2015年06月18日
交通違反
城下町の所轄で地域指導に回っていた時の事だ。高速隊に数年居て異動してきた巡査長がいた。地域課の当番で一緒になったので,そこの地域の繁華街と言うか住宅街と言うような地区をパトロールしていた。
すると地域指導の警部補に向かって,「何で駐禁なんかは処理なさらないんですか」と。
警部補がまるで道交法や送法などの法令に取り組まないで職質に徹していたから,交通畑一筋だった巡査長には不審に思われたようだ。
地域課や自ら隊は,7割くらいは,脱法ハーブや大麻を含む覚醒剤事案といわゆる指名手配を意味するB号事案を中心に職質するものなのである。それ以外でも前歴がある市民は大勢居るが,せいぜいキーの付いてない自転車盗難や,カッターナイフの軽犯,マイナスドライバーの特殊解錠ばかりで悪気の無い微罪に過ぎない。対して覚醒剤やその他の麻薬やハーブは生理的に作用するから再犯性,依存性が強く,日常生活でもどんどん使用していく。
彼らを薬物から離脱させない限り,彼らはある意味では,悪気もなくどんどん使用していく。
しかし,彼らが日常生活の習慣から薬物と切り離さない限りは,いつか必ず二次的に強盗をしたり人殺しをしたりする。地域警官が危惧するところなのである。
普段このように覚醒剤と指名手配を日々捜している地域警官と言えど,たまに確かに交通違反や駐車違反を処理している事がある。
多くは別件で捜査の対象にするためで,やはり薬物犯罪の自供を促すのだが,そこに来ると地域警官も人間なのである。機嫌次第で結構乱暴になることもあるようだ。
職質対象が職質慣れしていないと,本気で交通違反で切符処理されるのでは無いかと勘違いしてどうにかして逃れようとするが,あまりにも拒否がしつこいと,警官も
こいつ,この野郎。こっちはツートン(地域課のパトカーの事)で回ってるの分かってて紛らわしい運転しやがって!おまけに時間まで取らせる気かよ。この野郎。
と思うのがこの世界の道理で,切符処理されると言うわけだ。
余談だが。
Bには,指名手配のB号と,暴力団組員を意味するマルBがあるがこのマルBの人物は知り合いの地域警官に対しては「悪いね。頑張ってね」と言ってくるので,地域警官も「今日はいいけど,お前も身分が身分なんだからマル暴(専務)には気を付けろよ。じゃあな」と言うやり取りになる。
やくざは悪い。しかし,マルB目当てでは無い覚醒剤だけ目当ての人には面倒臭くなくて手間が省けて,心の中では,いつもこう言う人ばかりだといいのにと思っているものなのである。
交通警官と地域警官の最大の違いは,物証の有無であろう。
この巡査長は高速隊から赴任してきた。高速隊は所轄の交通課と同じで事故処理もする。重大事故の現場検証も任務のひとつで,物体の破損から事故状況,被害者の負傷状況を解明するのは物凄く得意な分野だ。
対して地域課は,前述のようにそもそも物証が全く無いところから,被疑者の挙動不審な箇所を追求して指名手配や覚醒剤を暴いて捕まえる。交通と地域では発想が全く違うのである。
交通機動隊は地域課との接点もあるからともかく,高速隊は神奈川県などの一部の例外を除けば,基本的に高速道路の初動任務もある。言ってみれば,交通畑が財布などの置き引きやら指名手配にも対処している状況だ。
中には一生懸命な高速隊警官も居るのだが,経験は無いのだからどうしようも無い。だから地域指導の警部補は言ってやった。
「これからは専務とか地域とか分野関係なく職質の時代だと思う。職質は初動の極意だ。」
いつかまた交通畑に異動になるであろう巡査長にはどうか職質技術を磨いて,まだ暴かれない重大犯罪の検挙に役立てて貰いたいと思ったものである。
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Posted at
2015/06/18 10:07:21
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