〜『エビスロケに燃えた長い1日』のプロローグとして〜
「Best MOTORing復活」に向かって、全身全霊を傾けている旗頭の本田俊也君から、「密書」の入ったレターパックプラスが届けられたのは10月24 日であった。
10月のはじめに、黒澤さんの今日(こんにち)をもたらせてくれた聖地「ニュルブルクリンク」へ飛び、ガンさんの「神ってるドライビング」の収録も無事にこなし、一旦帰国したその足で、今度は土屋圭市君と一緒にHot-Versionのロケでオーストラリアへ飛んでいる。そんな殺人的なスケジュールをこなしながら、いつも明るい笑顔とまっすぐな志を失わないのが、本田君である。実は「密書」の届く1週間前に、メールで本田君から内々の打診を兼ねた連絡はもらっていた。
「黒澤さんのDVDの撮影は11月1日(水)エビスサーキット東コースとなりました。当日は大井さんにも出演していただいて走行の撮影を行います。
よろしければ、是非ぜひお越しいただき『黒澤さんとの出会い』についてのコメント収録をさせていただければければと思います」
交通費やホテル前泊、食事も用意してくれるという。エビスまでは片道300キロ。わたしの場合、近頃は遠出する時、年齢からいっても単独は避けている。本田君もそれを知っているから、同伴者(運転手)もOKですよ、と丁寧な添え書きまでつけてある。
*本田君から「密書」と一緒に送られてきたステッカー。
もちろん、参加の返事はしたものの、この季節は「RJCカーオブザイヤー」関係の試乗会や第1次選考の投票やらで、スケジュールが埋まっている上に、10月25日のプレス公開デイから始まる『第45回東京モーターショー』が11月5日まで続く。加えて11月1日は「2018年次RJCカーオブザイヤーの第1次選考会」の開票日と重なっている。即座に開票のセレモニーには欠席する旨の届けを出した。
問題は「エビスサーキット」往復600kmの同行者。9月の「メディア対抗筑波4時間耐久レース」の際には、ベスモ同窓会幹事のひとり、仁川一悟君(みんカラネーム=2315)に付き合ってもらったが(さらに前年もそうだった)、この大事なエビスロケも彼にお願いすることにした。仁川君の方も、幸い、31日の夕方から11月1日にかけてはなんとか都合がつけられるという。
*ベストモータリング同窓会幹事の一人、岩田和馬君。念願のカーメディアに転職して、発表会でもよく顔を合わせる。
10月16日、VOLVOのXC60 発表会で六本木にあるグランドハイアット東京へ。説明会の終了後、前年にインポート部門でイヤーカーとなったXC90のステーションワゴン版が出たので近々、よかったら試乗しませんか、と顔なじみの広報チーフが耳寄りな情報を。エステートと呼んでいるやつかな。それはいい。近くエビスサーキットを往復するので、ぜひお願いしたい。こちらも話がすぐにまとまって、10月30日午後4時受け取り、11月2日に返却する予約を入れてしまう。北欧生まれのプラグイン・ハイブリッド車V90 T8 Twin Engine AWD Inscription。逢う楽しみが、また一つ増えてしまった。
20日、HONDAの「希望の星」N-BOXの試乗会が元赤坂の神宮・明治記念館をベースにした試乗会をこなしたところで、突然、10月の27日にMAZDA CX-5の試乗会が横浜・子安にある「マツダR&Dセンター」を基地にして設定されたという案内が届けられた。
この日は東京モーターショーの祝賀パーティーに出席した後、夕方からの講談社社友会秋季懇親会に赴く予定で身動きが取れない。それでも朝イチの試乗枠をお願いして、プログレを駆って首都高横羽線子安ランプを目指した。
この日のCX−5は明るい秋の陽差しを浴びて、見事なポテンシャルを披露してくれた。率直にいって2日前のTMSから帰って以来、久しぶりに深く重い「鬱」に取り憑かれていた。いくら時代の要請、流れだからといって、国産自動車メーカーがあんなに腰崩れになっているとは。EVシフト、人工頭脳活用が時代の要請と関わっているとはいえ、本来のクルマ創り、クルマへの愛に応えようとしているとは、どうしても感じ取れないじゃないか。
