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2016年11月16日 イイね!




●概要



2016年11月2日、日産ノートにe-POWERなるパワートレーンが追加された。エンジンを発電のみに使用し、モーター駆動100%で走行するシリーズハイブリッドである。内外装はいわゆるフツーのマイナーチェンジモデル。しかし、試乗してみると、印象は一変。走り出した瞬間に誰でもわかる力強い加速。後出しジャンケンのメリットを有効活用し、乗り味でしっかりと差別化できた。筆者がもし購入するならグレードはe-POWER X。




●ライバルの動向を観察する歴代ノート

2004年に発売された初代ノートは当時ベストセラーだった初代フィットに遅れること3年、マーチをベースにフィットよりも200cc余裕がある1.5Lエンジンを搭載。CVTを採用した低燃費なコンパクトカーながら室内空間が大きいことを売りにしていた。「低燃費ビュンビュン系」のキャッチコピーはまだ印象深い。

2012年に発売された2代目ノートはトレンドだった過給ダウンサイジング+レスシリンダーを国産メーカーとしてはいち早く実現採用した。従来のL4・1.5Lに代わり、L3/1.2L直噴ミラーサイクル+SCという構成は当時のBセグ競合車よりも進んだ技術を投入していた。1.2Lながら72kW(98ps)/142Nm(14.5kgfm)という1.5L並みの動力性能を持ちながら25.2km/Lという低燃費を実現している。一方で標準仕様のE/Gは直噴・スーパーチャージャー無しの為先代モデルに対しては仕様ダウンである。

2代目ノートは初代のB_P/FからV_P/Fに変更し、軽量カを推進している。当時の雑誌で読んだが、
V_P/Fは新興国でのグローバル生産を見越して使用する鋼材の引っ張り強度が低くても性能を発揮するよう工夫されたP/Fなのだそうだ。不用意に穴を開けない、稜線を通す。更に歩留まりを良くしてコストダウンを図る。このような取り組みで引っ張り強度440MPa材で十分とのことだ。

大人っぽい内外装は、特に2010年に4代目となったマーチとの差別化を図ったのではないだろうか。
タイ生産に切り替えたこと以上に内外装・動的性能の仕様ダウンによって販売が苦戦を強いられていたからだ。元々、価格重視の層にマーチ、質感重視の層にはノートという戦略であったのだろう。マーチは予想以上の逆風が吹いたが、ノートは読みが当たって国内販売は好調をキープしている。

私も2012年当時、ノートの試乗をさせてもらった。ところが、不思議なことに全然力強さを感じなかった。一般走行ではCVTが常に変速してギクシャク。アクセルを開けて坂道を登らせるとエンジン回転が一気に上がってからトルクが立ち上がる。せっかくの高級デバイスが活かされていない乗り味であった。このエンジンに関しては積極的なフォロワーは生まれなかった。

個人的にはノートの存在感が薄れていく一途であったが、日産は2016年のマイナーチェンジでe-POWERを追加した。走る為の駆動力は100%電気モーターを使用。電気モーターの電気はLiイオン電池に蓄えてある。それではその電気はどのように発電するかというと「HR12DEエンジン」なのである。e-POWERとは、実質的にはハイブリッド車と変わりは無い。

電気モーターで走るが、エネルギー源はガソリンエンジンなのでガソリンスタンドという既存のインフラを活用でき、ガソリンタンクの容量さえ余裕があれば航続距離もEVを凌ぐ。逆にPHVではないので家庭で充電は出来ない。

ライバル車の動向をよく観察した上で満を持して日産が送り込むパワートレーンは、トヨタ式、ホンダ式ハイブリッドやマツダを始めとするクリーンディーゼル、そして軽自動車や競合車の高効率型ガソリンエンジンに十分対抗できる内容のものを選んだ。

●ハイブリッドと極力言いたくないらしい
鮮やかなオレンジのノートが表紙のカタログには

「電気自動車のまったく新しいカタチです」
「ガソリンエンジン車の感覚で、電気自動車を楽しめる」
「自ら発電する電気自動車」
「電気自動車ならではのe-POWER専用コックピット・・・」

という風に電気自動車という言葉がちりばめられているが、これは一般的にはシリーズハイブリッドである。



発電するだけにエンジンを使用すれば、電動車と呼んで問題ないが、e-POWERの方式は一般的にはシリーズハイブリッドと呼ぶほうが自動車工学的に正しい。しかし「ノート・ハイブリッド」と呼ばないのは、ハイブリッドと言う名称が一般化した現代にではノートと他のハイブリッド車「アクア」「フィット」と差別化できないと考えたのではないだろうか。

日産は元々ハイブリッドの技術ではトヨタ/ホンダに対して遅れを取っていた。2000年に100台限定のティーノハイブリッド以降、アルティマ、フーガ、スカイライン、エクストレイルにハイブリッド仕様を設定している。しかしリーフやe-NV200のような本格EVを擁し、「エコカーの本流はEVです!」と言い続けていた日産もピュアEVでは販売増が期待できず、ハイブリッドを追加したのだろう。仮に、リーフと同じ280kmの航続距離を与えたピュアEVを追加したところで、リーフとカニバリゼーションが起きるだけだ。ノートに実用的なHVを追加するアイデアは非常に有効だろう。リーフの顧客は食われないだろうし、リーフへのステップアップも期待できる。

しかしながらe-POWERが分類上はハイブリッド車であることをしっかり説明しないとユーザーを混乱させる事になってしまう。少なくともカタログにはハイブリッド車である旨は本カタログp50だけに記載されている。これはユーザーに「e-POWERはハイブリッドではなく電気自動車」という錯覚を引き起こす可能性は無いだろうか。個人的な感想だが、このカタログは少々不親切だと思う。

例えばBMWi3はレンジエクステンダーとしてガソリンエンジンを使用しているが、これは常用しない緊急用のエンジンでありこまめな充電を繰り返せばエンジンは起動しない。一方でe-POWERの場合、エンジンが必須の電動車であるため、やはり「シリーズハイブリッド」と明記した方が親切ではないだろうか。旧セレナのSハイブリッドの時も感じたがネーミングに対してユーザーをミスリードする傾向がある。

●マイナーチェンジされた内外装



ショールームでe-POWERメダリストを見る。従来型ノートの外装は好きな部類であったが、マイナーチェンジ版は顔つきが大きく変わった。日産のファミリーフェイスを採用。青いラインがエコカー感を出している。ヘッドライトとバンパーカバーの変更だが、バンパーの下部が四角く張り出したことで
印象が変わった。角型のフォグが目新しい。規格型の丸と比べてロー&ワイドな印象があって良い。

ヘッドライトはメダリストはLEDを採用。導光板の工夫で眉毛のような光り方をする。グレードマネジメントという意味ではもう少しヘッドライトで差別化してもよかったのでは無いかという気もする。後部もコンビランプとバンパーカバーの変更だが、前と似たようなテイストでまとめてある。e-POWERはFrドアに誇らしげにエンブレムが装着されていて違いを印象付ける。

ドアを開けて運転席に座った。マイナーチェンジの目玉はステアリングの変更とシフトレバーの変更だ。ステアリングはセレナと共通デザインで日産の精神的支柱のGT-Rと類似したデザインを採用している。シフトレバーはe-POWERのみ近年の電動車の標準になりつつある電気式シフトに置き換えられている。



メダリストは織物/合皮のシートが採用されている。フィニッシャー類や本革ステアリングなどの上級装備が奢られている。個人的にはドーナツ形状のA/C操作がどうしても好きになれない。I/Pセンターの丸い吹き出し口と相まって鳥山明の自画像(イラスト)に見えてしまい仕方ないのだ。これはデビュー当初から同じで、ちょっと上級で知的なコンパクトカーというキャラクターに似つかわしくないと感じている。マイナーチェンジしたマーチのように角型のレジスターにしてくれたら少しは変わったのになぁと思うと残念だ。



後席に座ってみた。標準的なコンパクトカー然としたシートだ。室内長は堂々の2065mm。例えばフィットは1935mmとノートの方が室内が大きい。ただし、後席は座らせ方がよくない。シート自体もトルソー角が寝ていて、それを直そうにもリクライニングがない。ヒールヒップ段差が小さいのにシート座面は水平角なのでサイサポートが不足して体重をお尻だけで支える形になる。足を投げ出せる広いフロアスペースがあるが、どうにも勿体無い。わざわざRrホイールの直上にRrヒップポイントを
持っていななくても良いのでは無いか。過去、プレミオやN BOXなど過剰なレッグスペースを
確保しながら他の快適性がむしろ下がった車が多いが、ノートもその傾向がある。

ライバルのアクアの場合、ヘッドクリアランスはギリギリOK。しかしバッテリーの影響で足引き性が悪くくつろげない。後席に人が座るならフィットが良いだろう。デミオもパッケージング自体はまずまずだが絶対的な寸法が足りない。

ノートがくつろげる後席かと聞かれると国産車の一般レベルという回答になる。平均乗車人数が少ないノートクラスだと問題にならないのかも知れない。

●「ひと踏み惚れ」に掛け値なし


ディーラーの方が試乗を薦めてくれたので試乗車へ。試乗車はオレンジのe-POWER Xグレードだ。

シートベルトを締め、シート位置、ミラー位置を合わせて起動スイッチをONに。エンジンが始動したが秒ほどでエンジンが切れた。

電動車特有のすべるような感覚で店舗から道路に出た。後方から名古屋走りのタクシーが迫ってきたのでこちらもアクセルを踏み足して加速させた。

速い

メーカー自ら「ひと踏み惚れ」と言っているが、掛け値なしの加速度を誇る。リーフ譲りのモータを最適化し、254Nm(25.9kgfm)のトルクを誇る。最高出力は80kW(109ps)と競合並みだが、とにかく出足の力強さは脱兎のごとく俊足。

この加速だけでノートe-POWERが好きになる人は少なくないのではないか。

市街地を走行したが、ノーマルモードで走る限り力強くも、違和感のない走りが楽しめる。エンジンはどうしても定期的に始動してしまうが、他のHVでも似た様なものなので気にならない。

SモードとECOモードを試した。ドライブモードセレクトは近年採用例が増えている。ボタンものは豊かさを感じやすいし面白い。両社に共通するのはアクセルオフの減速度が高く出る点だ。これは、回生を強く利かせる事で充電量を増やそうとする試みなのだが、慣れないでアクセルをポンと離すと若干急ブレーキに感じるような減速Gがかかる。日産も安全に配慮してブレーキランプが点灯するように
してあるそうだが、慣れると楽しく使えるのではないか。BMWのi3がまさに同様の制御にしてあるそうで、慣れると運転が楽、とのことだ。

高速道路ではアクセル踏み換えが少ないので一般道よりも疲労が少ない経験がある。これに似た効能が得られると説明を受けた。前方の信号が赤なので減速させるためアクセルを緩めたが、緩め方が大きすぎて手前で停止しそうになり、アクセルを踏み足した。何となく「電車でGOの再加速は減点です・・・」を思い出した。慣れるに従ってもっと上手に運転できるだろうし、面白さも手伝って好印象を受けた。もっとも、ノーマルモードの躾け方が良い為、SモードやECOモードで遊んでも問題ない。ドライブモードセレクトはノーマルをいかにきちんと作りこむかで決まる。

ノートe-POWERはEVに長けたメーカーとして、EV的な楽しみ方ができるよう味付けしてあり、
後発ならではの優位点がある。色んな乗り方を試した燃費は23.8km/L。このような燃費を普通にたたき出す最近のエコカーは驚きだ。

ところで、ノートe-POWERはなぜ1.2Lエンジンを採用したのだろうか。せめて1.0Lエンジンにすれば
日本での自動車税を1ランク落とすことが出来た。ラインナップを持っていなかった故なのかもしれないが、せっかく発電専用のエンジンなのだから、スズキの0.66Lまで行かなくても
もっと小さくして欲しかった。

動力性能以外では電子ミラー解禁に伴い、インナーミラーを電子化した「スマートルームミラー」を体験した。使い方は一般的な防眩ミラーと同じ。レバー操作ひとつでカメラの映像をインナーミラーと同じように利用することが出来る。

メリットとしては後部座席に乗員が居たとしてもインナーミラーに移りこむ事無く後方確認が出来る点だという。使用してみたが、解像度がいまいちで鏡と完全に置き換えられるレベルに無い。



