| 好きなもの | 音楽は、私にとって、人生の一部といってもいいほどのかけがえのない世界です。高校のころは、作曲家に本気でなりたいと勉強していた時期もありました。ピアノ、バイオリン、作曲について、習いました。作曲の勉強は、和声法と、対位法、そして簡単なソナタ形式の習作を作ることでした。幼稚なものですが、当時の作品も残っています。しかし、この世界は、どんなに望んでも才能の壁というものがあることを知らされました。作曲家の道は断念しましたが、音楽は生涯の友人です。もっぱら聴くことが中心ですが、どの時代のものも好きです。バッハから、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、ショパン、リスト、ブラームス、チャイコフスキー、マーラー、ラフマニノフ、プロコフィエフ、そしてショスタコービチ。どれも大好きです。ピアノは、少しずつでも、毎日練習することを目標にしていますが、いっこうに上達しません。それでも大好きです。人さまの前で演奏したのは、高校時代に。シューマンの『ノベレッテン』(第一番)という私の技術ではとほうもない難曲に無謀にも挑んだときと、結婚式のさいに妻とシューベルトのヘ短調の『幻想曲』を連弾した二回だけです。この『幻想曲』は、ピアノの連弾曲としては、奇跡的な傑作ですが、演奏が、とくに私の受け持ったバス・パートが傑作にふさわしいものだったかは、まったく疑わしいものでした。音楽は、言語の世界とはまったく違った、独特の力で、人の心に直接訴えてきます。この素晴らしい世界と出会えたのは、私の生涯にとって大きな幸せです。 |