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惰眠のブログ一覧

2008年03月27日 イイね!

ナマで実感されるのは怖いだろう

ナマで実感されるのは怖いだろうガソリン税の暫定税率部分に関する与野党のせめぎ合いは今もって決着の目が見えず、このまま行けば新年度からは「元々法律に定められたとおり」の、「本来のガソリン税額」だけしか国は徴収できなくなる。その差額、リッターあたり25円10銭。

 原付や自動二輪を別にすれば、1リッター2リッターという単位で継ぎ足し給油する人はまぁいないだろうから、仮にメーターの表示を見て「ボチボチ燃料が心細いな」と思って給油したときのアベレージを(僕の場合に割と近い)45リッターとした場合、暫定税率が継続されて「余分」に税金を「取られて」いる現状に比べて千と百円少々安くなる。

 今はまだ机上の計算だけの話なのだけれども、実際にこれが起こった時にサイフが感じる1000円の支出の差の実感は、かなりインパクトがあるんじゃないだろうか。五千円札出して、さらに千円札2枚足して、それだけじゃ足りなくて小銭も払うのと(リッター単価159円を想定)五千円札と千円札を一枚ずつ、それと五十円硬貨一枚で済むのとでは、肌身のナマの感触として「ああ、俺たちは『暫定』の口実で35年もの間、これだけ『余分』に払わされてきたのか」と相当多くの人がリアリスティックに実感すると思う。

 で、だ。政府与党は今、この暫定の税率維持のためにひっちゃきになっている。日切れのタイム・リミットを迎えて暫定税率の『空白』を生む事態になったとしても、元の(本則ではなくて暫定込みの)税率に戻すために頑張りまくるだろう。
 さーて、それが消費者である有権者国民に、どんな風に映るかな。「ザンテイ」なんて姑息なテクニックで給油のたびに毎度毎度1000円以上も『余分』の税金を払わされてたんだってことをサイフの実感で知ってしまった有権者から、もう一遍、安くなった筈の税金分を改めて取り立てなおす……一気に千円以上の値上げを「押し付けられる」と、理屈はともかく肌身で感じさせてしまうとなると。

 一遍下がったものを改めてもう一度上げなおす、ある意味政府与党としては避けられない対応を取ることが、今の内閣の支持率のみならず次の総選挙にらみの中では与党全体にとって、かなりのっぴきならない事態を引き起こすんじゃなかろうか。暫定税率を一日たりとも途切れさせまいと死に物狂いになっているのも、そう考えると頷ける。

 しかし、それにしても。所謂55年体制の国会運営には昨今否定的な評価ばかりしか見ないが、少なくとも国会を「回す」知恵や工夫が――それを寝技と呼ぼうが水面下の談合馴れ合いと呼ぼうが――あった。それと比べると、今の国会の有様は、一つ覚えのように中央一点突破しか芸がないように見受けられる。
 でもって、それが通用しないとなると「野党が何を考えているか理解できない」だの「現実無視」だのと、共産党あたりが好んで使う手垢にまみれた糾弾の決まり文句よろしくヒステリックな台詞を会見で口にしてしまうなど、本当に知恵のない人たち、汗のかき方を知らない人たちばかりが今の自民党中枢を占めているんだなぁということを露呈する破目になる。

 思うに「ワンフレーズポリティックス」の小泉政権で圧倒的な議席数を占めるにいたった時から、議会工作を行うという、ごく当たり前のアタマの使い方をしなくなってしまった、頭の使い方を忘れてしまったことが、いまのみっともない有様の背景にあるんだろうという気がしている。

 そういう意味じゃ、この状況を上手いこと生み出した小沢一郎を初めとする民主党執行部は「政治の場面でのケンカの仕方」をよく知ってるな、上手だな、と思うのだった。さすが、経世会で金丸元副総裁の秘蔵っ子として鍛えられてきただけのことはある。好き嫌いは別にして、またその主張への賛否は別にして、小沢一郎と言う政治家はやはり「格が違う」と思わずにいられない。
Posted at 2008/03/27 19:05:56 | コメント(0) | トラックバック(0) | ふと思ったこと | 日記
2008年03月26日 イイね!

