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2015年12月09日

劇場版 ハーモニー を観て (個人メモでもあり長文)

劇場版 ハーモニー を観て (個人メモでもあり長文) 劇場版 ハーモニー を観て (自分メモとしても)

 今週金曜日あたりで上映終了となる所が多いようですが、原作である小説を読んでから劇場版を観てきました。

 この作品は、良い意味で問題作だと思います。

 ストーリーは、あらゆる病気や不健康になる物質を駆逐した健康(生命)至上主義社会で起こった集団自死事件から展開します。この社会では、皆が健康であるだけでなく他者への思いやりを教育によって絶対のものとされている、表向き理想的な優しい幸せな人々が大多数となっています。健康管理システムを体に常駐させ、あらゆる不健康なものを寄せ付けないようなシステムをほとんど多くの人が受け入れている社会です。
 それでみんな幸せならいいじゃないかと思わないでもないのですが、健康至上主義なあまり、太る自由もなく、皆が同じような体型・同じような優しさにあふれた性格をあるべき姿としており、社会評価点なる一人一人のスコアもVR(仮想現実表示装置)によってその人を見れば視界の端に表示されて公開されています。

 そんな社会になった背景には、大災禍と呼ばれるカオス状態に世界が落ち込んだ過去がある事が大きく影響しているのですが、それは原作の前作的立場である「虐殺器官」の話。(小説では第一作が虐殺器官で第二作がハーモニーですが、劇場版では虐殺器官はまだ公開されていません。前作は知らなくても本作品を観て問題ないですが、理解のためには時系列を追った方が分かりやすいかと。本作も小説版のほうが当然ながら、展開が急ぎ足でなくて丁寧なのでおススメです。映画だけでもある程度理解できるようにはなっています)

 その社会を、偽りの幸福と不自由の牢獄だと思って社会に鋭い一撃を加えようと、生命至上の対極にある死を自らの自由意思で果たさんとする主人公と幼馴染二人のいわば「闇の自由」を引きずった過去を中心として話は進みます。

 このあたりで作品自体の内容は割愛しますが、登場する言葉の中で痛烈なのが、人間の意識や自由意思なるものは、その時々の社会環境に対応してきたつぎはぎ的なもので、今のそれが過去の歴史を経てきて最高に完成度の高いものでも何でもないというもの。意思は様々な欲望が競合する中で選択された一つの答えであるが、それは時とともに完成に近づいていくものではないという事。個人的解釈にすれば、人間は進歩しないし歴史もほとんど無駄な生き物という事。

 以前、職場の社長と話した時、「人間は以前短期的な利益にとらわれて、全体の利益(個人においても社会全体においても)をあえて損なう人が大半だ」という事を言っていたのですが、ハーモニーの作中でも、今すぐ100万円を貰えるか、2年後に200万円を貰えると約束されるかどちらを選択するかで、大半の人が前者、今目の前の餌に食いつく事が生存競争に勝つ事だ、という話がありました。確かにそのほうが本能としては正しい。そうならば、人間は偉そうなことを言っても動物とほとんど変わらないものじゃないかという話になりました。当方の勤める会社の社長は社会のトータルメリットを考える人なので、目先の利益に飛びつく、そのような人が大半ならば自分は人間じゃないとして、「人間もどき」として人間社会に住まわせてもらっているという立場を取っており、面白い視点だと思っていましたが本作品でその話とリンクした感じで、とても印象深く大きな影響を受けました。人間もどきで居候の身であるなら、人間のやる事にいちいち腹を立てていてはしょうがないので(それが許せないなら独裁者にでもなってしまう)、それらを見て受け入れるしかないとも言っていました。(その考え方すらも、そういう人もいるんだと参考程度にしておいたほうがいいよと言っていたので、ちょっと新鮮でしたが)

 とまあ思っていた事に本作が直接かかわるような内容でもあったため、刺激を受けたので長々述べましたが、原作の伊藤計劃氏がハーモニーのあとがきで言っている事に尽きます。「今の時代、コミュニティーの強化だとか時代に合った制度だとか言われているが、本質の人間自体の感情との折り合いの付け方とか、意思・選択の仕方の研究だとか、より完成された人間の心に進歩するための分野は置き去りだよね」(私の意訳です)
 極論すると、目の前の肉親の生き死にのためにその他多数の同胞の命を犠牲にできるのが人間であるし、それは動物にはあまり見られない事だけど、それ以外は動物とあまり変わりが無いものなのかなと思いました。

 わからないような事はほとんどないように見えて、実は人間の心の問題や本質には、ちっとも迫っていない科学至上主義の現代でしたとさ。

 今後の目指すべき人間社会とはどうあるべきかについて、一石を投じた作品であり、議論を呼ぶ良い作品でした。惜しむべくは、このような本質を突く思考を持った人・伊藤氏がこの世にもういない事。病床でこの作品を創り上げた氏には、常人ならざる思索と、少し人を超越した神がかった部分があったのかもしれない。



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Posted at 2015/12/09 00:39:33

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