
昨年、何の気なしに観た劇場版。
『ガールズ&パンツァー』
無性にTVシリーズが観たくなり、まとまった休みのとれるお正月にDVD借りていっき観しました。
ハマりました。
面白い。
これはブームになる訳だ。
この作品を支えているファン層は若い世代だと思う。でも、そのファン層よりももっと大勢の『まだ観ぬファン層』が眠ってます。
ファミコンやガンプラが登場する前に少年(少女も可)だった世代。
いま40歳代後半から50歳代すべての世代には感涙ものの作品だよコレ。
『ソフトビニール人形』はウルトラ怪獣やお人形などに限定され、精密さを求める年齢になると遊ぶ対象から外れ、当時登場した『超合金玩具』はお小遣いで買えるほど安くなく買って貰う玩具。自分のお小遣いで買える身近な玩具はプラモデル。
プラモデルと云えばスケールモデル。
スケールモデルと云ったら1/35ミリタリーシリーズ。
ミリタリーと云えば艦艇より戦闘機よりも戦車。
(自動車模型という意見もあると思うけど、自動車は模型よりもミニカーだと思います)
模型を組み立てる楽しさと完成させる喜びもさることながら、組み立てた後の妄想こそが醍醐味。組み上げた戦車同士を敵味方に並べての妄想の機甲戦。
妄想の中での重戦車と軽戦車の一騎打ち。
そーです、子供の妄想です。
この作品は見事に子供の(頃の)妄想をビジュアル化してくれてます。
当時のアメリカ読みの和名
『タイガーⅠ』
『キングタイガー』
『ハンティングタイガー』
『パンサー』
『ハンティングパンサー』
などの人気のドイツ製装甲戦闘車両群が、制式名称の
『ティーガーⅠ』
『ティーガーⅡ』
『ヤークトティーガー』
『パンター』
『ヤークトパンター』
として登場し、地味なデザインだけど質実剛健なソ連製装甲戦闘車両群もその火力を思う存分に発揮します。
自分にとっては「ガンダムでのジムかボール」扱いだったアメリカ製M4シャーマン戦車も、『ファイアフライ』のような、ドイツ戦車と互角の火力を有した獰猛な車両などのバリエーションがあった事を知り。『マウス』や『ポルシェティーガー』のような試作品や失敗作が動く姿に心躍りました。
作品世界を支える舞台装置であるWW2当時の各国の装甲戦闘車両(戦車)は、ディテールや描写のリアリティを追及しているのに対して、作品のソフト面であるストーリーは、まさにど真ん中のスポーツ物。
個人的な感想だと、野球漫画、否、スポーツ漫画の金字塔『キャプテン』を彷彿させるしっかりした物語。
しかし『キャプテン』と大きく違うのは、汗と涙と努力の物語ではなく、萌え美少女キャラクターたちによる成長物語。
ヒロイン『西住みほ』は戦車道の名門・黒森峰女学園から転校してくるが、『キャプテン』での谷口のような2軍補欠ではなく、戦車道・西住流家元の娘(次女)という英才教育を受けたサラブレッド。転校先の県立大洗女子学園で出会った仲間たちと助け合いながら『自分の戦車道』を見い出していきます。大洗女子学園の仲間たちもそれぞれ個性をしっかり描き、それそれの成長を描いています。
個人的に、一年生のうさぎさんチームの成長には涙しました(汗
萌え美少女キャラたちの王道スポーツ物語だから、決して熱血で声を張り上げるような描写はなく、「どうしよう→みんなで相談」って形で局面を打開していきます。
でもそのような台詞や演出ですが、展開内容はかなりの熱血だし結構シビアな戦術を実行したりしてます。
ここからが個人的な本題です。
リアル描写の戦車と萌え美少女キャラ。
美少女キャラたちののほほん台詞に惑わされる熱血展開とシビアな戦術実行。
この作品の最大の魅力は、このような『ギャップ感』です。
いっけん相反し矛盾するような要素を敢えて組み合わせて、予測以上の化学反応効果を狙った企画作品です。
矛盾する要素を敢えて組み合わせる演出方法を昔の映画用語で『相克のモンタージュ』といいますが、この作品はすべての要素にわたって『相克のモンタージュ』を活用して物語を組み上げているとんでもなく計算づくの作品だと思いました。
対プラウダ高校戦でカメさんチームの後陣への単独突撃や、決勝戦でフラッグ車同士の一騎打ち(姉妹決戦)に持ち込む為に、ポルシェティーガーが玉砕覚悟で決闘フィールドへの進入路に立ち塞がる行動などは、少し濃く演出するだけでいくらでもドラマチックに盛り上げることが出来ますが、本編では萌えキャラの軽いセリフでさらりと観てる側の盛り上がる感情をいなします。
いなされたからまた何度でも観たくなります。
ヒロインの行動の真骨頂、川で立ち往生したウサギさんチームを救出する感動のシーンなどは、生徒会長の「西住ちゃん、飛んでるねぇ~」の一言で一方的にまとめられてしまいます。
萌えキャラに軍歌を唄わせたのも正に相克性を狙った演出です。
歌は歌。
それが軍歌だろうが歌には変わりなく歌は歌以外の何ものでもない。
その歌をどんな時代にどんなスチュエーションで聞いたかによって歌の印象が変わってくる。
聞き手個々の捉え方の問題だと、私は思います。
歌にイデオロギーを持ち込むからややこしくなるし。
そーいう歌を敢えて作品に持ち込み、萌えキャラに元気に唄わせる。
製作陣の深い意図をかんじるなぁ。
製作陣と云えば、作品の中に『八甲田山』や『戦略大作戦』などの往年の名作を持ち込んでいて愉快になりました。
『戦略大作戦』は自分も大好きな作品。
クリント・イーストウッドやテリー・サバラス、ドナルド・サザーランドらが皆若くてかっこよくて、物語も爽快で。ティーガーⅠを撃破するシャーマンの頭脳戦にはワクワクしました。
この『戦略大作戦』はストーリーの重要なファクターにもなってますし、『八甲田山』ネタもしっかりと作品を知っていないと作れない小ネタです。
製作陣にかなりマニアックな人材が揃っていた事が大いに想像できます。
このTVシリーズ(+OVAアンツィオ戦)を観ると、劇場版は蛇足感を否めません。
でも、この作品の続編を作っても対戦相手のキャラを替えただけの同じような展開の作品にしかならないでしょう。
この作品はこれで完結しているからこそ価値があると思います。
劇場版はファンサービスのカーテンコールと云う事ですね。
自分でここまでハマるとは思わなかった。
クルマのスタッドレスを脱ぐ頃に、大洗まで『かつ定食』食べに行こうと思ってます。
(長い駄文の終りに、相克のモンタージュ演出をを行わなかった場合は、こーなってたかもって思えるMAD見つけたので貼っときます。こんなタッチも面白しろいかも)