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雑魚のブログ一覧

2018年12月16日 イイね!

文章の限界

 趣味で小説を書くため、時折、文章にやれる事、難しい事について真剣に考える夜がある。

 文章は自由だ。その文面から、それぞれ読んだ方々へと、それぞれに最適化された「心の追体験」をさせられる。それは文章にしかやれない。例えば「美少女」だ。黒髪の少女を想起した人も、金髪のギャルを想像した人も居るだろう。その自由な発想は誰にも縛れない。作者でさえも。それが「小説のやれる事、文章の力」だ。

 では逆に「やれない事」とは何か。映像にはやれて、文章に出来ない事。それは正に「体験にない事は伝える事ができない」という点に尽きる。

 比較に適しているとは思えないが、例を挙げるなら「ゾンビ」だ。これは今やホラー映画では定番の材料となり、どの映画でも何となく説得力がある、某国などは真面目にゾンビ対応マニュアルまで作ったとか。説得力ある設定だとか。しかし、それは「映像体験」がさせる説得力が主体で、実際に真面目に考えると実に荒唐無稽なものなのである。

 ゾンビ、つまり「動く死体」が社会崩壊を招く程の破壊的な感染拡大を続ける事、そのものがまず無理なのだ。死体は必ず腐敗する。数週間も筋肉繊維を維持はできまい。感染する、片っ端から腐敗を始めるので、軍団にまずなれない。その他モロモロ、様々なツッコミはあるのだが、今回はそれが目的ではない。

 「じゃあ、小説でゾンビを表現してみよう」となると、これが実に辛いし眠い。前述したように、文章は「体験にない事は伝えられない」から、まず、動く死体の原理が表現されないと、全くもって眠い。表現できても、医学的考察を読むだけで眠い。

 だからブラム・ストーカーは「吸血鬼ドラキュラ」を寂れた寒村の話にした上で、範囲を更に限定した「恐怖」を描いた。太古の昔より「死人が甦り、人間を攻撃する」という伝承や伝説はある。つまり大昔より人間は「死体が甦るんじゃないか」という潜在的恐怖を持っている。

 が。「それが大暴れして社会破壊させました」となると、これが文面にされると実に荒唐無稽になるのは、そんな事は一度たりとてないからだ。そして、もっと恐ろしい感染病の存在を人間は多数目撃しているし、認識している。コレラやペスト。別に死体が甦って、噛みに行かんでも。別に普通に死に至らしめる恐怖の病原菌は存在する。もっと怖いものが現実にはあるのだ。

 そこに「動く死体」が社会をぶっ壊しに来ました、なんて小説で描かれても?

 カッコワライである。咳から普通に感染して死んじゃう病原菌があるのに?噛まれないと感染しない不自由な菌が?社会を壊せる?は?だろう。

 だから「動く死体」が悪さをするなら、活動範囲を限定したほうが、より恐怖を与えられる。
 

 このように、読者の想像力を自由に刺激できる利点はあるものの、それ故に想像力を刺激できない程、荒唐無稽なものは決してメジャーな扱いになれない。文章とはそういうものだ。



 と、いう長い前置きを置いたうえで本題に移ろう。

 「自動車記事とは、有効な伝達方法であるのか?」だ。文章だけで車を伝えるという方法そのものが、効果的か否かだ。この場合「自動車を知らない人にも魅力を伝えられること」が要素としてまず求められる。この要素を踏まえた上で、じゃあ記事として成立させろと言われれば?

 私は素直に「NO!」だ。自動車の魅力を知るには、実際に見て触って、動かして、乗ってみて、それでようやく伝わるものだからだ。既に一番いい方法があるのに。わざわざ記事なんて効率の悪い事をして。そこに社会的な意義や意味を見出してくれよって。それはちょっと要求が酷だろう。自動車ライターの方々。

「ブレーキを踏んだ際に、何とも言えない違和感が」
 ブレーキ踏んだ事のない人が、これ読んで何をどう想起できる?
「アクセルを踏む度に、何とも言えない恍惚を与えてくれる音がある」
 アクセルを踏んだ事もないし、エンジンの音は基本、雑音としか感じてない人が、これを理解できるかい?

 基本、自動車の記事はまず「自動車をよく知る人だけ」が読んで、初めて納得できるものであって。
 知らないし、興味もない人々を魅了して自動車を理解させる力なんか最初から小さい。無いとは言わない。が、魅力を伝える伝達方法として果てしなく効率が悪い。伝えたい相手を実際に運転させれば、それで済む話なのだ。あるいは写真や動画で見せればいい。映画とかね?

