虫螻

　暦の上だけでなく、このところすっかり秋めいて、朝晩は涼しさを通り越し、寒く感じるまでになってきた。
　暑さは苦手ではないが、汗っかきが故に感じる種々の不快さに辟易していた身には、過ごしやすい季節となった。

　ところが我が家周辺の虫たちは、そうでもない。
　相変わらず藪蚊が飛び交い、隙を見て屋内に侵入した個体が、リヴィングで寛ぐ素足を吸血する。猛烈に痒い。

　今年はレモンの葉を好んで貪るアゲハ／プリペットもしくはトネリコに集るオオスカシバの幼虫が、天候不順のせいか少なかったが、ここにきてプリペット周辺にオオスカシバの糞が増えてきた。
　見上げると案の定、私の人差し指よりも長く、親指並みに丸々太った芋虫が、枝にしがみついていた。

　人間よりも季節の変化に敏感であろう虫たちのこと、本格的に寒くなる前に、子孫を残すのに必死のようだ。



　産卵のために吸血する蚊の習性を鑑みれば、刺されてから痒みを緩和するクスリを塗るのではなく、そもそも吸血されないことが蚊の減少につながる。
　オオスカシバも、このまま成長して親となり新たな個体を生せば、植栽がまたも喰い荒らされることになる。鳥もしくは蟻の餌となるよう、枝から外して炎天下の路面上に放置した。


　生命の逞しさに感心し畏れを抱きつつ、更に季節が移り変わり、早く虫の攻撃を気にしなくてもいい気候になってほしいと願う。