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2018年08月25日

「ブレーキ性能」とは何ぞや?

「ブレーキ性能」とは何ぞや? ブレーキ性能、、、とひとくくりに言われますが、その中身は実際多岐にわたります。
(みん友さんのブログに反応したエントリ(;^_^A)



自動車で使われる主ブレーキは、そのほとんどが形式的には「空冷式のディスクブレーキ」になります。従って、車重と速度の運動エネルギーをタイヤと路面の摩擦抵抗によって抗力を熱エネルギーに変換するいわば熱交換器とも言えます。

その自動車用ブレーキを設計する場合の要求項目をおおざっぱに上げると、

まず運動性能的には
1.1回の絶対停止距離:
最高速から停止までの総エネルギ量を、最短距離で受け止めること。この場合、装着タイヤの最大粘着抵抗が得られる路面と条件で得られる最低制動停止距離(ペダル踏みかえ時間を含まず)となります。当然、設計された車の出せる速度からのフル制動の温度範囲できちんと安定した制動摩擦をだせるよね?、、という熱容量になっています。以前にもW205の例で触れましたが、ディスク径だけで見てもC180→C200→C250とキャリパー&DISKが変わっていますが、中身はドイツ人ですから「出せる速度に対する制動力」になっております。
※この中に、制動Gの安定性、ペダル入力値と制動Gの線形性などのフィール、制御しやすさが含まれますが、現代ではABSの分解能、応答性が勝負になってきてますね。単純な直線での急制動では、4輪の輪荷重と動的変動が極力安定持続状態にあるほどタイヤと路面のμを引き出せますから、サスペンションの能力も関係します。

2.連続制動性能(主に耐フェード性)
こちらは、恐らくコストに一番トレードオフされる項目でしょうが、市販の自動車では道路運送車両法に規定される制動試験の中で、フェード能力の下限は決まっていますから、あとはそこからどれだけ余裕と言うか、性能を積み増すかがメーカポリシーや車種、グレードで求められるポイントです。
1項で生じる制動負荷を例えば、80km-20kmの急制動で何回繰り返せるか、、、その条件もどのあたりに設定するかはメーカの独自基準のようです。大衆車や軽自動車などはほとんどが街中徘徊用ですから、1回当たりの絶対熱量が低めに見積もられ、繰り返し回数の間隔時間もそれなりに間延びした使われ方がベースになるでしょう。

一方スポーツカーの場合は、例えば峠のコーナ間隔を加速して、減速してを繰り返しながら走行するので全く別次元の熱量が、いくらベンチレーテッドで空冷しても、冷える分を上回る熱が何度も入ればディスクはギザギザの右肩上がりで熱が溜まって上昇し続けます。そしてパッドの仕様温度範囲を超えるとμは下がって、制動力が下がりますし、フェードすると一気にほとんど炭化したパッドはつるつるな感じになります。

通常はその入力熱容量とディスク自体の熱容量をコストでバランスさせて、使われ方からフェードしない範囲に設定します。あらかじめ、サーキット走行を前提とした車だと、街乗り用パッドから、サーキット用に変更するだけで、ディスクやキャリパーは耐える仕様であったりしますが、当然高価なので、不必要な車にはそんな贅沢はしません。
ここでも当然、法定速度またはリミッター速度でのインターバル制動で能力設定するので、100km/h(180km/h)-20kmの国産C車と250km/h(250km/h?)-20km/hの要求で作るC車のブレーキは違って当然です。しかしその分、低速での泣き、微調整は苦手。(;^_^A
(私のメル子で見た目、おっさんセダンでもここまでやるのね、、と思える唯一の外観上のポイントw、メーカの想定負荷の違い)



3.寿命とコスト(美観:汚れもかな?)
ディスクで削られるパッド(摩擦材)は、ホイールを真っ黒にしてくれて、掃除も大変ですが、消耗して行きます。いったい何万キロ持てばいいのでしょう?、当然使われ方で天地の差が出てきますが、この辺は欧州車と国産車の思想が顕著に違う分野でした。が、最近は欧州車も日本的思考に寄ってきてるようです(それには制動力を落とさずに、、の技術向上あってのことだと思いますが)

4.制動制御性(タッチやフィール)
初期制動の立ち上がりが急で、絶対制動距離を縮めるには、空走や甘い制動区間を極力詰める意味でおばさん車には意味が有りますが、スポーツ走行をされる方には、そもそも初期に甘い制動はしないので、むしろ踏んづけていった最後のロックポイントあたりの制御性や、温度の上下によるμの安定性の方がより重要でしょう。(その辺は今やABS任せで、むしろ調速用途のフィールが欲しいかも知れません)
この辺は、メカニカルな構造や、ディスク周速x温度xμx圧力などの総合的な係数比で注文が付くところでしょう。

ざっくり、ブレーキ性能というと大きいところではこの4つを上げておきます。
この順番に諸元検討されると思いますが、走り主体の車でなければ、重視されるのは

1.寿命とコスト
まずはこれが最重要。そして昨今は低燃費=フリクションの低減です。
そのため、まずは軽量。簡単な構造、部品点数小。そうすると非制動時にしっかりパッドとディスクのクリアランスが取れる片押しのフローティング式が主力になります。