また、ノートに限らないが最近のAピラーを寝かせたワンモーションフォルムの車はインナーミラーがドライバーのアイポイントに大変近い。こうなると、本来は視界の大部分がウインドシールドの風景
であるべきなのに、インナーミラーの割合が大きくなってしまい後ろを確認する前に前が確認できなくなってしまう。既に3代目プリウスで気になり、前愛車のDS3でも気になっていた。3代目プリウスのようなインナーミラーはガラス接着面とミラーの間にジョイントがあり、関節の可動範囲内で調整できるので出来るだけルーフヘッドライニングに寄せることで対応していた。DS3の場合、ジョイントが無い為、シートリフターを下げてヒップポイントで逃げる方策を採った。ノートの場合はジョイントがあるのだが、ミラーそのものの筐体が大きいので少し気になってしまう。このため、他人にこの装備は薦めないだろう。

自動ブレーキやLDWなどの便利装備がある一方、クルーズコントロールの設定が無い事に気づいた。北米仕様には設定があるはずなので日本向けの設定をお願いしたい。

運転して見てノートe-POWERのダイナミックな走りと新しい装備の使い勝手を確認できた。

●3種類のグレードだが実質2グレード

営業マンからグレードの説明を受けた。
グレードは下記3つ。

e-POWER S:177.2万円(税抜き164.1万円)
e-POWER X:195.9万円(税抜き181.4万円)
e-POWER MEDALIST:224.4万円(税抜き207.8万円)

公称燃費は燃費訴求のSのみ37.2km/LとアクアLを0.2km/L、フィットハイブリッドを0.8km/L上回っている。

他のグレードは34km/Lとなるが、アクアでOPTをつけると0.2km/L、フィットハイブリッドのHYBRID・Fパッケージを0.4km/L上回り、HV競合車の中で最も優れている。こんなに燃費が優れているのにカタログで燃費の数値を大きく取り上げていないのは例の件に配慮したのか、ノートe-POWERのダイナミックな走りを訴求する為なのか。個人的には燃費性能はカタログ値ではなく実燃費のカタログ燃費達成率で評価されるべきだと思う。ノートe-POWERの達成率が高いことを願う。

さて、せっかく37.2km/Lのノートe-POWER Sだが、装備が剥ぎ取られすぎてエアコンが装備されていない。OPTが選べなかったり、Rrウィンドゥが手巻きになるのは他社同様だがエアコンが無いのはさすがにやりすぎだ。カタログの主要装備表でマニュアルヒーター(ダイヤル式)という項目を見て驚いた。これでは営業車としてのニーズにもマッチせず、カタログ燃費の為だけのグレードと言えそうだ。しかし、朗報があり、来年1月生産分からはエアコンが追加装備されるそうだ。

実質的な選択肢はe-POWER Xかe-POWER MEDALISTの二択に絞られる。e-POWER Xと-POWER MEDALISTの大きな違いはバンパー加飾、LEDヘッドランプ、本革巻きステアリング、合皮シート、内装加飾、Rrのセンターアームレストなど。更にe-POWER MEDALISTではe-POWER Xに追加でNV性能向上アイテムが追加されているとの事だ。もともと電動走行が多いため、静かに走ることが出来なければ魅力は半減してしまう。とはいえ、試乗車がe-POWER Xだったが、十分静粛性があった。e-POWER Xでも十分前と後にNV対策が施され、サイドドアガラスの板厚アップも図られている。

個人的に注目したのはカウルルーバーのシールはこのクラスだと一般部のみシールして端末をカットしてしまうことが多かった。高級車なら型整形部をつけて完全にノイズを遮断するが、ノートの場合別材質のスポンジブロックをカットし、それを接着してルーバー両端に貼り付けている。ちゃっちいがNVには効果が期待できる。例えは人件費の安い国で手作業で作れば投資が抑えられるのかも知れない。経年で剥がれる恐れもあるが個人的に興味を持った。



試乗して必要十分だったので、個人的にはe-POWER Xを選ぶ。

MOPで寒冷地仕様、LEDヘッドランプ、15インチアルミ、SRSカーテンエアバッグ、ナビパックを選択。
DOPでマッドガード、ベーシックパック、ナビ、ETC、ボディコートとフォグランプを選択。

しめて249.5万円に到達した。諸費用を計上すると支払い総額260.4万円となった。仮にイメージカラーの特別塗装色オレンジを選択すると4.86万円の追加料金となる。ところでこの色、プレミアムコロナオレンジという名前がついている。日産の車のイメージカラーがコロナ!往年のBC戦争を知るものはびっくりするのではないだろうか。



さて、この260万円を超える総額はこのクラスのエコカーならありがちな金額だが、車両本体価格249.5万円とはかつてはハイソカーの価格帯であった。現行型マークXの最廉価グレード250.9万円とそんなに変わらない。同じ日産車ならセレナXとほぼ同額である。

マイナーチェンジで、新パワートレーン追加した例は2010年のフィットハイブリッドや2011年のデミオ・スカイアクティブを思い出す。これらは随分とイメージアップに寄与した記憶がある。この時は既存の低燃費車よりも低価格な魅力を全面に出していたが、近年は良い収益源と見なされているのか、質的向上がある代わりに価格も上に書いたように全体的に高めになっている。ポロなど欧州車のエントリークラスも選択肢に入るだろう。

ちなみに、見積もりをくれた営業さんの話ではここからコミコミ250万円くらいにはします、とのこと。値引きが渋いマツダデミオと対照的。

●この走りに惚れたのならアリ
幸運なことにノートe-POWER以外にもアクアやフィットハイブリッド、デミオXDにも試乗経験がある。
筆者は本当に購入するなら、MTの設定があり運転が楽しいデミオXDの6MTを選ぶ。

もし友人に購入を相談されたなら、e-POWERの加速性能に惚れたなら購入しても良いのでは?とアドバイスするだろう。

Rrシートの居住性や荷室の使い勝手を重視するならフィットハイブリッドを薦める。ミニバンは要らないという家族連れならこれで十分。ただ、品質面のネガは潰しきったという前提。

アクアはPWRモード無しのかったるい加速性能が気になる。前方投影面積を極限まで減らした為、キャビンの絞込みがきつく居住性もあまりよくないので、独身かカップルの使用にお勧め。

郊外在住であったり高速走行が多いならデミオがいいだろう。

●まとめ
これまでノートはDIG-Sエンジンのキャラ設定に失敗し、エコカー市場で埋没していたがe-POWER追加で一気に話題の中心に立つことができた。エコカーの本命はEVという拳は当分降ろせない。シリーズHVによって電動走行の魅力が広まれば日産のチャンスになりそうだ。ライバルメーカーにとっては強力なライバルの出現となった。ノートe-POWERの魅力は昔気質の車好きには分かりやすい。
しかし、現代の車離れ市場でノートがどのように評価されるのか非常に楽しみだ。
Posted at 2016/11/16 21:45:18 | コメント(3) | トラックバック(0) | 試乗 | 日記
2016年11月06日 イイね!
●コンパクトカーとクロカンのクロスオーバー
初代RAV4は、RVブーム真っ盛りの1994年5月に発売された。



RVとは「レクレーショナル・ビークル」の略で余暇を楽しむ車とでも訳せば良いだろうか。ステーションワゴン、ミニバン、クロカンがRVを構成しているのだが、今から25年ほど前にセダンとは違う
個性的な車が欲しい若者層、家族とレジャーを楽しみたいファミリー層がRVをこぞって買い求めた時代があったのだ。

特に悪路走行可能なクロカン、クロスカントリー車は

1.セダンとは違う個性的なスタイル
2.悪路走行の為のハードなメカニズム
3.視点が高く開放感がある

という特徴があり、セダンから買い換える人は少なくなかった。

ただし、クロカンは弱点も擁している。

1.大柄で小回りが利かず市街地で扱い難い
2.非力で動力性能が悪い、燃費が悪い
3.無骨なため都市に似合わない
4.車両価格が高く手が届き難い


「弱点?一周回ってそこがクロカンの魅力だろうが!」
「一体どんだけわがままやねん」
と当時のハードなクロカンファンが思ったか思わなかったかは不明だが、どんな車型でも幅広い顧客に選んでもらう為には敷居をどんどん下げていかねばならないし、違和感を少しでも払拭することが求められるのだ。

RAV4はこのような状況下で開発された。開発責任者は防衛庁の高機動車、メガクルーザーのCEを勤めた人物で趣味は山歩き、ダイビング、トライアルバイク、といういかにもアウトドアを愛していそうな人物であった。



発端は1989年のRAV-Fourというショーモデル。カリブベースながらコンパクトな3ドアボディ。コンパクトながらクロカンらしい力強いスタイリングのコントラストが面白い。助手席を畳めばトライアルバイクが積めるという試みもCEの趣味が反映されている。このショーモデルが好評を博し、本格的な検討が進められた。1991年11月に開発が動き出して1993年1月に1次試作車が完成。1993年秋の東京モーターショーに参考出品された後、1994年4月にラインオフという短いリードタイムで開発が進んでいる。

開発でイメージされたのはジープM151という軍用車だったという。M151ジープはモノコックボディと4輪独立懸架を持ち、シンプル・軽量かつオン/オフの走行性能を高めたモデルとのことだ。驚くべき事にRAV4の開発コードは152T(Frフェンダーライナーに152Tと打刻してあった)。M151へのリスペクトが開発コードにも表れているのかも知れない。

RAV4も新規開発のモノコックボディ、Frマクファーソン式ストラット/Rrダブルウィッシュボーン式の
4輪独立懸架を採用し、軽量コンパクトなクロカンとなった。もちろんRAV4は完全にM151の後継を目指した訳ではなく、タフで重厚長大なだけがクロカンでは無い、という事を示すアイコンとしてM151を引っ張り出してきたのではないだろうか。

こうして発売されたRAV4はキュートで都会的ながら、必要なオフロード性能を持ち、レビンやセリカの次の選択としても大ヒットした。



競合車としてはスズキエスクードが挙げられる。1988年にデビューし、当時のクロカンと比べると
コンパクトかつ都会的なスタイリングを持ちつつ、パートタイム式4WDによって本格的なオフロード性能も確保している。既にジムニーやジムニー1300のノウハウを生かしたエスクードは自らブルーオーシャンを切り拓き、市場に独自の地位を築いていた。

RAV4はそんなエスクードを横目に、エンジンを横置きで副変速機を省略するという思い切った割り切りを見せた。純然たる乗用車であるコロナ系のパワートレーン、ドライブトレーンを流用したフルタイム式4WDを採用。この見た目でエンジン横置きの副変速機なし、という構成は純然たるオフロードマニアから批判を受けるのに十分な内容であった。そもそもRAV4をエスクードに真っ向対決する競合車にするつもりは無く、街乗りで雰囲気重視の「なんちゃってヨンク」のパイオニアなのである。しかし、なんちゃってと謙遜しつつRAV4は一般的なクロカンユーザーが使用するような領域はカバーしている。しかし、それ以上の性能は明確に割り切ることで独特の存在感と敷居の低さを手に入れている。

当時はクロスオーバーという言葉すら無く、RAV4はクロカンのエントリーモデルという扱いであった。
2016にこのRAV4を丁寧に振り返ってみると、コンパクトカーとクロカンのクロスオーバーだったのだと気づく。ハイエースを1BOX界のクラウン、ランドクルーザーをクロカン界のクラウン、と例える人が居るが、初代RAV4はクロカン界のスターレット/カローラIIだと言えよう。

肝心の価格は、標準仕様の5MTが176.9万円、チルトステアリングとエアコンが省かれたE仕様の5MTが159.8万円。後に発売されたFF仕様は標準仕様で149.8万円であった。2000ccの3ドア車が149.8万円、4WDでも176.9万円であれば十分安い。

スターレットGiの5MTが133.2万円、Sスポーツセレクション4WDの5MTが133.1万円。カローラII ティアラの5MTが125.0万円、ティアラ4WDの5MTが151.4万円。カローラレビンSJの5MTが148.4万円、上級のGT-APEXの5MTだと179.4万円。セリカSS-Iの5MTの187.2万円であった。

