2013年01月16日
人は
どれ程の土地を必要とするのだろうか?? ロシアの文豪「レフ・トルストイ」より
小作人のパホームは一生懸命働いてきたが
土地がなく
「土地さえあれば 怖いものは何もない。
悪魔だってこわくない」と言ったのを
暖炉の後ろで一匹の悪魔が聞いていて考えた。
「よしきた、お前と勝負してやろう、
地面で おまえをとりこにしてやろう」と。
パホームは 苦労して地所持ちになり
さらに一生懸命働いて 地所を増やしていった。
パホームは 自分の土地に種子をまき
自分の土地を耕し、自分の草場で草を刈った。
自分の土地で薪を伐りだし、自分の地面で家畜を飼った。
永久に自分のものとした土地を見回りに行くと
草も花もよそのものとは全然違うもののように
思えて嬉しさでいっぱいになった。
こうしてパホームは楽しい生活をしていたが 他の百姓達が
パホームの土地を荒らしにきたりしなければ申し分なかったが
狭い土地では どうしても こぜりあいが絶えなかった。
ある日旅人が来て とても安い値段で 良く肥えた土地が手に入るといった。
パホームは持っている土地や財産を全部売って新しい土地に移っていった。
新しい土地は今までの土地よりも良く肥えて 十層倍も暮らしは楽になった。
それでも、パホームは だんだん住み慣れるにつれて
この土地でも狭苦しく思えてきた。
パホームはもっとたくさんの種を播いてもっと収穫をしたくなった。
そこにまた 旅人がきて バキシールという遠い土地で
わずか千ルーブリで 好きなだけの土地が買えるといった。
そこのバキシール人はみんな羊のようにうすのろで ただ同然に
土地が取れるとささやいた。
パホームは妻に留守番を頼んで、早速 下男を一人連れて 旅立った。
パホームは バキシール人のところに行ってお土産やらお茶を
贈り物に渡すと彼らをパホームを気に入って
何でも好きなものを礼に差し上げるといった。
パホームは この肥沃な土地を買いたいといったら
村長は 一日分千ルーブリでお売りしましょう!と言った。
どういう意味かと言うと
気に入った土地の一点から歩き出し、土堀りでところどころ掘って
木の枝や小石でしるしをつけ 一日中で歩き回った分を千ルーブリで
差し上げると言う。
ただし、日が沈む前に 出発点に帰ってこないとそれらはふいになると言った。
その晩パホームは眠れなかった。
絶えず土地の事ばかり考えた。
一日かかったら、どれだけの多くの土地が手に入るだろうと考えると
興奮して、まんじりともできなかったのだ。
明け方近く とろりとして夢を見た。
誰かが外で腹を抱えて笑っている、
覗いてみると パキシール人の村長だ。
外に出て
「何を笑っておられるのですか」と聞くとそれは村長ではなくて
この土地を教えてくれた旅人だった。…と。さらにそばによると
それは
角とひずめのはえた悪魔が腹を抱えて笑っているのだった。
そのそばにシャツとズボンシタだけのはだしの男が一人転がっていて、
すでに息絶えていた。
それはパホーム自身だった。
パホームはぎょっとして目覚めた。
翌朝朝早く 目覚めるとパホームは
少しでもたくさんの土地を手に入れようとパキシール人を起こした。
彼らがお茶を振舞おうとしても彼らを待とうともしなかった。
「さぁでかけましょう、もう時間ですから」
草原に来ると 曙が始まった。
丘の上に立つと 村長はかぶっていた狐皮の帽子を脱いで地面に置いた。
「さぁ、これをしるしにしてお出かけください。
そしてお回りください。そして ここへお帰りください。
廻られたところは全てあなたのものです」
パホームはあたりを見回した。
どの方向に進んだものかと思案した。どちらも素晴らしい土ばかりだったから。
空の端から太陽が踊りだすと 土堀りを持って水筒やパンの袋も持って
靴紐を締めなおし草原目指して歩き出した。
パホームは歩いては穴を掘って 見やすいように芝を何段も重ねて棒を立てた。
歩いているうちに体が熱くなったので チョッキを脱ぎ
歩きやすいように靴を脱いだ。
さらに歩いていると さらに土地はよくなって 曲がるのが惜しいくらいだ。
ふと振り返ると陸の上に立っているパキシール人たちは蟻のように小さく見える。