とても優秀な方式で、制動しないときには大抵はゴムや弾性体で引き寄せる相手側のボディがディスクに対してしっかり離れて、引きずり抵抗が有りません。弱点としては簡単な構造とはいうものの、対向式よりスライドピンなど可動部がある分、メンテナンスは必要かもしれませんが。

一方、高性能な代名詞の対向ピストン式では、ピストンとダストシールのわずかな連れ戻しリトラクション分しかありません。大体0.3mmぐらいと言われるけれど、現実には渋さとキャリパーの口開き分が戻ってごく僅か。ただ、ディスクの振れや振動で押し戻されて発熱は減るけどフリクションは確実に残ります。しかし雨などでは常に強制水膜除去にもなるので、コストや低燃費、パッド摩耗などを飲み込めば、やはりフィールの優れた方式です。(ちなみに絶対制動力はタイヤをロックさせる能力が有れば、制動距離にはほとんど関係ありません(人間の足がフィールで調速性が良いと感じるように、高性能なABSはその剛性故に応答性、制御性でも対向式が効いてくるでしょうが)。

また、ホイール径が大きくなっても収容できるキャリパーとディスク径には限りがあり、より高温を常とする設定になると、ディスクの熱ひずみを抑えるためにカッコいいフローティングディスクが使われますが、これは伝熱的には容量は減る方向ですが、振動や、偏摩耗を抑える効果が有ります。しかし構造上振れが出ることで、対向ピストンは押し戻されて、最初のペダルストロークが変化する欠点も有ります。サーキット以外で使うメリットは無いでしょう。


2.ランニングコストと美観
パッドカスが盛大にホイールを汚す、それも通勤で1週間でもまるわかりなぐらいに。。というのが欧州車の特徴ですが、故に、アフターマーケットでは制動力も、減りも、カスも優れた品が出されています。個人的にはそれだけ盛大に減るんだから、何か良いところもあるはず、、と思うのですが、値段含めて顕著なメリットは見出していません。奥さんのシトロエンも余りにダストがひどい、、というより初期制動の立ち上がりが急すぎて、カックンブレーキ過ぎたので、それの改善を主目的にデクセル製だったと思うけどディーラメニューで進められて交換しました。結果はペダルの踏み加減と制動の立ち上がりゲインが緩和されて、調速、ロックともにコントロール性が大いに改善されましたし、夏、冬のタイヤ交換で驚くほどの差です(フロントと換えていないリアホイールの汚れが逆転w)

そういうわけで、国産大衆車は「ブレーキ性能」に劣るわけではなく、重視している項目が違うという事と、絶対制動力はロック出来ないような弱いブレーキは存在せず、ABS化された現代の車は制動距離(通常は1回ですよね、そんな急ブレーキ)と言う点では必要十分と言えます。従って、差が出るのはおもに耐フェード性になります。これは普通は、
重くなり、大きくなり、高価になり、、、と車の運動性能にも悪影響となります。だからそれでもなお必要、、とされる機種にだけ、奢られます。



高温側で安定したμ(一般的には高温側でもミューが落ちない方向)のパッドは、低温や雨などのぼーっと走っていて冷えてるところから、ちょっと強めにほしい、、と思った時、
「あれっ!」となります。もちろん強めに踏めば止まるんですが、調速性が良いとはあまり言えなくなってきます。峠でしょっちゅう踏んで離して、とやってれば安定するんですけどね。 そうすると、昨今のダウンサイジングエンジン同様、実用域一番使うところで安定している性能を重視すると、全体的に温度変化に鈍感なμ特性。パッドを減らさない耐久性。もちろんディスクなんて基本的には10万キロ交換!。そういう合金の組み合わせになりますし、炭素分が多く錆びて見た目が悪いのも嫌われます。そういう性能を満足させたのち、ひょっとしたら箱根のダウンヒルを走るかもしれない、、程度のフェード余裕を持たせたディスクの熱容量で決まってくるのでしょう。 一方でポルシェは代々、車速と質量からどの車もポルシェ基準のテストコースと要領で、減速Gのとそのインターバルが決められており、その間のフィールの変化があってはならない、、贅沢な仕様になっていて、役付きでサーキット向け、、なんて種類にはさらにレース基準の試験が決まっているため、発売時期によって性能差が出る事はほとんどないようです。もちろん新しい技術で絶対性能は耐えず右肩上がりに開発されているのでしょうけども。


そういうわけで、使われ方に応じた、その車の主たるフィールドで、いかにドライバーを満足させるか、、と言う点で仕上げているわけですから、その点を加味した評価をしなければ、「サーキット〇周でフェードしたわ!」とくさしても、目が点、と言うだけです。

一方で、信号で止まる寸前の制御性、雨と晴れの踏み加減での差異、長持ちする経済的な消耗品。いつもきれいなホイール。泣かない静かなブレーキ。素晴らしいじゃないの、、となるはず。
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Posted at 2018/08/25 23:46:04

