
自分はなんだかんだ言って7台の機械式クロノグラフを所有し、うち5台を日常的に使っています。この7台とは以下になります。
○Zenith
1)Chronomaster GT(ref.03.1240.4001):Cal.4001
2)RainbowFlyBack(02.0470.405):Cal.405
3)EL Primero HW(02.0500.420):Cal.420
○Rolex
4)Daytona(ref.16523G):Cal.4030
○Breguet
5)TransAtlantic TypeXXI(3810TI/H2/TZ9)
○Omega
6)SeaMaster AQUATerraChronograph GMT(231.10.44.52.06.001):Cal.OMEGA3603
○SEIKO/CREDOR
7)Phenix (GCBR995):Cal.6S78
クロノグラフ好きとしてみても何とも偏ったコレクションで、おそらくその筋の人からすると噴飯物の集合体だと思いますが、実用至上主義の自分としては趣向の成れの果て感がします(自覚はある)。
で今日の話題ですが・・・・
タイトルにも挙げましたがこの自分の所有機たちには大事な役者、ETA 7750(バルジュー 7750)搭載機が一つもありません。
別にETA 7750を嫌ったわけではなく、好きなのを買ってきたらこんな風になった、ってだけのことです。
時計マニアの中にはETA7750を称して安物の機械式クロノグラフムーブメントだとこき下ろす方も少なくなく、実際かつては低価格帯の機械式クロノグラフには必ずと言っていいくらい搭載されていました。
ですが自分はこのETA7750はクロノグラフの名機だと思いますし、極端に言えばクオーツショックで打ちのめされた機械式時計復活の立役者とも言える存在です。今日はそんなETA 7750について少しだけ語ってみたいと思います。
まずネット情報でもすぐ見つかりますが、ETA7750(旧称バルジュー 7750)からもわかる通り製造元はSWATCHグループの中核会社であるETA社の製品です。かつてはETA社(SWATCH社)の会社方針で多数の時計会社にムーブメントとして供給していて、安価で高性能なことから世界中で汎用されました(日本でもかつてORIENTなどでも使っていましたね)。
ですがSWATCHグループではもう15年ほども前に突然このETA7750の供給を一方的に絞ると宣言し、それから各社での自前の機械式クロノグラフ開発が促進された、との歴史的な出来事がありました。この時の記憶からSWATCH=悪の枢軸的な情報合戦が起き、ETA 7750は救世主的な位置付けから一気に悪の権化として嫌われる存在となりました(ここは私感です)。
まぁ、安価な機械をETA社から購入してそのままポンっと乗っけて高級機械式クロノグラフでございます♪的な商品展開をしていた会社も少なくないことから、SWATCHグループではせっかくの名機を汚されている、と感じたのかもしれません。
ともかく経緯や歴史から暗い過去があったことは否めず、それが機械式クロノグラフムーブメントの評価にも影響している気がしてなりません。
その一方でETA7750は開発の経緯もまた機能的な特徴も特筆すべきことが少なくなくありません。
この機械は1973年に開発されましたが、その出自は倒産したビーナス社のCal.178とされます。これはかつてブライトリングのナビタイマーなどにも採用されていた高級機ですね(時代的にもちろん手巻き)。
ここに自動巻き機械式クロノグラフ一番乗りの一翼とされるCal.11(ブライトリングやホイヤー社が組んで作り上げた)の自動巻き機能やベース部分を合流させた、とも言われています。
ビーナス社の倒産は1966年だったそうですが、版権やノウハウはバルジュー社に引き継がれ、その後バルジュー社内で本来コラムホイール式だった178を作動カム化したりして、最終的にETA 7750が1973年に登場します。
この後このETA 7750はクオーツショックで疲弊していた当時のブライトリング社のクロノマットに搭載され、同社を救ったということのようです・・・
なおETA 7750の設計者はエドモンキャプト氏なのですが、この方は後にフレデリックピゲ社のCa.1185の設計もします。このcal.1185は現在のところ高級クロノグラフムーブメントとしてBreguetやバシュロン、オーデマピゲなど高級機メーカーが良く使っていますし、自分が持つSeaMaster GMTもこの機械がベースのムーブメントを載せていますね。
さらにさらに・・・
このエドモンキャプト氏は ETA7750開発に際しSEIKOのCal.6139を参考にした、と発言しています。実は機械式自動巻きクロノグラフの一番乗りは誰か?との論争では前述のCal.11との説以外に自分が大好きなElPrimero(ZENITH)とこのSEIKOのCal.6139搭載の時計との説もあります。
と良く見れば色々面白いETA 7750ですが・・・・
他に素晴らしい特徴として、駆動力にゆとりがあり、付加機能をつけやすい特徴があるそうです。これは非常に重要で、世の中にはこの特徴を活かした魔改造をする人たちがいるわけです。
ETA社が手がけたものでもETA 7750にトリプルカレンダーとムーンフェイズを付加したETA7751とか、縦目クロノを横目配置にした7753とかGMT針を追加した7754などがあります。
さらにキャリバーチューニングが得意なラジューペレのモジュールを組み込んだ改造バージョンやアラーム機能つきやFlyBack機能付き、果ては超魔改造してミニッツリピーター機能を付加したものまで存在します(IWCのポルトギーゼグランドコンプリケーション)。
と見れば奥の深いETA 7750を搭載したクロノグラフですが・・・・
ちょっと欲しくなって最近漁っていました(ここからが本題)
まずこの状況でシンプルなクロノグラフ(デイト付きを想定)は考えにくいです。まさに今更感が強く、これは流石に愛用できそうもなく・・・
となると付加機能が必要で、そこが最後のひと押しになると思いますね。
この観点で言えば前述の改造バージョンにヒントがあるのですが、付加機能を考えつつ取捨選択しています。
自分が想定する付加機能と考察結果は以下です。
①GMT機能〜ETA7754系列
これは結構商品もあるはずで、使う可能性も多いんですが・・・・もう他の機種で所有していますからこの機能をETA7750系列では不要です→却下
②トリカレ+ムーンフェイズ〜ETA7751系列
これも商品は見つかるはずですが、前の項目同様すでに所有している機能なので今更必要を感じません→却下
③FlyBack機能
これも魅惑的なのですが・・・・すでに3台もあるのでもういらないです→却下
アラーム機能
これは持っていないんですが、クロノグラフで実現する必然性がなく、正直今のところ欲しくないんです→却下
④スプリットセコンド
これはかなり惹かれています・・・。ですがスプリットセコンドって複雑度合いが高レベルで、かつモジュールを挟み込むことになるためどうしても機械が分厚くなるため、時計自体が厚くなっちゃいます。最近薄型が好みなのとFlyBackほどこの機能に魅力を感じないです→却下
⑤コンプリケーション〜IWCのやつ?
お値段的に論外です(IWCだと2000万強らしい)→却下
ということで機能的には買う意義が見出せていません。
ですがケースによる付加価値として今魅力的に思っているのが
水中操作が可能なクロノグラフ
なんです。
これがIWCのアクアタイマーやSinnの一部モデルにこうした機能が搭載されているんですね。
自分は潜る趣味はないのですが、雨の日の運用とかで土砂降りでクロノグラフを使った際にアクシデントでプッシュボタン触っちゃったら、と不安を感じる局面が何度かありました。なので自分の要求レベルはあくまでアクシデント対応レベルです。
と以上を考えてIWCのアクアタイマーやSinnの時計を漁っていたらふと気がつきました・・・・
雨の日はクロノグラフやめたら?
プッシャーロック機能でいいんじゃね?
長々と語りましたが、今はお熱が下がっています・・・・(結局これかよ!)