新レンズ運用開始

新レンズ運用開始……と言うタイトルで一眼レフの交換レンズを添付画像に使っているけれど、新たに運用を開始したレンズはカメラのものではなくて眼鏡のそれだったりする。先月受診した人間ドックでの測定では、何となく気にはなっていた視力の低下を「矯正後でも0.6」と免許が更新できない恐れもあるハッキリした数字で突きつけられてもいた。幸い更新は乗り切ったのだけれども、車の運転を続ける以上は形式的には条件を満たしているだけでは全く不十分なわけで、ちょっと大枚をはたくことにした。

 前に眼鏡を作ったときも、そのあと度が進んでレンズだけを新調したときもそうだったのだけれども、眼鏡屋の測定と言うのは、矯正器具を製作するわけだから当然かもしれないけども実にシステマチックでしっかりしている。計測装置も中々大したもんで、健康診断時の視力測定なんて、まるでおままごとだ。
 今回の計測で分かったのだけれども、相対的に利き目である右の近視の度合いが左よりも強く、左のほうは右に比べて乱視が強いということだった。

 ところで、俗に「遠近切り替え」とか「両用」レンズなんて言われるものもあるくらいで、手許と中遠方では補正のかけ方が違ってくるのだけれども、その境目がどの変化と言うと、手を真っ直ぐ前に伸ばしたくらいの距離、だいたい50~60センチが境目になるとのこと。
 近めに都合のいい補正をかけると遠目が厳しくなり、遠めに有利なレンズにすると手回りで補正が不十分になる二律背反関係にあるのだそうだ。んで、今使っている眼鏡のレンズは「運転することも考えて、やや遠目の補正にも色気を出しているが、基本的にはデスク仕事で困らない」仕様だ。ある意味「どっちつかず」といえないこともない。

 新しく作った眼鏡は、現用の眼鏡を継続使用することを前提にして、やや遠方指向のレンズにしてもらった。んで実際に掛けてみると、3メーターとか5メーターとか先の像が、これまでになくくっきり見えて嬉しくなる。
 もっとも、嬉しくなった直後に「学生時代は眼鏡なしでこれ以上にはっきり見えてたのにな……」と思ってしまって、軽く落ち込むのであるが。

 んで、今日出勤して初めてデスクワークでの使い勝手を試すことになったのだが……うわぁ、事前に聞いていた補正の特性どおりだ。数メーター先に置かれた職場のテレビモニターなんかは以前にも増してはっきりシャープに見える反面、手元のパソコンのモニター表示はむしろ若干見づらくなっている。やっぱり当初の予定通り眼鏡の「二刀流」を使うのがいいようだ。……これでまた帰って度が進んだりしたらイヤなんだけども。
Posted at 2008/03/26 14:47:36 | コメント(1) | トラックバック(0) | 身の回りの出来事 | 日記
2008年03月24日 イイね!

Zoom Zoom Evolution 過去の自動車デザインと言う「遺産」

Zoom Zoom Evolution 過去の自動車デザインと言う「遺産」承前。河岡先生との話の続きをば。

 折角の機会なので、このところモヤモヤしていた考えを、プロフェッショナルな人の観点からはどのように見えるのか少し聞かせてもらいたいと思って尋ねた。
ポイントは二つ。イタルデザインのジュジャーロのデザインをはじめ、往年のスター・デザイナーの作品が、最早魅力的には見えなくなってきていて『老い』を感じさせる点。これは既に前項で書いた。
 一人のきわめて優れたタレントに全面依存してしまうと、その人のタレント(才能)が枯れてきたときに目も当てられないことになってしまう、そういう意味でパトリック・ル=ケモンを擁したルノーは今、難しい局面に差し掛かっているとも仰る。言われてみれば、確かに……。そういえば、アルファ・ロメオで名声を築きセアトに移籍したワルター・デ=シルヴァも、その後余り名前を聞かなくなった。ジュジャーロが「2世代にわたってトップランナーであり続けた」ことの凄さは、こういうところからも覗える。

 河岡先生に伺いたかったいまひとつの質問は、最近の自動車メーカーの社内デザインのトレンドが、安易に(僕の目にはそう映る)過去のモチーフの使い回しに流れていて、新しく魅力的なものを生み出す力が著しく衰えてきているように感じられる点。(ちょっと前ならベルトーネのB.A.T.11も入れていたところだが、背景事情を知るとこれは別論になる)
 先生の解説は、こんな具合だった。まず、新しいものが出にくくなっているのは間違いない。しかしその原因には、やはり多かれ少なかれ「やりつくしてしまった」という事情も否定できないようだ。フラッシュ・サイド(クラシックカーとは違ってフェンダーと車体側面パネルが面イチになった造形)が始まってからこっち、生み出されてきたデザインの数を思えば、確かにそうなのかもしれない。

