
〜ドキュメントNew 911 Press Conferenceの現実 ②〜
よくよく考えてみると、ポルシェJAPANの招きで公式プレスコンファレンスに出席するのは初めてのことだった。
最近の自動車メーカーの新車説明会や新技術発表会は、プロジェクターなどでビジュアルに説明してくれるので、プレゼンターの説明はもちろん聴いているけれども、必要な内容は、カメラで押さえておくことが常習となって、わざわざMemoをとる必要もなくなっている。
それに……この新しいエンジンと、進化したシャシー、それと新開発のPCM(ポルシェ コミュニケーション・マネージメントシステム=オンラインナビゲーションモジュールとボイスコントロール機能を備えている)を装備したNew911カレラはすでに2015年9月から予約注文ができたことと併せて、その「正体」はある程度、明らかになっていた。だから、この日の招待者たちにアピールするためにポルシェJAPANがどんな工夫を凝らしてくれているのか、それを楽しみにしてやってきたのだ。
その一方で、遠く1982年5月に、まるで天正少年遣欧使節団よろしく、日本のクルマメディアから選ばれた13名がスエーデンのサーブ社を振り出しに、イタリア・ミラノでピレリタイヤ、ドイツにわたってポルシェ社とショックアブソーバーの名門、ビルシュタイン社を歴訪、その仕上げにニュルブルクリンクでの世界耐久選手權レースの観戦などと、世界の一流品の実態と実力に初めて触れた往時との「落差」に想いを馳せてしまっていた。
こちらから足を運ばない限り、自動車先進国であるヨーロッパの「クルマ事情」に触ることなでできなかった時代……その時の「記録」は当「みんカラ」ブログの2011年12月24日から4回にわたって、以下のように掲載している。
①《ポルシェ漬けの日々 ~3度目の訪欧は『クルマ一流品』の原籍地をゆく~》

*ポルシェ社の頭脳「バイザッハ・ディベロップメント・センター」。同じ敷地内にアップダウンの激しいプルービング・テストコース(1周2.5km)まである。

*ツッフェンハウゼンの本社工場。アッセンブリラインを見学。宝石でも磨くような手造り作業ぶりで928と911が造りこまれていた。
②《アウトバーン&ロマンチック街道を翔ぶ! ~911SCタルガ蛇行記~》
*白鳥の城・ノイシュバンシュタイン城をもとめて「ロマンティック街道」を南下中。
③《『悪魔のリンク』初見参! ~『聖地』ニュルブルクリンク~》

