梵ぼんのブログ一覧

ある大きな男は玄関の軒先から門を抜け車まで手土産を持つスーツ姿のそれ程恰幅が良いとは思えない彼に傘を傾け笑顔で話しかけてお見送りをしている
その後ろ姿を　挨拶を終えた母と姉と少年は目で追う

少年はあの叔父さん偉いの？
母は　何も言わず少年の頭を撫でた

その記憶は　母と少年から消えることなく数年が経つことになる

少年は一人息子　男は当然のごとく夏休み春休みになると工場に連れて行きアルバイトという名目で継承の道筋を探る　それなりに一生懸命頑張り　周りからはボン偉いねと褒められる　自分が気持ち良いからなのか　男の為なのかわからず青年と成長して行く　姉とは大違いだ

当然　高校も理系　大学も工学部選考を余儀なく時間が過ぎる
もう姉は芸大に進学している
高校3年の夏休みの最終志望大三者面談　青年は反乱を企てる

母は肩を落とし三者面談の経緯を男に告げると　男の顔色が変わるのを今でも覚えている　彼は小学生の卒業文集に将来の夢に成りたいもの書いたことがある　それになりたいと大学の選考を変えた

言うまでもなく　修羅場と化した　自分に目の前の男を超えられるか自信もないくせに正直にも言えず　何故かあの少年時代の思い出を語り出した　自分が雨に濡れて人に傘を傾ける様になりたくないと・・・　母の目が一瞬鋭く変わった

その時から男を越えなければと本当の自分の人生が始まったような気がする

その後　姉に養子さんを取り家業を継承した
家業は姉夫婦の努力で順調に成長した

男は引退し　彼の父親に戻った　人生で二度だけ褒めてもらったことがある　本当に嬉しかった
介護している中　母に告げた　今は傘をさしながら肩を濡らした父親を尊敬してると僕は父親を超えられなかったと　我が儘を許してくれた母親と父親に本当に
感謝していると・・・母の目が緩んだ

この数年　両親に出来るだけ寄り添った　そして偉大な両親であることを学んだ
・・・愛してくれてありがとう


今週末　母の一周忌と父親の三回忌である

休日の朝　用事が無ければ洗車から一日が始まる　連休の稼働をボディーに刻んだ
ステルヴィオとアバルトの洗車を終え　空を見上げる　曇り午後から小雨の予報

戻って来たイタリアの長男車を走らせたい　調子を見たい
家とガレージの間をソワソワする私

韓国ドラマにハマっている相方がハングル語の間を抜いて　『雨大丈夫じゃない』と投げかける『じゃランチはピザで　DINOドライブで』とハングル語の間を潜る応酬
夫婦の歴史を垣間見る会話である



当時のテレビでは　あしたのジョー　仮面ライダー　マンダムのＣＭなどが画面を賑わし
日常生活では電子ジャーやエアコン　カップヌードル　彼が生まれてから50年間近くが時が流れた

Ferrariはあの当時　恐ろしいモノを世に放したとハンドルを握りながら本当に思う
相方は後ろからの戻ったエンジン音を探る　私より耳がいい　

50年の歴史はまだまだ続く
もう少し歴史を見させてくれと心で呟きながら帰路に・・・

人は欲張りな生き物　満足する事がない　ここまでと自分を納得させる

我慢させているのか　夢を見続ける事でその場を過ごすか

人生のタイムリミットは確実に迫って来る

5か月の空白　無事手元に戻って来た愛車

珈琲を飲みながら届けてくれたメカニックＤｒとライトに照らされる愛車を

眺めこれからの事を話す時間　

　　　　　　・・・それは欲張りな生き物だと分からせてくれる



ディノが戻り　代わりにゴルディ―ニが今まで貯めた部品の数々と手元を離れた　

多分　私が彼にしてあげれる最後の大手術になるのだろう

普段着のままでいい　孫の成長と自分の老いへの我慢を残そうと近所の写真館に
突然電話を掛ける　年に数回しか会えないのでいつも私の気分で・・・

スナップ写真だけは私の仕事場に


スマホの中だけではなく　ちゃんとしたプロの写真で残す　
着飾りもせず日常の家族の集合写真を撮って頂く　
店主はどんどん家族が増えていくねといつも笑顔で私の無理を聞いてくれる

今年はまだ電話を掛けていない　お盆には来るかな？また記念撮影をしてもらいたいものである

木曜の午前中にメカニックＤｒがDINO君を引き取りに来る　帰ってくると代わりにゴルディ―ニ君が大掛かりな手術に入る予定だ

記念写真を撮っておこう　相方は冷めた目で珈琲を飲みながらダイニングから脚立の上によじ登る私を眺めている　ブログネタ撮影大変だねと後頭部を叩く相方の声　落ちないでよとも一葉心配はして見守ってくれている



何の為でも　何の意味もない　私は集合した記念撮影が好きなんでしょうか

人には何がしら　他人には理解しかねない愛着を心に秘める物があるのではないか

幼年期のぬいぐるみ　記念に購入した腕時計　古い書斎の椅子・・・

物の価値は高額　希少性　人気だけでは測れない　
何故なら個人の思いがそこにあるから


私の旧車人生はこの子と歩み始めた
きっと　この子と旧車人生を終える気がする

隠れ家のガレージから家のガレージに初めて収めた　引っ越しだ　
引き取りに付き合ってくれた相方が言う　一番楽しそうだと

後ろから付い来る相方に振り向いて手を振る私が子供のようで
車もあなたも　おもちゃの世界みたいだと

ゴルディーニのハンドルを握り　笑顔が零れているのは自分でもわかる

　　　　　　　　　・・・これが愛着と言わず何というのであろうか