 だから私は、自動車の記事を書いて、それで魅力を伝えたいのなら、まず「ストーリー」が要ると思うのだ。読者が想起できる話題、恋愛や社会の事が主体で、自動車をそこに滑り込ませればいい。自分が体験した事を、風景に溶け込まさせて表現する。それなら多少は効率が上がる。


 「何を誰にどう伝えたいのか」
 それもはっきり。自分でイメージできないまま、いい大学を出て、指定された表現だけで、記事を書く人ばかりだから。知らない人まで、自分の文章で魅了したいって言うのなら。

 知らない人にイメージさせたい、伝えたいって事なのに。
 アクセルのツキがどうたらこうたら。
 車体剛性が云々。
 エンジン音は騒音でしかないって誰も思っているのに、そういう人たちに向かいフェラーリミュージックだの。喜々として語って悦に浸る。バカげてる。ただの自己満足だ。読む人の事なんか、最初からどうだっていいんじゃん。自分がそう書きたいってだけだろ?そう書くんだもんな、普通は。

 だから。そういうエゴな部分をまず認めた上で。
 でも伝えたいってエゴも守りたいのなら。

 想像し易い情景はまず必要でしょうよ。だから「自動車記事にこそ、ストーリーは要る」と思う。

 近年の自動車記事は益々。本当に。誰に向かって書いているのか、段々分からなくなってきている。これで自動車産業と文化の発展、その一翼を担いたいだとか。

 ないだろ。普通に考えて。

 と。昨晩。雑誌を読んで思った事でした。ちゃんちゃん。
Posted at 2018/12/17 00:10:14 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2018年11月25日 イイね!

晩秋の三河湖

晩秋の三河湖付近(愛知県)では、紅葉と桜が同時に楽しめると聞き

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 行ってきました。マジで桜と紅葉が同時に楽しめました。

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皆さんもどうぞ。今なら人いないッス!( ´艸`)
        
     
Posted at 2018/11/25 21:30:21 | コメント(1) | トラックバック(0) | 日記
2018年11月18日 イイね!

こんな事を書いても仕方がないのだが

 「自動車産業に携わる人間の8割以上は確実に自動車に興味がない」

 これが私の推論です。正確なソースは何もありません。本当は「10割」と書きたいところだが、2割減らしてそれっぽくしてみただけです。

 でもたぶん、9割がた、自社で生産している自動車に興味なんか・・・本音の部分はね。何も興味なんかない。仕事じゃなきゃ、車なんか触りたくもない。そういう人たちばかりだろう。

 それが何だ?それでも日本自動車産業は世界の天辺を取ったのだが?

 それが彼らであり、我々、日本の車好きの解答だろう。それは事実だ。自動車に興味がないからこそ、そういう視点での商品開発もできる。

 今日、したいのはそんな「これまで」の話ではなく。辛辣な「これから」の話。

 私の考えを理解していただく為に、少し視点を変えましょう。

 商品を「自動車」ではなく「あんぱん」に表現を変えてみましょうか。

 そして「あんぱん」は戦後あたりまで「130円」で売られるのが当たり前だった、と仮定します。原価を考えても100円が限界だったろう、と仮定を追加します。

 そこで我が日本産業は様々な画期的工夫と努力の末に「88円」で、しかも88円でありながら品質や味の面でも130円の老舗の味に近しいものが作れたという事にします。

 大量生産によるコスト減もあり。その中で日本産業は「これでいいのだ」と自信を深めました。

 だが時代が進むにつれ、次第に賃金は高騰を続け。部品も安価に作る事は許されない風潮もあり。

 次第に商品は88円から95円、98円。とうとう105円まで値上がりする事になったのです。

 そして老舗はその間にも企業努力を続けて。130円だったあんぱんを、105円まで値下げして売る事が可能になりました。


 と。

 考えた場合に。

 どっちの商品がお客様の目に、魅力的に映るだろうねって事です。

 老舗側は欧州自動車産業としましょうか。もう土台から、国家レベルで、日本よりも自動車に対して愛情は深い。近年、それが薄まる風潮があったにせよ。日本ほど関心が低いって事はない。少なくとも必需品であり、そして国民や業務に携わる社員も、それぞれのメーカーの商品には少なからず誇りを感じていると思う。それはたぶん、当たってる。

 対して日本はというと。やはり、誰もが「自動車なんかにムキになるのはカッコ悪い」と誰もが思うって事です。誇り?埃だろ?簡単に手で払えるぜってなもんで。だからどうした?それでも売れているだろう?

 ええ。

 だが問題は。

 日本がすっかり作れなくなった「88円のあんぱん」を。

 発展途上国や中国が作れるって事です。もう安かろう、悪かろうじゃない。そこそこ良いレベルを維持し始めている。決して高いものではないにしろ、凄く悪いって商品は次第になくなりつつある。


 そして日本は二度と88円のあんぱんを作れる土壌がない。どうしたって105円以下は無理なんです。

 そして世界経済は富める者と、貧困層の2極化が極まる事が、今後予想されるし、それは必然の未來です。このまま行けばね。

 下には行けないなら、上に売り込むしかないのだけれど。

 そこに売り込もうと、今、日本自動車産業は更なる高品質化に取り組んでいるけれど。それが達成される日が来たからといって。何の欠陥もない自動車が100%出荷できるようになっても。

 イコール売れる。とはならない。それが上を相手に商売する難しさなんです。彼らは商品のブランドを重んじます。つまり、どれだけ愛されているか。

 そこに自社製品も陰で笑う、我々、日本の。その自動車産業の方々。その姿を見て。

 果たして買えますかね。愛を感じるでしょうか?

 無理ッスよね。

 鼻で笑ってんのに。自分たちでバカにしてるんスわ。自分で作った物を。斜に構えてね。

 だったら?

