2ヶ月ほど間が空きましたが、
こちらのブログからの続き、かつこのシリーズの最終回となります。
ブログでアップする際に、若干時系列が前後してしまったものの、この日のメインはこの施設。
廃止となった頸城鉄道の車両を保存・展示している施設である。
旧・百間町駅の敷地に設けられており、右手の車両展示資料館、左手の軽便鉄道資料館(旧・頸城鉄道本社社屋)と、二つの資料館で構成され、くびき野レールパークと総称されている。
但し、これらの施設の公開は、春~秋に月1回程度行われる公開日に限られているのだが、その公開日には敷地内で保存車両の運転が行われるなど、充実したイベントが実施されている。
ちなみに頸城鉄道とは、信越本線の黒井駅(直江津の隣駅)に隣接して存在した新黒井駅から、現在の北越急行の路線にほぼ沿うように、浦川原駅(現在の北越急行うらがわら駅近く)までの全長15kmの路線で、昭和46年までに全線廃止されている。
現在は北越急行の他、頸城鉄道株式会社の直接的な後身である頸城自動車、そしてその子会社に当たる東頸バスなどが、この地域の交通を担っている。
但しこのくびき野レールパークへのアクセスが意外と難儀で…平日なら頸城自動車の路線バスが利用できるものの、公開日は基本的に休日。
そうなるとバスも休日ダイヤで、1日2往復程度と、公共交通でのアクセスはかなり困難。
じゃあ車はと言うと…実は長距離運転はドクターストップな私…
しかしその年最終となる10月の公開日には、「イベント」と称し、通常の公開に加え、屋台村や餅つきなど、地域のお祭り的な要素を組み入れ、しかも直江津駅や北越急行の浦川原駅・くびき駅からの無料シャトルバス(しかも本数が多い)が運行されるため、この日を選んで訪問した次第。
先ずは、車両展示資料館から。
ちなみに建物の周りに建っているテントでは、鉄道パーツから、頸城鉄道で使っていたゴム印、車内補充券
(デッドストック新品)、大正時代の沿線案内
(これまたデッドストック新品)に至るまで、どこから探し出してきたのか不思議なほどのアイテムを販売しており、その品揃えの凄さに驚かされる。
やはり、現在ではバス会社になったとは言え、会社そのものが存続していると、こういったアイテムが出てくるのかも知れない。
そして建物内部
この建物内には、2編成の車両が保存されているのだが、西武山口線に引き取られていたSLコッペルを除く、これらの車両は頸城鉄道廃止後に神戸の富豪が趣味として買い取っていたもの。
その富豪によって、六甲の山中にトンネルのような保管庫を設けて保管されていたものの、その後は特に活用されることもなく、三十年程放置されることになるが、屋根付きの保管庫で保存されていたため、比較的原形を保っており、地元の有志により、ここ頸城へと里帰りし、修復・動態保存され現在に至っている。
先ずはSL+DL+貨車+客車の堂々とした編成。
先頭はコッペル号として、ここの名物にもなっているSL
但しこのコッペル号…実は予算不足のため、未修復。そのため実際の動力はDLが担っている。
但し「石炭の臭いを知らない子供達に、是非SLの“臭い”を体験して欲しい」との趣旨で、動力には使っていないものの、多少の石炭を焚き煙をだしている。
DLのエンジン
DLの運転台
そして客車
そしてこの客車に乗り込んで、体験乗車(運賃は無料だが、保存寄付金をお願いされる)
まあ体験乗車と言っても、昔の駅構内をスイッチバック風に行ったり来たりするだけでなのだが…
しかし、狭くなっている場所などでは、こまめに一旦停止し安全確認を行ったり、手旗による誘導なども徹底されている。
ただ…乗っている人より、撮っている人の方が多いような気が…
そしてもう一両のDLは、元々社長専用車だったものを一般車に改造したというユニークな車両。