その鬱屈がCX−5に触れた途端、まるでアクセルを目一杯に踏んでやって、エンジンにこびりついたカーボンを吹き飛ばしてやった時のような開放感に変わっていく……。そんな気分でいるところへRJCの公式ホームページを担当している神谷龍彦さん(元・モーターマガジン誌編集長)がやってきて、その試乗記を30日までに寄稿できないか、と打診してきた。気持ちよく、迂闊にも引き受けてしまった。その余力が今のわたしに残っているのだろうか。
結局、書き上がったのは、前泊する福島・二本松駅前のビジネス・ホテルに向かって、スタートしなければならないすれすれの時間である。
31日の午後5時。やっとメール入稿を果たした。それを受けて、さすが神谷さん、その日のうちにWebにアップしてくれていた。題して
「あえて『愚直の道』を疾走するCX−5への恋歌」。どうぞこちらからご一読いただければ……。
16:02 仁川君とのHOTLINEにメッセージが入った。
「(退社して)今、自宅に向かっています。クルマに乗り換えて、17時〜17時半ぐらいには、局長(みんな、そうよんでくれる)宅には着けるかと思います」
おお、危ない。こちらは『CX−5試乗記』がアップできそうなところにやっと漕ぎつけたようだ。もう一度、読み返してみるか。
16:42 「今、家を出ました」
16:43 「はい、了解。E350ですか?」
16:55 「はい」
こちらもやっとメール送稿、終了。確認のために、もう一度「送稿済み」のものを開いて、添付ファイルをチェック。やっとPCから解放されて、仁川君が到着する前に、駐車場から「クリスタルホワイトパール」と呼ばれる、真珠色に近いロングコートを纏った超大型の貴婦人を、ともかく表通りまで引っ張り出して、仁川君のE350のスペースを確保する。
17:28「あと3kmですが、渋滞しているので、15分はかかるでしょう」
17:29「了解」
午後6時、V90のインテリアと同色のレザーで包まれた分厚い角形のリモコンキーを渡して、わたしはサッさと大ぶりな助手席に体を沈める。仁川君はセンターディスプレイとしばらく格闘していたが、NAVIの目的地設定でひとまず二本松駅前をクリックした。滑らかに滑り出したV90は適当に、その鍛え上げられた運動性能を披露しながら、夜の東北自動車道を北に向かって疾駆する。
午後9時半、途中の上河内SAで夕食をとっただけで、二本松ICから下道へ降り立った。それを見計らったようにわたしのiPhoneが着信を知らせる。本田君からだった。今、スタッフがホテルの側の居酒屋レストランにいるので、チェックインしたらそちらへどうぞ、という。
そして、ホテル着。と、見慣れた黒い影が玄関ドアの前で、わざわざ出迎えてくれたのだ。
やっぱり。こぼれるような笑みを浮かべて、本田君が近づいてきた。握手。やっとここまでたどり着きました。万感をこめて、という古い言葉が、どうして今、こんなに似つかわしいのだろう。
こうして「エビスロケの前夜」が静かに……というワケには、実はまいらなかった。一旦、荷物を部屋に納めてから、ロケスタッフのいる居酒屋風の食堂を覗くと、いる、いる。かつて一緒にベスモ創りに打ち込んだ仲間が、ここに結集している。大井貴之、仁礼義裕、カメラの北畠主税。時計が一挙に30年近くまで、巻き戻されてしまう……。
プロローグはここまで。本編は、やっぱり、次回更新まで、となってしまったがお許しあれ。
*大井さんも、すっかりお年を召して素敵になりましたでしょう?
*ベスモ同窓会幹事の仁川君。今回もサポート役、ただただ感謝です。
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ベストモータリング | 日記
Posted at
2017/11/03 23:04:23