 同じ105円を払うなら。


 老舗、つまり欧州のほうに目が行くようになるでしょうねってのが残酷な結論。

 だけど私は欧州自動車万歳って人間じゃない。我が国の産業に頑張ってもらいたい。絶対応援はしている。

 しているからこそ。現実に背を向けちゃいけないかなと。

 互角の商品なら。日本は負けます。近いうちに。

 このままでは、確実に日本は負けます。

 問題は品質じゃない。誰も誇りなんか持つのは勘弁って。その風潮です。誰も愛さない。

 じゃあ、誰も愛する自動車を作るようになれば?と考えるのが、日本の自動車評論家やライターであり、車好きでしょう。

 そんなん。

 無理やん。

 アホかい。愛される自動車って何やねんな。ただの鉄塊に過ぎないのに。そういう解き方も間違いだと思うんですよ。

 誰もが無条件で愛するだとか。フェロモンでも塗る気かい。スマイルでも付けるの?無理でしょ。いきなり発想が二次元になっちゃってる。

 だから私は提言したい。

「自動車を愛さない国風なら」

「むしろそれを逆に生かすべきだ」と。徹底して愛してないから。やれる発想ってないんスか?

 愛するとか無理でしょって気風から。生まれる視点、斬新な発想。

 それを何で発掘しようとしないの?って思うんですよ。

 愛してないのを非難するでも嘆くでもなく。逆に武器にしようぜって。


 何で日本自動車産業の上の方々は思わないのか。愛してないものを。愛させようだなんて無理な事をしている場合じゃないっしょ。冷え切った夫婦関係も修復できん程度なのに。

 どこまで自惚れてんだ?日本よ。

 愛してないのなら。その徹底して冷めた視点での商品開発。及び、ビジネスの展開って奴があるだろう?自動車ってバカみたいじゃん?なら、どこら辺がバカかと。

 お金、かかり過ぎるよね。どんだけ責任重たいねんな。この生活苦しいゆうのに。

 だからカーライドシェアって発想なんだろうけど。
 自動運転だったりするんだろうけど。

 つまり「安くなったらいいんだよね?」って発想だ。維持費などの負担が減ればいいんでしょ?

 だけど。それでも絶対に買わないよね。潤う程の効果はまず出ない。

 だって、それは問題の本質じゃないからだ。じゃあ何が嫌なの?

 存在そのものだ。重い。存在そのものが色んな意味で重い。維持費も、責任も。物理的にも。それはどうしようもないだろう?


 だったら。「自動車でなければいい」というのが、私の提言だ。

 いっそ「自走する部屋」としてしまえ。今あるキャンピングカーはどれも凄く重い。

 それをとこっとん軽くして。居住装備をどんどん追加。それが私の提言する「ライフポッドカー」だ。

「住める車」だ。小さく、軽く。しかし頑丈で同時に快適この上ない。

 それは日本でしか作れないと思う。無駄な提言でした。
Posted at 2018/11/18 19:26:34 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2018年11月18日 イイね!

3代目映画館号

 我が家のルーミーカスタム終局形態( ´艸`)

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 アルパインリアモニターです。プラズマクラスター付。取付位置は写真のように、車両後方に近い位置。

 だから後席の人は顔が近くなるため、見上げる姿勢になります。

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 本当を言えばもっと前の位置が望ましいですが。音も映像も進化した我が家のルーミーカスタム。


 いや特に音の進化が凄い。サブウーハーと組み合わせるとこれがまた凄い良い音に。

 今まで何を我慢していたのか( ´艸`)  

Posted at 2018/11/18 17:04:59 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2018年11月16日 イイね!

FLAT(小説です)



 唸る排気音が無音のような深夜の闇を包むようだ。そんな気にさせるコクピットで、私はトヨタ86の操作に集中する。それはフェラーリやホンダのような、回せば回す程良い音になるといったようなドラマ性は持たない。
 むしろ、街中を流すアメリカンV8のように、日常域が心地よい。
 かつて80スープラにも乗っていたが、これ程GT寄りではなかった。ボディ剛性もサイアス時代から比較すると、雲泥の差である。昔は限界を超えるとしなるというか、たわむような印象が全体から伝わってきたが、これは限界を超えた時に、何も歪む事なく、ただガラスのように割れそうな気さえする。

 しかし、86はとびっきりの速さを持つ車ではない。そのエンジンは2リッターのナチュラル・アスピレーションでありながら、リッター100馬力を達成したような、高性能エンジンで。
 それでいてトルクフル。2000回転から普通に扱えるフレンドリーさが身上だ。
1. 2トンという、3ナンバーボディではかなりの軽量ボディ。
記号だけ取れば、凄い車の予感さえする。
しかし。

 この時代の中では、凡庸な性能でしかない。今やハイエンドの高級車であっても500馬力など当たり前で、時速250キロの巡行など朝飯前という時代だ。
 そこに登場した、たった200馬力のクーペである。
 何しに来たのお前?と世間に言われてもおかしくはない。

