
駄知旧車館という月に一度しか開かない博物館に行ってきました。
ここ、月一会館、入館無料とどうやって採算を取っているのかさっぱり分かりません。ただの道楽なのか、何か秘密があるのか。ま、行ってみれば分かるでしょう。
外観はちょっと公民館っぽい雰囲気の建物です。
しかし駐車場にはラングラー、2ケタナンバーのエスロク、超きれいなトラッドサニー(!)といかにも趣味人っぽい車が並び、ここがどんな場所なのかを無言で物語っています。(個人の車なので残念ながら画像なし)
近所なので難なく到着しましたが、入館にはかなり手間取りました。
なぜなら他の来場者さんが私のMGに興味を持ち、受付のおじさんと館長さんも現れてしばらく質問攻めに遭ったため。
フェイスブックに上げたいとかいう人もいたので調べたら出てくるかも。
一段落してようやく入館。館内はまるで宝箱で、私の大好きな「何てことない車」がピカピカにレストアされて並んでいます。
一台ずつ紹介していったらきりがないので、特に感動した車だけを紹介していきます。
タレケツブルーバード。
ピニンファリーナデザインが素晴らしい、コロナに惨敗した悲劇の車。
フェラーリで有名なピニンファリーナですが、その真髄はこんな普通のサルーンにあると思います。
スーパーカーなら速くて凄そうに見えればそれで良いのです。
しかし普通のサルーンは、街にあふれても嫌味にならず、それでいてオーナーが車を降りた後ふと振り向きたくなる、そんなデザインであることを求められます。
これがどれだけ難しいかは、ちょっと車の落書きをしてみればすぐ分かることです。
今やプジョーもフェラーリも内製デザインに切り替わり、金持ち相手のガワ替え車で糊口をしのぐ体たらくですが、ピニンファリーナが作る現代のサルーンをぜひ見てみたいものです。
あ、クーペ風デザインは無しの方向で。
ボルボアマゾン。
安全のボルボ。そのイメージを作り上げた自動車史に残る車です。
本能的に分かる鉄板の分厚さ。頑丈さ。ドアストライカー、ヒンジ、エンジンフードの支柱に至るまで一部の隙も無くこれ堅牢。
ドアを閉めた瞬間の気密性を示す音。快音化などという上っ面の演出では絶対に勝てない甘い音。
世界初の3点式シートベルトは製造50年を経てなお、ほころび一つ起こさない。
ポルシェへの賛辞としてよく使われる「金庫のような」という言葉はこのアマゾンにこそふさわしいのではないでしょうか。
サーブソネット。
史上最もコンセプトが意味不明な車。
FRP(一部スチールフレーム)モノコックの2シーター、パッと見はかっこいいコークボトルシェイプ。ここまで聞くとまるで高級スポーツカーですが、駆動方式は何故かFF、エンジンは2スト3気筒というよく分からん車です。
パッと見は、と書いた通りよく見るとどことなく貧相で、英国キットカーっぽい香りがします。
私はMGの件で気に入ってもらえたのか、特別に世にも奇妙な「FRPモノコックに収まるFFパワートレイン」を見せていただきました。写真もありますが、ご厚意に感謝してあえてWebには載せません。大切な宝物にします。
ソネットのエンジンルームだけでもお腹一杯でしたが、お昼までごちそうになった上、館長さんにたくさんのお話をいただきました。聞けばここの収蔵品は研修の産物で、具体的な将来、レストアを事業として立ち上げるのだそうです。
そこで実感したのが、ここは決して「道楽の宝箱」ではなく「シリアスなタイムカプセル」であるということ。
放っておいたら消えていってしまう「何てことない車」を後世に残すため、駄知旧車館は今後60年間残り続ける使命を持って生まれたのです。
レストアの事業化はまさにそのためのものであり、収蔵品の守り手を生かしていくための手段でもあるわけです。
今はただの奇妙な博物館ですが、遠い将来、ここは人類の遺産になるかもしれません。
※館長さんの将来像には私の解釈が含まれていること、自動車へのおさわりの可否はやや曖昧なことを示しておきます。訪問の際はその点を踏まえていただくようお願いします。
Posted at 2018/10/18 23:09:37 | |
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