当時の本流クロカンは価格帯がもう少し高くハイラックスサーフSSR-Vワイドボデーは258.2万円、
比較されやすいエスクードは166.6万円で、後に追加されたV6-2000は185.4万円だったので、
本格派クロカンよりも価格競争力が高いスペシャルティカーを検討する層からすると少しの追加料金で(なんちゃって)クロカンに乗れるなら魅力的な選択肢となりうる。また、本格クロカンに憧れを抱く層にとっても価格が安く、クロカンの敷居を下げる役割も果たしたと考えられる。

RAV4以降、CR-Vやトリビュートなど他社の新規参入を促し、FFベースの乗用車感覚の強いクロカンが世界的に受け入れられた。パイオニアたるRAV4は複数のFMCを経て、現在は世界4ヶ国で生産され、200ヶ国以上で販売されるグローバルなSUVブランドへ成長した。



●私のクロカン?原体験
RAV4に乗る前に、私の思い出話をしたい。私の伯父(昭和21年生まれ)は1993年頃、突如ハイラックス・ダブルキャブSSRを購入した。サーフではなくてダブルキャブと言うところが面白いのだが、もしかして資金不足だったのかもしれない(笑)



連休に奈良から埼玉の祖父宅へ泊まりに行くと伯父はハイラックスによく乗せてくれた。小学生時代の私がよじ登るように助手席に座ると、力強いグリルガードがフード先端で輝いていた。

伯父がエンジンを掛けると、ぶるるんと力強い揺れを感じてこいつはハードなオフローダーだと気づく。

利根川の河川敷に到着すると、伯父は車から降りてFrのハブをFREEからLOCKに切り替えた。そして室内の副変速機レバーを操作し4WDに切り替える。

ハイラックスは未舗装のダートを軽快に砂埃を巻き上げて疾走した。生い茂る草をなぎ倒して道なき道を走りながら熱い冒険の炎を感じた

伯父は副変速機を4Lに切り替えた。ハイラックスは歩くような速度で走行し、目の前の堤防を登りはじめた。当時の自分には壁面を垂直に登っているような感覚に見舞われた。ウインドシールドには空しか見えない。エンジンはガラガラとディーゼルらしい音を出しながら、何事も無かったかのように堤防の斜面を登った。次にUターンし斜面を下った。ウインドシールドは草しか見えない。シートベルトに捕まって、キャーキャー言いながら河川敷に戻った。

ハイラックスはすごい。クロカンはすごい!小学生ながらにこの車の持つ性能に魅せられた。伯父は私を膝に乗せてステアリングを持たせてくれた。数キロのオフロードを走るハイラックス。終点でUターンして何往復走ってもらったことだろう。そのときの私はどこかの荒野を走る冒険家のような心境だった。

クールな方に言わせれば、わざわざそんな乗り方をするのはナンセンスと一刀両断されても仕方ないが、子供時代の私の冒険心を最も刺激したのはハイラックスであった。(第二位は文字通り山を走り回ったマウンテンバイク)これが私のクロカン原体験であった。

●チョロQスタイルがハートを鷲掴み
試乗車は1996年式のRAV4 L標準車。全長3785mm(バンパーガード付)、全幅1695mm、全高1655mm、ホイールベース2200mmという横から見ると寸詰まりで前から見るとスクエアなプロポーションをしている。



フロントはショーモデルよりもグッと都会的な異形ヘッドライトを採用し、一見すると中級ハッチバック車のような洗練された意匠なのだが、素地色むき出しのFrバンパーがオフ車感を演出している。試乗車はグリルガードが装着されており、タフなRV感が更に高まっている。歩行者保護の観点から絶滅したグリルガードだが、妙に懐かしい。



サイドビューはクロカンらしさが強調される。ボディのベルトライン以下がボディ色と素地色のクラッディングパネルで2分割してあり、悪路走行時のチッピングに配慮している。ボディ色部分は曲面を多用しつつ、波打ったベルトラインでホイールの力強さを感じる。また、乗降性が優れている為にステップは廃止されて乗用車然としていてすっきりした印象である。Frピラーは立ててアップライトなパッケージに対応、太目のCTRピラーはルーフとつながりロールバー風だが、実際のロールバーの効果は無い。ルーフモールの外れやすさを考えれば、現代のボディ設計者ならNGを出す意匠だ。大径タイヤは16インチのスチールホイール。最低地上高も205mmと一般的な車止めなら干渉無く通過できる。

現代の目でRAV4を見ると、随分と寸詰まりに感じるが70ランクルやパジェロ、ハイラックスサーフにもショートボディが用意されているのが当たり前であり短さから来る違和感は当時の方が小さかったであろう。



リアビューは背負い式のスペアタイヤが目立つ。現代では旧態依然と言われる背負い式タイヤだが、RVらしさという面ではわざわざ室内置きスペアタイヤを背負い式に変更する車種があるほどRVのアイコンとして用いられる時代であった。RAV4では背負い式スペアタイヤありきの意匠となっている。同時期のカローラバンに似た小ぶりのコンビランプ、掃きだしフロアの横開きバックドアなどRV感が高い。ちなみに、欧州向けと日本向けのカタログを見比べるとスペアタイヤとLWRガーニッシュの形状が異なる。Rrのライセンスプレートの形状違いによって2種類存在するようでエンブレムの位置も異なっている。

RAV4のスタイリングは都会にあっても違和感が無く、オフロードでもカッコ良さを失わないバランスに調整されている。特に下半身を引き締める素地色のプロテクターは、部品点数や型投資額を考えるとコスト高であるものの、草地を走った際の傷付きに配慮して敢えてコストをかけた部分だそうだ。

特にこだわりを感じるのは、ドア上部とルーフサイドのブラックアウト塗装である。ショーモデルのRAV-Fourからの伝統?を守っている。

少し離れてRAV4を見ると、停止しているのに今にも動き出しそうな楽しさがあり、どこかに遊びに行きたくなるようなスタイリングだと感じる。個人的にはスマートなエンコパ部は犬の鼻を連想させて可愛く感じる。



試乗車のボディカラーはワインレッドマイカ。女性をターゲットに設定されたカラーリングとの事だが、
他に海をイメージしたブライトブルーメタリック、都会をイメージしたダークブルーマイカメタリックグラファイト、山をイメージしたダークグリーンマイカメタリックの4色がある。実際のRAV4で印象深いのは断然ブライトブルー。モデルライフの中で多数のカラーが追加され、パーソナルセレクションという無数のカラーの組み合わせを選択できる仕様もあったが、RAV4と言えばブライトブルーであり、いい意味でチャラい軽快なカラーリングだと思う。

●内装は当時のコストダウン全開内装




バブル崩壊を否応無く意識せざるを得ないRAV4の内装は「クロカンのスターレット」らしく、チープな材料が使われている。ブルーイッシュグレーの硬質プラスチックの塗装品でソフト要素は皆無。安っぽいと言われるが、車格的にはスターレットクラスなので当然である。センタークラスターとメーターバイザーは黒い硬質樹脂の塗装品が採用されて2トーンとなっているが、開発記によると若者がレジャーシーンで持ち込むラジカセをイメージしたという。言われて見れば黒くて角の丸い面は90年代のCDラジカセを連想させる。



計器盤はブルーの背景に速度計/回転計と燃料計/水温計が配置されるいたって一般的なものだ。

センタークラスターには、ごくごく一般的なレバー式のヒーコンパネルと1DINオーディオが配置されていた。当時既にレバー式はチープとの評判もあり、後年になってイメージスケッチどおりのダイヤル式に改められたものの、個人的には使用する上で何の不満も無い。

オーディオは下段に配置され1DINオーディオが装備。試乗車は6連のCDチェンジャーがついていたが、シート下のスペースはギリギリで12連は無理そう。ラジオとカセットとCDが楽しめる。

助手席側はトレイ面と実質的カップホルダー(安全上推奨されない)があるものの、クロカンにとって定番のI/Pアシストグリップが無い。本格オフロード走行を想定しないRAV4らしい割りきりである。

ドアトリムはアームレストを廃止しながらも、タオルが掛けられそうな幅広いグリップが着く。また、(壊れると評判の)ワイヤー式パワーウィンドゥを採用しているが、旧式の後付感が満載の弁当箱方式のパワーウィンドゥスイッチになっている。このあたりも、コストを下げつつもRAV4らしさを感じさせる部分だ。



スイッチ類はハザードとデフォッガー、デフロックスイッチ(ECT-S車はコントロールスイッチ)が配置されているが、ST170系コロナと同形状のスイッチが流用されており、親近感が沸いた。

思えば、ルームミラーはカローラ、ステアリングチルトレバーもカローラ、ドームランプもカローラなどなど流用のオンパレードであるが、別にこんな部分は流用でもいい。ラジカセインパネというのは言われて初めて気づくレベルだとしても、RAV4としての個性は確保できている。

ステアリングはメーカーオプションのSRSエアバッグ付ウレタンステアリングである。試乗車は1996年式だがデュアルエアバッグとABSが標準化される前のモデルなので標準は3本スポークの意匠がスタンダードだ。セリカとよく似た形状であるが、ホーンボタン別体式の廉価なものだ。シフトノブも塩ビ製の90年代トヨタ全開の一品。経年劣化でベトベトになる運命にあるが、試乗車はコンディションが良い。本来は革巻きの方が手になじむのだが、グレード違いのタイプGかエクストラツートンPKGのみ設定がある。

●絶妙のバランス感覚


RAV4を見て感じるのは1994年当時のレベルで「どこまでなら簡略化してもクロカンとして認識されるか?」が考え抜かれていると言うことである。

ショートボディに背負いタイヤのシルエットや対地アングルなどはクロカンのそれである。ところが副変速機を持たない4WD機構やモノコックボディ、都会派のデザイン処理など、クロカン色を一気に薄めた部分もある。

初代RAV4は1994年の視点でも正統なクロカンに見えるし、2016年の目で見ると相当本格的なSUVに見えるが、少々時代遅れに見える。2016年のSUVは更なる乗用化が進み、16インチ以上の大径タイヤを履くもののFFの方が主流でタイヤも背負わないのが当たり前。挿し色的な扱いでホイールアーチやドア下に小さく素地モールをあしらう程度だ。それよりも、ミニバン的な見晴らしの良さと
ステーションワゴン的な荷室の使い勝手が求められる。

過去にも取り上げたが、ブルーオーシャン戦略という本では、徹底したベンチマークにより省くところを省略してコストダウンし、力を入れる部分に投資をして今までに無い価値を創造することが今までに無い新商品を生む方法だと説いていた。足し算だけではなく引き算も行って魅力的な商品を生み出すことがブルーオーシャン戦略なのだろう。ブルーオーシャンを見つけて商品を投入すれば高い付加価値がつき、ビジネスとしても安定するが、ライバルがいる市場に同じような商品を投入しても広告費を掛けて価格競争をするしか市場拡大が出来なくなってしまう。初代RAV4は1994年当時のブルーオーシャンを見つけ出した商品であり、後のハリアー/RXという金脈に繋がっている。

仮にRAV4が従来のクロカンテイストをもっと色濃く訴求したモデルであったなら、モノコック構造のボディは選ばないだろうし、横置きのフルタイム4WDにもしないだろう。悪路走破性を高める為の補強で重くなった車体を走らせる為に2C-T型あたりのディーゼルエンジンを積み、小さなランクル、小さなハイラックスサーフとして市場に埋没したであろう。クロカンのスターレットという立ち位置ながら、
クロカン濃度のバランスが絶妙であった。

●ドライビングインプレッション

駐車場に止まっているRAV4はキュートだ。クリアが飛んだフード、まだら模様のバンパー、さび付いたホイールはご愛嬌。アパートの駐車場に止まっている姿をバルコニーから見ているだけで出かけたくなるのはデリカスターワゴンやカリーナサーフのようなRVの得意技。



運転席に座るとミニバン然としたヒップポイントが現代的だ。RAV4がデビューした当時にこのヒップポイントが味わえる車はクロカンかミニバン、そして最新ジャンルの軽トールワゴンだけであった。当時レビンやセリカに乗っていたスペシャルティカー保有層やセダンの乗降性がきつくなってきたベテラン層にとっては今までになかった快適さを提供したことだろう。ルーフも高くピラーも乗員を避けている。これは悪路走行を考慮した結果だが、快適性向上にも貢献している。シートは明るいブルーの織物のちょっと懐かしいテイストの生地でフレームは前後スライドとリクライニングしかなく、ハイトアジャスターは装備されない。シースルーヘッドレストも当時のスターレットに良く似たデザインだ。シートバックはポケットも無くビニールが貼ってある。

