• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2005年04月28日

90秒、108Km/h、106人

90秒、108Km/h、106人 尼崎脱線衝突事故の救出活動が終わった。
死者106人。定刻から90秒の遅れを取り戻そうとした結果が、これだ。(補遺:後日重態で入院中の1人が亡くなり、死者数は107人となった)

 4日間の報道を眺めていていくつか非常に不愉快だったことがある。
第一に、JR西日本や一部のメディアは、最初からかなりバイアスのかかった情報を流していた。即ち、死亡が確認された運転手ひとりに全ての責めがあると言う印象形成を狙った発言だ。
 例えば、高見運転手は資格をとってからまだ11ヶ月、しかもその11ヶ月の間には100メーターのオーバーランをして処分を受けたり、車掌時代には乗客から「目がうつろ(=居眠り?)」と指摘され処分を受けた云々の話がそれだ。

 会社勤めをする者にとって、失策を理由に会社から処分を受けるなどというのは生半(なまなか)のことではない。しかもそれが、通常勤務を外されての再教育だともなれば「そんな奴に運転任せてやがったのか?!」と言うことになる。
 これが、非常に卑怯なトリックだったことが、昨日あたりからの報道で明らかになり始めた。
それが「日勤教育」と言う奴だ。関係者は「イジメ」などと表現していたが冗談じゃない。報道されている内容がそのとおりであるならば、「日勤教育」は再教育でもイジメでもない。
 しかも「処分」などと言ってはいるが、明確な基準もなく上長の胸三寸で決まるようなモノを、マトモな会社では「処分」だなんていわない。

あれは、リンチだ。

 『40メーターのオーバーランは車掌も口裏合わせして会社には8メーターと報告した、あとの問題は90秒の遅れだ。伊丹駅では急速バックをしたけど結局90秒遅れになっちまった。
 このままじゃ日勤教育というリンチをもう一度受けた上に運転士業務を辞めさせられる…とにかく尼崎に定刻に近く付けば、多少運転が荒くても文句ないだろ。制限速度の120Km/hまで上げれば少しは回復できるはずだ…』
死亡した高見運転手がそう考えていたとしても、少しも不思議じゃない。

 70Km/hに最高速度が制限された300rのカーブまでの直線区間は、上限120km/hが許されていることは各社が報道しているとおり。経験11ヶ月と言っても、上限70のカーブに120で入れるかどうかくらい、分かっていたはずだ。現に運転士は非常ブレーキまで使って減速を行なっている。

 第二に…新聞やテレビの報道では、なぜか108km/hでカーブに侵入したことと、直前の非常ブレーキ操作を切り離して、オーバーリミットの速度でカーブを「曲がろうとした」なんてことだけを問題視しているが、乗ってる乗り物は違うが「運転」と言う共通項を持つ身で言えば、運転士は70km/hまで速度を落とそうとしたけれど、間に合わなかったと考えた方がよほど筋が通っているように見える。
 つまり、運転士は「暴走」したんじゃあない。乾燥重量25t×7両プラス平均体重60キロ×約500人=大体200tの質量を120km/hから70km/hまで減速しようとしたが、恐らくブレーキをかけたのが遅すぎたのだ。
 事故を起こした編成の車輪は、ロックして滑っていたらしいとの報道もある。

 クルマは、ゴムのタイヤと路面との摩擦を使って加速し曲がり停止する。列車の場合は鉄の輪っかと鉄のレールの間の摩擦を使って同じ事をする。
 車の運転で、タイヤがロックするほどの制動をしながらハンドルを切ったらどうなるか。タイヤの摩擦(グリップ)力は進行方向への作用で使い切っているため、舵角を与えても向きが変わらない。だが、鉄道という奴はレールで無理矢理にでも進行方向を変えようとしてしまう。

 たびたびここで話題にしている、会社員レーサー氏にちょっと聞いてみた。思い切りブレーキを踏んで減速しながらハンドルを切るようなことすると、どうなる?と。
「旋回のためにグリップを使い切っている時にブレーキなんかかけたら、円周の外側に向けて吹っ飛ぶでしょうね」と彼は言った。
横転することもあるか?と重ねて聞くと「重心位置やブレーキングのタイミングによっては転がる可能性は十分ありますよ。尼崎の事故は、多分そういう感じだったんだと思います」との答えだった。
 そして「これは物理の、力の法則ですから。某局なんか随分ありえないデタラメ言ってますけど、バカかと思いますよ」と締めくくった。

 本当に、一連の報道ではバカとしか言いようのない解説を幾つも聞かされた。もとは警察情報っぽかったが「非常ブレーキをかけたことで遠心力が増大した」なんて、中学校からやりなおせと怒鳴りつけたくなるような脳足りん記事を掲載する大馬鹿新聞社もあった。そうテレビで発言する技術評論家なんて名乗ってる奴もいた。
 遠心力が増大するのは、角速度が大きくなった場合に起きることだ。速度は一定でも回転半径が途中から小さくなるとか、回転半径は一定でも旋回速度の方が上昇するとか、そういう場面で起こることだ。
 なんで回転半径が一定の条件下で制動をしてるのに、遠心力が増えるんだ、まったく。