 これは先の講義(笑)で出た『三つの稜線』や『エッジを立てるか暈かすか』の話と関連すると思うのだが、確かにそのバリエーションは無限に存在するとしても、その無限のバリエーションの中でも「車のデザイン」として成り立ちうるものにはおのずと許容範囲があるわけで、そうするとやはりどこかで「行き詰まり」が生じるのも止むを得ないということなのだろう。

 で、そういう中で目を向けられたのが「過去の財産」だと河岡先生はおっしゃる。標題写真のフィアット500も、こうした路線の嚆矢となったVWニュービートル、BMWミニも、それぞれが過去の財産の有効利用であり、また市場もこうした商品を(待望とまではいえないと僕は思うが)受容する環境にある。
 特に北米などではマスタングに続きGMも、初代の雰囲気を大いに意識したスタイルのカマロを近々デビューさせることにしているのだが、河岡先生いわく「アメリカ車の光り輝ける黄金期の製品だから」とのこと。実際問題として、アメリカのオンラインオークションなどではマスタングに代表されるこの時期のポニー・カーやコルベットが、ものすげー値段で24時間取引されているのだそうだ。「美術品の扱いです」とは河岡先生の弁。旧きよき50年代、60年代への郷愁が、恐らくその時代を実体験したことのない若いアメリカ人青年をもいざなっているのだろう。



 さらに河岡先生は「日本だったらスバルのR360(テントウムシ)が、そういう商品になりうるポテンシャルを秘めているが、残念なことに他にはちょっと見当たらない」と仰った。コスモスポーツでも無理ですか?と水を向けると「あれのデザイナーは、自動車をデザインしようと思って作ってない。あれは、ロータリーエンジンと言う未知のエンジンを積んだ新しい乗り物という(存在自体の)新しさと、そういうものを求める時代背景があってのデザインなので」と、否定的なお答えだ。でもそれは非常に頷ける。インダストリアル・デザインは「多くの人に買ってもらうことを目指した商品」に施された造型意匠なのだから。つまり、平成20年の今現在に力道山が存在しても国民的ヒーローにはなり得ないだろうことと同じで、時代背景とまったく切り離して考えることはできないということだ。
 そして残念ながらコスモスポーツは、VWのビートルやミニ、フィアット500、もしくはスバル360とは違って「その時代の誰しもにも親しまれた身近な存在」ではない。

 余談ながら河岡先生は「ああいう平べったい形が、とても斬新に見えたということもあるでしょう」とも仰った。ただ、それを商品として成功させたのはマツダではなくホンダだった(かつてのプレリュードやインテグラなど)とも笑っておいでだったが。

 うーん、うーん、でももう、本当に自動車のデザインは行き詰ってしまっているのだろうか。もう新しい魅力的なデザインを纏った自動車と言うのは望めないのだろうか。過去のモチーフのリフレインしか見られないのだろうか。
 僕は余り悲観したくない。例えば今度のアテンザ2、佐藤チーフデザイナーは配下のチーム・メンバーに「デザイン的手法は使うな、スタイリングの基礎を徹底的に磨きこんだものを作れ」と厳命し、ああいうものを世に出した。
 ならば、ここから先はあるいはT社のように「乾いた雑巾をさらに絞る」ようなことになるのかもしれないが、その「磨きに磨いた基礎」の上に構築される応用のバリエーションが、まだ残されていると信じたいのだ。
Posted at 2008/03/24 17:08:12 | コメント(3) | トラックバック(0) | 自動車関係のイベント | 日記
2008年03月22日 イイね!