こちらの車両にも体験乗車(この日は雨で来場者が少なく、混雑もなかったため、複数回の体験乗車もOKが出た)
元が社長専用車なので、車内の意匠も凝っている
運転台
ほんの数十m程度の走行にもかかわらず、しっかり閉塞は行われている様子。
そして出発
但しこの車両…バックギアの切替が車内で行えないため、数十mのスイッチバック式の線路を行ったり来たりするだけに、わざわざ運転士が車外へ出て台車部で作業を行う必要があるという面倒な仕様。
車両展示資料館の次は、隣接する軽便鉄道資料館へ。
先述したように、かつての頸城鉄道本社の社屋を利用した施設なのだが、見ての通り、妙に綺麗なパネルが張られており違和感がある。
しかしコレは、往時は全て板張りの建物だったものの、長年修復を繰り返している内に、厳しい財政事情も反映してトタン張りのパッチワーク状態となり、あまりの見窄らしさだったこともあり、こうしたパネル張りに変更したとのこと。
(にしても、少々色合いが明るすぎることは否めないとは思うが…それでも数年前の痛々しい写真と見比べると、まだ現状の方が数段良いかと…)
但し一部は当時の材料がそのまま残っている面もあり、角度を変えるとそれなりに味のある建物。
そして建物脇には、「頸城鉄道線発祥の地」の碑が建っている。
資料館内部は、往時の切符などのアイテム展示と、車両を六甲山から運び出してきたときの様子を記録したVTRの上映が行われている。
しかしここで展示されている切符や路線図と同じものが、デッドストックとして屋外のテントで売られていたりするので、やや有り難みは薄れてしまう感もある。
そして昼食は、イベント会場の模擬店で。
まあ天候が天候なので、人出が少ないのは残念なところだが、それぞれの模擬店は基本的に地元の人が手作りのお弁当や素材を売っており、ほのぼのとした雰囲気。
豚汁と
餅つき大会の振る舞い餅
「本当にコレだけなのか?」と聞かれそうだが、本当にコレだけ。
本当は雨で人出が少なく、出店者も売れ残りを危惧して困っている空気があるのは承知していたのだが、来訪者用の雨よけのテントが少なく、かといって店先や雨の中の立ち食いでは落ち着かず…そんな訳であまりゆっくり昼食を楽しむ気分にならなかったというのがホンネ。
それに更に言うと、鉄道愛好者の団体ツアーが数少ないテントを「撮影器材置き場」として占領してしまい、それ以外の一般客が利用できるスペースが限られてしまっていた事も要因。まあ団塊世代が多いとどうしても…
こうして、くびき野レールパークの見学を終え、東頸バス(頸城鉄道の後身・頸城自動車の子会社)のシャトルバスに乗り、もう一カ所のイベント会場へと移動。
そのもう一つのイベント会場というのは、浦川原のバスターミナル(東頸バス本社)
実はこのバスターミナルの建物、頸城鉄道の終点であった旧・浦川原駅の駅舎そのもの。
更に頸城鉄道の線路跡がそのまま北越急行の線路に転用されており、駅舎の裏手に立派な高架橋が見えている。
かつてのホーム跡側はこんな感じ
かつての線路跡にそのまま高架橋が建っており、その高架下スペースは現在駐車場として使われている。
頸城バス発祥の地の碑も建っている
そして今回は、この旧・駅舎で写真パネル展が行われており、頸城自動車(=頸城鉄道)の歴史を記録した写真の展示やビデオ上映が行われている。
こうしてこの日のイベントを一通り満喫し、北越急行のうらがわら駅から普通列車で直江津駅へと戻り、帰路に付くことにする。
しかし北越急行の駅があまりに地味な事もあり、既に辺りが暗くなっていることもあり、一筋縄では尋ね当たらず。
そして特急列車の高速走行への備えもあり、しっかりとした風除けのある待合室からホームへと入り
普通列車に乗車(失敗写真ご容赦)
こうして唐津→佐賀→軍艦島→入善→直江津→頸城と、まるで迷走したような一連の旅は終了。
<完>