未来への展望
1
【麻美の場合】
「また、あいつだ.......... 」
いつも、あいつは開店と同時に来る。店長からのお達しで朝の挨拶は爽やかに大声でお客さんに言うようにきつく言われているので、パートとはいえ疎かにできない。
仕方無くする作り笑いの挨拶でも、あいつはいつもコッチすら向かない。
取り立てて美人ではないがサラリーマンである夫との間に1男1女をもうけ、漸く長女が大学に入学し空いた時間をお小遣いに換えようとする麻美(56歳 パートタイマー)は、今日も来た何故か変なパネルを持ち込みプラプラしているクルクル頭の無愛想なあいつを見た。
2
【素敵な紳士の場合】
私は、いつもレジにいる小太りのパートであろうキンキラ声の女性が苦手だ。そんな距離も離れていないのに、大声で挨拶をするのは大人として他人との距離感が保てない典型的な家庭という村社会で成長し年老いていく人のように思える。
(キンキンと朝っぱらからうるせーな.... )
そう思いながら目的の金物を多数ある商品から選ぼうとした。
店員に探し物を訪ねるのは一番早いが、あのレジ係には聞きたくない。
なら、この棚出し中の女性に聞くかと何故か今ローライズを履いた昔はヤンキーであったであろう30代に見える女性に訪ねた。
「すみません。こんな感じの金物ありますか?」
身振り手振りで商品イメージを伝えたが、一瞬その元ヤンがビクリッとしたことは見逃さなかった。
3
【理沙の場合】
理沙(37歳 昔はわざわざ渋谷まで行って路上に座っていたパートタイマー主婦)は、背後から男に突然声を掛けられたので反射神経の良さで体が動いた。
「~でこんな感じの金物なんですがあります?」
棚出しで忙しい時に、このクルクル頭のおっさんは何を言っているのだろう?
昔であれば(うっせーなオッサン!そんな安い金じゃハイなんて言う訳ねーだろ!)と即落ちさせていたが、今はそうも行かない。ここで稼いだお金で高三になった娘と一緒にDLで豪遊しインスタにあげることを目標としているのだ。
「えーっと.... これ.... ですか?」
売場に男を誘導してそう言うと男は
「違いますね。もう一度言いますよアレヤコレヤ」
ウゼーなこいつ....
そう思いつつも強張った笑顔を向けたが、
また身振り手振りを交えながら、情熱的に伝える男の指先が目に留まった。
(あっ💕繊細な指先.... この人素敵♪)
理沙の心は一瞬にして動いた。
4
【ある男の場合】
さっきの店員が途中から色目になったのは気が付いていたが、これ以上ファンを増やすのは時間的制約で不可能だ。それに地元でファンを増やすのは私の流儀に反するのであの程度のあしらい方で十分だったであろう。
そんな回想をしながら、ギコギコと買ってきたばかりの金物に金ノコを入れた。
「コーヒーいれますか?」
いつも優しい妻がいつもの変な工作をしている私に問う。
「コーヒーよりカフェモカが飲みたい。飲みに行こうか?」
「もう一度聞きますね。コーヒー飲む?」
「だからカフェモカ飲みたい!行こうよ!」
「なら何も出しません」
(出しませんだと?)
お互いに思いやりの気持ちを忘れないでいることが婚姻生活では一番大切なことを日々の生活の中で忘れてしまったのだろう。
それは私が日々の仕事にかまけて、少し愛情が足りなかったのかもしれない。
私は、そう真摯に反省をした。
5
【雇用主の場合】
何かを新しい事を出そうとすると太古の価値観で凝固した対抗勢力が邪魔してくるのが世の常ではあるが、そんな勢力は取り除いてしまえば良い。
どうせ新橋のガード下で憂さ晴らしをして終わる程度の抵抗など取るに足りない。
この吹き出し口も同様だ。
折角冷たい空気を絞り出しているのに、不必要に太いフィンに稼働範囲が狭い抵抗勢力であろう。
そんなものは失くしてしまえば良い。
体勢に影響はない。
成長するには犠牲も必要だ。
6
【マリオの場合】
パネルにある既成の「穴ぼこ」に刻んだ金物を差し込む。片方は90度に曲がっていて良いがもう片方が90度では「穴ボコ」に差し込めない。
工具を使い90度に曲がった金物を真っ直ぐに直そうとする...
か、硬い....
たがが穴に金物を入れるだけなのに何でこんな苦労するのだろう。。。。
穴に入れば何か良いことが待っているとでも言うのか.....
マリオはその前の土管を不自然に思った。
(飛び越えるだけの土管にしたら不自然だ)
上に登り中に入ると、そこにはお宝が眠っていた。何でも疑問に思ったことは試してみると良い。失敗も多いが希に思いがけない発見があるものだ。意外にすぐ近くに正解があったりもする。
きっとこの金物も穴に入れば何か良いことが起こるかもしれない。
ꉂ(˃̤▿˂̤*ૢ)キャハハハハ
7
【武道精神のない男の場合】
四苦八苦しながら何とか通した金物。
その金物付パネルをパチンパチンと戻せば、第一の目標はクリアだ。
イメージ通りの着地であるため、たいした感動もない。
よし。次のステップに取りかかろう。
「ちょっと剣道に送ってて!」
家から顔を出して妻がそう叫ぶ。
(うむ~これから本番なのにな..... )
剣道というよりチャンバラゴッコと言った方が近しい子供の習い事は見ていても正直退屈だ。恐らく私には武道を理解する思考が欠落しているのだろう。「カタ」とか「根性」とか「気合い」とかいちいち押し付けがましく感じてしまう。
ある時、竹刀を持ちながら殴り合う総合格闘技っぽい方が緊張感があって楽しいのではないだろうか?そう見学中の見知らぬ男性に言ったことがあるが、目で私を殺そうとする強い目付きをした。後から全国大会にも出場経験のある屈強な男であると知ったが、今も会うと気まずそうな顔をされる。
別に剣道を冒涜したのではなく新しいスポーツを提案しただけなのに、避けようとするのは武道の精神に反するのではないか。(謎)
軽はずみな発言は想像以上に深い溝を生む。
人が大切に思っていることを冒涜するような真似はやめるべきだ。
8
【寝る男の場合】
この金物はグリルのようにも見える。
アウトドアを愛して止まない私は、そう考える。
お洒落アウトドアをこなす車として認知されたこの車はそのようなシーンの時には有効に働く。
それらしいカッコでもして
「今度、バーベキューでもやろうよ♪」
なんて声を掛けやすい道具として使えるのではないだろうか?車内にはこれこら起こるであろう楽しいバーベキューを連想させるようなグリルが一層会話を盛り上げる。
ただ準備したり焼いたりするのは面倒だから、何でも人がやってくれるグランピングでいいや..........
そんなことを考えているうちに体育館の隅で寝てしまっていた。
(。-ω-)zzz
【つづく】
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