2015年01月10日
高松北署
経験潤沢
高松市 午後8時41分
「高松北3から香川本部。現在,番町の信号の脇にて,マルカクで職質中ー。抵抗ありです。えー支援願いたい。以上高松北3。」
「至急至急,香川本部から高松北3宛て。状況は,先ほどの軽二輪車逃走の受信がある。こちらで宜しいか。どうぞ。」
「そうです。現在,制圧中,A号念頭で支援願いたい。以上高松北3。」
「香川直轄8は番町から緊急走行で対応準備中。以上香川直轄8。」
「8号が対応,香川本部了解。」
「香川本部から高松方面各局。職質を支援,A号扱いを念頭に受傷注意,各員,連携を徹底されたい。現在,高松北3号が制圧事情聴取中だが,困難中との傍受の通りである。高松方面各局は可能な車両は高松北の番町付近マルエン態勢とせよ。以上香川本部。」
高松北署から内勤警察官がやって来た。たまたま当直だった。警察本部の無線の注意喚起音に反応して捜査車両でやって来た。元々は地域警察官もしていた人物である。
不審人物は既に駆け付けた直轄隊8号によってほぼ制圧されていた。被疑者も観念したようである。内勤警察官が話し掛けた。
「高松北署の刑事です。うちのピーシーがさ,あんたのバイクのナンバーを照会したら札付きのナンバーだって返ってきたから晩かけしたって状況なの。分かる?」
被疑者は黙って頷いた。被疑者は暴れていた割に焦っていない。
「名義人は札付きだったの。あなたのなの?」
内勤警察官は「免許は貰ったのかい?」と署の巡査部長に訊いた。
「つい今しがた預かりました。これから聞いてみます。」
と,巡査部長はパトカーに駆けていった。
「人殺したり,強盗でもやってるかも。」
自ら隊の警部補がささやいた。内勤警察官は地域時代の勘で
「その原因は一つしかない。」と断言した。
「先輩さ,まだあるか?覚醒剤。」
被疑者は財布から空の小分けを差し出した。
「否認しない?大丈夫だな?」
「畜生この野郎。何かあんたの雰囲気が喋れよっつってるみたいだよな。」被疑者は苦笑いしながら言った。
「覚醒剤なんか見付かったくらいで何度も悄気(しょげ)るなよ。」
内勤警察官は被疑者の肩をぽんと叩いた。
「色々大変になるかも知れないけどさ,先輩より悪い奴なんてまだまだ居るんだから。またやめられなかったらさ,また捕まればいいんだよ。だけど,人だけは傷付けるなよ?よれるのは一人だけって決まってるのが覚醒剤犯罪なんだから。
俺は研修時代,そこの会社のじじいからそればっかり叩き込まれて地域で昔食ってた。他の奴が凄むかも知れないけど,それは勘弁してくれ。出てきて捕まりたくなったらこの辺に来れば俺が何とかしてやるから,人だけは傷付けるなよ。」
内勤警察官は繰り返した。
犯罪が起きるのはある程度はしょうがない。人だけは巻き込まなければ,地域の治安は均衡を保つものなのだ。
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Posted at
2015/01/10 17:38:40
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