 世界のスーパースポーツは、そんな時代に則して時速300キロなど当たり前に出す。
 市販車で1000馬力の達成すら既に過去の事。

 86はスポーツカーを名乗りながら、その5分の1程度のパワーしかないのだ。
 スペック表を見るだけで全てがわかると豪語する者にとって、この車は存在するだけ無駄だろう。意味がない。それは陸上競技で言えば、それは短距離走のエキスパートを名乗りながら、しかし実態は長距離走走者のトップスピードにも遠く及ばないスピードしか出せない者を、大金かけて育成したのと同じ事。

 この車を乗り続けられない者の多くは、そういった観点を持つ。そしてそれは正しい。

 何もかも2番手以下。

 だが、乗り続けられる者はそう言った視点を持たない。求めているのは、とびっきりの速さではない。
 快速であるか、否かなのだ。

 エンジンという物は中々にして小賢しい部分があり、エンジンの形状次第で性格が別物になってしまう。音色さえ変わるのだ。
 水平対向は、V型とも直列とも違う独特の音色を奏でる。それは聞く者によっては、とてもクラシカルに感じられる音色だ。
 そう、86はデザインや技術こそ先進ではあるが、それでいてクラシカルな乗り物なのだ。
 FRということ。
 ロングノーズ・ショートデッキであるという事。
 電子デバイスを満載しながら、しかしその多くは出しゃばるのを常にひかえ、動向を見守る設定にされている事。

 大昔に聞いた音色に陶酔したまま、しかし、大昔にあった未完成な部分は全くない。故障や不具合に怯える事もないまま、安心して陶酔できる。
 
 ただ前に。
 ただ地面を蹴飛ばして前に進める。

 そうして目指した先は、一番近い湖畔だった。整備も行き届いていて、街灯も明るいところではあるが、日夜通じて人気の少ないところ。しかし、人混みを好まない私にとってそういう事は、好条件でしかない。

 無人の駐車場に86を静かに停めると、エンジンをかけたまま、目いっぱいくつろげる助手席へと移る。
 靴を脱いで、足を楽にする事も忘れない。
 シートは一番うしろに下げて、背もたれもかなり倒せば、完全に優雅なおひとり様スペースとなる。そして買ったばかりのブルーレイも観れるナビへと、やはり最近買ったばかりのまったりと癒されるアニメのブルーレイを差し込んで上映させた。
 こういう時のために、スピーカーまで良い物に換えたのだ。
 BGMで流れるケルト系の音楽が心地よい。
 そして飲むのは、ペットボトルのブラックコーヒーだ。
 妻が昼間に、スーパーで買ってきてくれる。
 コンビニなら130円でも、スーパーなら88円だ。全く同じものでも、流通先で全く値段が異なる事を、結婚してから知った。

 私が夜明けまでの1時間足らずの時間を、ここでこうして過ごすのは、家庭が上手くいってないとか、そういう理由ではない。勤務形態が今週、昼から午前にかけてなので、その時間に帰れば寝ていた家族を起こしかねないからというのと、ただ単に、こうやって優雅なひと時を楽しむのは、独身時代からの性癖のようなものだからだ。

 元々、ぼっちが好きだが人間嫌いというわけでもなく、女性は苦手だが嫌いじゃないし、ホモでもないので、結婚は当然、したかった。
 何より結婚してしまえば、話しかける女性は自分の奥さんのみで良くなるから、総合的に考えてそっちがローコストだろう。
 また自分の奥さんも、家事万能で手がかからない私は理想的だったらしく。
 家庭はたぶん、世間でも割と平穏で上手くいっているほうに入ると思う。

 この86をプリウスαから変えたのだって、大半は息子の希望だったからだ。
 親としては色々と都合がいいMT免許を取らせたいが、あまりに世間がATやCVTに偏り過ぎる時代になったので、MTそのものを子供が見た事がない。
 しかし、この先を考えると不透明過ぎるし、国外で低所得者層となって働く可能性だってある。もしそうなった場合に、MTを運転するのは決定事項というか、やれないなら出ていけと門前払いをされるのはよく知っているので、子供をどんな未来が待っていようと、生き延びられる手段を与えたい。だからMT免許なのだ。
 だから私の候補はMTのカローラだったのだが、家族に「ダサい」と思わぬ抵抗を受けた。しかし明確な希望があったわけでも何でもないので、子供がイメージするMTというと86だったと。そういう事だ。

 若い頃に80スープラに乗っていた身としては、今更200馬力程度で何も感動するものなんかある訳がない。だから馬力に関しては今でもどうでもいいし、特に出力を上げたいとさえ思わない。
 だが、家族3人で遠出をする際、小さい奥さんは後部座席に不満なく座れるものの、直射日光が脳天直撃になるため(リアガラスが頭頂部まで来ている)TRDのリアウィンドウルーバーの装着と、運転席にレカロシートは入れた。レカロは腰痛対策だ。レカロに対し、私と奥さんの腰は絶対の信頼を寄せている。
 こうして家族快適仕様の86は生まれ、こうして私たちとのカーライフが始まった。

 奥さんは奥さんで、ルーミーカスタムを買い与えている。カーライフ的には、この2台で盤石というのが私の判断だ。日常的に、片道150キロの範囲内ならルーミーを使い、それ以上や峠道なら86の出番となる。

