
この記事・・・。
書こうかどうか散々迷ったのですが。
色々情報を聞きまして・・・。
「書いた方がいいんでない?」的な気分になりまして・・・。
まぁクリスマスだし、ヒカリモノの日ということで、ちょっと頭の片隅にでも入れておいて下さいな。
というわけで。
今回は、「LED打ち替え」についてです。
オイラは電気屋さんです。
正確に言えば、とあるメーカの「電気設計者」です。
が、いろいろありまして・・・。
研究、開発、設計、企画、規格、製造技術、製造、実装、品質保証、サービスと、一通りのお仕事の内容を身を以て経験しております。
#製造技術~実装は、今イチ、アレですが、、、。
あと転職経験は無いので、「他のメーカ」がどうなのかは知りません。
が、オイラが所属しているメーカ内の「派閥」は何度か渡り歩いたので、ある程度「違う文化」は知っています。
それを踏まえて・・・。
なんか巷では、「LEDの打ち替え」が流行っておりますが。
真面目な話、「やめたほうがいいです」。
素人が手をつけていい場所ではありません。
#ここで言う「素人」とは、「該当基板の実装、製造メーカの中のヒト」以外を指します。
じゃあ何でマズいの?、てあたりを掘り下げてみます。
まず、LEDには、「順方向電圧」「定格電流」が存在します。
これは、LEDによってマチマチです。
特に純正の黄緑に比べ、半導体の組成が違う「青」や、青や紫のLEDを蛍光体使って光らせる「白」「ピンク」、マルチLEDで色が変わるタイプなどは、LEDが求めるパラメータが異なります。
例えば、スタンレーのチップLEDは:

色によって順方向電圧の値が違うことが分かると思います。
*例えば、特性値の「BR」は「赤色」です。
次に、絶対最大定格:
これを超える数値を与えてしまうと、LEDを壊します。
一瞬でも、これを超える値を入力してはいけません。
例えば、日亜の白:

順電流の最大値は「150mA」です。
比べて、スタンレーのチップLED:

順電流の最大値は「25mA」です。
日亜のLEDの定格は「120mA」なので、日亜のLED使っているところに、そのままスタンレーのLEDを実装してしまうと、LEDが壊れてもおかしくない状態になる、ということです。
実際は、絶対最大定格を超えても、デバイスは動くことがありますが、製品の寿命を著しく縮めたり、最悪ショート方向に壊れて他の回路にダメージを与える危険性があります。
まぁ、このへんは、LEDの仕様を正しく理解し、周辺回路を追い、「電流制限抵抗」等を調整することで、何とかなるのですが・・・。
問題は、「実装」です。
プリウスさんのLEDは、ナニ使っているのかイマイチ把握しておりませんが、まぁチップLEDでしょう。
チップ部品は、通常「リフロー」という工程を使い、半田付けします。
これは、半田をスクリーンで印刷し、その上に部品を載せ、最後に「リフロー炉」というオーブンで焼き上げる事で実装するものです。
LEDに限らず、リフロー部品には、「はんだ付け条件」というものが存在します。
例えばスタンレーのチップLEDは:

てな感じ。
が!、ぶっちゃけこの温度では、手付けは不可能です。
なので、手付時の最大定格も別途あります。
LEDは樹脂部品なので、手付のプロファイルも大変厳しく、「慣れた」ヒトじゃないとこの数字を満たすのは難しいです。
もちろん、コテは2本使って、温度調整が出来る、また温度降下が緩やかなワッテージの高いタイプのコテを使わないとダメです。
#ちょっと古いですが、HAKKOの942、とかですね。
最後に、「半田の組成」。
これが、上で言う「素人が手を付けていい場所ではない」の最大の論拠です。
実装時に使われる半田と、組成の異なる半田を使って再実装した場合、組成の違いにより、半田の「層」が出来やすくなります。
これは、クラックや衝撃に弱くなる事を示しています。
LEDを除去し、パターン部をいくら綺麗にしても、「古い半田」は残ります。
そこに、組成の違う「新しい半田」を載せる事は、ご法度です。
・・・まぁ最近の無鉛なので、多分千住金属の「緑の無鉛はんだ」を使えばいいような気がしますが、あくまでも「気がする」レベルです。
実際の実装に使われている半田の組成は、実装メーカしか知らない筈です・・・。
もちろん、無鉛に比べて有鉛が「溶けやすい、流れやすい」ので有鉛半田で再実装、は超NG行為です。
半田組成差分が大きすぎるので、部品取れるトラブルが起きやすくなってしまいます。
じゃ、LED取れたらどうなるの?、というお話。
プリウスさんの場合、LEDが取れたら「大変危険な事態」に陥る場合があります。
特に危ないのが、エアコン周り、そしてドアスイッチ周りです。
こいつらには車内LANの一種「CANバス」が通っています。
LEDは順方向には電圧を通してしまう、「ダイオード素子」なので、基板のどこかにある「CANバス」と、電源やGNDをショートさせる危険性があります。
これやると、プリウスさんはシャットダウンします。
走行中でも、「ハイブリッドシステムエラー」を出し、走行不能に陥ります。
また、CANバスにあまりにも大きい電圧やノイズを紛れさせた場合、ECUを壊します。
懇意にしているDの方のお話では、過去そういう例が「懇意にしているD」でも、あったそうです。
#車種はベルファイアだそうですが。
純正のLEDは何故取れないのか。
それはエージングテストやヒートショック、振動テストなど、様々なテストを乗り越えた基板マクロ、実装条件、半田組成で実装しているからです。
特にクルマの場合、このヘンのテストは厳しいと予想しています。
#弊社もクルマ系扱ってますが、残念ながらオイラはテスト内容を知りません。
#が、同等の厳しさを持つと予想できる「ノンコンスーマ」つまり「プロ用機材」は、かなりテスト内容が厳しいです。
・・・こうして、「10年大丈夫」を純正では保証するのです。
素人が打ち替えた場合、同等のテストは当然出来ないので、まぁ危ないだろうな、とオイラは予想します。
ちなみにLED実装基板をDで半田使って触る事は無いそうです、基本的にASSY交換。
以上、「オイラはLED打ち替えをしません」から、「オイラはLED打ち替えを薦めません」に主義を替えたいと思います!。
やっちゃったヒトにとっては、頭が痛い話でしょうが、これが現実です。
これからやろうとしているヒトは、リスクを十分に承知してから行ってください。
ハッキリ言って、「LED打ち替え代行業者」的なモノも、充分怪しいとオイラは思っています!。
くれぐれもご注意を!。