おばあちゃんのサーフブルー

鎌倉市の中に、御成町という、割と昔から住んでいる人たちの住宅地があるんです。静かで閑静なところ。御成小学校と鎌倉市立図書館と、小さなアトリエなんかがあります。今では、鎌倉市の中でも最も地価の高い所の一つじゃないかな。

7年くらい前、僕は、妻と子供2人とミニチュアシュナウザーを乗せたフォルクスワーゲン・ゴルフを運転して、そこを通っていたんです。確か、『Kamakura Pet On』に犬君のなんやかんやを買いにいこうとしていたんじゃないかな。

一瞬で、目が釘付けになりました。

御成町のそのまた細い小道から、水色の小さな車（それが、ミニのサーフブルーっていう色の車だっていうのは後から知りました）がトコトコッみたいな感じで出てきたんです。その車は、錆びだらけで、やれていて、全然気にしてないよって雰囲気があって、御成町のそのレトロな風景になんだかとても合っていたんです。

運転席には、白髪の、上品なおばあちゃん（70才くらい）が、静かな微笑みを浮かべて、座っていました。

ええ。恋しちゃったんですね。

あれから、おばあちゃんとあの車に出会わないけれど、まだ乗っているのかなぁ…。