Zoom Zoom Evolution 現役最年長デザイナーは憂う

Zoom Zoom Evolution 現役最年長デザイナーは憂う承前
MRY(マツダR&Dセンター横浜)のAVルームに場所を移してのデザイナー・タウンミーティングで、講演者のテーブルに「河岡徳彦」の名前があるのを見て猛烈に嬉しくなった。現在は静岡文化芸術大学で教鞭をとり次世代の自動車デザイナーの育成にいそしんでいらっしゃるそうだが、80年代中盤から90年代初頭のいわゆるバブル経済の頃、福田成徳氏ともども同時期のマツダのデザインを牽引した立役者の一人だ。アテンザ2のチーフデザイナー、佐藤洋一氏のいわば師匠筋にあたる。

 んで、ぶっちゃけの話をすると、このセッションが一番面白かった。もうすっかり、大学で専門を教える先生の講義である。本来、大学教授の講義と言うものはきちんと授業料を納めないと聞けないものであるが、それをロハで聞くことができるのだ。これをお得といわずして何と言おう。

 まずは、ともかくもアテンザ2の話だ。
先のセッションで佐藤チーフデザイナーは、そのボンネット開口部の見切り線で製造現場の「連中」が専務取締役に「チクッた」との話をしていたが、このことに関係して会場と質疑応答があった。
 あとで河岡氏も「こんな深絞りのフェンダーにGoを出す会社なんて、マツダ以外に聞いたこともない!」と絶賛……と言うのかな……していたが、素人目に見たって、あんな精度の要求される、しかも何回絞ればあの形が出せるか見当もつかんような形、実際に作る人たちが素直に「いいよ」と言うとはちょっと思えなかった。
 案の定、佐藤氏は「あれを認めさせるのは、すっっっごく大変だった」と言うようなことを答えていた。ただ、そういうせめぎ合い、戦い、苦労もまた楽しいと口にした。その言葉には、ちょっと「去りゆく老兵」の感傷が含まれていたように思ったのは深読みしすぎだったろうか。

 「プロミネント・フェンダー」の話も出た。後にRX-8へと発展するコンセプト・カーのRXエボルブに使われたのが一番最初なのだが、これを仕掛けたのが他ならぬ佐藤氏だとのこと。
 この手法を用いると、フェンダー・アーチ前方のオーバーハング部分が視覚的に余り長く見えなくなったり、上方のパネルの間延び感を押さえられるなどのメリットがあり、RX-8以降のマツダ車は多かれ少なかれこのフェンダー造型を援用している。僕などはだから、マツダはこれを明確にデザインアイコンとして「まずこのフェンダーありき」で各車のデザインを縛っているのではないかと思っていた。
 なので、デザイナーとのセッションの前に梅下主査に立ち話でその疑問をぶつけると、実はそうではない、と言うことを縷々説明された。「縷々説明」である。結構話が長い人だったのだ。まあ、象徴的な例を一つ挙げると、最終的に採用されたデザイン案と最後まで競ったデザイン案では、このフェンダー形状は採用されていないのである。当て馬といえば当て馬だったのかもしれないが「もしかしたらこっちのデザイン案で行くかもしれない」とカネかけて開発した案が、単なる当て馬で終わるものであろう筈がない。

 まあ、だから思うに「必ずプロミネント・フェンダーを使えとは言わない。もっとその車種に合ったデザイン案があるなら、どんどんそっちで行っていい。でも、いまのマツダ・デザインは、この傾向を踏襲していることは頭の隅においておいてくれ」というくらいの空気なのかな、と想像する。



 ところで余談ながら梅下主査とは雑談の中で「そういや今度のクラウン、プロミネント・フェンダーみたいなのやってきましたね?」と振ると、そうそうそう、と大いに乗ってきた。そうかー、やっぱりプロもそう思ってるんだ。重ねて「でもトヨタのクラウンのことだから、どっちかと言うと現実には現行Sクラスのフェンダーをトヨタ流に真似したところ、プロミネント・フェンダーっぽいのになっちゃったって感じなんでしょうね」と言ってみると、これにも賛同を頂いた。うーん、やっぱりトヨタのデザインってそういう目で見られてるんだな。

 なかなか標題のネタにまで話がたどり着かないが、河岡教授の話にもつながるので、プロミネント・フェンダーの話をもう一くさり。
 このフェンダーのような造型をすると、その終端をボディにどう着地させるのか、それが問題だ。しっかりエッジを残すか、徐々に峰を弱めていって暈かすか。アテンザ2では前者を選択したのだそうだが、このあたりから佐藤氏に話を振られて語る河岡先生の話にも力が入ってくる。
 河岡先生は学校の生徒たちに「直方体と球を接合しなさい」というデザインの課題を出すのだそうだ。この解決策は二つ。上に書いたように接合線のエッジを残すか、暈かして溶け込ませるか。その間の無限のグラデーションが、デザインの幅と言うことになる。そして河岡先生に拠ると「自動車デザイナーの技量の巧拙は、三つの稜線が交錯する点に如実に現れる」と仰る。それは、ピラーの基部だ。

