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2026年05月26日

本物の0W

本物の0W かつて0Wは高性能オイルの証でした。
PAOをベースオイルにするオイルだけが0Wを実現出来た。
今だって本当はPAOだけがたどり着ける領域なんです…


なぜ鉱物油では0Wが実現出来ないのでしょうか?
良く言われる「オイルの粘度は低温側で決まる。」理由を書いてみます。





Gr.III鉱物油(VHVI)とPAOで0W-20を作る例を挙げてみます。
ひとまずノンポリマーで作れるか試してみます。
SAE20の100℃動粘度は6.9~9.3cStの範囲なのでベースオイルはVHVI6(100℃動粘度6.5cSt)とします。

これにパッケージ添加剤を10%添加します。(規定量添加でAPI規格に合格するやつ)
パッケージ添加剤は増粘効果もあるので100℃動粘度は7.5cSt程度になり高温側の20は担保出来ます。

だけど、低温側の0Wの確保が出来ません。
0Wはざっくり言うと-35℃でエンジンが掛かるか?(Cold Cranking Simulator)
を評価しています。粘度で言うとCCS−35∘C​≤6200 cP
VHVI6ではこれが確保出来ない。(-35℃粘度は10000cSt以上)
VHVI6の流動点は‐15℃となっていますが、これはあまりアテになりません。
流動点降下剤(PPD)を添加しても6200cPは切れないでしょう。

※cP絶対粘度でcStは密度を加味した相対粘度です。cStの方が大きく出ます。
ここでは6200cP≒7000cStと思って読んでください。
絶対粘度の話は凄く面倒なので割愛します。
油温、油圧、分子構造と少なくとも変数が3つは関わってきます…



鉱物油(VHVI)の低温流動性が悪いのは分子量がバラバラだからです。
VHVI6と言っても実際には動粘度3の分子も入っていれば20の分子も入ってる。
このうち特に分子量の大きいワックス分(常温では液体)が早く結晶化(固体)します。


と言うことでVHVI6だけでは0W-20が作れないことが判りました。
VHVIで0Wを実現するにはより柔らかくワックス分の少ないVHVI4が必要です。
VHVI4の100℃動粘度は4.2cStです。
流動点はVHVI6と同じ-15℃表記ですが、実際の-15℃の粘度はVHVI4の方がずっと小さいです。
-35℃でも倍以上粘度は違う筈…
VHVI4なら-35℃で6200cP何とか確保出来るかもしれません。



かなり以前に流用させてもらったYubaseのブレンド表を出してみます。

レシピDのフォーミュレーションを見てください。
VHVI4+を63%でVHVI6を20%ブレンドしています。
ポリマーは6%添加ですがVHVI4+の粘度指数が高いおかげでしょう。
他のレシピは7%添加しています。
(一番左のYubase4だけで作ったやつCCS6250cPもありますね…)

Yubase4+の100℃動粘度は4.2cStです。
Yubase6の100℃動粘度は6.5cStです。

この二つを上の割合でブレンドすると100℃動粘度はたったの4.6cStしかありません。
でも、完成品の100℃動粘度は8.38cStもあります。
パッケージ添加剤がかなり粘度があるので規定量添加するだけでも増粘効果があり、1.0cStくらいは添加剤効果で増粘するでしょう。
8.38-4.6-1.0=2.78
ポリマーの増粘分が2.78cStと言うことです。

8.38からポリマー分の2.78を引くと5.6cStです。
0W-20の100℃動粘度は6.9~9.3cStです。(SAE規格)
ポリマーがせん断されてしまうと20側が全然担保出来ない。
ポリマー添加前の5.6cStだと0W-12の下限に近いです(5~7.1)

しかもレシピDの粘度指数は173です。
0W-20のオイルとしては極めて一般的です。
VHVI4+を使った高性能な鉱物油でも実粘度は0W-12程度しかない。
普通の安い0W-20はVHVI4です。VHVI3も入ってるかも?更に性能が悪い。

VHVIベースで粘度指数200を超える超高粘度指数0W-20の怖さが判りますよね?
実質0W-8程度、それ以下かもしれない…


最初に書いた「オイルの粘度は低温側で決まる。」はVHVI基準で見た場合の話だと思います。
低温流動性が悪いのでまずは0Wなのか5Wなのか決めてから上側を決める。
だから高温側をポリマーで補填する必要があり耐久性のあるオイルが出来ない。
これは本来間違ったオイル粘度の選定ですが、VHVIはそうしないと0Wが成立しない。


