2015年03月22日
バカ
「畑113から畑。」
「畑113どうぞ。」
「了解。現在,神町横口通りの7丁目交差点前にて,指令4771,詳細不明通報に臨場しましたが,通報者,覚醒剤との事でして,事情聴取が困難中。応援要請を頼みたい。どうぞ。」
丁度,管内の二人の交番警官が付近にいた。
「あ?どいつが行ったんだよ。」
「たぶん奴ですよ。」
奴とは30歳の巡査部長の事だ。度々問題を起こす。鈍感なものだからそこが問題なのだが,上官は何故か叱らない。
署内は多くのシャブ嫌いが居た。シャブ好きの自分等は署内で少数派だった。警察で少数派と言うことは,嫌われもの集団と言うことだ。
少し歩いていくと現場に差し掛かった。既に奴と仲のいい署の専務が来ていた。巡査部長を味方して通報者を説得していた。
交番警官は巡査部長と同い年の警部補だった。覚醒剤で二度表敬されていた。
「お兄さん,事情を聞かせて。」反応し,詰め寄るシャブ嫌いたちをもう一人の連れてきた警官が制止する。
「ゴタゴタうるせぇんだよ。この人の話が聞こえねぇじゃねえか。」
「なんだ。この野郎。てめぇ,俺は専務の係長だぞ。生意気な野郎だな。」
「てめーこそ,なんだ。仕事もろくにできねー分際で,餌だけは一人前食らいやがって。殺しと強盗ばっかりやりやがって。」
「おい待てよ,こら。警察が自作自演してるみたいな言い方しやがってよ。」
「実際どうなんだよ,てめー。捜索も事情聴取も下手くそな,ただ飯食らいが偉そうによー。ぶっこんじまうぞ,くそ専務がこら。」
「言っていいことと悪いことがあんだろ。」
「言っていいことだの何だの能書き垂れるんだったら,やっていいことと悪いこともわかんねーのか,くそ野郎がよ。シャブの通報者に食って掛かるなんて,ごみかてめーら。」
そして,「こんな奴ら,まじで会社にとって良くない。パトカーに縄でくくって川かどぶ池に沈めとけよ。」と指示し,くるっと表情を変えて,
「すいません。うちの同僚どもが。お話も十分に伺わないで身の程知らずで。」
通報者が話し始めた。
「ここから正面2キロくらい先に跳び跳ねながら歩くシャブ中を見掛けました。」
現場からはアーケードが見渡せた。被疑者はアーケードの先の2キロくらい行った先を歩いていたんだそうだ。
「ここから見付けられるっつーことは,奴も相当食ってそうですもんねー。」
「ピョンピョンピョンピョンピョーンって感じだったよ。」
「そんなにですか。今の話聞いて,あのバカコンビは何にも共感しなかったんですか?」
「そうだよ。勘弁して欲しいよねー。」と呆れた様子で返した。
「すいません。我々が最初にくればその様な落ち度は無くて,通報者さんにもご迷惑,不愉快な思いをさせなかったと思うのですが,なにぶん110番の指令センターがあほで痴漢事実と言う内容だったので。最初から覚醒剤だの麻薬だのと無線が来てれば突っ走ってきたんですが。本当に申し訳ありません。」
会話を中断して無線を取り出した。
「畑115から田園本部,畑,田園165,田園170,並びに覚醒剤捜査対応の各局。先程の4771の件,痴漢では無く覚醒剤使用の目撃通報でした。対象は歩行状態でした。まだ捕捉可能と思われます。大至急,初動展開実施せよ。
通報者からの事情聴取によれば,対象はかなりの酩酊状態。一瞬で判別可能と思われます。田園本部の無線指令も捜査念頭で願いたい。以上,畑115。」
無線を終え,再び頭を下げた。
「いや,すいません。無線指令の奴,責任者は同期なのでしっかりと叱っときます。
もう,最近はどこもそうなんですが,初動活動がやたらだらだらしてて,うちらも今回みたいのがあるから困るんですよ。頭数に入れちゃいけないバカが何人か居ますんでね,実際。
一般企業だったらクビですよね。それであの,」
携帯電話を取り出して,電話番号を呼び出した。
「これ,私も勤務中使ってる電話番号です。とりあえず私しか使いませんが,非番の時に妙なのが出たら,すいませんが110番か#9110をお願いします。」
「お巡りさん,それにしても随分こなれてますね。」
「いえ,私も覚醒剤とか暴力団の専務を2年くらいやってましたからね。最近は自らで住宅街対策やってて,たまたまこっちに回されたんですよ。元々,新任の頃からシャブばっかりでしたからね。だからじゃ無いですかね。」
「警部補。」
アイキンの巡査が来た。路駐の車を指差している。シャブ中の車である。500メートルくらい先に斜めに止まっていた。
「覚醒剤使用の照会掛けろ。奴のだろ。」
「畑115から照会センター。」
「畑115どうぞ。」
「路駐車両の薬物確認で照会一本願いたい。ナンバーは」
「畑115,取り扱い留意して下さい。茨城からシャブ取りでB号中です。薬物,強盗,殺人未遂でA号が6発。」
「まじですか。やば。ありがとうございました。以上畑115。」
「以上照会センター。」
程なくして,警部補の元部下の自ら隊の巡査部長が,付近で同一人物を緊急逮捕してきた。これで一件落着である。
それにしても,最近は能無しの警察官が増えて特に薬物事件の対処は緊急の課題である。
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Posted at
2015/03/22 05:51:46
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