先月26日、横浜港を出港した貨物船が27日に館山沖にて衝突事故を起こした。
29日まで漂流した貨物船は、引き離され横浜港に引き返した。
たいした被害も無く、あまり大きく報じられることも無かった海難事故ですが、
なんと、私の担当する荷物が積まれていたのです。
船会社はGAを宣言しました。
G.A.とはGENERAL AVERAGE「共同海損」の略です。
こうなると、荷物は一旦担保と言う形で押さえられてしまいます。
まったく、不意を付かれた形です。
別の荷物を揃えて、Airで送らなければなりません。
とんだ損失です。中越沖の次は館山沖か!?
で、この聞きなれない「共同海損」とは?となるわけですが、
なんと、海に生きる人には当たり前のお話だったようです。
たとえば、船が火災を起こし自力航行が不可能となれば、乗員の救助や貨物の保全を図るため、タグボートで船を最寄りの港まで曳航します。そして、貨物は別の船に積み替えられて目的地まで運ばれることになります。
この場合、船を曳航したタグボートの使用料や貨物の積み替え作業料などが共同海損行為となり、共同の危険から財貨を守るためになされた行為により生じた損害(共同海損)を、船と荷物の価額に応じて関係者間で公平に負担しようとする制度らしいです。
この考え方は紀元前に生まれていたようで海の自然法となっていました。
古い記録では紀元前4世紀から3世紀にかけて東地中海の中心的な海運勢力となったロード島民による「ロード海法」。
そこには「共同の利益のために生じた損害は共同の分担によって補償されなければならない」という考えがすでにあらわされていました。日本でも室町時代の「投げ荷」、さらに江戸時代には「振合」、「総振」といった共同海損の概念に基づく損害の共同負担の考えが普及しています。
が、共同海損の基本原則は同じでも、これを処理するための慣行や実務は国によって異なった発展を遂げていたようで、大航海時代などには海運業界に種々の紛糾が生じる火種になっています。
現在は、このような紛争がおきないように船主、貿易業者、保険業者の間で共同海損の精算について国際的統一を図る検討が行われ、1877年に「ヨーク・アントワープ規則(YAR)」が成立しました。以来、今日の運送契約にはほぼ例外なくこのルールが採用されるようになっています。書類をよく読めば書いてあったのね。
そして、超長い前置きの後の本日の雑学。
私たちが「平均」という意味で使う「average」は、もとは「海損」を意味する言葉だった!!
海事用語が日常的な語彙に転化した数多い事例の一つです。
今日は大作だったかな?
Posted at 2007/08/01 23:34:58 | |
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