人間工学:人間と人間の取り扱う機械とを一つの系(人間-機械系)として考え、その関係を医学・心理学・物理学・工学の各方から研究して、人間の生理的・心理的または動作・行動の特性に適合した機械やシステムを設計することを目的とする学問。(広辞苑)と定義されています。
車で考えると、「カーナビや計器は視線をなるべく移動しない位置に設置する」、「夜間照明はなるべく刺激が少なく目の疲れない物にする」、「各種スイッチ類は自然に手が届く範囲にあり操作ミスが起きにくい物にする」と言ったものから、「長時間座っても疲れないシート」、「疲れない視界や操縦性」と言ったものまで全ての構成要素には理論があって構築されていることになります。
一方で、工業デザインとは、
一般に大量生産方式による製品の意匠、設計をさし、手工芸製品とは区別される。1930年代から米国を中信に発展した。外観を飾り消費者の購買意欲を刺激することだけでなく、材料、構造、機能、生産プロセス、さらに経済性、販売方法などを考慮して組織的に造形計画するもの。(マイペディア)と定義されています。
「工学」と「デザイン」なので目指しているものが違いますが、工業デザインは人間工学よりも見栄えの良い物をなるべく安く、機能的に作ろうと言うニュアンスに取れます。人間工学的に設計するには医者や工学者が必要ですが、工業デザインとして優れている物は天才デザイナーが1人いれば達成出来るのでしょうか?
車と言う製品は、格好が悪くては売れない製品ですが、使い方を間違えれば凶器にもなると言う性格から、もっと人間工学を追究すべき商品でないだろうかと最近発売される車に試乗して思いました。
もしかして、人間工学を突き詰めるととんでもなく格好悪い車になってしまうのか、そこには独特の機能美が出るのかわかりませんが...
でも、人間工学が先にあり工業デザインがこなければならない製品でしょう。現在、社員として車の開発チームの中に、医者、心理学者のセクションがあるのはベンツとボルボくらいだと言われていますが、日本のメーカーも医者や心理学者を社員として採用して、設計段階から意見を採り入れてみると何か変わるのかもしれません。
しかし、今はデザイントレンドがあり、どのメーカーも有名なデザイナーを責任者に迎えたりして、先にデザインありきのような車が増えているように見えます。
今所有している、レガシィとCクラスですが、何がと具体的に指摘出来ないが長距離を走ると疲れが違います。
レガシィのシートは多くの人が腰が痛くなると言いますが、私は腰が痛くならないにしても、何か途中で体勢を変えないと落ち着かない感じはします。一見して座った感じでは、レガシィのシートの方が高そうに見えますし、実際に腰を下ろしたときの感じは良いのに長時間座っていると何故か落ち着かない...
レカロに変えると解消されると言う報告も多いので、やはり医学的にポイントが押さえられていないのでしょう。インプレッサS203に標準装備されるレカロシートは1脚55万円で、素晴らしいと書かれていますが、レガシィもプレミアム路線を目指していくなら、10万や20万高くてもシートなんて変える必要は無いと言われる物を開発した方がユーザーは歓迎するのではないでしょうか。
メーター照明なども各社いろいろな意見があって面白ものです。VWのブルー系からアウディの赤など母体は一緒でも、視認性優先とか目の疲労度優先とか説明しますが、デザイン的のインパクトが先にあるような気がします。
飛行機を作るサーブは目の疲れの少ないのと言う理由から淡いグリーンのメーター照明で、スピードメーター以外の照明を落とせる機能が付いますが、このサーブのメーターが医学的に言って色などを含めて一番疲労度の少ないものと思います。(異常があればワーニングが出て知らせる)
試乗などしていていると、シートやメーターなどは実はそれほど気にならないのですが、ブレーキ、操縦性の他にAピラーの位置・角度とフロントウィンドウと頭の位置の関係の方がすごく気になります(笑)
カーブの時の視界や空や太陽の入り方などが適切でないと神経的に疲れてしまいます。今のセダンで流行のデザインは、パサートやTTを源流にする、フロントウィンドウを寝せてなだらかな円弧を描くようにルーフをリヤに描くもので、一番高い点が後部座席の前にくるため、全高のわりに後部座席の上部の空間が狭いし、後部座席も後傾が強く後頭部に日光が当たるものも少なくありません。
実用車を購入するにあたっては、操縦性の他にもそんなことも考えながら試乗をしているのですが悩み過ぎなのでしょうか(笑)
Posted at 2005/02/24 11:55:45 | |
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