2008年03月19日
その日、ある塾ではいつもと同じような光景が繰り返されていた。
黒板をガンガン殴るように走り書きをしながら、少しでも知識が身につくように熱弁する教師に、部活に習い事にと疲れながらも頑張ってついてくる生徒たち。
しかし、毎日繰り返される当たり前の光景の中にこそ、あってはならない事態は常に潜んでいる。
生徒①「……先生!!」
それまで黙って勉強に勤しんでいた生徒の一人が身じろぎした。
教師「どうし………!!」
教師は何が起こったか理解すると同時に被害を最小限に食い止めるため、余分な動きを避けた。
教師は、生徒の一人に教室から新聞紙とティッシュを持ってくるように伝えると、こちらに気付いて身構える「彼女」との距離をそっと縮めはじめた。
その時だった。
第一発見者である生徒①の前、花子に一番近いところに座っていた生徒②が気付いてしまった。
きゃあぁぁぁぁぁぁあああ!!
一挙に全員が花子との距離を取る。
ば…そんなことしたら…!!
驚いた花子はその黒光りする自慢の肢体を開き、飛び立とうとする。
まずい!
ここで彼女のしたいようにさせたら教室はパニックだ!
教師はその戦歴から冷静に思考を続ける。
しかし、新聞とティッシュはまだ届かない。
こちらが躊躇っている間に彼女は今にも先制攻撃を開始せんと羽ばたきだす。
ダメだ、それだけは…!!
思うより先に身体が反応し、動いていた。
別れの直前にごねる女に平手をくらわす冷徹な男よろしく、右手が彼女を捉える…!!
バシンっっっ!
教師の右手は紛れも無く彼女を捉えていた。
しかし、教室を救った行動に称賛の眼差しはない。
次の瞬間、ドアががらりと開き、新聞とティッシュを持った生徒が一人が息を切らせて入ってくる。
…遅かったか。
教室を救った勇者に、心ない言葉の刃が襲い掛かる。
先生、きたなぁい…!!
教師の瞳から、人知れず雫が流れ落ちた。
もうお分かりですよね。
花子は二本のおさげが似合う、例のあいつです。
※この文章には一部人を不快にさせる表現が含まれています。ご注意ください。

Posted at 2008/03/19 11:01:35 | |
トラックバック(0) |
恐怖の花子さん | 日記