後席は後輪と後輪の間に座る関係で4人乗りだが、左右独立してリクライニングできる。前席と繋げてフルフラットになることが売りらしいが、試しに寝転んでみるとシートの凹凸を拾ってしまい、熟睡する為には下にマットを敷きたくなる。5人乗りのカローラやDS3ならRrシートに横向きに足を立てて寝ることが出来たが、RAV4はシート幅が狭くそれも叶わない。カタログでは可能性を感じるが実際に活躍するシーンは少なそうだ。車中泊や仮眠を考えるならクッションは必須だ。



全長を考えると後席は十分な広さがあり、カップホルダーや換気用のスイング窓があり快適性が高い。当時のリッターカークラス並みの居住性はあるといえそうだ。

キーをひねると、一発でエンジン始動。アイドリングは11万km走破したDS3と比べると雲泥の差。トヨタ自動車初のハイメカツインカムは800rpm位のアイドリングでも振動は少ない。

E/Gマウントに液封式を採用しているのが当時のトヨタの一般的なマウント構成である。RAV4は4点支持で20年ものだがマウントは生きている印象。

1速に入れてクラッチを繋ぐ。意外と極低速のトルクが細く発進時のエンストに気を遣う。1800rpm~2200rpm程度でシフトアップを繰り返すが、エンジンを回す必要性を感じない。

トヨタ初のハイメカツインカムエンジンである3S-FEはかつて両親が乗っていたライトエースノアにも搭載されて私も免許取立ての頃に相当乗ったのだが、低回転主体で走りたくなる。気持ちいいのは2000rpm近傍で、速度にすると50-60km/h程度だ。逆に、回転を上げ過ぎるとローギアードゆえに
ギクシャクしがちなので早め早めに5速に入れてしまったほうが良い。

1986年にカムリ/ビスタでデビューした3S-FEは、給排気効率の向上、コンパクトな燃焼室の実現など、原理的性能向上に対し愚直に取り組んだハイメカツインカムを採用している。16バルブDOHC・EFI、というカーマニアがわくわくするようなハイメカニズムを謳いながら、DOHCらしく気持ちよく回らないエンジンと言う評判が立った。

しかし、それこそが従来型スポーツツインカムとハイメカツインカムの差であり、高級メカニズムを量産化し、実用エンジンとしてのレベルアップを目指しているのでマニア筋ががっかりすることもまぁやむを得ないだろう。RAV4も途中からスポーツツインカムを搭載したTypeGが追加されている。

セダン系と比較するとエアクリを大型化したり、鍛造クランクシャフトを採用するなどクロカンとしてのタフさを損なわないように最適化している。

最高出力は135ps/6000rpm、最大トルクは18.5kgm/4400pmと、現代の2000ccクラスの実用エンジン(150ps/200Nm程度)と比べると非力な印象は否めないが、ユニットを共用するコロナ4WDと比較すると100kg軽い車体はRAV4を軽快に走らせる。

パワーウェイトレシオは1160kg/135ps=8.59kg/psとレビンSJの8.87kg/psを凌ぎ、セリカSS-Iの8.29kg/psに迫る勢いだ。ちなみに従来型クロカンの代表車種のであったハイラックスサーフV6は1850kg/150ps=12.2kg/ps、同じくディーゼルでは1860kg/130ps=14.3kg/ps、ランクル70の2ドアディーゼルでは1870kg/135ps=12.47kg/ps、直接的なライバルであるエスクードは1110kg/100ps=11.1kg/psである。

このことからRAV4の動力性能は従来のクロカンと比べると余裕があり、スペシャルティカーからの乗換えでも遜色が無いことが分かる。トルクも厚く上り坂を走っていてもシフトダウンするよりもそのままアクセルを踏み増したほうが速いシーンが多々あった。(ただし、こもり音が大きく車体も揺すられるのは不快でエンジンの力にボディがついてきていない。)



自宅の近所を走らせている分にはクロカンタイプの見た目ながら大衆車カローラのような気持ちで転がすことが出来る。気兼ねは一切不要というフレンドリーさが当時としては新しい。



特筆すべきは、ヒップポイントの高さから来る見晴らしの良さで、正真正銘クロカンのそれである。



また、運転姿勢もヒールヒップ段差が大きめで心地よい。ヒップポイントの高さだけではなくフロアの低さが効果的で、モノコック構造の恩恵を最も受ける部分であろう。フレーム式のクロカンでは、フレームの上にボディが乗るため、ヒップポイントは高くても、パッケージング的には足を投げ出したような座らせ方になりがちでこの部分が今日の世界的SUVブームに繋がっているのではと思う。



個人的にはミニバンに慣れ親しんでいた関係もあってRAV4の運転感覚は非常に懐かしい。この感覚のままMTで運転できるのは貴重な存在と言える。

また最小回転半径が5.0mと少々大きめな点は大径タイヤを履くクロカンらしい特徴ではないだろうか。コンパクトなボディの割りにタイヤの大きさが災いしている。片側2車線の道路をUターンしようとしても、おっとっと・・・となることがあった。ステアリングも重めなのが乗り心地は一般的な舗装路では快適で不快な突き上げを感じない。

本格クロカンとRAV4なら市街地で使用する限りRAV4が圧倒的に優れる。出足も良く扱いやすい上に、見晴らしの良さは本格クロカン譲りである。

岐阜県の温泉に入るため、遠乗りで試乗した。2速、3速でフル加速を試しながら本線合流。やっぱり3S-FEは回しても感動しないなぁと苦笑しつつ早々にシフトアップ。100km/h時のエンジン回転数はタコメーターによると3000rpm付近。まさにトヨタの一般的なコンパクトカーにありがちな回転域で、かつて乗っていたヴィッツ・ユーロスポーツも似たような回転域であった。追い越し車線に出て流れをリードしようとしたが、空気抵抗の大きさを感じた。CD値は0.39とのことで、このタイプの車の中では優秀な値なのだそうだ。



RAV4はホイールベースが2200mmと短い。当時の代表的軽自動車ダイハツミラですら2280mmのホイールベースを持っていたが、走破性を重視するクロカンのショートボディの場合、ホイールベースが短めの傾向がある。

軽よりも短いホイールベースで真直ぐ走るのか心配だったが、RAV4はどっしりと高速道路を走ることが出来る。重めのステアリングフィールは高速道路を気持ちよく走る為なんだろうなと妙に納得。

静粛性という観点では現代の車よりも数段劣るレベル。立ったピラーによる風きり音、3000rpmで回る3S-FEのエンジン音が容赦なくキャビンに侵入し、オーディオの音量が自然と上がっていく。特にタイヤの賞味期限が完全に切れているため、タイヤからの音も相当大きい。

高速走行は100km/h走行も問題なく行えるが、個人的にはタンクローリー(70km/h走行)の後ろを
のんびり走るのがお勧めだ。



ブレーキはFrが16インチのベンチレーテッド式ディスク、RrがL&T式ドラムなのだが、製動力は十分で不満は無い。

高速道路を降りてツインサンルーフを試した。RAV4の売りがツインサンルーフである。トヨタの一般的な電動ムーンルーフではなく、板金製の脱着式のサンルーフである。以前、運転させてもらったスギレンさんのタウンエースとよく似た金具を用いてサンルーフを外していく。

RAV4が評価されていたのは外したサンルーフをバックドアに収まりよく格納できる点である。説明書を見ながら、屋根を落としたり傷つけないように気を遣いながら格闘すること15分。無事サンルーフを取り外すことができた。

電動を諦めることでヘッドクリアランスを確保しつつ開口部が広いツインサンルーフを実現でき、若者に手が届きやすいよう低価格化を図っている。

一般的な電動ムーンルーフのオプション価格は8~10万円程度だが、RAV4の場合、3.8万円ほどでツインサンルーフが選べる。上記の通り、脱着が気遣い作業になるデメリットゆえに、後の改良では電動サンルーフに改められてしまったが、材質をアルミにすることで誰にでも気軽に脱着できるよう軽量化を図った。RAV4はモデルライフ途中で電動ムーンルーフ、ソフトトップなど屋根のバリエーションがやたらに多いのも特徴だ。



無事ツインサンルーフを取り外せたのでドヤ顔で郊外の山道を走らせた。10月の岐阜県は肌寒いが窓を閉めて足元からヒーターを軽くかけてやれば、快適にオープンエアを体感できる。オープンカーやオートバイには敵わないが、木の枝が風で擦れてサラサラと音を立てるのを聞きながらのドライブは何と心地のよいことか。かつて体験したルノートゥインゴのキャンバストップ程ではないが、耐候性と開放感を両立したツインサンルーフは魅力的だ。




50キロ規制、オレンジのセンターライン、適度なワインディングという快適なドライブコースを流すと、
RAV4の魅力が最も引き立つ。高い視界、疲れにくい運転姿勢、余裕のある動力性能にクイックなハンドリングが相まって気持ちいいのである。急なカーブを元気に曲がると比較的大きなロールをするようだ。特に外から見ると、随分大きなロールをしているのだが、室内からはそんなに大きなロールをしているように感じないのが意外だ。

温泉に行くためには対向車が来るとすれ違いに躊躇するような山道に入った。舗装はされているが木々が生い茂り昼でも薄暗い。こういうところでも本来はカローラでも十分走破可能なのだが、不思議なことにRAV4だと何故か頼もしい気持ちになる。事実、急坂を登るときも、2000ccエンジンと低めのギアレシオの恩恵で登坂性能に不安を覚えることは無いし、視点が高いのでカーブの見通しがよい。プラスαの安心感は本格クロカンと同じだ。

ただし、本格的なオフロードの性能は割りきりがあるため、河を渡ったり、泥濘地の急斜面の上り下りをやる実力は無い。RAV4のクロカンスタイルと一般道で感じる安心感が過去によく目にしたスタックして救援される「勘違いRAV4」を生んだのだなと妙に納得してしまった。

熱い温泉に浸かって身体を癒した後、用事があり名古屋の中心的な繁華街の栄までRAV4を走らせた。面白いのは都市に言ってもRAV4はしっくり来るところだ。車だらけの大通りでも見晴らしがよいので運転しやすく、コンパクトだから駐車もしやすい。そして名古屋の信号ダッシュにも余裕で追従できる。「中途半端ななんちゃってクロカン」はオールマイティな性能を持つ。

クロカンとしてのRAV4はオマケの領域ながら、現代のスタンバイ式4WDよりは4WD率(?)が高いのである程度の走破性はあるのでは無いかと期待してしまう気持ちもある。

猿投アドベンチャーフィールドへ出かける勇気も無いのでせめて自宅付近のセダン系なら躊躇して
走らないであろう傾斜角の路面に挑戦した。(クロカン的にはちょっとした斜面なのだろう)



ステアリングを切って左前タイヤを斜面に乗り上げたが、バンパーのアプローチアングルの余裕で何事も無く進入できた。ところが、今度はRr左タイヤが浮き上がり空転した。クラッチを繋いでもエンジン音がうなるだけで前に進めなかった。センターデフの効能により空転したタイヤだけに駆動力が伝わった。

そこでデフロックスイッチの出番となった。センタークラスターのスイッチを押すと作動灯が点灯して直結4WDとなる。パートタイム式で言うところの4Hモードである。この状態で再び斜面に挑戦すると、
駆動力がグイグイ伝わり斜面を走行することが出来た。ロードクリアランスの高さやデフロック機構によりRAV4は本格クロカン的な使い方もある程度こなせる。

その後は駆動系への負担が大きいので、早々にデフロックを解除したところ、チャイム音と共に通常のセンターデフが作動する状態に戻った。

他にも、未舗装の畦道なども走ってみたがセダン系と比べると走破性に余裕があり、「さすがクロカンだね」と感じそう。ただし、このような路面を走るとボディのあちこちから軋み音が叫び声のように聞こえてくる。モノコック構造ゆえにボディ全体でねじれを受けてしまう。日常的にオフロード走行をさせないほうが賢明だろう。

また、床裏を覗いてみると、UBC(アンダー・ボデー・コート)があまり塗布されていない。石ハネのチッピングをそのままフロアが受ける状態になっており、防錆性能としては現代の目見るとレベルの低さを感じる。現に、車体のあちこちにさびが認められ、外観の程度の割りに床裏のダメージの大きさが気になる。ガンガン遊びに出かけたものの数年で錆てしまっては勿体無い。例えるならアウトドアが大好きで知識も装備も豊富なんだけど、ものすごく敏感肌ですぐ被れる人、みたいな感じだろうか。