 かつてユーノス500のデザイン・チーフだった荒川健氏や、同車の量産デザインを手がけ先代アテンザではチーフを勤めた小泉厳氏も、やはりピラー基部の造型の難しさをそれぞれ口にしていたことを思い出す。小泉氏に対して、最終型のカペラのCピラー基部は「線が煩雑で整理がついてませんよね」なんてことを言ったら「あれをやったときは時間がなくって……」と、ものすごく苦い顔をされた(カペラをやったのは小泉氏自身だと、その時知った)のも思い出す。河岡先生の言葉を踏まえると……うわあ、思いっきり虎の尾を踏んでたじゃん。

 まぁそれはそれとして、ほぉほぉとしきりに感心しながら先生の講義を拝聴していると、今度はお弟子さんたる佐藤チーフデザイナーに向かって「車の絵を描くとき、どこから最初に書き始める?ちょっとやってみて」とホワイトボードへの実演を要求した。
 佐藤氏は「ボクは河岡流だから……」と手を動かしながら「下から描きますねえ」と、タイヤ、サイド・シルの順で描き上げていく。添付写真で、斜め前方からみた感じの線画が、佐藤洋一氏の絵だ。
 すると河岡先生「そうだよね。ところが、ほっっっとんどのデザイナーが、Aピラーから描き始めるんです」と、佐藤氏の絵の左横に側面図を描き始めた。「こういう書き方をするから、どんどんAピラーが『寝る』んです。そういう車ばっかり出てくるでしょ?Aピラーから最初に描くからです」。

 僕の隣で一緒に話を聞いていたYuckyが「えー。僕も下から描くなあ。だって、そうしないとプロポーションが取れないから」と教えてくれる。うーむ、さすがプロの言葉だ。Yuckyと河岡先生の話をあわせ技一本で解釈すると『多くの車は、プロポーションのバランスなどお構い無しにAピラーを無闇に寝かせただけのデザインが幅を利かせている』と言うことだ。
 河岡先生はさらに「なんでそんなことがまかり通るかと言うと、Aピラーが寝ていることには誰も文句を言わないからです。これが寝ているとスポーティーでかっこよく見えますからね」。なるほど……。

 さて河岡先生、ここで憂慮を口にされた。うー、ようやっと標題の話につながった……。「僕や、佐藤さんくらいまでの世代って、素材のことも分かってデザインしてたよね。でも、今はバーチャルで何でもできちゃうから、そこまで考えてないようなのがどんどん出てくる」。同じことを、やはり佐藤氏も言う。今後、ボディの素材はプラスチックにシフトしていくだろうとの予測もあるようなのだが、高張力鋼だからこれができる、樹脂なら……というような「材料からの発想」が、今の若い(というのが彼らにとってどの年齢層なのかわからないけど)デザイナーにはなくなっていると憂うのだった。



 ところで、全体セッションのときに佐藤チーフデザイナーが、アテンザ2のデザイン・プロセスの一端を披露したときに僕が思ったのは、彼らはインダストリアル・デザイナーでありながら、そのハートはアーティストだということだ。
 工業製品ならば、そのライフ・スパンである4年なり5年なりの間だけ訴求力を持った商品であり続けさえすればそれで十分なのだけれども、河岡先生も佐藤チーフデザイナーも共通して「そのあと」を見ている。10年後、15年後、あるいはもっと先でも、そのデザインはその時点でも生きているか。そういう視座を持っている。
 工業デザインであることを棄てて『美術品』方面に走ることは全く是としないにも関わらず、工業デザインを「その時かぎりの流行商品」とすることには断じて頷かない、プロのデザイナーの矜持を垣間見る思いだった。

 さて、デザイナーと言うと僕の身近ではkahan氏のことを思い出さないわけには行かない。彼はアテンザ2のデザインを評して、こういう感じのことを言った。「デザインテーマとなる部分部分のあいだを、漫然と面で繋いだだけのように見える」。ある意味、酷評だ。
 ところが、佐藤氏のセッションでの話を聞いて、僕はびっくりした。アテンザ2のデザインでこのチーフデザイナーは、部下に対して「デザイン的要素を用いることを禁じる」として、先の河岡氏のいう「三つの稜線」を磨き上げ、その各要素の間をオーソドックスな手法(面構成)で接続することを徹底したのだそうだ。kahan氏の指摘どおりである。
 この『デザイン的要素』と言うのは、要するに『クセ球』『変化球』のことだ。例えばヨーロッパのB社が好んでやるような、凹曲面とか。河岡氏も「ああ言うのはアイキャッチはあるが、やり始めたら果てしのない深みにはまる泥沼」と否定的感想を述べ、さらに先の素材の話も絡め「鉄板と言うものは、内側に反らせると強度が不利になる」云々。バーチャルな世界でできるからといって、どこまでも果てしなく突き進んでいいというものではないだろうというわけだ。

