書棚を整理していたら、懐かしい写真が出てきた。
専門学校卒業後、就職して初めて買った車「いすず ジェミニ」。
ジウジアーロのモダンなデザインが大好きだった。
毎朝ドライブ気分で楽しい通勤になる......はずだった。
ある日、運転免許を持たない上司の「K部長」に言われた。
「○○君、通勤のことだけど、毎朝僕を迎えに来てくれないか?」
「あ.......は、はい」
Kを拾って行くために僕は30分早く家を出た。時間が合えば帰りも送らされた。
Kはへビースモーカーだったので、新車だった僕の車は数日でタバコ臭くなった。
Kが持参したカセットテープを毎朝聞かされた(主に加山雄三)。
Kは車に乗り込むと必ず靴を脱いだ。臭い足がたまらなかった。
そんなKでも、上に取り入るのが上手くて、次期支店長候補と噂されていた。
この状態が半年ほど続いていた。
Kからは、「ありがとう」の一言も、ガソリン代の心付けもなかった。
「僕は小柄で温厚そうに見えるからナメられてるんだな・・・・・」
僕の我慢は限界に達した。機は熟した。
前から計画していたジェミニのチューンアップに前倒しで取り掛かった。
ウェーバー40Φ、電磁ポンプ、コーエイCDI、フジツボレース用タコ足、
ストレートマフラー50Φ、軽量フライホイール、ハイカム、強化クラッチ、
ノンスリップデフ、カヤバ8段階ショック、強化サス・・・。
当時の僕に出来る最大限のチューンアップを施した。ジウジアーロのデザインを壊さないように中身重視だった。
そして、いつもの朝のようにKを迎えに行った。
(改造に取り掛かってる間、Kには修理中と嘘を言い、代車の軽だった)。
「な、なんか、音が大きくなったな・・・・乗り心地も悪いし」
kは、不機嫌そうに困惑していた。
無言で僕は、狂ったように飛ばした。
反対車線から追い越し、コーナーでタイヤを鳴かせた。
助手席でKは怯えながら罵声を浴びせていた。
しかし僕は、Kのことはもうどうでもよくなっていた。
パワーアップしたジェミニに酔いしれていたのだ。
会社の駐車場に着いて、僕は辞表を出した。
こうして、僕の人生の中で7ヶ月間のサラリーマン生活は終わった。
BOOWYのライブが1500円だった頃の思い出だ。
Posted at 2014/09/16 08:23:02 | |
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