季節柄、積雪路は走行していないが、現代の雪道は圧雪路であればスタッドレスを履いたFFのヴィッツでも十分走れるので、RAV4なら必要十分プラスαの性能を持つであろう。

最後に、燃費はリッター10km/L~12km/L程度であった。スタンバイ式4WDを採用した現代のSUVなら更に2~3割は燃費がいいかもしれない。参考までに先日運転したNX200tのAWD車は100km/hキープの高速燃費で16.0km/Lを記録した。現代車が最も進歩しているのは主に燃費である。そもそもローギアードなミッションに重いセンターデフ付きフルタイム4WD、旧世代のエンジンに空気抵抗の悪いボディ・・・などと燃費がよくなる要素が何一つ無いが、カタログ燃費は10・15モードで12.6km/Lなので達成率9割となかなかのハイスコアをマーク。当時なら本格クロカンと比べると燃費は良いですよ、というセールストークになったであろう。

●まとめ
1982年生まれの私にとって1994年にデビューしたRAV4は子供の頃に彗星のようにデビューしたヒット車であった。両親共通の知人は脱サラして雪国に引っ越す際に出始めのRAV4を購入して持って行った。中学時代に通っていた塾の先生と教頭先生はRAV4 Vに乗っていた。街角のどこにでもあふれていた車であった。



また、90年代は私がティーンエイジャー時代を過ごした時代であり、RAV4に乗りながら当時のヒット曲を聴いてドライブするだけで当時の思い出が蘇った。数年間も聞いていないのにCDで曲が流れただけで口ずさめる時代、CDが売れてミリオンヒットが乱発していたあの時代を思い出した。何となくカローラがEP71を投影した私の幼少期の象徴であるならば、RAV4は私の思春期の少年時代を象徴する1台なのかもしれない。

当時既にカローラ好きの私もRVブームの影響を受けており、伯父のハイラックスによって「オフロードが走れる=かっこいい」という印象も刷り込まれていたのでRAV4は非常にかっこいい車だと感じていた。

しかし、私が段々と車に詳しくなる過程で当時のRAV4の持つハード的に軟派な機構や内装のチープさ、持ち前のお調子のよさが気になるようになり、一時、あまり好きな車ではなくなっていた。




2016年、改めてRAV4に乗っていると自分の中の評価が一巡してよく練られた車としての実力の高さを感じた。(オフ性能は下手したら相対的には本格派の領域に向上したかも知れない)

SUV人気は安定して10年以上続いており、ある新聞記事では今後の世界戦略車の真ん中を行くボディタイプになると予測していた。近年はセダンやハッチバックで世界戦略車を作ると、先進国と新興国のニーズの差によって大きな作り分けが必要とされ、同じ車種で対応しきれない事態が散見されている。現に、トヨタはヤリスを先進国と新興国で完全に作り分けている。しかし、SUVは大きく作り分ける事無く世界的にバラまく事が出来るのではないかと言うのだ。(本格的なオフロード性能が必要な車は別で用意する前提だ)



この状況を考えると、先駆者たる初代RAV4がいかに秀逸な企画であったかが分かる。もちろん、ラーダ・ニーヴァやスズキ・エスクードのようなコンパクトなクロカンというコンセプトの車は以前にもあったが、クロカンのよさを残しつつFFベースの都会派SUVの方向性を決定付けた初代RAV4は初代CR-Vと共に間違いなく時代を動かした一台と言えそうだ。

かつて街にあふれ返っていたRAV4は中古車として海外に輸出され続け、残個体が減少の一途を辿っている。今後、ますます貴重になっていくRAV4と再会できた事は私にとってとても幸せなことだと感じる。
Posted at 2016/11/06 23:13:51 | コメント(8) | トラックバック(0) | クルマ
2016年10月10日 イイね!
今日は珍しく有給休暇を取得し、
何となく行く当てもなくドライブしていたのですが、

個人的に好きな
「50キロ制限」
「センターラインオレンジ」
「適度なワインディング」
を流していたのですが、コンビニの駐車場に目立つ車が!

通り過ぎかけたコンビニに慌てて入りオーナーに声をかけてしまったのです。

それがこの車!



自分の車と同じ63年式GTのスーパーホワイト2(040)。
過去にハチマルミーティングで見かけて以来の同型車に血圧が上がり
脳の血管が切れるかと思いました。

話しかけたのは50代後半と思われるご夫婦。
最初は怪訝そうでしたが私の車の写真を見せて分かってもらえたようで
「どこでも好きなだけ写真を取ってくれていいよ」と言ってくださりました。

カローラGTは63年式、5.2万km、ECT-SのTEMS、PW付きです。
ハイパフォーマンスを示すエンブレム類は
取り外すという「カローラGT道」の真ん中を行く有様。



エアコンはオートエアコンを選択されています。
私のはマニュアル式なのでうらやましいです。



お子様が生まれたときに購入されたそうで、
以来28年間に亘り車庫保管で大切にされてきたようです。
一度、お子様が免許取立ての頃にガードレールに
ぶつけたことがあるそうですがしっかり修理されたとのこと。
ワンオーナーの歴史をたっぷりと聞かせて頂きました。
しかも、私が育った市の隣町にお住まいの方でした。



普段、珍しい車が居ても声をかけたりしませんが、
これを見てしまうと声をかけないわけには行きませんよね。

家族からは「こんなぼろい車嫌だ」と言われ続けてたとの事ですが、
私からも奥様にカローラGTの意義をご説明させていただきました。
何となくカローラGTの地位向上に役立てたら幸いです。

中古車市場でそこそこ高値で売られることもありますが、
価値ある車なので是非長く乗ってください、とお願いしてしまいました。

最後にもし、維持する上で部品が無いとか修理できないなど困ったことがあれば
相談してください、と私の名刺(ビジネス用ですが)をお渡ししてきました。
乗りっぱなしではなく、しっかりメンテされているカローラGT。
末永く愛用して欲しいなと思いました。

私も10年保有し、それなりに距離を重ねてまいりましたが、
ワンオーナーの天然様の偉大さの足元にも及びません。

なによりもなぜ今日と言う日にカローラGTじゃない方でドライブしていたのか・・・・。
最近、天候が悪くて中々カローラGTを連れ出せないことが悔やまれました。

しばらく乗っていないと拗ねてしまうので、来週あたりカバーを外そうかな!と思います。
(天気がよければ・・・・・)
Posted at 2016/10/10 22:17:58 | コメント(6) | トラックバック(0) | カローラ | クルマ
2016年10月01日 イイね!
●機械遺産に乗った!走った!
2016年8月7日、日本機械学会が選定する
歴史的に技術面で意義のある機械遺産としてスバル360が選ばれた。



スバル360は富士重工業が開発・製造した初の本格軽乗用車である。
航空機メーカーらしい徹底した軽量化によって
非力な360ccエンジンでも必要十分な性能を確保した
日本のフォルクスワーゲンとも言える車である。
同じく機械遺産の一つである0系新幹線と並んで
軍事技術の平和利用の例としても知られている。
1958年に発売されて以来、
12年間もの間フルモデルチェンジ無しで販売が続けられた。
一定の年齢以上の人なら、
ほぼ必ず「懐かしい」と言う街にあふれた存在であった。

「近所への下駄代わりは軽自動車」「ちゃんと乗れるのは登録車」
という暗黙の了解にチャレンジしたスバル360は、
軽自動車でありながら当時の水準でファーストカーとしての使用に
耐えうる性能を確保することができた初めての軽乗用車であった。

私にとってのスバル360とは、黄色で赤屋根のトミカで遊んだ記憶以上に、
中学生の頃、スバル360をテーマにした「てんとう虫が走った日」を読んだ事で
高専への進学を志してしまったという意味では
私の人生を変えた一台なのかもしれない。

機械遺産認定を記念(?)して1965年式スバル360スタンダードに
試乗したので感想文を残したい。


●ただそこにあるだけで笑顔になれる車


とある土曜日、待ち合わせ場所に現れたスバル360は、
想像以上のコンディションを保った個体であった。



スバル360は非常に多数の改良が行われた影響で
製造当時の年式を維持することが難しく、
維持の為に他年式の部品を使うことが多々あるそうだ。
今回試乗した個体はオリジナルパーツの純度が高い
1965年式スタンダードなのだとオーナー氏に教えていただいた。

思わず駆け寄って車をマジマジと見る。

全長×全幅×全高(mm)=3,000×1,300×2,000という
当時の軽自動車規格に沿った車体は今の目で見ると、
100円を入れたら動く遊園地の乗り物のよう小さい。
本来の軽自動車はオートバイのサイドカーのようなものをイメージした
自動車の代替品、すなわちビールに対するホッピーであった。

駐車スペースを大きく余らせるスバル360は
自動車まがいの代替品に留まる事は無い。
実にスタイリッシュで見所が多く、カワイイ!と思った後は
細部を詳細に検証したくなってしまう。
れっきとした乗用車のスバル360は
短い全長の割りにプロポーションが良く見える。
タイヤは四隅に追いやられ、可能な限りホイールベースを確保。
10インチタイヤを専用に新設しているので、
それまでの大径タイヤを履く軽自動車よりもプロポーションが良かった。

てんとう虫そっくりのスタイリングは徹底的に曲面だけで構成されている。
だから、見ているだけで頬が緩んでしまう。
正面から見ると、大型化したヘッドライトとクリアランスランプ、
切り起こしスリットと鋳造品の6連星エンブレムがついたラゲッジドアが表情豊かだ。



サイドに回るとVWのような流線型デザインではあるが、
VWのようにステップや前後フェンダーが別構成ではなく、
全てが統合されたツルンとした構成である。



全長のわりにまとまって見えるのは、
先に述べた10インチタイヤに加え、
前後フェンダーを繋ぐキャラクターラインがあるからだ。

単体では一切小ささを感じさせない。
ガラスの重量を減らす為にグラスエリアを最小化しているため、
スバル360のベルトラインは高めなのだが、
キャラクターラインが上手にバランスをとっているのは面白い。
クオーターガラスの後ろには吸気口がある。
動圧は稼げるが埃が心配なFrから空気を吸うのか、
フレッシュだが効率の悪いRrから空気を吸うのかは難しい判断だが、
スバル360の場合は中間的なサイドを選択している。

後ろから見ると、ちょこんとしたテールライト、エンジンの熱気抜き、
小型ナンバーが見える。エンブレムは斜めにSubaru360と表記。






軽量化に腐心したスバル360であるが、当時はそれでも高額商品。
しっかりと所有する喜びを感じさせるエンブレムが装備されている。

●脅威のスペース効率

スバル360に乗り込むためには後ろヒンジドアを操作する。
私は何回もセンターピラーの横に立ってしまったが、
正しくはFrタイヤの脇に立つのが正解だ。



自殺ドアという別名もある前開き式ドアは、
走行中ドアが開いてしまうと風圧で勝手にドアが全開まで開き
車外放出に繋がるとの事で現代ではこのような構造は見られなくなった。
異常時に良くない方向に発散する構造は安全上正しくないが、
スバル360が前開きを採用している理由は、乗降性が優れているからだ。

ドアを開くと、センターピラー下部にゴムバンドが着いている。
これが伸びきるとそれ以上ドアは開かない。
現代の一般的な車はフィーリング向上の為ドアチェックを設定しているが、
スバル360はその様な「重量物」は着いていない。
さらに、ヒンジが露出ずるアウターヒンジなので
バンドが無ければどこまでも開いてしまい、
自分のドアで自分の車体を凹ませてしまうだろう。



私の場合、シートに腰掛けた上でロッカーに手をついて
両足を曲げながら室内へ入れる。
スバル360の場合は足裁きの為に前方まで大きく開口部が採られている。
それでも寸法的に余裕があるとは言えず、ギリギリである。

シートは初期の洗濯板に表皮を貼り付けたようなデザインではなく、
パイプで構成されたフレームに青いビニールレザーが貼られた
セパレートシート装備されている。
当時からのフルオリジナルとのことだがオーナー氏曰く
そろそろ表皮を張り替える予定との事。
シートはスライド・リクライング共に不可。
上級グレードではシート座面が左右繋がったベンチタイプとなり
リクライニング機能も追加される。