もう このあたりで廻らないと離れすぎると思っても
しっとりとしたくぼ地があると見捨てるのが惜しいくらいだ、
あそこに亜麻を植えるとよく育つだろう、とまっすぐ進みくぼ地を取り込んだ。
太陽を仰ぐと傾きかけて丘からずいぶん離れている。
「これはいけないぞ、
地面の形は歪んでも まっすぐに急がなきゃならん、これで十分だ」
パホームはまっすぐ丘の方へ曲がって進んだが 苦しくなってきた。
体は汗でぐっしょり、はだしの足は 切り傷だらけで やすみたいと思ったが
それも出来そうになかった。日の入るまでに丘につけそうになかったから。
「あぁ、しくじったんじゃないかな。欲張りすぎたんじゃないかな、
もしもし間に合わなかったらどうしょう!」
太陽は容赦なく落ちていく。
こうしてパホームは 苦しかったけれどもますます足をはやめた。
行っても行っても 先は長かった。
不安いっぱいになって パホームは駆け出した。
チョッキも水筒も腰にくくりつけていた靴も全て投げ捨て
ただ土堀りだけを持って必死に走った。
「あぁ、俺は欲をかき過ぎた、万事おしまいだ、日の入りまでにとても帰り着けそうもない」
心臓が早鐘のように打ち、胸はふいごのように膨らんだ。
パホームはただ走った。
丘の上でバキシール人がパホームに向って 金切り声を上げたりさけんだりしている。
パホームは最後の力を振り絞り、無理矢理足を動かせた、
太陽の端は沈みかけもう一方はアーチ型になって沈もうとしている。
突然辺りが暗くなった。
「俺の骨折りも無駄になった」と思ったが丘の上でバキシール人がなにやら喚いている。
まだ丘の上では日が沈みきっていないと気がついて丘を駆け上がった。
駆けつけると同時に帽子の前に座っている村長を見た。
村長は腹を抱えてアハハと笑っている。
夢を思い出して パホームはあっと叫んだ。
前のめりに倒れながらも帽子を掴んだ。
「やぁ、えらい!」と村長が叫んだ。
「土地をしっかりお取りなさった!」
パホームの下男が駆け寄って パホームを抱き起こそうとしたが
彼の口からはたらたらと血が流れ すでに息絶えていた。
下男は土堀りでー頭から足までが入るように、きっかり3アルシンだけ、
パホームのために墓穴を掘った。
そしてそこへ彼を埋めた。
これを読んでどう思うだろうか?? 結局一体何を思い浮かべるだろうか??
人の欲を「土地」に喩え欲をかきすぎたが故に「命」を失ってしまった独りの男
これは人全てに当てはまる事ではないだろうか?? 尽きぬ欲望の行き着く先は正に此れと同じ結末ではないのだろうか??
人の歴史は奪い合いの歴史といっても過言ではない。 奪い合いの度に多くの犠牲を払い そして満足する事無く又同じ様に争う・・・・・ 正に尽きる事の無い欲望。
その奪い合いの中で得たモノとは本当の所「ナニ」なんだろうか??
払った代価の分の報酬はあったのだろうか?? それは等しく分配されたのだろうか??
それは一部の者しか享受出来ず大多数には行き渡らなかったのではないか??
結局の所一体何が人を突き動かすのか?? それの本質を知りうる人は少ないだろう。
まぁ自分也の解釈だが最後に記された「下男は土堀りでー頭から足までが入るように、きっかり3アルシンだけパホームのために墓穴を掘った。」の一節にある様に人も結局の所最後は「自分の頭からつま先」まで分の土地しか必要ではないという事だろう。
想いに更け聴きながす東方アレンジ
エバー・ワンダラー
Circle: RD-Sounds
Arranger: RD
Album: 綴 (Tuduri)
Original: Alice in Wonderland
(Touhou 5 - Mystic Square / Extra stage theme)
Event: Comiket 81 (C81)
もし人生の最後に曲が流れるとしたらこういう曲なんではないのかと聴きながら思う。
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Posted at
2013/01/16 21:01:50
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