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この記事へのコメント

2018年8月27日 11:41
こんにちわ。
いや~、助かります(笑)。
細かく解説する手間と文章は省けて(爆)。

正直なところこの話題でこんなにアクセスがあるとは全く予想していなかったのですが、、、(汗
それ故に変なコメントもあったりするのはまぁご愛敬として、書かれている内容はボクがブレーキヲタになったエピソードにバッチリヒットwするので、トラバさせて頂きますねd(^_^o)。
コメントへの返答
2018年8月27日 17:48
こんにちは。

賑わってましたね(;^_^A まぁひっそりと常連さんだけでいいか、とトラバるほどでも無し、、と思っていたんですが、、 ラピュタの積乱雲に突っ込むお方もいて、「お気の毒に、」と思っていました(;^_^A

2を読む前にアップしたんですが、ぴったりかみ合ってましたね (こまけーことは端折ってあったし) 補完できれば幸いですw。
2018年8月27日 23:39
最近手に入れた車がたまたまPCCB付きだったこともあって、フローティングローターの意味さえ知らなかった私には、とても勉強になる記事でした。ありがとうございます。
コメントへの返答
2018年8月27日 23:52
コメント、ありがとうございます。

一般的な鉄ロータまでしか踏み込みませんでしたが、軽量化ともっと高温状態で使うPCCBの場合は、別次元です。鉄では熱ひずみや、熱疲労で割れますしね。 

熱容量をあまり気にせず高温域を使うので、むしろ車軸側に熱が伝わるとハブベアリングが持ちませんので、ちょっと意味合いも変わって、断熱している目的も有ります。

PCCBはディスクへのエアインテークも、異物混入を避けないと噛みこんでおじゃんになるので、そっちがやっかいですね。
2018年8月28日 13:40
こんにちわ。トラバしましたw

いつまで賑わうのだろうw?と思ってましたが、ようやく落ち着いてきましたので続きとサクッと(^^;

ラピュタの積乱雲に突っ込むお方(苦笑)
彼の愛車紹介と整備手帳をご覧頂けると面白いですよ。やれオーリンズだやれブレンボだって「カタログの数値に踊らされてる」ってお前に言われたくないょ(爆)、とコメント返信には書けませんが、まぁそこは大人の対応でテキトーに(^_^;)。

コメントへの返答
2018年8月28日 18:58
ブレーキって、やっぱ関心高いんですね。社外品に変えたり、いじる対象になってることもあるんでしょうね。

まぁ、文字は難しいですからね。ちょっとニュアンスがどう伝わるか、なるべく主語、狙いがしっかりしないとね。(私自身も気を付けねば(;^_^A

読み応えありました(^^)/。
2018年8月30日 22:51
耳が痛い(笑)。

下りのブレーキで効率良くスピードを殺して、フロントにコーナリングの分だけ余地を残して荷重を掛けて、リアの荷重を抜いてスピン気味にコーナー入り口で一気に車の向きを変えてコーナーに入る。
峠1本なら、フェードの兆しすらない。
ってなことが出来る車とブレーキを持ってるんですけど。
ブレーキ踏まないんです。 専門がエンジンバカなんで。

RSの対向ブレーキ持ち腐れてます。
ホイールが無駄に汚れ、止まる時はカックンし、重くて、高価で、燃費も悪い(んですね)。
キャリパーの温度が100℃になったことも無いと思う。

が、良さは分かる。
高速道路では、減速の安心感と応答の速さと減速度の制御が容易なとこ。
街中でもパッドがディスクにカツッと当たるのが分かる(気がする)。
対向ブレーキなのは前輪だけだったりするんですけどね。
リアブレーキは、もはや飾りで、効いてないのかもしれない。

クラウンのブレーキ、全く不満なし。 普通でした。
クラウン買って、ブレンボのブレーキが(推定)30万円のオプションだったとしたら、買うか?
正直、躊躇します(笑)。
コメントへの返答
2018年8月31日 19:05
こんばんは。コメントありがとうごさいます。

ブレーキの使い道は、普通は減速、停止なんですが、峠なんかのスポーツドライブでは荷重移動や、姿勢作りにも使うので、「効き方」の好みはありますね。

しかしながら、売られている車の大半は「乗ってる人のブレーキ技量」に合わせてチューニングし、それもコストのかからないブレーキ作りの方向でまとめてる感が強いですね。

ゆえに、ペダルストローク量制御で、減速度も比例でなく2次曲線的に立ち上がるかの、大衆車チューン。

これでブレーキ操作を覚えると、デリケートなブレーキ操作なんか、習得しませんよね。


ポルシェみたいなペダルの圧力制御で、踏圧によって、減速Gをリニアに調整できるようにブレーキを作ると、まずコストがかかります。メカ剛性を上げて、配管剛性を上げて、ディスクとパッドの摩擦ゲインは下げつつ、絶対制動力はめちゃ高い、、と言う具合に。

そこまで仕上げると、対向ピストンの意味も生きて来るんですが。 そこそこの車だったら、かなりのキャリパーが付いてるので、
パッド、ホース+マスターの取り付け、ディスクの順で、キャリパーの役不足はホントに最後だと思います。ファッション上は最初でしょうが(;^_^A。

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