インパネは一切の加飾が無い。
ボデー色に塗装されたインパネにはグレードによって
ラジオ、アシストグリップ、ウィンドゥウォッシャが着く。





スタンダードの場合はインパネには計器類、ワイパー、
ヘッドライト、灰皿のみが装備されている。
初期モデルと比べれば随分と乗用車らしいものになっているが、
スタンダードゆえに最低限の装備しか装備されない。

乗降時にFrホイールハウスと足が干渉しがちなので、
ビニール製のプロテクタが設定されている。
乗り込むためにここまで足を曲げる必要のある車は
初めてだなぁ、という感想を抱きながら運転席に座る。

次に私は足元スペースの狭さに驚いた。
いくら専用に小径タイヤを設けたからと言っても
ホイールベースが1800mmしかなければ、
ドライバーの足は横から見た状態で前輪とラップする位置に来る。
しかも全幅1300mm、前トレッド1140mであれば、
運転者の幅方向の足元スペースは単純計算して570mmしか無い事になる。
フロア中央には簡易な骨代わりのセンタートンネルがあるため、
実際の足元スペースは更に狭い事になる。



このスペースの中に全てオルガン式のA,B,Cペダルが配置されて運転操作する。
ステアリング中心もシートに腰掛けた座上センター位置から
オフセットしているので、2段階オフセットのパッケージングになる。
フロントシートの位置は車両外側から内側を向くように取り付けられており
ステアリング、ペダルとオフセットのきつい姿勢を
少しでも緩和させようと配慮している。

助手席も運転席と似たようなものだが、
ペダルが無い分足を奥の方まで投げ出せば多少は余裕がある。
スバル360のFrサスペンションはねじり棒ばねを用いた
フルトレーリングアーム式独立懸架である。
スペース効率のよいねじり棒ばねを利用しているので
これでも足元スペースが確保できているが、
例えばニーアクションのダブルウィッシュボーンは
アームと足が干渉して不成立。
リーフリジッドではリーフ長さを確保する為、
Frオーバーハングが増加、前輪位置が後退して不成立。
前輪がレッグスペースとラップしつつも
成立しているスバル360は手品の領域だ。



後席に座ると驚いた。
きちんと座っても膝がシートに当たらないし、
ヘッドクリアランスも十分確保できているのだ。
これは特筆すべき事である。

小型車を縮小コピーするだけでも軽自動車を作る事はできる。
しかし、キャビンが狭くなりすぎて人が乗ることは難しい。

スバル360が偉大なのは多少、窮屈な点はあれど、
全長×全幅×全高(mm)=3,000×1,300×2,000
という限られたスペースの中に大人4人を「きちんと」押し込んだ点にある。
巧みなパッケージングはスバル360の成功の最大の要因ではないだろうか。
4人が乗れなければファーストカーとなり得ず、量販することが難しい。
曲がりなりにも4人をキャビンに乗せ、外側は最低限の鋼材を用いて
自動車たる構造を持たせるという意味で
スバル360は当時としては「やりきった」といえるのでは無いか。


●スバル360の運転方法


いよいよスバル360の運転を開始する。
まず最初にオーナー氏のレクチャーを受け、
田んぼの畦道で練習を行った。

スバル360スタンダードは燃料ポンプを持たない。
燃料タンクは現代で言うアッパーバック(後席背もたれ後)に位置している。
自重で落下して燃料を供給するシステムになっている。

センタートンネルにある3つのレバーのうち、
Fと書かれたレバーをOFFからONに切り替えると燃料がエンジンへ供給される。
これはバイクに乗ったことのある人ならすんなり理解できるであろう。
バイクと同様、リザーブタンクもある。



Cと書かれたチョークを引き
アクセルを優しく開けながらキーを捻ればエンジン始動。
これはちょっと感動する瞬間だ。
アイドリングは少し吹かしてあげたほうが調子が良い。
暖気状況に応じてチョークは戻す。
私は中々エンジン始動が上手に出来なかったが、
オーナー氏はコツを掴んでおられるようで簡単に始動してしまう。
なんとも人間臭い乗り物だなぁと感じる。

クラッチを踏んでギアを1速に入れる。
1速に入れる際、注意しないと簡単にギア鳴りしてしまう。
ギア鳴りしない位置を感覚で覚えればスッと吸い込まれていく。
パッケージング上の理由で
助手席側に追いやられたPKBレバーを操作して発進する。

シフトパターンは左上がR、左下が1速、
右上が2速、右下が3速(トップ)となる。
スバルといえば横Hシフトパターンが有名だが、
1960年に改良されて一般的な縦Hパターンに改められている。

クラッチだけで発進することも可能なくらい
1速のギア比はローギアードで、
少しでもタイヤが回転していればすぐ2速に変速可能とのことだ。
なので1速:発進用、2速:低速用、3速:高速用という理解で問題ない。
リズミカルに走らせて大体40km/h程度で3速に入ってしまう。



畦道を恐る恐る走らせた。
ウインカーレバーはLHD車と同じステアリング左側にある。
このウインカーレバーを操作して交差点を曲がる。
スバル360が先進的だと感じるのは
最初から電球による方向指示器を採用している点だ。
当時はセマフォーと呼ばれるスイッチ操作で
棒がピラーから出てくる方向指示器も選択肢としては存在したが、
スバル360は先進的な方向指示器を備えていた。

クルクルステアリングを回すが、ノンパワステの割りに驚くほど軽い。
リアエンジンであることや軽量なこと、小径タイヤの恩恵などが全て
この軽さに繋がっているのだろう。最小回転半径は4m。
近年ではスズキのツインが近いサイズであるが、
ツインの最小回転半径は3.6m。
スバル360と同じホイールベースなのでスバルの方が値は悪い。

ツインは2人乗りのためパッケージング上問題が無いが、
スバル360は前席の足元スペースを確保する為に
タイヤ切れ角を小さく収めたのだろう。
さて、交差点の左折において2速では少し苦しいかと思い
徐行速度で1速に入れようとしたが、
ガリガリと盛大にギアを鳴らしてしまった。
大いに反省しつつ、畦道を数周練習した後、
一般交通に混ざってスバル360を走らせることになった。


●ついにドライビング体験


オーナー氏の道案内で郊外から山越えをして
海へ抜ける絶好のドライブコースを走った。

郊外の一般道路を走っていて信号待ちをしていると、
多くの車がこちらを見ているのだという視線を感じる。
歩行者がスマホをこちらに向けている姿も見える。

信号が青になると、習ったとおりに加速し3速に到達する。
平地であれば周囲の交通に伍して走る事は十分可能である。
初期型と比べると幾分かパワーアップして25psを誇る2ストロークエンジンは
軽快な音と白煙を上げながらポロポロと走っていく。
かつて50ccのオフロードバイクに乗っていた私は、
高回転のパワーバンドに入り急に力強くなるのではないかと考えていたが、
スバル360の場合、実によく躾けられておりピーキーな感じは全く抱かせない。
もちろん、高回転で元気になる感触はあるが、
それよりも低回転でちゃんとトルクが出ていて更にローギアードなギア比で
カバーしている印象を持った。

山道へ差し掛かった。オーナーは後続車が居ることを確認すると、
路肩へ車を寄せるよう指示をいただいた。
ハザードは無いのでウインカーを左に出して窓から手を出して合図をする。
「おもひでぽろぽろ」で見た光景を自分がやることになるとは!

気を取り直して再度発進する。3速では上りきれない坂道に出くわした。
回転合わせをして2速にシフトダウンする。
そうするとローギアードな為エンジンが吹けきってしまう恐れもあった。
2速でもきついシーンもあったが、
フルスロットルまでは少し遠慮する気持ちがあり(当たり前だろ)
床までスロットルを踏み込んだ訳では無いにしろ
途中、「がんばれ!」と応援したくなってしまった。



尤も、スバル360が発売される前に型式認定をとるための
走行試験は箱根の山を3人乗車で越える必要があるが、
無事に走破しているわけで実質的にはこの山道も登りきれるはずだ。

オーバーヒートしてしまうので途中で休憩してエンジンを冷やしてから
山道を登るという三丁目の夕日で読んだ状況と比べれば、
速度が落ちながらも山道を登るスバル360は実に頼もしいと言うべきなのだろう。

山道の頂上を越えると、次は下り坂である。
スバル360はそれまでの苦しい状況を忘れたかのように坂道を滑り下りる。
3速のエンジンブレーキを使って坂を下るが、
エンジンブレーキだけでは制動力が足りなくなってくる。
(そもそも焼きつきが怖い)
そこでサーボ無しのフットブレーキを恐る恐る操作したが、
意外に良く利き、車の速度が効果的に落ちる。
小さな10インチホイールの中のドラムブレーキは
最後までしっかりしたペダルの剛性感を失う事は無かった。
コーナーの手前で減速しコーナーに進入する際、
ステアリングの遊びが皆無でハンドリングが良い事に気づいた。

この時代の車としては3代目コロナと初代パブリカに乗った事がある。
サンプルがこれしか無いので偉そうなことは言えないが、
圧倒的にステアリングの正確性が高い。
後で調べたがラックアンドピニオン式を採用していると知った。
スペース効率の高さが採用の決め手らしいが、
当時の日本では採用例は少なく、他はルノー4CV位のものだったそうだ。
現代の目で見てもステアリングの気持ちよさは現代車の水準にあるが、
ラックアンドピニオン式以外の機構を採用している車を探す方が
難しい現代においては親しみやすい機構ゆえに当然の感想だろう。
むしろ、当時のドライバーからはどう評価されたのだろうか。

小径で太目のグリップを持つステアリングホイールが当たり前の現代と
比較すれば、大径で細身のステアリングホイールは頼りなさを感じると
思う人もいるかも知れないが、実際に握って操舵してみると、
意外なほど安心感がある。



それはラックアンドピニオンの切れ味の確かさだけでなく、
ステアリングホイール自体の工夫も一役買っていた。
触ってみると分かるのだが、ステアリング裏面には滑り止めの
形状が多数設定されている。

ステアリングを軽量化目的で闇雲に細くすると、
軽量な反面ドライバーに頼りなさを感じさせてしまいかねないが、
スバル360のそれは滑り止め形状があるおかげで不思議な安心感がある。

全体的なパフォーマンスとしては
制限速度の表示通り走るのがぴったりな乗り味だ。
実は制限速度+αでのコーナリングも試みているが、
現代のラジアルタイヤの恩恵なのか何事も無かったかの様に
コーナーを抜ける事ができている。
ある程度のリズムの中でのハイペース走行なら十分こなせる感触であった。

海沿いの道路を走る。
狭い急カーブの続く40km/h制限の道路だ。
この場所は数年前、トヨエースで走ったことがある。

そのときの感想文

スバル360で同じ場所を走ると気持ちよさが全然違う。
必要最小限の力で道幅に余裕のある道路を流す感じになってしまう。

私個人としては車は小さいほうがいいと思っている。
大きな車の魅力は十分認めつつ、
自分が乗る車は必要最小限の大きさに留めている。
そんな私にとってスバル360で道路を走るという事は
それだけで相当に気持ちがいい行為だ。

そんなことを感じているうちに漁港に到着した。


●ついついマニアックな視点でボディを見る


車を止めてじっくりとスバル360の細部に注目したい。
個人的に考えるスバル360の見所はボディだと考える。



外から見るとスバル360は可愛い曲面で構成されているが、
決して意匠の為の意匠ではない。
モノコック構造を突詰めた成果でありt0.6という薄板で
ボディを作り、強度を満足させる為の方策なのである。
このエピソードは余りにも有名でスバル360を知る人なら
殆どが知っていることなのかもしれない。

実は現代の車も外板はスバル360並の薄い鋼板でボディが作られている。
ところが、現代の自動車のボディは衝突安全の為に内板と外板の間に
幾つもの補強部材が通されている。
また、意匠上の理由で平べったい面でボディシェルを構成することもある。
幾ら中に補強材があるとは言え、
平べったい面を薄板で作るとベコつく心配がある。
昔ならキャラクターラインを入れて補強するやり方もあるが、
見えない裏側から熱硬化性のシートを貼り付け、
塗装焼付け炉で焼き固めることで薄板ながらしっかり感を出す技術がある。
更にデントリンフォースと言って
ベコつき対策の為の補強品を溶接することもある。
(意匠性というのものは車の存在価値を左右するほどの部分でもあり、
必要なら回りくどいことをすることも必要だと言う事は強調したい)

