■プア充拡大 280円牛丼、100円DVDなど上質なサービスが背景
NEWS ポストセブン 11月4日(月)7時5分配信
高収入を求めず、そこそこ働き自分の生活を充実させていく「プア充」という生き方を宗教学者の島田裕巳氏が提言し、注目を集めている。なぜ「プア充」が支持され、広がるのか。背景には戦後から続いてきた社会の仕組みが大きく変化したことがあるという。関西学院大学社会学部准教授で理論社会学を専攻する鈴木謙介氏(1976年生まれ)が解説する。
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日本型雇用と日本人が共有してきた「成長のイメージ」は密接に関係していた。「正社員として入社し、定年を迎えるまで会社に勤めれば豊かになれる」という人生設計の階段(あるいはレール)が見えやすかった。昇進が決まったサラリーマンは「俺も今度は係長になるし、家を買おう!」といった考えを持てた。
ところが、今の雇用環境を見ると、安定した正規雇用の口が少ないだけでなく、仮に正社員の職を得たとしても「出世の階段」の意味が大きく変わってしまった。かつては出世して中間管理職になれば、ある程度は部下に仕事を任せる「マネージャー」業務が主であった。
ところが、近年は出世をしたとしても求められるのは「プレーイング・マネージャー」の役割だ。自らも成果をあげながら部下を管理する役割を求められるようになった。ビジネス環境の変化に加え、不況で採用人数が減らされてきたため、部下に任せるだけでは業務が回らない。
そもそも正社員になれない若者は言うまでもなく、正社員の若者も「出世は忙しさや辛さに直結するもの」ととらえるようになってきた。これまで幸せだとされてきたライフコースが敬遠されるようになったのだ。
これだけでは単なる「プア」にも思えるが、さらに要素として加えられるのが「プアでもそこそこ充実した生活が送れるサービス・環境の拡大」という点であろう。デフレが20年も続き、企業は安くてそこそこ質の良い商品を提供する努力を続け、そうしたサービスの質は格段に高くなった。
昼食に280円の牛丼を食べ、100円払えばTSUTAYAでDVDを借りられる。高級ワインは飲めないけれども、2000円もあればスーパーで売っている格安ワインや第3のビールを友人たちと飲んで楽しむことはできる。高級品・サービスとの差異がどんどん感じにくくなってしまった。
各種調査を見ていると「これからは心の豊かさに重きをおきたい」と考える国民の割合は、1970年代からおおむね上昇傾向で推移してきた。だが、結局は1990年代頃までの「心の豊かさ」とは、優雅に高級ワインを飲むといった「お金で買うもの」であった。
それが1990年代以降の長いデフレ期間を経て、「お金」と「心の豊かさ」が本格的に切り離されるようになってきた。「プア充」が拡大することの本質はそこにある。
※SAPIO2013年11月号
■牛脂注入肉:道後温泉の旅館でも2年間に計2176食
毎日新聞 2013年11月03日 20時36分
松山市道後湯之町の旅館「大和屋本店」(奥村保樹社長)は2日、ホームページで過去2年間に「ステーキドリアランチ」など計2176食の食材に牛脂注入肉を使いながら、景品表示法に反して表示を怠っていたとの社内調査結果を明らかにした。同社は「表示義務を把握していなかったことをおわびしたい。誤認させる意図はなく、価格相当の商品は提供しているので返金は考えていない」と釈明している。同社は1868年創業の老舗旅館。【松倉展人】
■豆腐屋続々廃業「365日働いても利益ない」
読売新聞 2013年11月02日 13:33
豆腐業者が倒産や廃業に追い込まれるケースが増えている。
大豆価格の高騰に加え、スーパーから値下げを求められるなどして経営が悪化し、豆腐業者はこの10年間に全国で約5000軒が廃業。今年8月に破産申請をした都内の業者は「365日丸々働いても利益が出なかった」と苦しい日々を打ち明けた。
1957年創業の豆腐業者「仙台屋本店」(東京都三鷹市、8月に自己破産申請)の及川英一さん(37)は、大学を卒業した3年後から、祖父が開業した同店で父親とともに働いてきた。
従業員は最大20人で1日2000丁を製造してスーパーに卸すほか、10年前には杉並区のJR阿佐ヶ谷駅近くなどに三つの直売店を開設。豆腐を加工した食材なども手がけ、好調な時は年4億円を売り上げた。
だが、5年前から輸入大豆の価格が高騰。豆腐の一部を別の業者から安く仕入れて費用を下げるなどしたが、3年前には3店舗とも閉鎖。デフレの影響でスーパーからも値下げの要請を受けたが、経営が苦しいため、むしろ値上げしてほしいと相談すると、取引が打ち切られた。
スーパーの中には協賛金の名目で売り上げの7%の「上納」を求めたり、売れ残った分は買い上げてくれずに丸ごと負担させたりするところもあった。
今年になって、外国産大豆はさらに値上がりし、1~9月末の平均価格は1キロ当たり84・2円で、この10年で最高値となった。国産大豆もそれに合わせて値上がりし、経営を圧迫した。
給与の支払いも遅れ、6月になると従業員も5人にまで減った。及川さんは「365日丸々働いてももう利益が出ない。事業継続は厳しい」と伝えると、残った5人からは「我々も休みをつぶして働くから、何とかならないか」と懇願された。だが、事業が好転する可能性はなく、8月に自己破産を申請した。
及川さんは、「豆腐の安売りが激しくなっており、どこも経営が苦しい。適正な価格でスーパーに卸すなど販売価格を見直さないと、豆腐屋はいずれなくなってしまう」と吐露した。
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厚生労働省の集計では、全国の豆腐業者は12年度は9059軒となり、03年度(1万4016軒)より4957軒減った。
全国豆腐連合会(東京)は、来年4月からの消費増税分を価格に転嫁できるよう流通業界に理解を求めている。同会は「年間500軒のペースで業者が廃業している。食の安全、安心を守るためにぎりぎりの経営を続けていることを知ってもらいたい」と話している。
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ニュース記事の三つ転載したのだけど、行き過ぎた安さ至上主義の歪みを表している。
プア充なんて言葉を提唱する准教授がいるようだけど。
安さばかりを求めるから、牛脂混入肉を高級牛と偽装する事件や下請け業者に利益の出ない発注を繰り返すことが日常化している。
挙句の果てには、食べ物にいたずらをした画像をネット上にあげる輩なども・・・。
かつては、「衣食足りて礼節を知る」といったものだが、感謝の気持ちを忘れてしまった人があまりにも多すぎるのではないだろうか?
サービスという言葉も、本来はタダではなく対価を払うべきものである。
質の良い物やサービスを見合った対価を支払わずに得ようなんて図々しい話だよなぁ。
Posted at 2013/11/04 11:07:49 | |
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