中国からこんにちは。
2週間の強制隔離中のマニアです。
昨年に続き2度目の渡航ですが、相変わらずPCR検査が苦痛です。。。
余談はさておき、今回のテーマはターボチャージャー。
今後のエンジンチューニングどうしようかなと妄想していると、RB26の場合はターボの交換に必ず行き着くと思います。
RBのチューニングは、最新技術を取り入れてパフォーマンスを高めることが流行りですが、ターボの性能はどうなっているのか?どうみたら分かるのか?
いまいち分かっていなかったので、自分の頭の整理がてら記事にまとめてみたいと思います。
■コンプレッサーマップを入手しよう
ターボチャージャーの性能を知る上では、コンプレッサーマップを見て特性を探ることになります。
チューニング界隈でよく使われるギャレット社では、全ての製品のコンプレッサーマップが公開されています。
製品をクリックし、下の方へスクロールするとコンプレッサーマップへアクセスできます。
このグラフでは、
・ブースト圧と風量、断熱圧縮効率の関係性
・サージングライン (風量が少なすぎてブースト圧が上がらなくなるライン)
・チョーキングライン (コンプレッサーの最大風量に達するライン)
を読み取ることができます。
■コンプレッサーマップを理解しよう
グラフの縦軸は圧力比と書いてあります。つまり、コンプレッサー入口と出口で圧力がどれだけ高まったのかの比率です。
簡単に書くと、ブースト計が2kを指しているときは200kPaG+101.33kPa(大気圧)ですから、圧力比は301.33÷101.33≒3になります。ブースト1.5kなら圧力比2.5です。
※正確には、入口側は負圧に、インタークーラーなど各部圧損によりタービン出口は測定値より高圧になっているはずなので、圧力比は上記式より大きな値になっている可能性があります
横軸は補正空気流量で、コンプレッサーが送り込んだ空気量になります。
大まかな計算式は、
補正空気流量[kg/min] = (排気量[L]×回転数[rpm]÷2×充填効率[%]×圧力比÷1000)×1.293[kg/m3]
ポンド換算すると、
補正空気流量[lbs/min] =補正空気流量[kg/min]÷ 0.454 [kg/lb]
となります。
実際にRB26エンジンで、7000rpm/ブースト1.5k/スロットル開度100%を例に計算してみましょう。
補正空気流量[kg/min] =排気量2.568[L]×回転数7000[rpm]÷2×75%÷1000×2.5×1.293 ≒ 21.79 [kg/min] ≒ 48.0 [lbs/min]
※体積効率はバルブタイミング等により変わります。実際の値は測定してみないと分かりません
これで、エンジン回転数とブースト圧設定値より、性能曲線のどこらへんを使っているのかが分かるようになりましたね。
では、冒頭に出したグラフ、Garrett GTX2860R GENⅡをツインターボでRB26へ搭載した場合をトレースしてみます。
※1:アクセル全開/ブースト1.2k/rev8000rpm/4000rpm/でフルブーストと仮定

ブーストの立ち上がりは、グラフのつながり的に想定で記入しています。
サージングラインより左側にラインが来ていますので、実際はサージングラインぎりぎりを狙ってブーストを制御していくことになります。
コンプレッサーの風量的には余裕がかなりある状況ですね。
高回転域以外は、断熱圧縮効率が低いエリアを使用しているので、排気エネルギーのほとんどが熱に変わってしまい、パワーやレスポンスが良くない状態です。
では、ブースト1.8kで、それ以外同条件の場合。
最高回転数時にコンプレッサーの最高効率、立上りもサージングラインぎりぎりに近く、先程よりは効率の良いエリアを使えている印象です。
ただし、風量にもまだまだ余裕があるため、この程度のパワーならば」ワンサイズダウンしてブーストをもう少し上げたほうがマッチングが良さそうです。
つまり、このタービンを使用するならば、ブースト1.8k(もしくはそれ以上)かけないと、本来の性能を発揮することはできないということになります。
では、その時の馬力はどれくらいになるのか?
