるように、
K12前期のようなサイレントチェーンの不具合がなければ、
メーカー指定の交換時期を守っていれば問題ないです。
というか唯一市場でテストし公表されているのは、メーカー交換時期だけです。
それ以前に、これで不具合が出るようなら、
他の自動車メーカーから技術力、品質が低いと思われるでしょうね。


日本の乗用車の年間平均走行距離が10,500kmぐらいなので、メーカーの標準交換時期の1年だと、
大体10,000kmでの交換となり、汚れ具合や精神的にも良いとこが来ます。
交換距離で見ても、メーカー指定の15,000kmに対して10,000kmの交換でも3割も余裕があります。
大手メーカーの技術が高いのは、よく知っていると思うのですが、
なぜか交換時期に関しては5,000km/半年という漠然としたものがあるせいか、
メーカー指示のサイクル(オイル関連全般)に疑問や不安を持ってしまいがちです。

その他、「 ハイブリッドやアイドリングストップだと油温が上がりにくい 」なども気になるのかな?
そう思うのであれば、逆に実際どうなのか自身で勉強してみれば、
車の知識も増え、自車への愛着も増すでしょう。


今まで書いたエンジンオイル交換時期に関することは、
現代メインで走る、'00年以降ぐらいの車種で一般的な乗用車のNAエンジン主体で書いています。
ターボやディーゼル、直噴エンジン、'00年より前の車は車両毎のメンテナンスノートを確認して下さい。
もちろん純正オイルなど性能・品質が確保できているオイル使用が前提の話。

まずは気持ち的に、過度に早めに振れている交換時期をもっと標準交換時期へ押し戻すべきです。
技術そのものと進歩を感じ取れないと、心理的要素から脱却することは難しいです。
そのため一連のエンジンオイルのブログは、
プロ側の技術的な話を出来るだけ分かりやすく書いたので役に立てばと思います。

昔より今の方が精度が高いというのもよく見かけますが、
日本の自動車メーカーの工作精度は、'90年代からすでに思う以上にかなり高いです。
また、精度は欧州が上ということもないです。
自動車メーカーの現場を知っている者としては、
まだまだ舶来物のイメージが強いのだと思ってしまいます。



主役となるエネルギーの変化や石油資源の埋蔵量、中国やインドなど新興国での自動車増加など、
エネルギー問題として捉えると、よりリアルに別角度から理解できます。
消費量の増大はかなり待った無しの問題です。


今現在、国内の新車販売台数はピークの'90年代と比べると3割以上減っています。
排ガス規制で確実にガソリンから電気へと移行するのですが、
市場の飽和と経済の影響で国内では車が売れてない現状なので、
経済改善のため、「 地デジ 」のようにどのような加速化があるのかは読みづらい昨今です。
自動車は道具というより、商品の面も強く、
新しい機能を付けないと売れないため、自動化の波も来ます。

モーター系へ移行する前に早く交換時期に対する誤解に気付くべきです。
古い認識のまま、燃料電池車などへ移行したのでは勿体なさ過ぎます。

日本国内の全潤滑油需要量の約37%を自動車が占めています。
毎日過剰に交換消費されている量は膨大です。
それに支払われる末端金額は、オイル代のみで少なくても年間数百億円、
実際はその2、3倍が交換する必要がなく消費されている市場金額と予想されます。
例えば、目で見て減りが分かるタイヤ代に回す、また家族と食事に行く、
企業と違い経済的なバックアップのない個人のお店で買い物するなど、
ペイフォワードのように、世の中で幸せな人が増えるもっと有効なお金の使い方があると思うんですよね。


専門的な知識がユーザー、販売市場で普及すれば、
正しいタイミングで効果の高い交換サイクルになり、
大量消費されている化石資源の節約に繋がります。
元々資源の少ない日本です、また今の時代背景からしても重要なことです。

ヘンリー・フォードの自伝「 藁のハンドル 」に、リサイクル以前に、
リサイクルするその物を出さないということが書かれています。
フォードは環境面ではなく、ビジネス的な意味合いでこのことを書いているのですが、
本筋として、もっともな考えだと思います。

車好きは、車を大切にし、メンテも心掛けますが、
正しい知識を得て、過剰メンテしないのも大切なことです。



技術はドンドン未来へ進んでいる。






 今回の専門的なエンジンオイルの話
 ①エンジンオイルの寿命とは? - 専門的なオイルの話! -
 ②エンジンオイルのシビアコンディションとは? - Cruiser & Cab -
 ③サイレントチェーン摩耗伸び対策 Part1 - 特性・構造とオイル! -
 ④サイレントチェーン摩耗伸び対策 Part2 - 煤、Carbon!! -
 ⑤サイレントチェーン摩耗伸び対策 Part3 - 粘度と油圧!! -
 ⑥エンジンオイルの専門的な潤滑の話!! - Newtonのリンゴの木 -

 実際のエンジンオイルの状態
 1年使ったエンジンオイル!! 普通です d(^_^)
 2年・10,000km使ったエンジンオイル!! 意外と普通かな?

ブログ一覧 | 専門的なエンジンオイルの話 | クルマ
Posted at 2014/07/02 21:35:34

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オイルについての良いブログですねー」 From [ しののんページ ] 2017/01/20 17:24
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