牛丼

　全国紙・産経新聞が運営するニュースサイト「産経ニュース」の配信記事から『すき家、集客回復へ牛丼並盛り２９０円で提供　６０円値引き　２９日から９日間』に失笑す。

　個人的に経済制裁を科しており、「すき家」で数年来飲食していない私にとっては、既に倒産してしまった企業と同じなので、この先どうなろうが知ったことではない。

　値下げしか打開策を見出せないようなビジネスモデルが、今後飛躍的な成長を遂げるとは予想し難く、もはや詰んでしまっているように思う。

　

　未だ腹に据えかねているので改めて指摘するが、たった5杯の米飯（それも従業員側の主張に拠れば、異物が入り客へ提供できなかったもの）を無断で食したとして、残業代支払いを求めた従業員を窃盗および詐欺の罪で逆告訴するような浅ましい企業である。
　「すき家」を運営するゼンショー側の告発は、嫌疑不十分で不起訴。一方で残業代の不払いや、従業員との話合いを拒否する不誠実な対応を、悉く司法当局が弾劾、謝罪と未払い賃金の支払いに追い込まれ全面敗北した。

　ゼンショーの労務担当者や顧問弁護士は、従業員を窃盗および詐欺の罪に問えると、真剣に思っていたのだろうか。
　経営者は、訴訟を通じて社会的な批判を招くリスクを考慮しなかったのだろうか。


　従業員に長時間労働を強い、強盗犯罪の危険に曝す「ブラック企業」のレッテルを貼られた上に、「勝手に賄いを食べたと訴えるケチな会社」という釉薬をかけられ、ブランドイメージは拭い難いほどに汚れてしまった。
　この結果を見れば、経営判断に大きな誤りがあったことは明白である。



　今回の「値下げ」決断も、経営面から視て正しいと信じるに足る確証は、どこにもない。
　むしろ牛丼を食する層の「更なる値下げ観測」を膨らませ、利益を損なうか。
　はたまた、「そんな安っぽい食事、恥ずかしくて行けない」と敬遠されるか。
　或いは低待遇に嫌気した従業員が大挙離職し、運営が立ち往かなくなるか。

　デフレ・スパイラルを脱し、安定的な雇用と賃金を始め良好な待遇を確保することで、経済を成長軌道に載せようと躍起になる政府および財政・金融当局の方針に反することだけは間違いなさそうだ。