スバル360は衝突安全はほとんど考慮されないにしろ、
触ってみてベコベコして不安になるような事は無い。
これは驚くべき事で、極力丸みをつけることを徹底した成果だろう。

それでも偶然手にした月間自家用車創刊号(1959年)の復刻版によると、
スバル360のボディの薄さを指摘する声もあったようだ。
それによるとルノー:t0.7、トヨペット/ニッサン:t0.8~t0.9とのこと。
スバルは「他社とそんなに変わりません」と応えているが、
もし現代のボディ設計者がそれを読めば
「立派なゲージダウンによる軽量化だ」と反論することだろう。
軽く出来ているのに敢えて「ウチは他者並の厚い鉄板でできてる」
と反論するあたりに時代を感じる。

さて、スバル360は限られたスペースの中で大人を4人座らせる為に
車両のできるだけ前にドライバーを配置している。
先にも触れたが、前輪を最小化してホイールハウスの影響を
ごまかしながら、側面視で前輪とラップするように足を伸ばせるようにした。
平面視方向でオフセットがあるが、ここはどうしても目をつぶるしか無い。
トーボードは随分奥まで寸法があり、
足長長身の人物でも一度乗り込んでしまえば身体が収まるようになっている。

スバル360と言えばカワイイおにぎり型のフードが特徴的だが、
ここを開けるとスペアタイヤ、バッテリ、
油圧ブレーキのシリンダが配置されている。



もうここ以外に置けないし、これ以上何も置けない
というミニマムスペースが追求されている。

そこで私はスペアタイヤに注目した。
スペアタイヤを固定する為にバネが取り付けられている。
この取り付け機構としてバネ両端がフック形状になっており、
フックをスペアタイヤのリムとフレームに取り付けることで固定する。



フレーム側の受けはハット断面のステーの天井面に
切り起こし形状を設けバネの伸縮方向に平行に力を受けている。
切り起こしの部分は穴端と形状の間が狭く、金型の強度を考えると
もう少し余裕が欲しいが、かなり狭い間隔で溝を切り、穴を空けている。
だったら、いっその事別部品のBRKTを設定すればいいと言うのは甘えである。
コスト・質量が厳しいスバル360でその様なことをして許されるはずがない。
どうせバネを引っ掛けるだけなら穴を二箇所開ければ良いと考えてもおかしくない。
しかし、穴を二つ開けると強度が弱い部分が連続して出来てしまう。



スバル360が金型設計をいじめてまで切り起こしした理由を推定すると、
穴を連続して作りたくなかった他、ポンチで穴抜きすることにより発生する
スクラップを嫌ったのではないか?
仮に同じ穴サイズの穴を2箇所明ける案と穴が1箇所で済む
切り起こし案を比較すると捨ててしまう鉄板が少なくすむのは
後者であり、コスト的に有利な構造を採用している。
何となく眺めているだけでも色々なことを想像させてくれる。

話をラゲッジスペースに戻そう。
恥ずかしながら私はVWビートルや他のRR車の実例から
スバル360もここに荷室があると思い込んでいた。
ところが、どう考えてもここに荷物を置く気にはならない。
スバル360の荷物スペースはFrのダッシュボード下の棚か
Rrシートバック後方のパッケージトレイ上しか無い。
もともとドアの裏側が大きくえぐってあり、
収納スペースとして活用できたが1965年式では
ドアガラスの昇降機構が内蔵されており収納は減っている。

荷室の不足面は数少ないスバル360の弱点であった。
他社のRR車の場合、荷室を稼ぐために
フードを持ち上げなければなないが、その分ボデーは重くなる。
ガラスエリアを狭くしてまでボディを軽くしようとしている
富士重工のエンジニアは迷う事無く軽量設計を選んだのだろう。
フルモデルチェンジ版のR-2では
ラゲッジを稼ぐために平板なフードを備えている。

スバル360のルーフが樹脂製で後方のガラスまでもが
アクリルで代用されているというエピソードも非常に有名だ。
当初はルーフをガスケットだけで結合していたが、
経年変化で屋根が吹き飛んでしまう不具合があったそうで、
1965年式にはルーフとボディを繋ぐBRKTがある。



そんなに専門家でもないので応力が視える訳でもないが、
形状の駄肉の無さ、必要部分の骨の太さが良く分かる。
誰かが試行錯誤しながら紙粘土による手仕事で原型を作ったのかな?
と思える美しい形状だった。

スバル360のフロアはt1.2の一枚板とのことだ。
モノコックを外骨格の昆虫に例える人が多いが、
スバル360はまさに外骨格であり、フロアは薄皮1枚で構成されている。
センタートンネルはあるものの立ち壁も低く最小限。



現代のモノコック構造に近い初代カローラのホワイトボディは
トヨタ産業技術記念館で見ることが出来る。
カローラのボディは上下から見るとフロアに多数のクロスメンバーや
サイドメンバーが存在していることが分かる。



現代のモデルはさらに発展しビルトインフレームと呼べる程、
フロアに荷重の伝達経路になりそうなメンバーが通されている。

スバル360も剛性や衝突性能を良くしようと思えば幾らでも補強をつければ良い。
しかし、最低限文化的な乗用車である為には質量の無駄遣いは出来ない。
エンジンは360cc、18ps程度(開発当時)しか期待できない。
ゆえに富士重工の技術者は形状で勝負をすることにしたのだろう。

例えば、ペラペラの紙そのままでは簡単に折れ曲がるが、
その紙に適度に折り目をつければ
元よりも大きな力がかかっても形状を保つことが出来る。

この折り目を稜線と呼ぶが、稜線が綺麗に通っていればいるほど
荷重をスムースに流すことが出来て効率が良い。



スズキの今の新しいP/Fはメンバーを綺麗な稜線でつなぎ軽量化に役立てている。
また、1998年の9代目サニーは新P/Fを売りにしていたが、
前面衝突時にエネルギーを吸収する部材は多角形をしており、
稜線の多さで性能を高めようとした。
現代でもマツダの新世代P/Fは十字型の部材で同様の効果を謳っている。



ここで伝えたい点は、ペラペラの薄い鉄板にどのような形状を与えれば
求められる性能を出せるかと言うことを地道にトライした結果が
スバル360なのだということだ。

Frシート下を覘いてみた。
そこには上下方向の荷重をストレートに受けるため、
真直ぐ稜線を通したハット断面のステーが伸びていた。
荷重を最低限の部材で受けている。



また、スバル360のサイドシルはスカッフプレートのようなビード模様が入っている。
大人は踏まないだろうが、子供がここを踏んで乗り降りする事は十分ありうる。
浅いビードなので装飾目的の可能性もあるが、そうだとしても
スカッフプレート左右1セットの部品は削減できている。

シート下フロアの特徴的な模様も面剛性を持たせるためのビードであろう。
この面を余りにもハッキリした凹凸にしてしまうと、
面剛性強化の目的は果たすが
車輪の石跳ねによるチッピングで塗装が剥がれやすいため、
部分的になだらかにしているのではないかと予想する。
ただし、筆者が後席から乗降する際に足をかけると
一度だけ「ペコン」と面が飛び移るシーンがあった。



出来るだけ丸く形作ったスバル360と言えども、
床面を丸く作るわけにはいかない。
そこで板厚をt1.2におごった上で
パネルに模様を入れて強度を持たせている。

この時代の車はピラーの中に補強材を入れていないので、
剛性や強度は中と外の薄皮だけで負担させている。
こうした目でインテリアの内板面を見ると、
外装同様に丸みを持たせながら、各部を滑らかに繋いでいることが分かる。



ベルトライン、センターピラーの十字路は見ているだけで美しい。
現代のフルトリムの乗用車のピラーインナーやルーフサイドインナー
ではトリムに隠れる為に見栄えまでケアされないが、
スバル360は意匠面としての役割も持ちつつ、機能的な骨を通している。

それでは、スバル360は戦闘機のように
機能美だけを追求した車なのかと聞かれれば明確にノーと言える。

その一例を紹介しよう。
エンジンフードに設けられた熱気抜きは縦スリットになっているが、
そのままでは雨が直接エンジンにかかってしまい不都合なので、
1965年式ではフード内側に横スリットの別部品を取り付けている。



しかも、雨の進入を防ぐだけではなく、
目線の進入を防ぐ為にブラックアウトしている点は
機能だけでなく見栄えにも配慮している。



特徴的なエクステリアやルーフボデーでツートンカラーを実現するなど、
スバル360は1965年式なりのカッコよさを確保している点は、
見ているだけでちゃんと走るのか心配になるミニカーとは異なる。

今の日本の新型車であっても見栄えを無視してブラックアウト塗装を廃止して
数百円のコストダウンを図ろうとする車が後を絶たない。

スバル360の場合はフロアやホイールハウスを黒く塗っているが、
現行の低価格車でここまでちゃんと配慮できている車はそう多くない。
例えば今売られているコンパクトミニバンは
ラジエーターグリル奥にボデーカラーそのままのブレースが目立つ位置にある。
ブラックなら目立たないが、イメージカラーのイエローだと大いに目立つ。

オプションで2トーンカラーが選べるなど
デザインを売りにしている割にツメが甘く、
メッキのラジエーターグリルよりもその奥の不恰好な部品が
目立ってしまい、非常に残念な気持ちになる。
黒塗装というのは確かにコストがかかるが、
上手に使えば車をグッと高品質に見せることが出来る。

例えば販売価格を変えずに300円のコストダウンを
月間5000台生産する車に実施したとする。
年間6万台×300円=1800万円の利益が出る。
モデルライフ2年と仮定しても3600万円の投資を抑えることに成功するのだ。
たかが300円と言ってもそのコストダウンの効果は絶大なのだ。
逆に言えば、ちょっとした装備品を追加しただけでも
自動車メーカーは多大なる投資をしていることも示している。

しかし、300円かけたとしても1000円分の魅力に感じる装備もある。
その上で販価を500円アップに設定するとどうだろうか。
顧客からすれば1000円分のアップグレードを500円で得られ、
なおかつメーカーは200円利益向上により
モデルライフで4800万円の利益を生む。

近年ではマツダデミオはグリルからの中見えに対する配慮を
しっかりと対策しており、これを省略している競合車よりも
ずっと高そうに見せる事に成功している。
デミオはフィットやヴィッツ、アクア、ノートのセグメントに属するが
全体的な商品性では輸入コンパクトカーと肩を並べているように感じる。

スバル360に話題を戻すが、エンジンフードの黒塗装は
当時は当たり前の身だしなみだったのかもしれないが、
現代の目で見ると十分に本格的で本物感が漂っている。

また、Rrホイール前にストーンガードが取り付けられている。
スバル360のようにホイールよりもドア中央が絞り込まれた車だと、
Frタイヤが撥ねた石がRrホイールアーチに直撃するため、
チッピング傷が発生してすぐに錆びてしまう。
防錆技術が未熟な時代、チッピングは錆びの大敵である。
スバル360は最初から立派なストーンガードを取り付けている。
現代なら設計段階からロッカーモールを設定したり
車体中央部を膨らませて石はねに配慮しているが、
それでもデザイン上、石によるアタックが気になる場合、
耐チップテープを設定することがある。
当時は強いテープが存在しなかったこともあり、
立派なストーンガードが装備されているのだろう。

このようにスバル360は決して安ければ何でもやる、
というタイプの軽自動車ではなく本格志向であることが伝わってきた。
うまくコストをかけたり、コストをかけなかったりするセンスが優れているのだ。


●まとめ


半日、暗くなるまでスバル360と触れ合った後、
「オフミの〆は車談義ですよね」という
オーナー氏の計らいでアイスコーヒーを飲みながら
貴重な資料を見せていただいた。

1982年生まれの私が幼い頃は既に軽自動車はFF2BOXが当たり前。
批判を恐れずに書くとスバル360に対して
諸先輩方が抱く懐かしさを私は感じない。
むしろ、新鮮な気持ちで接することが出来た。

かつてのエンジニアがスバル360を
どのような車に仕上げたくて、
その為にどんな構造を取ればいいのか。
今よりも材料や技術・工法が限られている分だけ、
逆に安全や環境技術に対する制約が少ない条件下での
最適解がこれだ!という芯の強さを感じた。



