現役32年目のホンダCBR250Four(MC14型、昭和61年式)のクーラント漏れDIY修理の最終話です。
◎「その1」 →
緊急点検の巻
◎「その2」 →
漏れ起点の再確認の巻
◎「その3」 →
部品取り用エンジンで確認の巻
◎「その4」 →
原因究明の巻
◎「その5」 →
シールテープで暫定処置の巻
◎「その6」 →
純正O-リング入荷&マフラー防錆準備の巻
◎「その7」 →
O-リング交換&防錆用の耐熱塗装→修理完了?の巻
■故障解析FTAをやってみよう(きっかけ編)
クーラント漏れの修理が完了したと思いつつ、念のため様子見をしていたところ、再発した漏れを発見した・・・というところまでが前回のあらすじでした。そこで、再度初心に戻り、DIY修理項目に 「検討漏れ」 や 「実施不備」 がないかどうか、今一度、客観的に見てみることにしました。
というのも、実は気になる点が一つ、あったのです。
それは、ラジエータキャップ。
製造中止から30年以上が経過したCBR250Fourの部品を入手したいとき、私はヤフオク!で探すことが多いです。商品価値が無いようなもの、暴利と思える価格設定のものが多い中、ごくまれに新品デッドストックの出品もあります。そのような品をウォッチリストに入れてあります。
不定期ですがヤフオク!を巡回することによって、出品物の傾向だったり価格相場だったりが、なんとなく分かってきます。普段からそのような情報を仕入れておくことで、イザというときに役に立つのです。
さて、CBR用のラジエターキャップもたまに出品があるのですが、その出品画像の開弁圧は0.9[kg/cm2]。ただし、私の手持ちのパーツリストとは異なる部番で紹介されています。その一方、私のバイクに実装されているラジキャップの開弁圧は1.1[kg/cm2]。このラジキャップは以前、某バイクショップにメンテを依頼したときに交換されたときのもの。一体、どちらの数字が純正設定値として正しいのでしょう?
・・・こうした疑問も背景にあり、今回の 「クーラント漏れ再発」 に対しては、客観的に故障解析FTAをやってみよう、となった次第です。
■故障解析FTAをやってみよう(実践編)
まずはトップ事象に 「クーラント漏れ」 と記載し、次に2次事象→3次事象(あるいは中項目→小項目)などと細分化していき、原因として可能性があるか無いか、ある場合はその確認結果を記載します。広く張った網の目を次第に細かく検証し、最後に残った項目が対処すべきものとなります。
# 自分のバイクですので、もちろん自分で考えます。
<↓クリックで拡大します。自己流ではありますが、クーラント漏れの故障解析FTAは以下の通り>
故障解析FTAの結果によると、漏れに至る可能性がある原因として、シリンダヘッドのスラッジ、パイプの腐食、ホースの経年劣化、ホースの材料特性の変性、そしてラジキャップとなりました。この検討結果に基づき、再修理に着手する前に、ナップスで純正ラジキャップを注文しました(品番が変わっているが在庫あり、と確認できたため)。
<↓ラジエターキャップCOMP(トウヨウ)2894円、現:19045-MZ3-405(←当時:19045-MB0-702)>
CBR250Four用のラジキャップ後継品を入手したところ、開弁圧は0.9[kg/cm2] となっていることが分かりました。ということは、以前メンテしたバイクショップ(今は移転して所在不明)のおっちゃんが間違って取り付けしたのでしょう、きっと。
皆さんの中には、「0.9[kg/cm2] も 1.1[kg/cm2] も変わらんやろ。」 とお思いの方々もいらっしゃるコトでしょう。でも経年32年のバイクにとっては、その0.2[kg/cm2] の圧力差が水回路内の各部品のストレスとなってトラブルを誘発する恐れだって、十分にあるのです。
神奈川スバルのディーラーのメカニックさんが、「STI からオプション設定されている、開弁圧が高いラジキャップを古いクルマに装着すると、ホースに亀裂が入って入庫する車両が多い」 と話してくれたことが思い起こされます。
■故障解析FTAに沿って検証してみよう
正規開弁圧の新品ラジキャップを入手できたので、早速、FTAに沿って検証&修理を進めます。この日も、午前中から外気温度が30℃に迫る猛暑でした。
<↓サイドカウル無しのアンダーカウル有りって姿も珍しい。と思いつつ、カウルを取り外します>
・・・すると、ここでアクシデントが発生!
何と、いっしょに外に出していた iPhone が太陽熱にやられて変形し、パネルが飛び出す状態に。
<↓すぐに異変に気がついたものの、iPhone の筐体がこのように変形してハミ出す危機に・・・>
急ぎ、家の中に戻り、エアコンで筐体を冷却。
十分に冷めてから電源SWを入れると、無事に起動!