 憂慮の話は続く。最近の学生さんは、余り自動車デザイナーと言う職業に魅力を感じていないようだという「やる気のなさ」に対する懸念。換わって「やる気満々」でやってくるのは、中韓の若人なのだそうだ。そしてそれ以上にもっと深刻で信じられないのが「絵の描き方を知らない」と言うこと。先の、直方体と球をつないだ絵を描きなさいと言うのは、河岡先生に言わせれば義務教育くらいまでには経験していて当たり前の、ごく初歩の「お絵かき」なのに、今は大学生相手にそこまでの初歩から教えないと先に進めない、のだそうだ。
 「義務教育のカリキュラムが変わって、情操に割く時間がなくなってしまった。恐るべき事態だと思います」とのこと。……インダストリアル・デザイナーが、その職分に関連して(!)幼児・児童の教育のことまで胸を痛めなければならないのだ。まこと、恐るべき事態である。

 同業他社のデザイナーとの交流の話もチラチラ聞けた。トヨタS800のデザインを関東自動車でやった人は、その前に某社で某名車のデザインをやった人だとか、やはり専門家の世界は意外に狭い。その中でおかしかったのは佐藤チーフの話した「国内T社のLと言うブランド」の統括責任者と話した内容のこと。
 自動車のエクステリア・デザインは現在、最終案が固まるとその立体データをデジタル・データに変換する。複雑精緻微妙な形になればなるほど、そのデータ量は増えていくことになるのだが、Lブランドの人は佐藤氏に「このブランドの車の場合、それ以外の自社製品と比べてデータ量は2倍以上になる」と語ったのだそうだ。おおなるほど、さすがは微笑むプレミアム……って書いちゃダメじゃん(笑)。なのだが、佐藤氏がよーっく話を聞いてみると、その「2倍」のデータ量と言うのは、マツダの普通の車のデータ量とほぼ同じだということが分かってきたそうだ。「確かにマツダの場合、こんな車にそこまでするかって言うくらい手の混んだことをしてるけど」と会場を笑わせたあと「だとすると『Lブランド』の半分以下しかない他のT車ってのはどう言ったらいいんだ」と、一層会場を沸かせた。

 ところで、ここまで佐藤洋一“現役最年長”チーフデザイナーの話をサラッと書いてきたが、河岡先生は一つ重要なことを話した。「ここまで長く現役を一つの会社で続けられたデザイナーは、他に思い浮かばない」。
 河岡先生は佐藤氏が手がけた過去歴代のヒット作を「3世代にわたる」と言う言い方をした。普通、というか余程才能に恵まれても、3世代と言うのは難しいのだそうだ。セッション終了後に個人的にお話を伺った折り、例えば最近かげりがひどく見えるジュジャーロ(ジウジアーロ)を例に「彼がウェッジ・シェイプを武器に2世代にわたって、世界のデザインを牽引してきたことは、凄いことです。しかし、やはり3世代と言うのは難しい。そのくらいの時期になったらば、本当は一線から引いて、ディレクター的立場になって若い人たちの後見に徹したほうがいいんですよ」。
 なるほど……往年のエース・デザイナーといえども、人間であるからにはその『発想』にはおのずと限界が訪れるということか。しかし河岡先生は続けて「でも、それが一番難しいんだ、上に立つとつい、こう一本、線を描き足したくなっちゃって(笑)」。ははは、よく分かります。

 ともあれ、アテンザ2のデザインの話を聞いていて思ったのは「なんて真面目に、商品のライフスパンが終わった後のことまで考えて、真剣にデザインを練りこんでいるんだろう」と言うことだった。

(河岡先生との話、もう一回続く
Posted at 2008/03/24 16:06:11 | コメント(1) | トラックバック(1) | 自動車関係のイベント | 日記
2008年03月22日 イイね!