何回も同じ事を書くが
本当にちゃんと大人が4人乗れて、
きちんと走れるのである。
1958年からのモデルライフの中では陳腐化し、
ライバルにリードされることもあったが、
それは1960年代終わりの話。
1958年に「10年進んだ軽乗用車」を生み出した
技術と努力は尊いものである。

確かに現代の優れた軽乗用車と比べると、
広さや速さ、安全性で劣るのは止むを得ない。
しかし、都市型コミューターとして活躍が期待されている超小型EVと
比べたとしてもスバル360は
れっきとした乗用車として通用する面を持っている。

私はカーシェアリングサービスを通じて
トヨタ車体のコムスを運転した事があるが、
こちらはあくまでも一人乗りメイン。
家族で出かける事はできない。
サイドドアもジッパーを開けて乗り込み、
窓も乗降用ジッパーを途中まで下げることで対応する。
乗り心地もサスストロークが無いに等しく
路面の凹凸を全て拾うかのようだ。
このような都市型コミューターと比べると、
スバル360は立派な乗用車が持つ味を再現していると言ってよい。
登場から60年近く経っているものの、
現代の最新の超小型EVよりも遥かに乗用車らしいのはさすがだ。
もちろん狙っている方向性が違うのだから当たり前なのだが、
大昔の「機械遺産」のポテンシャルを感じた。

スバル360が明確なコンセプトと
優れた技術を両立した機械遺産として我々の記憶に
残される理由がよく分かる1日であった。

このような素晴らしい車を運転する機会を与えていただき、
オーナー氏に深く感謝申し上げます。
Posted at 2016/10/01 01:12:37 | コメント(2) | トラックバック(0) | 試乗 | 日記
2016年08月27日 イイね!
突然だがDS3スポーツシックの燃費は公称値で13.7km/L。
ガソリンタンクの公称値は65L。
掛け算すると890.5kmということになり、
比較的長い足を持つと言える。

自動車のガソリンタンクの容量はどのように決まるか。
あまり具体的な性能目標を与えられることは少ない。
少し有名な例だと、1970年発売の2代目カローラの燃料タンクは45L。
1969年に東名高速道路が全線開通し、
東京から西宮まで高速道路で一気に走れるようになった。

移動中の給油は煩わしいものだし、SAで給油すると燃料単価が高い。

そこでいっその事無給湯で走れる燃費性能を訴求しようとしたそうだ。
東京~西宮間は540km、
当時のカローラの燃費が13.5km/Lだったとの事で40Lの燃料が必要になる。
ガス欠になったら大変なので5L余裕を見て45Lタンクが与えられたという。
現代でも概ね500~600km程度は走れるようなタンク容量になっているはずだ。
(つまり燃費が悪い大型車の燃料タンクがでかいのは航続距離を稼ぐため)

事情が異なるのは低燃費モデルで、一般仕様と燃費仕様では
燃料タンクの容量が異なる場合がある。
タンク容量を削減し、軽量化を目的とする場合だ。
レギュラーガソリンの比重は

比重: (15℃の場合)
レギュラーガソリン = 0.715 → 714.3g/L

・・・との事で仮に10L容量を減らせば7.13kgも軽量化できるのだ。

最近の例ではモデルライフ途中で追加された
ノア/ヴォクシーのエアロHV仕様は
標準ボデーのHV仕様と比べて燃料タンク容量が減らされている。(55L→50L)

下記は車両重量をまとめたものだ。
ノアG(7人乗):1570kg
ノアSi(7人乗):1600kg(G比+30kg)
ノアHV_G:1620kg(コンベ比+50kg)
ノアHV_Si:1620kg(コンベ比+20kg)

コンベGに対して大径ホイールを履き、
エアロパーツをつけたSiは
公称値で30kg質量が重くなる事が分かる。

また、コンベ→HVで比較すると、
GとSiではHV化に伴う重量増が控え目になっている。

この理由は燃費測定の際に用いる等価慣性重量の
ランクというものがあり、このランク如何で
燃費測定の条件の厳しさが変わってしまうというルールが関係している。
試験車両重量は車重+110kgなので、下記の通りである。

ノアG(7人乗):1680kg
ノアSi(7人乗):1710kg
ノアHV_G:1730kg
ノアHV_Si:1730kg

試験車両重量(kg) / 等価慣性重量(kg)
1,651 ~ 1,760 / 1,810
1,761 ~ 1,870 / 1,930

つまりノアは全グレードで等価慣性重量1810kgランクに収まる。

この等価慣性重量が大きいほど燃費試験結果は悪い結果が出やすい。
デビュー直後のノアには待望のHVが追加されたものの、
エアロ仕様が選べない点は市場で不評を得た。
もし、素直にベース+50kgでHV仕様のエアロを開発したとしても
試験車両重量が1760kgと等価慣性重量ランクぎりぎりになってしまう。
しかも、OPでリアエアコンを選ぶと10kg増になりランクが上がってしまう。
回避する為にはリアエアコンが選べないように仕様制約をかけるのも手だが、
商品性の観点からHV_Xが選べてHV_Siが仕様で劣るような事はできない。
かといって23.8km/Lというライバルに対して圧倒的に有利な燃費性能を
スポイルすることも出来ないし、そのために適合(ECUのセッティングを追加)
する工数もバカにならないだろう。

それでもライバルと比べてフラッグシップエンジン(HV)に
販売増が見込めるエアログレードが選べない状況を変えるため、
きわめて稀なケースだが、HV_Siの為に50L燃料タンクを新設、
更に16インチながら鍛造ホイールという軽量化アイテムを用いることで
20kgの軽量化を実施、等価慣性重量1810kgランクに留めることができた。
いわゆるエンスー筋が見向きもしないであろうモデルではあるが、
ユーザーの声がメーカーを動かした一例である。

他にも旧モデルのアルト(30L)とアルト・エコ(20L)は燃料タンクの容量が異なる。
少しでも軽くしたいという涙ぐましい燃費競争のための軽量化と
給油頻度や航続距離という利便性とのせめぎ合いがある。

かつて私も28Lタンクのヴィヴィオを所有していたが、
当時は遠乗りすれば500km走破もできる。
満タンにしたときにも3000円以内で給油できてお財布に優しい。
と結構満足していた。
満タンにする際、満タン容量が大きいと心理的に痛税感(?)が出てしまう。

当時、SSでアルバイトしていたので満タンで100L近く給油できる
ヘビーデューティクロカンのレシートを見て「ひえぇ」と恐れおののいていた。

話題をシトロエンDS3に戻すと、DS3は大き目の燃料タンクを持っており、
ズボラかつ長距離主体の自分にはピッタリだ。
自分が向かう先は大抵奈良か埼玉だったので目的地で給油すれば、
航続距離の限界を迎えることは無く、長距離でも精神的安心感がある。
昨年、仙台に行ったときも、丸一日高速道路を走り続けても余裕があった。

そんな訳で夏休みの自由研究として我がDS3は
1000km走りきれるのかを確かめるべく旅に出ることにした。

昼前に愛知を出発。伊勢湾岸道-東海環状道-中央道へ。
美しい山々を見ながら走ることが出来る中央道は個人的に好きな道路だ。
ギアは6速に入れておけば十分で、
時々追い越しの際に5速に落とすくらいのズボラなシフトで十分に走る。
1600ccという排気量を考えると確実に1クラス上の動力性能を持っている。

新車の頃と比較すると、ターボラグを感じる様になってきた。
6万km付近でE/Gチェックランプ点灯が頻発し、
吸気ポート清掃という比較的大きな保証修理を行った直後、
高速道路の合流で驚くほどの差を感じることができた。
10万kmを超えて再びアイドリングが不安定になり、
少しだけアクセルを開けた時にE/Gが大きく揺れる挙動を見せて
違和感を感じ、ディーラーにて今度はケミカルにてクリーニングを行ったそうだが、
前回ほどの感動を感じることは無かった。

そんな状況なので、全開加速を試みても、かつてのような高揚感は
中々得られない状況になっているが、国産の1500cc,1600ccクラスの
ハッチバックよりは動力性能に余裕があると感じる。

コーナーが連続する中央道だが、道が荒れていても
角のあるショックが乗員に伝わる事は無い点が優れている。
サスは新車時と比べるとヘタりを感じるが、それでも堅めで
「フランス車=ネコ足」という幻想を軽く打ち破ってくれる。

MINIのゴーカートフィールには及ばないが、フランス車らしからぬ
堅めのサスセッティングである一方、シートのクッションが分厚く、
フロアの振動をお尻に伝えない点においてピカ一の乗り心地を誇る。
一方で、肩のサポートは不足気味でコーナリング時に上体が大きく
揺さぶられる点からもDS3スポーツシックは速さを競うガチスポーツではなく、
動力性能の優秀さを余裕に振り分けた大人っぽい性格であるように感じる、

そのまま長野道へ分岐し、
DS3購入直後にフラッとドライブに出かけた事のある新潟方面へ。

途中、土産を購入し妙高高原へ。
妙高SAは愛知に比べれば天国のように涼しい。
芝生の駐車場があり、もう少し涼しければ一日中
ここで過ごせそうな爽やかなSAであった。

前日に太平洋を見た私は、翌日に日本海を見る事になった。

北陸道では初めてふぬわ体験したロングストレートが懐かしい。
友人が当時所有していた初代アウディTTは比較的軽がると
異次元へと誘ってくれたが、DS3は150ps程度で高回転でトルクを絞る
チューニングになっていたために真の高速域では苦しい。
また、ホイールベースが短いこともあり手に汗握る高速体験だった。

今回はクルーズコントロールを使ってのんびりと大人のクルージングを楽しんだ。
フランス車はクルコンの設定が幅広く、私が所有するクルマでは
初めてのクルコンつきであったが、日本車では叶わない自由な速度設定も相まって
非常に活用する装備である。

日本車ではクルコンが100km/hピッタリまでしか使うことができず、
実世界の高速道路では使い難い装備になっているが、
もともと国からの指導でその様な設定になっていると解釈されてきた。
ところが、改めて確認すると、国は一転して
「その様な指導はしていない。」、、、と掌を返してきたのは、
高速道路の制限速度を段階的に
引き上げようという流れを意識したものだろうか。
今後のニューモデルのクルコンは要チェックだ。

夕方になりあたりが薄暗くなってきた。
帰路は東海北陸道を縦断することに決めた。

途中、夕食を採って温泉に入り、心身ともに癒した後、
54本のトンネルを抜けて愛知へ帰還した。

その間、前方も後方もクルマが居らず一人きりのような感覚で
ドライブを楽しんだ。冬になると一面の雪景色に変わる。
圧雪路となった冬の東海北陸道を買ったばかりのスタッドレスで
走破した事を思い出した。
EPSがついていると4WDほどではないにせよ白川郷でも走ることが出来る。
ただ、ブレーキが利かず止まろうとして止まりきれなかったこともあった。

岐阜市、一宮市を抜け東名高速道路に合流。
交通量の多さに改めて「東海道メガロポリス」とか
「太平洋ベルト」という小学生時代に習った言葉が口をついて出てきた。
ここでは90キロ近傍でクルコンをセットしておけば
トラックにくっついて快適なクルージングを楽しめた。

そして伊勢湾岸に分岐してかつての通勤路を走るが、
一般的に良く知っている道とそうでない道ではコーナーのきつさ、
坂のきつさなど勝手知ったる分だけ早くスムースに走ることが出来る。
DS3は両者とも余裕のある動的性能でクリアしてしまうので
急いでいるときには最強のツールであるとも言えるのではないか。

丸一日高速を走った。自宅で783kmを走破することができた。



写真にもあるとおり燃費も実に良好であるため、
翌日、改めて近所のバイパスを走らせて1000km走行を試みた。
ひた走り燃料計の目盛りを一つ残して1000kmを達成した。



購入後4年半以上経つが、1000km走破した経験はあんまり記憶に無い。
1000km走りきれる車なのだ、という頼もしさを感じた。
ここまで行けば、そのままどこまで走りきれるか気になってしまう。
こちらもバイパスをドキドキしながら走行し、1035kmまで走ることが出来た。



クルマを軽くしたいメーカー側は燃料タンクを小さくしたがるが、
たっぷりした燃料タンク容量を与えられたDS3は国産類似セグメントの
車種と比べると長距離を一気に走るような(自分?)には向いているのだと思う。
Posted at 2016/08/27 23:18:47 | コメント(1) | トラックバック(0) | シトロエン | 日記
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