
6月4日、海上保安庁は「【記者発表】南海トラフ沿いの固着は時間的に 「変化する場所」と「変化しない場所」がある――プレート境界の固着状態の時空間変動を観測から把握――」を発表しました。
以下、発表内容です。
○発表のポイント:
◆海上保安庁による11年間の精密な海底地殻変動観測データを解析し、プレート境界のくっつき具合(固着状態)が変化するパターンを初めて明らかにした。
◆震源域の中でも、巨大地震のエネルギーを溜め込み続けている「安定した固着域」が主に日本列島南岸に近い海底下に存在し、「固着が時間変動する領域」がその南側に存在することを突き止めた。
◆海底下の固着の時間変動を観測データから把握できるようになったことで、将来の地震の規模や性質をより正確に見極め、国や地域の防災対策に活かされることが期待される。
○概要:
東京大学 生産技術研究所の横田裕輔准教授と、海上保安庁海洋情報部の渡邉俊一主任海洋防災調査官、気象庁気象研究所の野田朱美調査官(現・産業技術総合研究所)、海上保安大学校の石川直史教授らによる研究グループは、直近11年間の海上保安庁の海底地殻変動観測データを精査することで、南海トラフ地震(注1)の想定震源域におけるプレート境界の固着状態の時間変動の把握に成功し、その変動パターンが各地で異なり、固着の強さが観測期間内で変動しない領域と変動している領域とに分けられることを見出しました。
本研究では、海上保安庁が運用している海底地殻変動観測網「SGO-A」の11年分の長期データを用いました。
先行研究では、使用できるデータの期間が短く、固着状態(注2)の時間変動を十分な精度で捉えることが困難でしたが、その後のデータの蓄積と解析技術の向上により、詳細に把握することができました。
今回の研究成果は、将来発生可能性のある地震のより正確な評価に貢献し、国や地域の地震防災対策に役立てられると期待されます。
海上保安庁は、観測点の拡充にも取り組んでおり、今後のさらなるデータの蓄積によって、より詳細な固着状態のモニタリングが可能になることが期待されます。
○用語解説:
(注1)南海トラフ地震
南海トラフは西日本の南側沿岸の沖合にあり、フィリピン海プレートが日本列島の下側に南から沈み込んでいる。
過去に繰り返しマグニチュード8クラスの巨大地震が発生しており、地震防災・減災のため内閣府では震源域や被害の想定を行っている。
(注2)固着状態
プレート境界で上盤側と下盤側のプレートが密着している状態。強く固着している場合、海洋プレートの沈み込みに伴い、上盤側の陸側プレートが引きずられ変形するため、固着の強弱は地表(海底)の動きから推定することができる。
(注3)GNSS-A
GNSS(人工衛星を用いて海面より上の位置を正確に把握する技術)と音響測距(Acoustic ranging;音波を用いて距離を測定する技術)を結合することで海底の位置をセンチメートルの精度で決定する技術。海上保安庁が運用するSGO-A観測網に用いられる。
(注4)スロースリップ
スロー地震の一種。断層が数日から数年かけてゆっくりとすべる現象。
とくにプレート境界において発生する。
すべりの期間が数日から数週間のものは短期的スロースリップ、数ヶ月から数年のものは長期的スロースリップと呼ばれる。
南海トラフでは陸上のGNSSやひずみ計等の観測網によって、沈み込むプレート境界の深部で発生していることが検出されているほか、熊野灘の海底掘削孔内観測によってプレート境界浅部において短期的スロースリップの発生が検出されている。
詳細は、以下を参照願います。
https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/5081/
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2026/06/06 17:59:53