ロードスターで買い物には出かけないし雨の日は何かが無ければ乗らない。お蔭様で雨漏りもしないし、大きな不具合も無い。言うまでも無く大切にしているけれど溺愛して乗らないのではない。雨や雪の中のロードスターはいつか見た名も知らぬ・・・夕方に何かの事情で迎えに来てくれる人もいないのか・・・赤いランドセルからも、艶やかな黒髪からも無数に滴り落ちる冷たい雨を、その全身で甘受するかのように、特に急ぐでもなく凛として一人歩いていた目鼻立ちの美しい少女の姿がオーバーラップする。どんな処でもロードスターに相応しい貴賓席を探してやりたい。同じ景勝地の駐車スペースでもロケーションだって太陽の位置さえ気になってしまう。それは車に無造作に乗り降りする意識の無い人達や歓喜に任せて買ってもらった超合金のロボットを掲げて走りまわる子どもたちが怖いから・・・だけではない。どこから見ても美しく愛おしいロードスターを相応しいロケーションで見つめていたいからに他ならない。大切な人とのディナーは美しい夜景が広がる窓際で過ごしたいと思う男のデリカシーに似て。