 だから父親として徹底してドライな判断だったのだが、思いのほか、86は好きになった。全長4200ミリの小さいボディに4座のシート。それでいて、しっかりラゲージスペースもある。カッチリとしたボディ。ボクサーの低重心特性からくる、抜群の姿勢安定。

 そして何より。
 この優雅な時間がたまらん。
 ぼっち癖の抜けない父親にとって、これは理想のパーソナルスペースだ。

 ナビがブルーレイ対応なのは、今時の映像ソフトは段々とブルーレイが標準化されつつあるからだ。映画も好きな我が家としては、今後を考えると、少し高値であってもこっちを買ったほうが結局はローコストとなる。少し高いと言っても、市販されているものならナビの標準価格からすればそこまで高いものじゃないし、何よりETC2.0に普通に対応してくれる。USBもワイヤ接続できるし、これ以外の選択はない。

 カーライフを考える時に、単純に車両コストだけを追求する考え方が主流だが。
 私は常に総合生活で考える。自分の嗜好や家族の要求も常に取り入れるのが、私流だ。

 だからルーミーには、後部座席用にリアモニターや小型のウーハーも入れた。これは走りながら上映する事も考えての措置だ。86は長距離ツーリングのみと割り切っているので、上映は停車時のみ。旅先で渋滞や待ち時間を潰す為の道具だ。

 しかしたまらん。
 86は特別なカーライフを演出してくれる、今時貴重な1台だ。これがあれば、割に合わない人生の辻褄があう、とまでは言わないが。

 何をしても楽しくない人生の時間を少しだけ減らしてくれる。
 そして夜明けの光が山間を濡らす頃、私は帰宅の頃合いを定めた。

 ボクサーサウンドは、V型ともストレートとも違う、独特な音を奏でる。それは好き好きの問われる音だが、私は幸い、嫌いじゃない。その出力特性もだ。極めてGTとして秀逸なエンジンだ。しかし逆を言えば、これで速く走ろうという気にはなれないエンジンだ。それが私に向いている。

 スープラも600馬力まで上げた事があるし、ホンダビートも700CCまでボアアップした仕様にした事もあるけれど。

 このFA20ボクサーには何も変更を加える気になれない。これでいい。GTとして十分足りているからだ。排気音もこれで十分だろう。

 昔、MR2にもセリカにも乗っていて、それは即日マフラーを変えたような私が。
 86に関しては「これでいいだろう」と判断した。

 どこも突出してはいないが、特に足りないと思う所は無いし、何よりここまで取られたバランスを崩すのは怖い。

 そのサウンドを控えめに配慮しながら、私は86をガレージに納める。もうこの時間ならご近所から文句は来ない。私の家は1階が車3台分のガレージで、2階が自宅になっている。何の事はない。単に生活区が立体的なのを私たち夫婦が望まなかっただけだ。平屋建てが望ましかったが、そうなると広大な土地が要る。車を収めるスペースも必要だからだ。だから2階が平屋建てという発想で、こういう作りにしただけだ。
 私はガレージドアを下すスイッチを入れると同時に、新聞を取り、わきに挟んで、助手席に置いたブリーフケースを取り出し、2階へと眠そうに上がる。そこでは早速、妻が洗濯に追われつつ、朝食の支度をしていた。
「おかえり。また湖?2リッター4気筒は嫌いじゃなかったっけ?」
「ただいま。嫌いだよ。特に3Sは好かん。あの電気モーターみたいなフィーリングは最後まで好きになれんかった」
「ボクサーも嫌いじゃなかったっけ?新婚旅行でほら。北海道旅行でレガシィをレンタルした時。散々愚痴ったじゃない」
「EJは今でも嫌い。ショートストローク型はどうも好みじゃない」
 自分の好みを把握するのに30年近くかかった。私はコーヒーを淹れながら、思いつきを口にする。
「・・・今度さ、草津に行こうか」
「また急ね。群馬?」
「うん。ここから片道300キロ程度だし。肩慣らしに丁度いい。ホテルはいいの、取っておくからさ」
「任せた」
「任された」
 特に微笑むでも、盛り上がるでもなく。私たちはこんな感じで20年近くやってきた。お互いに恋愛もよく理解できないまま、結婚前提で紹介されて。ウマが合うとも、気が合わないとも思わないまま20年を過ごした。大袈裟に泣く事も、笑う事もなく。
 何だかいつも平坦で。それが平穏と呼ばれるものなのかも知れない。

「またあの二人がおらんな」
 私は会社に夕方出社して、上司がそうぼやくのに出会った。
 あのふたりというのは浜口美緒という新入社員女子と、中堅社員の鮫島だ。最近、あのふたりが妙な空気だと陰でひそひそ話が横行するのも、すっかり日常で。
 それが独身同士なら「放っておいてやったら」とも言えたのだが。
 鮫島は30歳にして4人の子供の父親なのだが、それに嫌気が差しているのか、会社の女子によく手を出す。これまでは、女子の側が利口だったのでだれも相手にもしなかったのだが、浜口はウマが合ったのか、よくふたりでコソコソと居なくなる。