*こちらは後年、944でオープンしたばかりのニュルGPコースを攻めたときのもの。
④《ああ、ぼくもニュルを走りたい! ~WEC1000㎞/決勝レポートから~》
この機会に、ぜひタイトルをクリックし、改めて通してお読みいただけるとありがたい。
特筆すべきは、シュツットガルトに滞在した4日間の、ゲップが出るくらい手厚かったポルシェの対応である。その内容は①の「ポルシェ漬けの日々」に詳しいが、まずシュツットガルト郊外の畠のど真ん中にある「ホリデーイン」に缶詰にされる。あなた方は観光に来たのではない、わたしたちの真髄を知ってもらうためにお招きしたのだ、というポルシェの折り目正しい意志を感じ取るほかなかった。が、そのあとの「メニュー」の凄さは想像を超えていて、思い出すだけでも鳥肌がたってくる……。
さて、現実に戻ろう。ポルシェJapanの七五三木(しめき)社長が今回の3ℓライトサイジングターボエンジン採用を「エンジンの水冷化と同等か、あるいはそれ以上の大きなマイルストーン(達成すべきプロジェクトの重要な節目、といいう意味か)である」と胸を張ったあと、プレゼンターとして壇上に押し上げられた塚原久広報室長。初々しい武者ぶりだった。
−———911カレラはポルシェ ブランドを象徴するモデルです。初めてツインターボエンジンを搭載し、パフォーマンスと効率性において新しいベンチマークをを打ち立てています。ダンパーの減衰力をアクティブ調節するPASMを標準装備し、さらに開発を加えて車高が10mm低くなったシャシーにより、スポーツ性能と快適性の間の特性の幅がいっそう広がりました。
こう前置きして「技術的ハイライト」を順次、スクリーンに映し出し無難に大役をこなしていく。この際、たっぷりとその辺をご紹介しておくと……。
まず、最初の「開発のアプローチ」について、「パフォーマンス」「効率化」「エモーション」の3要素について、それぞれ項目ごとに整理してくれているが、そこからは個々の能力で、ポルシェから日頃、提供されている「専用WEB」から上手にアプローチすれば、求めるアンサーが用意されている仕組みだ。国産メーカーが知ったら度肝を抜かされるくらい隠し立てもなく、「深い話」までオープンに導いてくれるのだ。
例を挙げようか。「効率化」の第2項目目の「仮想ギア」について、まっすぐその答えを探すのに若干の時間と慣れが必要だが、「911 CARRERA」のプレスインフォメーションから「エンジンおよびトランスミッション」を選ぶ。すると「初めて2ディスククラッチを備えたマニュアルトランスミッションの新しいギアレシオ」の項に導かれ、さらに「燃費の改善:インテリジェントオーバーランカットオフと拡張されたオートスタート/ストップ機能」をチェックすると、やっと探していた「解説」にぶつかる仕組みである。
−−−−911ターボにおいてすでに実証済みの仮想中間ギアが、同様の燃料節約効果をもたらします。これは、通常のドライビングモードで走行しているときに、次のギアへのシフト時にレブリミットを低く設定して、早めにシフトアップすることでエンジン回転数を抑えます。このときトランスミッションのコントロールシステムは前後のギアの回転数を合わせながら両方のクラッチを制御し、トルクを伝えます。加速すると、PDKは適切なギアに素早くシフトダウンします。PDKにはオイル潤滑クラッチが装備されており、この革新的な伝達機能に高い耐摩耗性を与えます。
どうだい? 効率化の「仮想ギア」が気になります!とコメントを寄せてくれた「MDi」君、これで納得いただけるだろうか。ま、紛れもなくこうやってどんどん進化していく911。
プレゼンテーションも無事終了したところで「質疑応答」の時間も用意されていたのに、質問はただ一つ、いつになったら「広報車」は用意できるのか、であった。これほど率直な質問はないだろう。
塚原室長がワンテンポ、間をおく。
「2週間、はきついかな。う〜ん、3週間ください。順次、お乗りいただけるよう対応いたしますので」
つまり、少なくとも3月後半には、各専門メディアに試乗の機会がやってくるはず。カチカチと計算してみる。4月の21日ころからなら、何とか借り出せるかもしれないな、と。
ま、講釈より乗ってナンボがスポーツカーの基本。プレスコンファレンスはこれにて終了。あとは会場に持ち込まれたタイプの異なる3台のNew911カレラを触りながらの懇談会となった。
この日、会場入り口のエスカレーターで久しぶりに顔を合わせた「GQ」の鈴木正文さん(NAVI→ENGINEの編集長を歴任)と早速合流、そこへ「みんカラ」SPECIAL BLOGに「男は黙ってスポーツカー」を執筆している吉田匠さんも加わって、折良く持参していた『PORSCHE 偏愛グラフィティ』を披露、後日、この本についての感想を聞かせていただく約束が成立した。
ともかく、話が弾む。何かの拍子に、話題がピレリに招待された「遣欧使節団」に及んだ。
その第2回は1960年4月で、ミラノからスパーカーの聖地「モデナ」に案内され、仕上げはマドリッドにとんで「ハラマサーキット」を攻めまくった。吉田匠さんと一緒だったのはそのときのことだった。お互い「最近の出来事は忘れているけど、昔のことは細かい年代や日にちまでよく憶えているものだね」と笑いながら……そこへ桂伸一、田部靖彦の両君が合流。なんだか同窓会気分を楽しんだところで、散会。
帰宅して、ポルシェJAPANNに渡された白袋の底に、ちょこんと納まっている白い箱を開いてみた。今度のNew911カレラSのミニチュアだ。これはいい。今度のベストモータリング同窓会用のいいお土産が一つ増えたぞ、と。そしてもう一つスペイン・ハラマサーキットのときの写真を探してみたら、モノクロで保存してあった。それをこの項の〆として、追加しよう。
Posted at 2016/03/06 01:26:24 | |
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還暦+20歳の青春 | 日記