惰眠のブログ一覧

国会は会期末だそうだ。
先のサミットで唐突に総理が言い出した、自衛隊の多国籍軍参加に関する法改正を押っ取り刀で押し通すべく、政府与党は調整作業に入った由、午後のニュースは伝えていた。

　我が国総理大臣閣下のおっしゃることには、多国籍軍に参加しても自衛隊の指揮命令権は日本国政府が留保している由。
武力鎮圧行動には参加せず、人道復興援助のみを行うのであるから憲法にも抵触しない由。

　多国籍軍と呼ぼうと、あるいは有志連合と呼ぼうと構わないけれども、一体全体一つのチームとして軍事行動を行おうと言う状況下において、その一部がヘッドクオーターから分離した独自の指揮命令権の元に服するなんてことがありうるのか。現実問題として。
　「復興支援事業」をやってるその現場がゲリラ戦の交戦地域になったときに、「多国籍軍の一部」は「自衛のために止むを得ない範囲」の軍事行動しか取らず、他国の部隊が戦闘を鎮圧するのを傍観する、なんてことがありうるのか。
　或いは、部隊が多大な損害を受けたときに多国籍軍の中核をなす国の思惑いかんに関わらず「多国籍軍の一部」たる自衛隊を引き上げることが可能なのか？
　集団的自衛権行使の問題をクリアするために、物資弾薬輸送手段のいずれも、他国出身部隊とは相互提供せずに作戦行動を取りつづけられるのだろうか。物資集積も兵站も、多国籍軍全体の計画とは独立の系統を確立することが可能だと言うのだろうか。

　軍事の常識からすれば、いずれも否である。絶対にありえない。そんなことができると思っているのは、それこそ平和ボケの証左だ。救いがたいまでの平和ボケぶりである。
「統合司令部」の日本語訳をいじくり回せば法律問題をクリアできるとばかりの答弁を繰り返す政府答弁には反吐が出る。
戦車を特車と命名すれば戦力に当たらないのだとしたバカ答弁を下回る愚劣さだ。
　言葉尻の言い逃ればかりに狂奔し、実際に目を向けようとしない―あるいは目を向けさせようとしない―など、国を誤る恐れがある、なんて悠長な感想を言ってる場合じゃない。
　長き太平に浸るうち平和ボケしたのは誰か。少なくとも、それは日本の普通の人たちではない。
　戦争の実際については初歩的な知識すらないくせに「戦争にも協力しなくちゃ」なんて事を言い出し、台詞ばかりは無闇矢鱈に勇ましいプロパガンダを声高にぶち上げつづける男こそ、平和ボケの最たるものだ。

　百歩譲って統合司令部の指揮命令権から独立した命令系統を、日本国政府は自衛隊に対して確立し得ると、法理の上で肯定したとしよう。
　では、その日本の言い分を、一体どこの誰が保証してくれるのか。多国籍軍の司令部は、そう言う日本のお国の事情を酌んで「思ったとおりに動かない手足」を自分の組織に組み込んでおくことを容認しているのか。日本国政府の「勝手な」命令を認めるとの担保がサミットの場で取り付けられていると言うのか。
もしそうであるのなら、なぜ小泉は国会の場でそれと明言しないのか。

　イラク特措法成立の過程で、我が国国会はついに本質に関わる具体的な論議を行わなかった。そうした中、自衛隊は未だにゲリラ戦の続くイラクの地へと派遣されていった。
　さあ、一歩前進だ。実質的な戦争地帯に自衛隊が出動したぞ。
それじゃあ、特措法の文言を少しいじって、今度は多国籍軍に参加しよう。これで2歩前進だ。
　憲法違反？国会軽視？国民無視？そんなの、既成事実の前には無力なもんさ。
政治責任？そんなことは「100年後の歴史家の判断に委ねる」とでも言っとけばいいのさ。
　さ～て、それじゃ3歩目にはナニをしようかな？……。

　自衛隊が、海外の戦闘地域に派遣されたことの是非については、僕はいまここでは敢えて論じない。
だが、最初に派遣を決めたときと同じことを、今度は更に荒っぽく―上品に言えば、だが―繰り返している小泉純一郎と言う男と、それに追随する連中の不義無道に関しては、重ねて、何度でも「否」を申し上げる。
　詭弁と欺瞞と煽動と無恥しかない今の政府に、この国が貶められていくのを、僕は我慢がならない。無力ではあっても無力なりに否を唱えつづける。