 先輩として、そろそろ看過し辛くなってもきていた。特に鮫島は浜口にご執心の余り、1年以上、仕事らしい仕事になっていない。壮大な事を言い、計画は立てるがどれも計画倒れ。こんな奴に惚れる浜口も浜口だ。男を見る目が無さすぎる。会社としても、口先だけの人間に構いたくないのだが、4人の子供が居る男を残酷に切り捨てられる勇者も居ない。全員、半端な善人だからだ。鮫島はそこにつけいって生き延びている人間であり、良く居る無駄飯食らいでもある。
 それだけでも会社として好ましくないのだが、そこに新入社員女子と不倫となれば大事だろう。半端な善人たちが、その冷酷で残酷な一面を見せる以外、無くなってしまう。

「今日、ミーティングあるって鮫島知らんのか?」
 仕事の後、部署の人間が集まりミーティングが始まる時刻になっても鮫島が来ない。すると浜口が明るい笑顔でこう言うのも割と日常だ。
「あ。鮫島さん、私の作業場で待っているとか言ってました。呼んできますね!」

 そして更に10分過ぎても帰って来ない。全員、何をやっているのか想像がついているようだ。気付かれていないと思い込んでいるのは、当人たちだけだろう。
「何で鮫島、浜口の工程に居るんだ?」
「居たいからやろ。1年、浜口の横でずっと遊び続けてるもんな」
 そういう苛立ちの声もする。
「こないだ、抱き合ってましたけど」
「マジか」
「はあ。忘れ物を取りに帰った時に。休憩所で」
 それを聞いて気分のいい人間も居ない。私はふたりの先輩としてどうしたらいいか。
 覚悟を決める必要がありそうだ。

「ほんま。たまらんよ」
 私は家に帰るなり、ウィスキーをロックで飲み始めた。
「冗談じゃないよ。この年齢でこんな色恋沙汰に巻き込まれそうだとかさ。ここまで無難にやってきたってのに」
「私も恋愛とかよく分かんないもんな」
「子供4人。30歳でだぜ?それで女癖悪いっつったら、男の正体、どういうもんか、浜口は想像もできんらしい」
「子煩悩じゃないの?」
「ならすぐに家に帰るわさ。いつまでも会社の女子と残ろうとはせんよ」
「お父さんも大変ね」
「全くだ」

 その翌日だった。やはりミーティングの席で、ふたりはずっと私語をしっ放しになっている。べったりだ。最早仕事の事は眼中に無い。お互いに頬が密着する距離だ。
 これはおかしいだろう。
 普通、男女にはパーソナルスペースがある。肉体を許しでもしない限り、大人の男女がそのような幼児の距離間で居られるはずがない。私と奥さんでも、あんまりその距離は取らない。お互いに動きづらいからだ。まあそれは色恋の段階のない私たちだけかも知れないが。
 これはもう。浜口と鮫島は肉体関係まで行っているだろう。

 私は仕事が終わった後、彼女の工程へと向かった。
「済まんが、君は会社のミーティングをどう考えて居るのかな?」
「え?」
「私語で盛り上がる時間じゃないとは、高校生でも理解してくれると思うけれど」
「はあ」
「それと。鮫島と個人的にLINEをやり取りしていると聞いたけれど」
「やってませんよ?」
「そうか?じゃあ、この話も聞いたんだが」
「何でしょう?」
「自動車を持ってない君が何故、駐車場で鮫島と頻繁に会う姿を見られているのかな?」
「会社が終わった後、寮まで送ってくれるので」
「会社からバス出てないのかな?」
「出ていますけど・・・」
「寮母さんからも、社に問い合わせが来ている。残業が君だけ多すぎませんかとね。だが社の記録では通常処理のままだ。帰宅がむしろ遅くなるのなら、送る意味がないのではないかな?」
「そうなんですか?よく分かりません」
「でも遅い理由が、残業が多いと寮母さんに説明されているよね?」
「よく覚えてません」
「ふむ。では、鮫島から個人的にプレゼントとか受け取ってない?」
「受け取ってません」
「それはおかしいね。鮫島からその駐車場で、何か贈られているのを、頻繁に人が目撃しているんだが」
「あ・・・」
 浜口の顔が少しだけ引きつった。ここまで知られているとは、思ってなかったのだろう。
「すいません。個人的に贈られてはいました。色々と貰いました。LINE交換はその時にやっただけで」
「LINEは個人的にやり取りしてないと言ってなかった?」
「そうでしたか?」
「どうして前後で言う事が違ってくるのかな?」
「あ、奥さんの居る人と、女性が個人的にやり取りしているのはまずいから・・・」
「でも、君はやり取りしているんだよね?」
「あ、えーと・・・」
 段々とボロが出て来る。
「まあ。もう部内で割と噂になっているから。今後は考えてくれないかな?頼むよ」
「はあ」
 緊迫感のない声でそう言われるのも演技かも知れない。
 不倫を企む男女の言葉は、何も信じるべきじゃない。

「わあ!」
 奥さんが助手席で珍しくはしゃいだ声を上げる。
 週末に箱根を通り、芦ノ湖まで86で走る。早朝のこの辺りは夏も終わりに差し掛かると涼しいどころか、寒いくらいだ。真紅の86と、もがけない程の深さを示す青色の空が私の目には眩く映る。
 空は手に負えない程広い。
 芦ノ湖の付近は早朝ランナーも多く、私たちはそれを避けるように箱根神社へと入った。
「そういやここまで来た事なかったね」
「うん」
 私たちは恋愛をすっ飛ばして結ばれたから、こういうスポットとは無縁だった。
 私の横に立つ大切な人はとても幼く見えて小さい。

