〜代官山蔦屋「トークショー」開幕前の「ちょっと一服」
まるで恋人にでも逢いに行く気分で、夕闇から夜に移りつつある山手通りをプログレで駆けながら、代官山の蔦屋書店を目指した。長年の疲れからだろう、このところ、しきりと足元の不調を訴えていたプログレも、REGNOを奢ってあげたことと、フロントとリアのブーツラックをグリスアップするという「ちょっとした手当」で、いくらか機嫌をなおしてくれたらしく、継ぎ目を越える度に、軽くハミングしている。
『2014年版 間違いだらけのクルマ選び』&NAVI CARS vol.10 巻頭特集「徳大寺有恒、という生き方。」刊行記念トークイベント+サイン会――久しぶりに逢った徳さんと約束した1月31日夜の「トークショー」は、催行がオープンになったその日に、インターネットの「オンラインストア」で予約を試みたところ、40名の定員のうち38番目に滑り込めた。
*代官山旧山手通りに進出した「蔦屋書店」
「いいね! こんなイベントを待っていたんだね」
手応えを知った。主催側もすぐに定員を「60名」に拡げたと聴く。山手通りも足元を首都高速に提供したかわりに、道幅も広がり、路面も新しくなった。富ヶ谷を過ぎるとY字路が待っている。ここで間違えて真っ直ぐR246をまたぐ橋をわたってはいけなかった。左側の側道から旧山手通りに入り、恵比寿方向へ直進しなければ……。
この日は朝から、時間に追われっぱなしだった。まず近くの整形スポーツ外科で、二日前にやってしまった右脚ふくらはぎ肉離れの治療とテーピング。つづけて午前中には6速MTのAURIS RSを九段のTOYOTA広報車取り扱い事務所まで返却しなければならないのに、その本領にまだ触れていないではないか。さて、どうしようか。
*GOLFⅦのボディサイズとほとんど寸法を持つ意味はなにか?
*AURIS RSのシンプルなインパネ。6速のマニュアルミッションが特徴。
そこで一計を案じた。中央環状線大泉ICから美女木JCまでのストレート、首都高速池袋線に入ってから、板橋・護国寺間の連続コーナーを楽しむ。そして飯田橋で降り、給油を済ませて、九段まで走ればいいではないか、と。
オーリスRSの試乗レポートは別の機会に纏めなくてはならないが、久しぶり、「RJCイヤーカー」に選ばれたアテンザの6速MT以来のマニュアル車ドライビングで、サーキットでおのれを磨いた時代の血が蘇ってくるのを感じ取らせたくれたのが、何よりの収穫だった。車両価格はアルミホイールやエクセレントNAVIなどのオプションを削りとれば225万円。エントリーカーとしてなら、極上車としてお薦めできる。
*早春の陽射しの下の九段坂。
午後零時半、無事、給油も済ませて、返却終了。九段坂下まで初春の明るい陽射しを浴びながら、徒歩で10分足らず。まだ、肉離れは完全に治りきっていないのを確かめる結果となった。このあとは西武池袋沿線にある大学付属病院で、過日、無理矢理飲み込まされた「胃カメラ」の結果を聞く必要があったのだ……。
午後6時、やっと雑事から解放されて、真っ直ぐ、代官山を目指したのも、こういう日だからこそ、早めに蔦屋書店の「代官山T-SITE」に入って、ゆっくり寛ぎたい、と求めるものがあったからである。それに、午前中までのAURISにくらべて、わがプログレのシンプルなハンドリングと、静寂を素直に受け入れるボディのしっかり感は、まだまだ他の追従を許さないぞ、と気分をよくして、「T-SITE」駐車場のゲートをくぐる。
よくは知らないが、この駐車スペースは「ガーデン」と呼ばれているところをみると、かつては由緒のある屋敷の庭園だったに違いない。住所表記も「猿楽町」とある。
さて、奥まったあたりで駐車してみて嬉しくなった。周りにいるのは、名前をあげるのも口惜しいくらい、「イケメンCAR」ばかりだ。ケイマンポルシェといいたいところだが、どうやらチューンド911の羽根つきが、イルミネーションを反射させて、おのれの曲線美を訴えてくる。お、3号館1Fにある「STARBUCKS COFFEE」の前にはGOLFⅦのGTiバージョンが駐まっているぞ。
なんでも「モーニングクルーズ」というのがあって、ここでは新旧のポルシェやフェラーリたちが集まって、お互いを鑑賞し合う、特異なイベントの舞台になっているという。
お目当てのトークショーの開始までには、たっぷり時間はある。ま、ここでCOFFEEをのむのは、2号館のクルマ関係の書籍・雑誌カウンターで予約しておいた『NAVI CARS』をうけとり、受付を済ませてからにしよう、とプログレから降り立った。
かつて環八に「リンドパーク」というカーフリークたちの、知る人ぞ知る「クルマ&バイク」の専門書店があったのが、いまでは蔦屋書店が「書籍と人」をそっくり譲り受けて、代官山店に移されたのだという。なるほど、その空気は書棚のため息の出るような中身、応対するスタッフの見事な接客ぶりから、うかがえた。と、ひとりの若者が挨拶しながら近づいて来た。「ベスモ同窓生」の「Shuhei」君である。夏の「メディア4時間耐久」、10月の「ベスモ同窓会in東京」を通してすっかりおなじみになったT大生(東大ではない)である。
結局、「Shuhei」君とは、トークショーはもちろんのこと、このあと合流した「2315」君と一緒になって、閉幕後の「STARBUCKS COFFEE」でのおしゃべり会」を楽しんだあと、近くの渋谷駅までプログレで送ってあげることになる。
トークショー会場は隣の3号館2Fの「音楽フロア」ということで、このイベントの責任者に案内されて、売り場の間を縫いながら2号館を離れた。そういえば、このトークショーの出演者の一人である島下泰久氏とは、面識があるような、ないような。その辺がはっきりしないし、もう一人の『NAVI CARS』の河西啓介氏にいたっては、なんの予備知識もなかった。
まだ会場の席は疎らで、窓際にすわってから、入手したばかりの『NAVI CARS』を袋から取り出す。表紙はダンディを誇ったころの徳さんが、パイプをくゆらせ、オープンカーのステアリングに手を添え、トレンチコート姿でこちらに視線を送ってくる。
保存版 不世出のカーガイが、僕らに教えてくれたこと。
徳大寺有恒、という生き方。
———タイトルが躍っている。読んでみよう、という気にさせてくれる。目次のつぎに「VOICE from editor」の1ページ巻頭コラムがあって、この日の出演者、河西啓介編集長が「稀代のカーガイ、徳大寺有恒」と題して「その人生において、時間も、お金も、すべてをクルマに注いだ稀代のカーガイは評論家である前に一人の“クルマ好き”でもあった。そしてその言葉は、いまも僕らの心に響く」とみごとに読み手を惹きつけている。そして、それにつづく40ページもの大特集。
ここまで徳さんに迫っている「河西編集長」に、すこぶる興味を憶えてしまったのは、当然の成り行きだった。
*左が島下、右が河西の両氏
もう一人の島下泰久さんについては、トークショーがはじまって、なぜ彼が一旦休止した「間違いだらけ……」の再開にあたって、その相棒に起用されるようになったのか、その率直な内幕話を聴くうちに、すっかり気に入って行くのだが、その模様は、次回の更新までお預けにしておきたい。 (この項、つづく)
*午後8時30分、真打ちの徳さん、拍手に迎えられていよいよ登場!
Posted at 2014/02/02 20:20:10 | |
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追憶「徳大寺有恒」 | 日記