「Zoom Zoom Evolution」アテンザ2

「Zoom Zoom Evolution」アテンザ22002年の初代アテンザ以来、マツダが新型車を出すたびに横浜のMRY(R&Dセンター横浜)で開催される一般向けのプレゼンテーション・フォーラムに行って来た。

 僕は暦どおりにしか休めなかったが、有給を上手く使える人なら4連休の3日目となる土曜日のこと、天気はいいが都内や近隣の道はどうせ空いているだろうと高をくくったのが失敗の始まりだった。
 第3京浜に接続する環八に向け、目黒通りは等々力陸橋の手前から大渋滞。陸橋越えを早々に断念して上野毛方面からの迂回を試みると、今度は等々力駅前の交差点で、恐らく自転車を巻き込む事故を起こしたらしいシトロエンが実況見分を受けていて、路線バスが道を塞がれ立ち往生をしている。渋滞だ。

 ようやくこれを抜けると、今度は第3京浜も渋滞。上り側玉川料金所の関係で道が大きくうねる下り車線のすぐ先で事故処理のため車線規制されている。事故車両は既に撤去されていたのだが、あとで神奈川県警高速機動隊の若い隊員に聞いたところに拠ると、横転事故だったそうだ。
 ――そうなのだ。事故渋滞を抜け、フォーラム開催の時間までがちょっと怪しくなってたことからグイとアクセルを踏み込んで、目の前の銀色のクラウンがどいたのをいいことにさらに加速しようとしていたところ、中央の車線によけたばかりのクラウンがすぐまた僕の後に入ってきたのがルームミラーに映った。
 あ……やべぇかも。と思った瞬間、バンパーに埋め込まれた赤色灯が点滅しはじめ、次いでルーフから回転灯が飛び出した。あちゃあ、やっちまった。80キロ規制がかかっていた不運(?)も重なり、反則2点で青切符+1万5千円の反則金である。「急いでて、渋滞を抜けたもんでつい……」てなことを言ったときに教えてくれたのが、先の「あれは横転事故だった」という話だ。

 こういうとき、加速性能のいい車と言うのは不幸だ。乗ってた車が幌付きの赤い軽快車でなかったら「オイオイ、早く行くなり横車線によけるなりしてくれないかな?」みたいな運転にはならなかったはずだし――正直に告白すると、「あおり」と言うほど車間は詰まっていなかったと思うが、そのクラウン(覆面)の一台前がスーッと先に行ったのを見て、「どいてくれない?ねえ、どいてよ」と言うくらいの詰め方はしてしまっていたのだ。よりにもよって覆面パトカー相手に――仮によけてもらったとしても、そんなにすぐにはスピードが乗らないので「危険な速度と判断しました」みたいないわれ方をしないで済んだ……ような気がするのである。まあ、やっちまったものは仕方がない。しかしつくづく、僕はゴールド免許と縁がない。

 やたらに前置きが長くなったが、そんなわけでフォーラムは上の空……では、もちろんない。気分転換のためにも、楽しいお話は楽しく聞かなくちゃ勿体無い。講演のメインは、開発主査の梅下隆一さん(42)と、チーフ・デザイナーの佐藤洋一さん(もうすぐ定年)だ。梅下さん曰く「当時最年少の開発主査と、最年長のチーフデザイナーの、でこぼこコンビ」とのこと。

 今回、2代目アテンザの話を聞いていて感じたのは、何をおいてもまず、前回デミオのときと比べて「カネの縛りがゆるいみたい」だということ。ちょっとへんな言い方だが、デミオ3は表看板のサステナブル(持続可能な)・ズームズームに徹するために相当厳格な予算管理が徹底されたことが発言の行間から感じられたものだが、アテンザ2では表看板とは別のズームズーム・エボリューション(ズームズームの革新)をテーマに、割と金に糸目をつけずに「ヨーロッパ現地のC/Dセグメントのプレミアム・ブランド(M、B、V)と渡り合える車作りを最優先した気配がある。……もしこれで売れなきゃ、悲劇である。

 機能面に関して言えば、例えば「夜真っ暗なアウトバーンを時速200キロで走っても運転者が不安や緊張を強いられない車」に仕上がっているそうで、そのために投入された各種技術とあわせ、かなり良いものが出来上がっているのだろうなあと感じさせる。開発風景の写真なども映写されたけども、マツダのラインナップが多岐にわたらないこともあってか、実に「一球入魂」の真剣勝負を思わせる。

