2011年06月02日
ターボジェットエンジンの構成要素.3
燃焼室
空気の流れから見て圧縮機とディフューザーの後に位置している燃焼室 (Combustion Chamber) の役割は、取り込んだ空気流に熱エネルギーを与えることであり、燃料噴射による火炎を維持しながら適度の流入空気を取り込んで、空気と燃料をすばやく混合して燃焼させ、後に続くタービンや排気ノズルに高温ガスを送り出すことである。
燃焼室にはいくつか異なる形状が存在するが基本的には入れ子状の構造をしており、燃焼室の外形を構成するケーシングと内側のライナ (Liner) から成る。ライナは多数の孔が開けられており、燃焼前の空気の層流で冷却されるように配置されている。ライナの内側に燃料噴射ノズルが設置されており、点火プラグは燃料噴射ノズルに近い4時と8時付近の2ヶ所に設けられることが多い。
燃料にはジェット燃料が使用され、その主体であるケロシンの理想的な空燃比は15対1であるが、実際に燃焼室に送り込まれる空気流量の全量と噴射される燃料の総空燃比(重量比)は40 - 120:1程度である。燃焼室の上流部では、燃料噴射ノズルの周囲のオリフィス (Orrifice) の機能を持った旋回案内羽根(Swirler、スワラー) から、14 - 18:1程度の混合比になるように空気流量の25%程だけがライナで囲われた燃焼領域に取り込まれ、これは一次空気と呼んで区別される。残りの空気流量の75%程は二次空気と呼ばれ、燃焼室の内部冷却と燃焼ガスの希釈、一次空気で完全燃焼しなかった燃料の二次燃焼に利用される。
燃焼室直前の圧縮空気の流速は100 - 200m/sであるが、ライナはその流れから火炎を保護し、部分的に10 - 20m/s程度に減速された燃焼領域を作り出す。ケーシングとライナの間およびその孔には空気が流れ、燃焼領域に流れる空気量が調節されるとともに高温に晒されるライナが冷却される。
燃料コントロール装置によって高圧に加圧された燃料はノズルから噴射されて霧状にされる。始動時は圧縮空気の流れの中で、ノズル近くに位置する点火プラグの電気火花によって霧状の燃料に点火される。一次空気の持っていた軸方向での運動量はスワラーによって旋回運動に変換され、燃料噴射ノズルから噴射される霧状の燃料との混合とその初期燃焼に必要な時間だけ旋回しながら燃焼領域の前部を形成する。最初に点火プラグによって点火された後は、火炎は自ら燃焼領域内で維持するため、電気火花は始動時だけ放たれる。
旋回渦(スワール)を形成しながら空気と燃料は混ざり合い燃焼することで一次燃焼領域を形成する。ライナの冷却も兼ねた二次空気が、ライナの孔から一次燃焼領域の下流側に流入することで、二次燃焼領域を形成する。流入する二次空気の流れがその上流である一次燃焼領域内に環状渦を作り、これが火炎を持続させる効果を生む。二次燃焼領域内では一次空気で燃焼しきれなかった燃料まで燃焼されると共に二次空気による希釈が始まる。ライナ内の後部は混合希釈領域となって一次空気と二次空気が混合され、後に続くタービンノズルやブレードが部分的な高熱で損傷を受けないように高温ガスは平均化される。燃焼直後の一次燃焼領域のガスは2,000℃程になるが、二次空気と混合希釈されることでタービン直前では1,000℃前後まで低下する。
エンジンの停止時に燃料が燃焼室内に残留することで、次回の始動時に燃料過多となってホット・スタートや燃焼室の焼損の可能性があるため、底部にドレンバルブを設けてドレンタンクへ残留燃料を排出するようになっている。
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Posted at
2011/06/02 00:17:17
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