これがPAOやGTLになると話は変わります。
特にPAOは流動点が全然違います。

PAO6の流動点は-57℃です。(-35℃動粘度が4300cStくらい)
PPD無しで-35℃は余裕でクリアできます。
分子構造が複雑なPAOは低温で固まりにくいです。圧倒的。
極端なことを言えばPAO6にパッケージ添加剤を添加するだけで100℃動粘度も7cSt確保出来ますからこれだけでノンポリマー0W-20が実現出来そうです。

何も考えずに高温側でベースオイルを設定しても0Wが成立してしまう。
実際はPAO4も少し混ぜて低温流動性を確保すると思いますが、これならポリマー添加も最小だし至極真っ当な0W-20が出来る。


実際に例を挙げてみます。
これはエクソンモービルのSpectraSyn(PAO4)の配合例です。
SpectraSyn4とYubase4を同じ粘度と思って見てください。

どうですか?PAO4の配合たったの17%です。
先ほどのYubase4では64%も配合しないと0Wが成立していませんでしたが、こちらはPAO4を17%でも余裕で0Wが成立しています。

0W自体はPAO6だけでも成立してしまうけど、PAO4を入れないと粘度が上がり過ぎて0W-30になってしまうのでこの配合なのでしょう。
ポリマーも2.6%と最小添加です。(VM=粘度指数向上剤 )

極めて素直なフォーミュレーションですね。
0Wを達成するために余計なことをしていない。


そう考えると0W-40にPAOベースが多い理由も納得しますよね。
VHVIベースだと0W-20ですら何とか成立するレベル。
そこから2ランクも高粘度側へレンジを広げるのはVHVIでは無理。
(0W-30をポリマーで無理やりやるところはある)

どの粘度のPAOをどの程度混ぜるかは各社ノウハウがあるので詳しくは判りませんが、0W-40は0Wだからって柔らかい訳じゃないです。
PAOは固まりにくいので比較的硬いPAOを配合しやすいということです。
0W-40と書いてあっても鉱物油に換算したら15W-50程度です。硬い。



GTLはPAOより低温流動性は劣ります。
分子構造がVHVIに近く、直鎖に近いイソパラフィンなので綺麗に並ぶと固まり(結晶化)やすい。
それでもVHVIより分子量バラつきが小さくワックス分は含まないので流動点はVHVIよりずっと低い。
GTL6を使用してPPD添加すれば-35℃は実現可能な領域。
高温側はPAOと同じなのでノンポリマー0W-20は実現可能なはず。
(シェルのカタログを見る限りGTL6は無いのでGTL4とGTL8の混合になるかな?)


低温流動性
VHVI<VHVI+<GTL<PAO
イソパラフィンの3種は分子量バラつきの差が流動点の差に出る。
PAOは分子構造が全然違うので固まりにくい。


日本では5W-20が全然流行りませんでしたが、本来VHVIなら5W-20が妥当な粘度です。
本物のSAE20ならエンジン保護性能も十分ある。
0W-20に擬態した実質0W-12が蔓延しているのがそもそもの間違いです。



Mobil1は発売当初5W-20しかラインナップがありませんでした。
おいおい、PAOベースなのに5Wなのかよ!と思いました?
Mobil1が発売された1974年には0W規格はまだありませんでした。(1980年制定)
実際には0W-20だったけど規格がなかったから5W-20表記。

恐らくPPD、ポリマー無添加だったのではないでしょうか?
(添加したとしても最小限)
初の0W-20だったのに最初から本物だったMobil1。

今から50年以上前に5W-20だけを発売したモービル凄いですね。
20W-50やSAE40の時代ですからね。

結局メーカー保証粘度に達しない(表記上)ということで5W-30や15W-50が追加されますが、Mobilからしたらそこらの10W-40よりうちの5W-20の方が強いという自負があったのでしょうね。
自負が強すぎて20にこだわってしまった感じはあるかもしれません。

当然ネガキャンはあったでしょう。
20なんて油膜が足りない!ペンシルバニア産鉱物油こそ至高!
未だに日本で言ってる人たち?50年前の話ですよ?目を覚まして!


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Posted at 2026/05/26 11:59:59

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