 ただ、これは、僕のような余り一般的ではないユーザーの感覚なのだけれども、話を聞いていて「ああ、やっぱり『新幹線』を目指しているんだな」と一抹の寂しさを感じずにはいられなかった。

 もちろん、ドライバーの操作に対してリニアに車の挙動が追従し『思いのままに動く』のは、一つの理想形ではあるだろう。でも、内燃機関で動く自動車と言うのは、そうでなくってもいいんじゃないかと僕などは思うのだ。原動機の特性に由来する「個性」と言うか「特徴」と言うか、それ自体が自動車と言う機械のテイストなのであって、これを余り嫌がって消してしまうと、どんどんズームズームじゃない方向に進んでいってしまうんじゃないかという懸念がある。

 例えばそれは、排気音の「心地のいい周波数帯」のこともそうで、もちろんそういうチューニング(特定帯域以外は極力消す)は否定しないけれども、これは道を誤ると例えば、プリウスのようなハイブリッド車に電気的に合成した「心地よいエキゾースト音」を出させるバーチャル・リアリティに行き着きかねない、という懸念だ。前にもちょっと書いたけど、内燃機関の中で揮発油を爆発させて動力を得ている自動車と言う乗り物は、もっと「洗練されていなくて」いいと思うのだ。



 さて、佐藤さんによるデザインの話。もうすぐ定年を迎えるという大ベテランの佐藤さん、過去に手がけたのは爆発的に売れたFFファミリア、3代目RX-7などなど。初代カペラだとかFFカペラ(どちらもジウジアーロ案を社内で手直ししたものだそうだが……)にも関わっていたという。

 一番笑わせてもらったのは、ボンネットの開口部の見切り線の話だ。上の写真にもあるとおり、フェンダー部分がかなり内側まで覆いかぶさっていて、鋭角に聳え立った峰より内側だけがパカンと開くラインになっているのだが、製造技術サイドはずっと、ヘッド・ライトの「目尻」部分からAピラーに向けて開口することを前提に、内部構造や組み付けを算段していたのだという。

 「そうではない」と言うことがハッキリすると(と言うのは、佐藤チーフ・デザイナーのレンダリングは知っていたけれど、あれはスケッチだ、まさかあんなラインを本気で切らせるわけがないと考えていた由)生産技術側は一斉に大反発、専務取締役にまで上訴して「あんなアイディアはやめさせてくれ」と政治工作までしたそうだ。が、直訴を受けた取締役は「このくらい、挑戦しなさいよ」と一蹴。すげえ話である。

 なお、今回のアテンザの三つのボディには、それぞれ異なるターゲット・ユーザー層が想定されていて、初代のテイストを一番真っ直ぐ引き継いだ5ドアのスポーツが20~40代、ワゴンは30~50代、最もコンサバティブであることを初代より一層鮮明に打ち出したセダンは、40代から60代に売れることを目論んでいて、事実その通りの受注傾向が出ているのだそうだ。

 ところで、MPSというか先代のマツダスピード・アテンザにあたるハイパワー・モデルがどうなるかと言うと、目下のところ全く計画がないのだそうだ。最大の理由は、北米市場。MPSの主力マーケットは北米で、欧州と日本その他は「北米の余禄」程度の商売にしかならないのだそうだが、これからデビューする北米版アテンザ2はV6の大きな排気量のエンジンを予定していて、そうするとMPSの存在意義そのものが薄れてしまうので「出しても仕方がない」という分析があるのだそうだ。

 んじゃ、日本仕様にそのV6が載るかと言うと、どうもそれも(少なくとも今は)考えていないようだ。重量バランスも変わってきてしまって設計開発者の意図とは違った車になってしまうことを嫌ったが故のようである(6段ATの採用を見送ったのも、これが理由だと説明している)。まあ、そうは言っても営業要請が強ければ今後どうなるかは分からないけど。

 まあ、あらましそんな感じのセッションを終え、部屋を変えて今度はデザイナーズ・トークとなったのだが、ここで吃驚。バブル期のマツダ車デザインを引っ張っていた河岡徳彦さん(現在は大学教授)がゲストとして登場したのだ。(以下、続編へ)。
Posted at 2008/03/24 13:32:06 | コメント(2) | トラックバック(0) | 自動車関係のイベント | 日記

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