スペックを理解した次に欲しくなるのは、「実際にどう違うのか」という答えだ。LIMITED EDITIONの価値は、理論や理屈だけでなく、音が鳴った瞬間の体感で伝わってくる。
では実際、“最高峰”に到達した「LIMITED EDITION」の音質はどのように進化したのだろうか。
今回、幸いなことにパイオニアの川越事業所内にある試聴室で、2024年モデル(当時、サイバーナビ史上最高の音質)と今回の「LIMITED EDITION」を比較試聴する機会に恵まれた。
あえて車内ではなく、そのポテンシャルを体感するために、この試聴室では同社が誇るリファレンスオーディオである「TAD」のスピーカーを使用し、ハイレゾ音源を中心に両モデルを比較試聴した。
もちろん、車内と試聴室では条件が異なるうえ、個人の聴取能力や感覚、さらには楽曲の好みもあるため、絶対的な基準を設けるのは難しい。
しかし、実際に聴き比べてみると、驚くほど明確な違いが感じ取れたのも事実である。
まず、用意された「JAZZ」「J-POP」「CLASSIC」などのジャンルを順番に再生した。
個人的には、スタジオや小編成のライブ空間で演奏されたような、楽器数が比較的少ない楽曲を好んで聴くことが多い。
すべての楽曲について解説するのは難しいが、ここではパイオニアが試聴曲として用意した「And I Love Her」(ビートルズ)のJAZZアレンジを中心に印象をまとめたい。
試聴では主に、
①音への味付けがない状態での周波数特性
②どこから鳴っているのかが分かる音像定位と左右のセパレーション
③音の立ち上がりや消え感(減衰)
といった点を中心に確認した。
まず2024年モデルだが、正直に言って、これでも十分以上に高音質である。「史上最高」は伊達ではない。
ただ2024年モデルでは、ベースがやや奥に配置されているように感じられ、ピアノのアタック感や輪郭の立ち方にもう少し鮮明さが欲しいと思う場面があった。
それに対して「LIMITED EDITION」では、まずベースが一歩前に出てきたような位置感となり、音像そのものに存在感が増す。
さらにピアノの粒立ちや、鍵盤に触れてから音が立ち上がる瞬間の鋭さにも明確な違いが感じられた。
なかでももっとも印象的だったのは、低音の出方である。
ライブ音源ではなくマスタリング済みの楽曲であっても、低音同士が共鳴し続けるような、いわゆるブーミング的な感覚が「LIMITED EDITION」では大きく抑えられていた。
具体的には、バスドラムが生み出す空気の振動が“塊(かたまり)感”を持ったまま、しかも歪み感の少ない状態で耳と身体に届く印象だ。
要するに、音の厚みやエネルギー感がより鮮明に、より自然に再生されているのである。
また、J-POPのような電子的に作り込まれた現代的な楽曲でも、それぞれの電子音の識別がしやすく、音数の多い楽曲でもひとつひとつの役割が見えやすい。女性ボーカルの息づかいも、余韻を含めてよりはっきりと感じ取ることができた。
こうした違いは、聴き込めば聴き込むほど、誰もが感じ取れる類のものだろう。
比較試聴して感じたのは、2024年モデルがいわゆる「最高音質」というポジションを確立したのに対し、「LIMITED EDITION」はさらにその先、想像を超えたステージに到達し、新たな“感動”をもたらしてくれたという点ではないだろうか。
もちろん、この進化は「LIMITED EDITION」に採用された高音質化パーツや最適化された回路設計の恩恵は大きい。
ただし、前出の松永氏の言葉にもあったように、「ただパーツが良ければ高音質になる」わけではない。
あらためて感じさせられたのは、カロッツェリアが長年大切にしてきた「原音忠実再生」が、さらに次のステージへ踏み込んだという事実である。
「理解はここで、“共感”へと変わっていく」。