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第二阪奈有料道路

官民連携による先進的な維持管理手法の導入
2014年07月27日
カテゴリ : 奈良県 > 交通情報 > その他
 日本の旧都・奈良と西日本の中心地・大阪を短絡する有料道路。混雑する既存路線のバイパスとして1997(平成9)年に供用が開始された。

 鉄道で言えば、同じような目的で敷設された近鉄東大阪線(現・けいはんな線)が相当し、阪奈トンネル(道路)上で路線が交差しているほか、県境のトンネルはほぼ並行して穿たれている。

 大阪府と奈良県に跨ることから「阪奈」の名称が附され、県境までの区間の管理業務を大阪・奈良それぞれの道路公社が担当している(交通管制およびパトロール業務だけは全線を大阪府道路公社が担当)。
 なお「第二~」となっているのは、在来の県道8号線を「阪奈道路」と称しているためである。


 都道府県庁所在地で唯一、奈良市だけは法律が定義するところの「高速道路」が通じていない(本項執筆時点)が、高規格道路として整備された「第二阪奈」を経由して阪神高速道路と直結しており、実質的には高速道路ネットワークが達しているものと視るべきだろう。



 「第二阪奈有料道路」は、開通当初こそ道路網が貧弱で慢性的に渋滞していた阪奈間の既存道路から移ってきた利用者を取り込み、順調に収入を延ばしていたが、開業後5年を過ぎた辺りから利用者数が頭打ちとなり、以降は長期的な減少傾向に転じてしまった。

 通行料収入の減少は、建設費償還のスケジュールや維持管理の原資調達に大きく影響する。
 道路施設を保有し維持管理の責任を担う奈良県道路公社は、当然にコスト削減の努力を続けてきたが、従来の維持管理手法および発注・契約の方法に軸足を置く限り限界がある。

 「第二阪奈有料道路」の各施設は、建設されてからまだ20年に達しておらず、まだ高い健全性を保ってはいるが、老朽化は日々進行し将来時点での大規模修繕および更新に際しては、莫大な費用負担から逃れようもない。
 そこに至って立ち行かなくなる前に、奈良県道路公社は維持管理の方針・手法を抜本的に見直すこととした。



 まずは「予防保全」への転換。
 自然災害や事故など不可抗力に因る損壊は別として、施設の老朽化に伴う破損が発生してから状況確認をし、補修業務を発注するのでは、復旧まで時間を要してしまう。その間利用者に不便を強いるばかりか、通行の安全が脅かされる。
 また逆の見方をすれば、道路資産の健全性が損なわれるまで放置していたことになるわけで、莫大な税金を投じて整備された公共インフラの管理責任がおざなりになっているとの批判を浴び兼ねない。

 
 「予防保全」においては日々の点検を通じて事前に劣化箇所を把握、計画的な補修を実施し、破損や補修の状況はデータベース化する。
 従前の事後的な措置よりも、継続反復的な支出は増えるが、場当たり的な修繕で生じる無駄が解消される分、全面的な更新までのトータルコストでは予防保全方式のほうが安価だとされる。
 「第二阪奈有料道路」はまだ若いインフラなので、予防保線費用も然程大きくならない。
 
 道路資産の健全性が一定以上に維持されていれば、利用者の利便性や快適性を損なうこともないので、サーヴィス向上に繋がる。


 ただし予防保全が合理的なのは理解できても、日々の点検を誰がどのように実行するのか、点検の結果発見された劣化や軽微な破損の修理業務を、どのように契約し精算するのか。従来の発注・契約方法では対応しきれなかった。
 そこで採用されたのが、官民連携(PPP=Public Private Partnership)による包括的な道路維持管理の委託契約である。



 従来は工種ごとに詳細な仕様を提示し、入札もしくは見積合せを経て発注(道路付属物=反射体・ガードレール等の修理交換など)、または事前に合意した発注単価での契約(除草、除雪、凍結防止剤散布、清掃、ポットホール埋戻しなど)していた。