<↓いつもの見慣れた画面に戻る。ざわ・・・。アプリを起動してみる。ざわ・・・。無事起動を確認>
どうやら一部のハードが変形したのみで、機能的には問題無いようです(iPhone の変形画像を見た一部のみん友さんの方が、超・焦っていらっしゃったようですが)。このiPhone 5S は、現役で使用中のもの。機種変したあとの古い(使っていない)スマホではありません。iPhoneは室内に置くことにしつつ、今度はデジカメがやられないように気を遣いながら、FTAの検証と対応を進めます。
<↓まずはラジキャップの交換から。今までは開弁圧の高いキャップを使って(使わされて)いた>
<↓恐らく、一連のクーラント漏れ原因として、この高開弁圧のラジキャップの影響もあったはず>
次に、現在の漏れ箇所を確認します。前回、新品に交換したO-リングからは漏れていない ことを確認しました。代わりに、水パイプ本体からクーラントの水滴が垂れて います。マジ? いよいよ、パイプ本体に腐食貫通穴が生じた??
<↓パイプ本体から滴下するクーラントしずくの画像。どうやらパイプ本体の穴あきではなさそう>
<↓漏れ部位を特定!パイプに伝わって垂れ落ちるクーラントの原因は、ホース接続口にあった>
■クランプの複数掛けで対応してみよう
漏れ箇所がO-リングではなくホースからであると判明したので、まずはホースを活かした対応策を施します。結論から先に書きますと、クランプの複数掛けです。今回はダブルクランプではなく、トリプルクランプとしました。
<↓部品取りエンジンから取り外したパイプ類。両端に位置するホースバンドの現品を流用する>
<↓既存のクランプに加え、さらに上流側と下流側にそれぞれクランプを追加し、合計3個体制に>
クランプの複数掛けには、次に説明するような分析や、狙いの意図があります。
決してテキトーにやっているのではありません。以下、手書きの画像で順に説明します。
■仕上げてみよう
FTAの検証を進めていきます。結果が矛盾するような項目はありませんでした。
<↓前回と今回、手を入れた修理箇所について、それぞれ次の画像に示します>
エンジンを始動しても、漏れが生じないことを確認。
次に取り外していたエンジンハンガープレートの復元をします。
ここでマイナートラブルが発生。クランプの頭部とエンジンハンガーが接触するのです。
<↓もしも接触を放置すると、パイプやホースにストレスがかかる恐れがあるため、改善します>
エンジンを始動し、漏れが発生しないことを確認しました。
その後も数日間、実用に供してきましたが、漏れの再発は無し。
こうして故障解析FTAに沿った要因抽出と、シールのメカニズムを考慮した対策を施すことによって、完治させることができました。今後も今回の一連の経験を活かし、最小費用で最小工数での対応ができるようにしていきたいと思います。
<↓クーラント漏れも、最後には結局、DIYで完治させることができました。今後も乗り続けますよ>
毎回の長文にもかかわらず、当方のブログをお読みいただいた
たくさんの方々にも、改めてこの場を借りてお礼申し上げます。
■備考
以下は2018年8月現在のメモ。
・ラジエターキャップCOMP(トウヨウ)は2894円、現:19045-MZ3-405(←当時:19045-MB0-702)
・O-リング 13×3 は145円、現:91302-MB6-830(←当時:91314-KE8-003)
・ウォーターパイプB(MC14用、19065-KT7-000)はメーカ在庫無し
・ウォーターパイプB(MC19用、19065-KY1-000)もメーカ在庫無し
・エキゾーストパイプガスケットは388円、18291-KK0-000(MC14用、部番不変)
→ KITACOの方が安い(KITACOブランドでは型番XH-10、K・Pitブランドでは型番H-10が適合)
・サイドスタンドスプリングDは118円、95014-72402(MC14用、部番不変)
・たかがO-リング、されどO-リング
→ 1986年1月、米国のスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故は、
O-リングの破損が原因であった。詳しくは →
こちら(wikipedia)。
・クーラント漏れの原因は複数要因
背景:ラジキャップの開放圧が純正設定値よりも高いものが装着されていた。
主因:O-リングの経年劣化(初回)。ホースの経年劣化(拡幅と緊迫力低下、再発時)。
遠因:サビによる各部の浸食(パイプ表面に凹孔あり)。
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└ [ワンオフ] 冷却水回路の穴あきDIY修理 | クルマ
Posted at
2018/08/12 04:30:41