 それはまだ幼い頃に、陸上競技を頑張り過ぎて腰を痛めた結果、彼女の身長は伸びなくなってしまったからだ。

 結婚した頃は家事が一切できなくて。私が全てをやっていて。
 高負担で倒れてしまったら。
 今度は彼女が頑張ってくれた。
 どこまでも不器用な人だけど。いつも一生懸命な人。
 話す時も精一杯で。懸命で。

 でもお互い。恋愛とかよく分からない。
「ここはカップルの聖地なんだよね」
「そうなんだ」
 私が連れてきたのに教わっていた。私は思った事を素直に口にする。
「私たちは順番が逆だなぁ」
「そうだなぁ」
 何の緊迫感もない会話の私たちが、恋人たちが息を弾ませて登る階段を踏みしめる。
 恋人たちが感慨深げに見る神社だけど。
 私たちにとっては、初めて来る観光スポットでしかない。

 それから箱根関所とその付近を巡り。芦ノ湖スカイラインに入る頃にはお昼になっていた。私は広大な駐車場の一角に86を停めて、トランクよりバスケットを出す。
 お弁当はいつも私が作っていて、奥さんとひとり息子は味を確かめる係だ。
 今回は小うるさい息子が居ないのでホッとする。
「空がきれいだ」

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 奥さんがベンチでそう言うのにならい、私も空を見上げる。
「絵で描いたようだ」
「私もこの色で塗れるよ」
「はいはい」
「本当だよ。小学校の頃に描いたんだから」
「はいはい」
 ランチの用意をしていると奥さんはすまなげに微笑んだ。
「お父さん悪いね。いつも作らせちゃって」
「作りたい人が作るべきだ。それでいい」
「そう?でもこの間、言われたよ。息子に。うちのお父さんとお母さんは、役割が逆だ、って」
「今は結構、旦那さんが作る人多くないの?」
「夫婦の自己申告ではそうなってるけど。子供申告のほうが正解じゃない?実際、やってみたってヒステリーを次第に起こすもんじゃないかな?慣れてないから」
「まあ。親父は“お前と姉貴は中身を入れ間違えて生まれた”とか嘆いてたからね。男らしくないとか。男に襲われた事もあるし。女型やらないかとか誘われた事もあるし。少し変わっているのは事実かも。あ、今日のから揚げは固いからね。奴(息子)が居ないから」
「あの子、柔らかくないと絶対食べないもんなぁ。お父さんの料理はどれも美味しいけれど、から揚げだけは認めないだとか。ま。私はどっちでもいいんだけど」
「柔らかいのが食べたいのなら、揚げなければいい」
「はいはい」
「揚げるのはよく火を通す為だろう?」
「はいはい」
「柔らかく仕上げると、生煮えみたいで嫌なんだ」
「まあそこは分からんでもないかな」
 そんな事を話しつつ、今日の煮物は上手くいったとホッとしていると、知らない男性に話しかけられた。
「いい車に乗ってるね!」
 その初老の男性は86を指して笑っていた。
「ああ、どうも。ありがとうございます」
「低いね。昔はこういうの、よく見かけたもんだが。これ、何リッター?」
「2リッターです」
「おお。割といいのが入っとるじゃないか。スポーツツインカムかい?」
「はい。水平対向の」
「お!じゃあウチのと一緒か!」
「うちの?」
「おお、ウチの」
 そう言って指したのは、紅いヨタハチだった。今度は私が喜ぶ破目になる。
「わあ!」
「今日はいい日だ。じゃあ、またどこかでね」
「はい、お気をつけて」
 初老の男性は、奥さんと思しきスカーフを髪に巻いた女性を隣に乗せたヨタハチを、最新のカローラに乗るが如く、気安く操って身軽く去ってゆく。
 ああいう夫婦になりたいものだと、そう思った。

 だが。
 そう考えない人も居る。

 それから数日後の事だ。
 私は終業後に忘れ物に気が付いて、この時間は人が絶対に居ない資料室へと急いで入り、灯りを点けて、途端、ドタバタと暴れる音にビックリした。
「ヒッ」
 そんな声が漏れる。だが、そこに居たのは慌ててパンツを引き上げようともがく浜口と鮫島だった。浜口は汗だくになって髪の貼りつく顔から、急いで振りほどくように、髪を直すのも同時にしなきゃいけないから更に大変だった。私のほうがセクハラで訴えられそうだと思って、後ろを向いてしまう。
 あまりの事に、言葉が出ない。
「は!?え?何やってんの?」
「あ、え・・・っと!ズボンを直してたんです鮫島さんと!」
「は?」
「私のズボン、サイズが合ってなかったんで!すいません!」
 彼女は慌てて、ズボンのベルトも締められないまま飛び出した。私はあまりの事に思考が追いつかず、ズボンを堂々とした振りで直す鮫島に尋ねた。
「ズボンの直し?」
「ええ?何もしてませんよ?」
「何でお前も脱いでんの?」
「いやズボンの構造がよく分からないから・・・脱ぐしかないんじゃないですかね?」
「いや普通」
「あ、じゃあ今度から脱ぎません。はいどうも」
 そう言いつつも、チャックも閉め忘れて足早に去ってゆく。いよいよあかん。

