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2014年12月23日 イイね!

箱根のガンさん邸、至福の餅つき忘年会

箱根のガンさん邸、至福の餅つき忘年会〜ここから、また新しいものが始まりそうな予感〜


 相模川を渡ったあたりで、東名から小田原・厚木道路に入ると、右側の視界が大きく開ける。関東平野もここが西端で、箱根連山がどっしりとした黒い姿で出迎えてくれた。そして、それを際立たせるように、真っ白な雪のガウンを纏った富士山が、背後から箱根の山々を押し出している……。

 前夜の雨も上がり、「ぎっくり腰」も影を潜め晴れやかな朝がはじまっていた。目指すは箱根小涌谷のガンさん邸。10年ほど前からはじまっている餅つき大会は「クルマ仲間」にとって、なによりの忘年会であり、絶好の社交場でもあった。

 12月21日(日)の午前8時15分に練馬を出て、まだ1時間も経たないのに、もう小田原・厚木道路を走っている。いいペースだ。が、速度制限70km/hのこの自動車専用道、走り屋さんには要注意のルートでもある。

 中間の料金所を抜け、大磯あたりのアップダウンのある山間部を抜けていると、背後から白のNSXが迫って来た。ヘッドランプの形からみてⅡ型クーペかな。ともかく、前にでてもらおう。左へ寄る。すっと脇を大胆に抜けて行く白のNSX。残念ながらドライバーの顔は確認できなかった。が、走りっぷりはただ者ではなさそうだ。
 ピンと来るものがあった。ガンさんの餅つき大会には、彼が手塩を掛けて育てた「NSXオーナーズミーテイング」の面々も集結する。その中の一人に違いない。だったら、箱根のガンさん邸までランデブーランをきめこむとするか。すぐに「チョイ悪爺ィ」の本性が剥き出てしまう……。 



 10時ジャスト、山腹にあるガンさん邸に着く。邸前の坂道はずらりと高級車が列をなして駐っている。年に1度、この日だけは、私道部分とあって周りのお宅も大目に見てくれているらしい。
 残念ながら、小田原厚木道路で遭遇したNSXは、国道1号に降り立ったのち、箱根ターンパイク方向へ走り去ったので、絵に描いたようなストリーは成り立たなかったが、しばらくは、ドライビングモードを「power」にセットして追走した昂まりは、それからのワインディング走りを、すこぶる付きのアクティブ・モードに導いてくれた。







 餅つきパーティは、すでに最高潮を迎えていた。約束通りに中谷明彦君も笑顔で迎えてくれる。黒澤ファミリーは総出で、餅米をふかしたり、豚汁をつくったり、テキパキとそれぞれの役割を果たしている。ガンさんが杵を振りかざし、元MAZDA広報の名物男・前田保さんが相棒になって、餅を揉む……。

 挨拶替わりに、まずひと搗き、杵を受け取り、わたしも臼にむかうことにした。わざわざ広島からやってきた前田の保さんがかけ声とともにサポートしてくれる。





 来客の諸氏が「ヨイショ!」と声を合わせてくれた。振り下ろす。餅の白い塊りの中心をめざして。ゴルフと一緒で、芯で捕えないと、音が悪い。ピシッとジャストミートした音を出すには、このあと、3回ほど杵を振り上げなければならなかった。

 訊くところによると、この日のために用意した餅米は一袋30kgに分けたものを20袋、つまり600kgもの餅を搗き上げる。搗き立てのお餅を、大根おろしで食べるもよし、餡ころにくるんでいただくもよし、そして翼君が掛かりっきりで用意した豚汁、これがまた抜群の旨さ……である。

 ま、そうはいっても、お餅をそんなにいただけるものでない。そこからが黒澤家の心くばり。きれいに板状にのしてから、包丁で切り餅にして、帰りのお土産にと、パック詰めにするのである。

 ガンさんご自慢の苔蒸した庭園も、ガレージも、この日は全面オープン。ゲストたちは思い思いにテーブルについて、ガンさんの用意したものや、それぞれが持ち寄ったワイン、シャンペン、日本酒、その他、アルコール抜きの飲み物に手を伸ばし、おしゃべりを楽しむ。


*中谷君にじゃれているのが野田編集長


*メルセデスベンツJAPAN広報部からの3人組

 親交のある自動車メーカー広報マンとも、ここで逢うと、また特別の親近感が湧いてくる。メディアで活躍中の若手編集マンも、中谷君を捕まえて離さない。「ベストモータリングの創刊号からのファンです。全巻を持っています」と、親しく声をかけてくれたドクターは、予想通り、NSXオーナー。まさにここは、みごとな「クルマ仲間」の社交場だった。

 ガンさんがわたしを手招きする。そばに背の高い若者が立っている。
「紹介します。もてぎの最終戦からうちのチームで走った……」
「あ、蒲生君ですね。逢ってみたかった」


*LEON期待の星・蒲生尚弥選手

 どこか面差しが、デビューしたころの服部尚貴君に似ていた。つい先頃までGAZOOレーシングで走っていて、もてぎ最終戦での走りも評価が高かった。滅多に褒めないガンさんも、目を細めて紹介してくれる。
「出身はどこ?」
「岡山の倉敷です」
「じゃ、中山サーキットでも走ったのかい?」
「カートからはじめたので、ホームグランドみたいなものです」
「そう、じゃあ、来年の4月も、スーパーGTの開幕戦は岡山国際だろうから、レースの次の日に、中山サーキットで第3回目のベスモ同窓会主催の走行会をやる予定なんだよ。出来たら、ガンさんのお供でいらっしゃいよ」
「あ、面白そう!」