 とまれ、これ以降報道の関心は本格的に、事故―脱線の原因分析(と被害補償ならびに責任追及)の方に移って行くだろう。
それはルーチンの流れだから仕方ないが、専門家を名乗るくせに基礎的な科学の知識にすら不自由してるようなバカに、これ以上発言の機会を与えるようなマネだけは絶対にやめてもらいたいと思う。

 背景にJR西日本のトチ狂った体質があったとしても105人もの乗客を死亡させる事故を起こした高見運転手が免罪されるものではないが、死人に口なし的に高見運転手ひとりに責めの全てをおっ被せて事たれりとするような論調だけは、厳に控えてもらいたいと願う。

 それらは、唐突かつ理不尽に命を奪われ、あるいは心身に傷を負った乗客やマンション住民やその肉親・関係者に対する冒涜に他ならないのだから。
ブログ一覧 | 事件・事故 | 日記
Posted at 2005/04/29 03:19:32

イイね!0件



今、あなたにおすすめ

この記事へのトラックバック

合理化の果てに From [ 運転士魂 ] 2005年5月5日 17:56
このゴールデンウィークはまずまずの天候に恵まれ、大勢のお客様にご利用いただきまし
ブログ人気記事

気になる車・・・(^^)1240
よっさん63さん

キリ番ゲット
2.0Sさん

令和6年能登半島地震に係る災害派遣 ...
どんみみさん

今日の晩酌🏠️🍺
brown3さん

Bryan Adams - One ...
kazoo zzさん

愛車と出会って8年!
ESQUIRE6318さん

この記事へのコメント

2005年5月5日 13:13
遅いコメント失礼します。
他の関連ブログも拝見しました。

毎度の事ですが、こういった事故や災害の時の報道の稚拙さには頭をかかえてしまいます。そしてTV局を中心としたマスコミの意識レベルの低さも、、、。
「専門家を呼んでしゃべらせる=自分たちの言葉ではないから責任はない」的なヤリ口も情けない限りです。

そしてひととおりのライブ報道が終わると、今度は被害者の方々がネタにされる、、、。被害者の方々の人生、、、それはドラマでしょう。ですが、報道機関の姿勢としては、他に(この事件に関してだけでも)報道すべき項目は山ほどあるように思います。

ちなみに、ごく一部ですが、「さすが!」と思わせる記事や報道を見る事ができたのは個人的に収穫でした。
乱文失礼しました。
コメントへの返答
2005年5月6日 11:05
コメントありがとうございます。
こちらも連休モードでお返事が遅くなってしまい申し訳ありません。

 まあ、専門家を名乗る人たちにしゃべらせるというのは、内容に説得力を持たせようという意図でしょうから、それはそれで構わないと僕は思っています。ただ、その喋らせた内容がどーしよーもないんじゃあ、全く目も当てられません。

 個人的には(以前の日記にもちょっと書きましたが)事件・事故の被害者となった方々は、決して「犠牲者○人」というような数字で表現されて御仕舞いという存在なんかじゃないことを思い起こさせる意味で、それを汲み取るような報道にも肯定的です。程度問題なんですけどね。
 特に、事件ならともかく事故の場合、絶対に感情論や情緒論に流されてはならない局面 ―原因究明や正しく責任の所在を明らかにすることなど― があるのですけれど、そこを踏み外しがちになっていることは不快を通り越して危険なことじゃないかと感じています。
 首都圏では視聴率1%が100万人に相当するとか言われている中、感情論で誰か・何かを断罪するような言論を垂れ流すとすればそれは、ペンの暴力どころか人民裁判、魔女狩りになりかねない。

 購読者数や視聴率を稼ぎたい気持ちも分かります(得てして報復論に迎合するような論調のほうがウケがいいようです)が、自分たちが発信する情報の内容についての責任、その重みというものを自覚して欲しいものだと思います。

プロフィール

「フェアレデーって本当に呼ばれてたの? http://cvw.jp/b/9433/47108671/
何シテル?   07/24 21:51
曲面の綺麗な旧い車が好き、エレガンスのある車が好き。そんなこんなでユーノス500に乗りつづけ、もう……何年だ?  気がつけば屋根のない車まで併有。いつまで乗り...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2024/4 >>

 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    

リンク・クリップ

Automotive Design 
カテゴリ:新しい車関連
2003/08/09 00:21:12
 
All The Web 
カテゴリ:便利
2002/12/27 14:03:26
 
Hubble Space Telescope Public Pictures 
カテゴリ:科学・文化・芸術
2002/11/08 15:59:43
 

愛車一覧

マツダ ロードスター マツダ ロードスター
2005年10月、発作的に衝動買いしてしまいました。 いい車だなぁと思ってはいたものの所 ...
マツダ ユーノス500 マツダ ユーノス500
気が付けばデビューはもう19年前。 最新の車とは比べるべくもありません。 ガタガタゴトゴ ...
マツダ アテンザセダン マツダ アテンザセダン
例によって例のごとく、借り物の車での「パートタイム・オーナー」です。レンタルしたのは10 ...
マツダ ランティス マツダ ランティス
俄かオーナー経験は僅か3週間で終わりましたが、とてもいい車です。 代車だったので、コンデ ...
ヘルプ利用規約サイトマップ

あなたの愛車、今いくら?

複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!

あなたの愛車、今いくら?
メーカー
モデル
年式
走行距離(km)
© LY Corporation