 私は翌日、資料室であった事以外の全てを個人的に部長へと報告した。
「・・・俺も、あのふたりはどうも怪しいとは思っておったが・・・」
「問題が表面化する前に、とは思ってたんですが・・・どうにもなりません。止まれないでしょう。盛り上がっちゃったら。特に鮫島、家庭、上手くいってないんでしょ?去年の半年だけで、子供の骨折が2回。普通ね。家がそんな状態なのに、家に戻らんとかありませんよね」
「うん」
「何をするでもなく。ただボーっと会社で過ごして。4人も子供が居るからと大目に見てきましたが。これじゃ社にとって害悪でしかありません。でも、奴は異動とか受け入れないでしょ?他所の部署で浜口とは一緒になれないから。だから」
「だから?」
「・・・機会があったら、私を転属させて下さい」
「ん~~~~・・・」
 部長は困った顔をしていたが、私の決意は固かった。
「すいません。こういうの、やっぱり、嫌なんで。血の流れる人間ですし、感情もあるので」

 言うだけ言って、少しだけスッキリして部長室を出ると何故か突然、浜口の愛想が私に振り撒かれるようになった。
「おはようございます!」
「ああ、おはよう」
 苦笑いで距離を取る。昨日の今日で、どういう事なんだろうと思っていたら、やはり浜口と鮫島がしきりにアイコンタクトを交わしていた。
 ああ。
 これは。
 アレか。
 美人局をやらせる気か。浜口に。

 私を誘惑させて、その気になったら訴える手筈だな。私はふたりの考えの安直さに絶句する。そして、この安直さが更に憎悪と嫌悪を引き立てた。
 4人も子供が居て。
 愛人を作っただけに飽き足らず。
 バレそうになったら、美人局を愛人にさせる父親って。
 それを全て受け入れる愛人だとか。

 汚すぎる。

 臭い。嫌な匂いが、彼女の全身から発している気がして、近寄れない。
 気持ち悪い。その笑顔が。
 頬を赤く染める顔が。
 上目遣いの仕草さえ。

 気色悪い。鮫島の匂いを振りまいて、浜口が近寄る気さえする。どんな拷問なんだろう。
 これで美人局になっている気なんだろうか。ふたりの世界観が理解できない。
 そもそも何がしたいんだろう?

 それでも、愛想には愛想を返す。
 何でこんな事をしているんだろう?
 普通に仕事をやって帰れば。
 何事もない平穏でフラットな日常が手に入るのに。

 私はふと、仕事中に彼女のほうを見つめた。それは単に、彼女の居た方向に次にやる仕事があったからだが、それを見た彼女が突然、嬉しそうに全速力で駆け寄ってきた。
 その行為にも理解できずに慄いてしまう。
「なななな!何!?」
「え!?だって見つめてたじゃないですか!?それって、私とお話がしたいんですよね―――!?」
 そう満面の笑顔で断言されて。

 それで私の中の何かが弾けた。その時の私の形相はどうだったろうか。分からないが、一瞬で浜口の微笑みが恐怖に引きつった。
「何を考えているんだ!仕事しろ!!」
 そう怒鳴ってしまう。

 その日は疲れ切って、家に帰った。
「どうしたの?凄い顔だよ?」
「異動したい・・・あのバカップル・・・」
「まあ。不倫する人は、世界の全員が不倫するものだろうって信じてないと、不倫を続けられないからね。不倫は文化って言いたくなるらしいし」
「思想の押し付け反対って、この時に言うと世間に封じられるのがもどかしい・・・はあ。草津に行こうか。なんかスッキリしたくなっちゃった」
「そうねい。場所取れた?」
「ん。今から」
「任せた」
「任された」


 そして、一番良い宿を取ると、翌日からの2連休を使って、草津へと早朝から走る。夜も明けきらぬ高速を巡行する86は、ただ私の意に従い。
 示される道を突き進む。

 その心臓は。
 古臭く懐かしいビートを刻む、水平対向フラット4。通称ボクサーユニット。

 深夜を突き進む姿。先の見えない世界を切り裂くそのシルエットはもう既に。
 絶滅寸前の恐竜でしかない。もう誰にも求められないその姿。
 懐古主義でさえあると思う。

 流す音楽はボビー・コールドウェルの「STAY WITH ME」だ。
「古い曲ね」
「タバコのCMだったよね」
「そうそう」
 100キロでセットしたクルコンを維持する為に、鋭く加速させて安全を確認した後、追い越し車線へと滑り出た86は、仕事の為に走るトラックたちを追い越してゆく。
 それさえも優雅だ。
 この車に乗ると、全てにゆとりが生まれる。

 全ては乱されない生活の為に。

 フラットなエンジンは、平坦な生活を守り抜くように。確実に回るビートを刻んで。

 私たちをまだ見ぬ草津へと導いてゆく。



Posted at 2018/11/16 21:10:06 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

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