GT-R開発責任者が語る「World of GT-R…3年後の姿」リポート
10月23日、日産自動車は、10月18日に発表した「NISSAN GT-R」11年モデルの一般向けセミナー「NISSAN GT-Rセミナー~World of GT-R…3年後の姿」を、同社グローバル本社ギャラリーにて開催した。
このセミナーは、GT-Rの開発責任者であるチーフ・ビークル・エンジニア兼チーフ・プロダクト・スペシャリストの水野和敏氏が講師となって、2007年に発売したGT-Rの3年後の姿、つまり今の姿を語るというもの。会場には多くの観客が詰めかけ、水野氏の講演を熱心に聞いていた。
水野氏の車づくりに対する、高い志が垣間見れる素晴らしい講演だ。
ワタシが共感した、感動したフレーズを若干抜粋しながら以下に記そうと思う。
■「World of GT-R」とは人々に感動を与えること、「感動の創造」がテーマ
「チューニングしたエンジンを軽いボディーに乗せ、レーシングカーモドキのタイヤ付けてどこそこで走らせて何秒のタイムが出る。運転技術が高いお金持ちだけが楽しめる。これがそれまでのスーパーカーでした。とても閉じた市場だったように思います。でも、車を走らせる楽しみはみんなが体験したい感動なんです。スーパーカーをオープンな市場にしようよ、そんな思いを込めてGT-Rを作りました」
「“マルチパフォーマンス”を標榜するGT-Rは、アンダー・オーバーが出ない唯一の車だ。
今の自動車屋は止まってる車しか設計してないが、GT-Rは、タイヤのグリップを出す為にミッションの位置やV6エンジンのスペックを決めたのだ。
『エンジンには味があって、アンダー・オーバーは癖であって味だ』という、雑誌、評論家の主張は違う。面白可笑しく感傷文だけ書いてたって(本当に性能の高い)車は出来ないんです。その結果、サーキットでも、雪でも、雨でも、砂でも走れる車が現実にできるはずなんです。」
まったくもってその通りだ!それが、GT-Rなんですよね。
■タイム計測。その意味と意義。
最後に、水野氏は年次モデルのタイム計測の意義、意味について語った。11年モデルの0-100km/h加速は真夏の仙台ハイランドでの参考計測値で 3.2秒を記録していると言う。「真冬にやればまだ少しは伸びるはずだ」「今回は、VDC-R(横滑り防止機構)のRモードに発進装置(ローンチコントロール)を搭載しました。このモードを使用しても販売店保証がちゃんと持続します。0-100km/h加速が3.2秒の世界は、加速Gが凄まじすぎて指先しか動かない世界です」と水野氏は語る。GT-Rのトランスミッションはパドルスイッチを押してから変速トルクがリアタイヤに伝わるまでを0.15秒と公称している。この速度変動は、速度上昇線を表したグラフにおいてわずかな揺らぎにしか現れない。
「ほかのメーカーはスイッチを押してから変速完了までの時間を公称値としています。これは数値になると、GT-Rでやっていることの違いが見えてきません。我々はこの速度グラフが直線になることに情熱を注いでいるんです」と言い、GT-Rが特別なクルマであると言う。
GT-Rは、年次モデルが発表になるごとにニュルブルクリンクでの計測タイムを公表しているが、2011年モデルでは、まだその公称値が公開されない。これは計測日は、路面がウェットコンディションであったためで、それ以前に計測した、開発時の一部ウェットコンディション時の参考タイム、 7分24秒を公表している。
2007年のオリジナルモデルのタイムは7分38秒、その後、年次改善とともにタイムは縮まり、2009年モデルの公式タイムは7分26秒と発表している。一部ウェットでありながらの7分24秒の参考タイムは、その性能がさらに進化していることをうかがわせる。
水野氏は、7分24秒の参考タイムを記録した際のデータログを示しながら、一部ウェット状態の個所で速度が落ち込んでいるポイントを指摘。完全なドライコンディションであればさらにタイムは伸びるはずだ、と、うれしさ半分、悔しさ半分の口調で語っていた。
このGT-Rのタイムは、11年モデルで向上した出力がその要因と思いがちだが、水野氏は、空力を味方に付ける攻撃的なエアロダイナミクスが大きく貢献していたと言う。「GT-Rのブレーキはタイヤハウス全体でディスクを冷やす構造になっています。だから走り出せば100度は軽く下がる構造になっているんです。レーシングカーのようにダクトホースで部分的に冷やしているだけでは30度下げるのがせいぜいといったところです。GT-Rの場合、タイヤハウス全体が冷却ホースのような構造になっています。だから、GT-Rのブレーキは800度域まで実用となっているんです。言いたいことは、空力を味方に付ければ、ブレーキ性能を劇的に変えられるということです」と、11年モデルでの空力変更点がブレーキ性能の向上に役立つことを図示した。
「最速タイムを出すならばClub Track Editionにスリックタイヤを履かせて計測すればよいだけのことです。でも、ボクはそれを絶対にやらない。適当にチューニングした開発テスト車両で、ものすごいタイムを出して、それをアピールした後、ごく少量の量産車がまったくそのタイムと違う性能だったとしたら……意味がないでしょう。ボクは9月に量産予定・基準車でテストして、11月から生産されるGT-Rのすべてがそのタイムを出せる性能を持っているということ、そこに意味があると思ってわざわざドイツに行って仕事をしているんですよ」
近年ニュルでのタイム争いが白熱しているが、「最速タイムを出すなら特別車にスリックを履いてやればいい」とは、
ポルシェ『911GT2RS』がニュルで7分18秒を記録したことを意識した言葉であろう。が、「レーシングカーのような特殊な限定車(911GT2RSは世界限定500台)での記録に意味があるのか。
まったくその通りだ。GT-Rはもっと志の高いところにいたのだ。
相当声を荒げて力説する水野さん、その相手は、たぶんメデイア・雑誌・評論家達に向け、また日産上層部達にも向けたものなのかな、と思った。
最後に質問に立った子供の、「社外品を許さないのは何故?」という、幼稚な質問には、
「世の中の規格の範疇を超えた車だから」という、水野さんの答えは、痛快・的確で、しかも世の中のGT-R否定論者を一刀両断にしてくれた。
この幼稚な質問をした子供の、きっと、ぎゃふんとした顔が見たかったものだ(^_^)
この動画、内容は素晴らしいのだが、音声が悪かったり、途中、いいところで切れてるのが、まったく残念!!
しかしこのセミナー、実際に行きたかったな~!
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Posted at 2010/10/30 08:40:51 | |
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GT-R | 日記