空気吸入量から空燃比を用いてガソリン使用量を算出すると、大まかに計算できます。
理論空燃比は14.7ですが、負荷のかかるゾーンはだいたい11前後を狙っていることが多いと思います。
この時、R26のインジェクター容量(***cc/min)が対応する馬力になる、という経験からの法則に従うと、1000馬力に必要なガソリン量は、
1000[cc/min]×6[本]×0.75[g/cc] = 4500[g/min]
空燃比から必要となる空気量は、
4500[g/min]×11 = 49500[g/min] = 49.5[kg/min] ≒ 109[lbs/min]
となります。あとは単純に割り算で、600馬力なら
109[lbs/min]×0.6 = 65.4[lbs/min]
となります。
先程のGTX2860R GENⅡをブースト1.8kで使用した場合は、
(30.7[lbs/min]×2)÷109[lbs/min]×1000[ps] = 563[PS]
が得られる想定となるわけです。
※充填効率75%と低めに見ているので、カムシャフト・バルブタイミングの設定で更に高回転域で馬力が伸びます
ただし、これはコンプレッサー側だけの話で、エキゾーストハウジングによって実際の特性は変わります。(排圧によって、吸気できる空気量が変わるため)
そこまで考えると話が長くなるので、そこはまたの機会に。
■タービンの選び方
ここまでで、大まかにコンプレッサーマップの中身が分かってきました。
エンジンと組み合わせた時にマッチングするかどうかも、データ上では検証できるでしょう。
では、タービン自体の性能を比較するときはどこを見ればよいのか?
Garrettの新旧タービンのコンプレッサーマップを見てみましょう。
入口径の大きさが近いタービンを選んでみました。
左:G25-550(入口径48mm) 右:GT2860RS(入口径47mm)

縦軸と横軸のスケールを合わせたら、悲しいくらいGT2860RSのグラフが小さくなってしまいました。
このグラフからタービンの性能差を読み解くと、
・G25-550は許容ブーストが2.9kまでかけられる。断熱圧縮効率を考慮しても、2.5kまでは常用範囲。
・最大風量が大幅に向上。断熱圧縮効率75%のエリアで比べると、28[lbs/min]→45[lbs/min]へ。
・最大断熱圧縮効率が4%向上
・サージングポイントが若干広がっており、低流量からハイブーストをかけることが可能
全体的に、低流量・低ブースト時の特性は変えずに、ハイブーストにも対応させ、出力をさらに向上させている事がわかります。
言い換えれば、同じ出力で良ければ古いタービンより小さいタービンでも良くなっている、ということです。
では、タービンのサイズを大きくしていくと、どの様に特性が変化していくのでしょうか。
左:G25-550(入口径48mm) 右:G30-900(入口径62mm)※TO4Z相当
・G30-900はサージングラインがかなり右よりになる。(低風量域でサージングが起きやすい)
・(当然ながら)大きなタービンは風量が大きく、効率の良いエリアも風量が多い時で、はいパワーマシン向きである。
以上、コンプレッサーマップを中心に、タービンの性能の見方を考えてみました。
色々と資料をあたっていく中で、タービンの性能進化が凄まじく、特にGarrett内であればGシリーズはカルチャーショックを受けるレベルで進化してます。
例えば、シングルタービンで名を馳せたTO4Zは、入口径66.7mmで最大風量70[lbs/min]でしたが、G30-770(入口径58mm)で同等の風量を得ることができます。
コンプレッサーが小さいということは、レスポンスアップ・軽量化に繋がります。
GT2530やT517などの世代を使っているのであれば、最新タービンでリセッティングすればまるで別の車に生まれ変わる可能性を秘めているでしょう。
ただし、基本的に新世代タービンはハイブースト領域を使うことで高性能を得ていますので、エンジン本体の強化が必須でしょうね。
それでも、HKSやTrustがコンプレッサーマップを公開しないのは、比べられてしまうからなのか...(闇)