 滅法、明るい青年。ちょっと天然なところもあっていい感じ。ルーキー時代は86遣いで鳴らしたともいう。ひょっとしたら、この蒲生君、来年のLEONチームで大化けするかも知れない。閃くものがあった。谷口信輝君とも共通する何かを持っているぞ、と。

 ガンさんと、この箱根の「ゲストハウス」(御殿場の家は治樹君に渡し、今ではここに定住している)落成の頃の昔話を懐かしんでいると、1冊のビジュアル本を拡げて、NSXオーナーズクラブのメンバーがサインを求めて来た。「CARTOP」のMOOKとして発売されたばかりの『NSX Owners Fille 黒澤元治の生きざま』(消費税込み2500円)。



 マジックペンを走らせながら、ガンさん、満足そう。
「これを創ってくれた編集長も来てくれていますが、売れてるんですって」
 この企画がスタートした時、野田航也編集長(ある時期、ベストカーで修業したこともあって、ガンさんの信頼が高い期待の星)から電話をもらって承知していたが、実物を見るのはこの日が初めてだった。
 
「どれどれ」
 ちょっとお借りしてページを開く。目次の次の大見開きは迫力があった。
『身命を賭して』とタイトルしたカラーページ。NSXのステアリンを操るガンさんのアップ。コピーを読んでみる。



———昭和58(1983)年、黒澤元治が発した言葉が当時の本田技研工業・常務取締役の心に響いた。
「F1にカムバックするなら、市販車でも世界中のホンダファンに夢を与えるスポーツカーを出すべきではないか」
 その提言が契機となり、ホンダ初のミッドシップスポーツ「NSX」の開発に繋がったという逸話を知るファンもいることだろう。
「こんなに深く真正面から取り組んだクルマは、後にも先にもないよ」。今回のインタビューでそう口火を切った。
 開発に携わったキーマン、そして一人のオーナーとして、NSXに馳せる想いを聞く―——

 必読のページが続く。
「魂を込めて開発した最初で最後の理想形」「俺が仕上げ、オーナーが育ててくれた」
 そして本田技術研究所「鷹栖プルービンググラウンド」での「生まれ故郷を攻める」
 後半は「あなたのNSXをみせてください」「NSXオーナー白書」「永遠にNSXを所有するために」「スキルを磨き親交を深める」といった、肌理の細かい編集の配慮も、このMOOK本を生き生きしたものに仕上げていた。

 持ち主に「NSX」の本を返しながら、実は20年ほど前の、完成したばかりの黒澤ゲストハウスを舞台にした「素晴らしい記憶」が蘇って来ていた。それは作家の五木寛之さんとのスペシャル・トークを、ここで収録していたのであった。詳しくは次回に紹介するとして、五木さんがこんな「リードコピー」を寄せてくれた『それからの“メルセデスの伝説”』は、いま、改めて熟読吟味に値する宝石のような「対談記録」であった。

———「ガンさん」こと、黒澤元治さんと一緒に仕事をするのは何年ぶりだろう。
鈴鹿で始めてのCIVICワンメイクレースがスタートしたとき、
「五木レーシングチーム」を結成、もちろんガンさんがドライバー(まだ現役のF2レーサーだった)。
もう14年が経ったのか。
その後もマカオGPのグループA・ギアレースに、TV番組「愉快な仲間たち」の収録をかねて出場したりするなど、共通の記憶をひろいあげたら際限がないほどだ。
久しぶりに、黒澤さんからお呼びがかかった。
温泉つきの箱根のゲストハウスが完成したので遊びにきませんか、と。
どうやら、ご自慢の造作らしいが、わたしをその気にさせたのはそれからの黒澤さんがモータージャーナリストとして新しいタイプの領域を確立してくれたことへの敬意と、クルマを通して自らを高めようとする、青年のような熱い息遣いに触れてみたいと想ったからである。
それに、来るならNew E320を用意するから、と上手に誘惑する。
新しいメルセデスを肴に、おしゃべりするのも悪くない。
箱根は、秋の真っ盛りであった。     (五木寛之)


*昭和61(1986)年のマカオGP

 さて、あの本、「黒澤元治 ベストセレクション Mercedes-Benz New E class」は書棚のどこにあるのだろう。それが気になりはじめた。NSXの本も買っておきたい。この会は自然にゲストがやってきて、搗き立ての餅をいただき、ひとしきりのおしゃべりを楽しんだら、お土産のお餅を受け取り、自然に退去していくのがしきたりのようである。

 わたしもそれに倣うことにした。冬の陽はまだ高く、箱根のこの辺りは光がいっぱいであった。    
 (この項、終わる)


Posted at 2014/12/23 14:29:27 | コメント(10) | トラックバック(0) | 78歳の挑戦 | 日記
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1959年、講談社入社。週刊現代創刊メンバーのひとり。1974年、総合誌「月刊現代」編集長就任。1977年、当時の講談社の方針によりジョイント・ベンチャー開...
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