 しかしこの方式では、甲(=発注者)が乙(=受注者)へ委託した業務内容以外の指示は許されない。乙の側も営利企業なれば、受託した業務以外の仕事に従事する義務はないし、余計な事をして事故に巻き込まれては目も当てられない。

 よって、例えば除草作業中に業者が発見したガードレールのボルト緩みなどは、道具さえあればその場で修理も可能だが、除草作業の仕様書にガードレールの補修は含まれていないのでタッチできないし、報告すらも義務ではない。

 除草業者の良心にすがり、ガードレールの不具合を報告してもらえば多少遅れても修理に取り掛かれるが、除草業者が多忙のあまり報告を失念してしまったり、報告を受けていても公社内部で不具合の情報が共有されていないと、緩んだガードレールが長く放置されることになる。実際に、そのような不適切な対応が起きていたようだ。



 新しい管理業務契約では、舗装の全面打ち替えや橋梁のジョイント部分の交換など大規模な改修・更新工事(=別途公示し発注する)を除く軽微な補修・修繕、道路内外の除草、除雪・融雪剤散布、集水桝・水路の清掃といった業務と、これらのマネジメント・改善提案・次期契約業者への引継ぎ業務を包括的に民間業者へ委託する。


 奈良県道路公社からは補修工事に関する細かい仕様の提示をせず、道路利用者の快適性向上と安全性確保、道路資産の保全に足るだけの性能規定(ひび割れやわだち掘れの限界値、植栽の繁茂状況)、および不具合が発生した場合の対処基準(対処の難易度別に、不具合を確認してから対処が完了するまでの時間または日数を定める)を設け、これに基づき管理を行わせる。

 一方で、先に記した「除草作業中にボルトの緩みを発見」といった軽微な補修は即時対応すること、大規模な修繕を要する不具合を発見した場合は、速やかに奈良県道路公社へ報告することを義務付けた。 


 この手法で管理業務を効率化することにより、奈良県道路公社はサーヴィス水準の向上と管理コストの低減、発注や契約に関する事務手続きの業務負担を大きく削ることが可能になった。
 一部の除草作業についてのコスト分析では、発注時点で対象面積を見直したことから3%ダウン、更に受注業者からの改善提案(そもそも除草の必要が無い面積を控除等)を反映させることで25%以上もの縮減を達成したという。

 受注企業側も、性能規定を満たしていれば施工回数や手法の如何を細かく問われないため、工夫次第で利益を大きくすることができる。また管理対象の道路に密着する業務なので、中央の大手ゼネコンよりも気候や風土に精通した地元企業が参入しやすい。
 
 このように甲・乙相互に協力して「ウィンウィン関係」を築くのが、「PPP=官民連携」たる所以である。


 なお同じように民間が公共施設運営に関わる方式に「PFI=Private Finance Initiative」があるが、PFIでは基本計画は全て発注者側が策定し、資金とノウハウを提供する民間事業者を入札で決定する。よって官民が連携して業務を推進するPPPとは、事業執行の体制が大きく異なる。


 奈良県道路公社としては、料金収受や巡回などの業務への拡大・契約年数の長期化(5年程度)を検討し、更に管理コストの縮減とサーヴィス水準の維持向上を図る予定でいる。




 これまで連綿と積み上げてきたレヴェルの高いインフラも、20年後にはトンネルの半数、橋梁の2/3が竣工後50年を超過し、一斉に大規模修繕および更新の時期を迎える。

 我が国の公債残高が800兆円に迫らんとする(2014年度末時点)状況下、その費用負担が財政の重荷になることは目に見えている。
 改修・建替えの予算が捻出できないインフラは、供用を諦め除却されてしまうかもしれない。
 重税に喘ぎつつインフラ更新を進めるか、インフラが次々消え経済が縮小していくか、どちらにしても国民生活に対する影響は甚大である。


 奈良県道路公社の取り組みが他の発注者や公共事業にも広がって行けば、その影響を少しでも軽くできるかもしれない。






住所: 奈良県生駒市壱分町87 奈良県道路公社第二阪奈有料道路管理事務所
電話 : 0743-76-0731

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