あの日と同じ。

キンッ♪

シボッ♪

雨も上がり、すっかり爽やかになった朝。

タバコに火を点けるジッポライターの音が、静かな港に響き渡った。

胸いっぱいにメンソールの煙を吸い込み、肺胞にヤニがまとわりつくのを感じて、ゆっくりと吐き出す。

西の空には、まん丸いお月様が美しく輝く。

１１月１２日夜明け。

あの日の朝、８ヶ月前の３月１２日の朝も、こんなようなカラッと晴れた朝だった。

大津波直後の港で、膝をガクガクと震わせながら涙を堪えていた。

タバコに火を点けることすらできなかった。

恐怖よりも、喪失感でいっぱいだった。

もう一度、メンソールの煙を深く吸い込む。

目を閉じて、ゆっくりと吐き出す。

海水と泥でグチャグチャの道路を歩いた。

全身の震えが止まらなくて、フラフラしながら歩いた。

まだ大津波警報も解除されてなかった。

こんなに穏やかな海を持つ福島県浜通り。

毎日見てきた港。

今ではちょっと見方が変わった。

自分が何の資格も無い人間だから、誰も耳を貸そうとしない。

使い捨てにされる人間。。

そんな会社だった。

もう絶対にダマされない。



なんて考えてたら、１本吸い終わった!!

もう１本吸おうｗ